袋の底のほうのお米に黒っぽい点がある。米びつを開けたら、いつもと違うかび臭いにおいがする。こんなときに迷うのが、洗えば落ちるのか、炊けば菌は死ぬのか、という点ではないでしょうか。せっかく買ったお米なので、捨てる前になんとか使えないかと考えるのは自然なことです。
先に結論をお伝えすると、カビが生えたお米は洗っても炊いても食べずに処分するのが基本です。カビそのものは加熱で死滅しても、カビが作るカビ毒には熱に強いものがあり、炊飯程度の加熱では分解しないとされています。しかも、カビ毒が含まれているかどうかは見た目ではわかりません。
この記事では、農林水産省や米穀機構(米穀安定供給確保支援機構)などの一次資料をもとに、カビ米を口にしない理由、お米に付くカビの種類、家庭でカビが生える原因、15℃以下・1カ月を軸にした保存のコツ、そしてニュースで耳にする事故米穀との違いまで、理屈から順番に整理します。
・カビ米を洗っても炊いても食べないほうがよい3つの理由
・政府米の調査でわかった、お米に付きやすいカビの種類
・家庭のお米にカビが生える原因と、15℃以下・1カ月で食べきる保存の基本
・2008年の事故米穀の問題と、家庭のカビ米との違い
カビ米とは?カビとカビ毒の基本をまず押さえる

カビ米は「カビが生えたお米」、まずは言葉の範囲をそろえる
この記事でいうカビ米は、家庭や保管中のお米にカビが生えてしまったもののことです。玄米でも白米でも、保管中に水分を吸ったり温度が上がったりすると、米粒の表面や袋の内側にカビが育つことがあります。
なぜ言葉の範囲を先にそろえるかというと、カビ米という言葉は、2008年に問題になった事故米穀の報道でも使われたからです。事故米穀は流通や制度の問題で、台所の米びつで起きることとは話の筋が違います。両者を混ぜて考えると、必要以上に怖がったり、逆に自宅のお米のカビを軽く見たりしがちです。
やりがちなのは、ニュースで聞いた話と自宅の米びつの話を同じ箱に入れてしまうこと。事故米穀については後半で改めて整理するので、ここでは家庭のお米に生えたカビに絞って考えてください。
ポイントは、自宅のお米で問題になるのは保存の環境だということです。逆に言えば、温度と水分を管理すればかなりの部分を防げる、という話でもあります。
カビとカビ毒は別物、ここを分けて考えると迷わない
カビ米の判断で一番大事なのは、カビそのものと、カビが作り出すカビ毒を分けて考えることです。農林水産省は、かび毒を、植物病原菌であるかびや貯蔵穀物などを汚染するかびが産生する化学物質で、人や家畜の健康に悪影響を及ぼすもの、と説明しています。
カビは生き物なので、加熱すれば死滅します。ところがカビ毒は生き物ではなく化学物質なので、加熱で菌が死んでも、作られた毒はその場に残ります。農林水産省のかび毒の基礎情報には「かびそのものは加熱などにより死滅しますが、かび毒の中には比較的熱に強く、通常の加工・調理では十分に減少しないものもあります。」とあります。
台所でよくある誤解は、炊飯器で高温にするから菌は全部死ぬ、だから大丈夫、という考え方です。菌が死ぬことと毒が消えることは別の話なんですよ。この順番で考えると、洗えば・炊けばという迷いにも自分で答えが出せます。
カビ毒は100種類以上、日本の気候はカビが育ちやすい
カビ毒は1種類ではありません。農林水産省は、現在100種類以上のかび毒が知られているとしています。代表的なものがアフラトキシン類で、B1、B2、G1、G2、M1、M2といった種類があり、産生するカビの代表はAspergillus flavusやAspergillus parasiticusです。ほかにAspergillus versicolorが作るステリグマトシスチンなども知られています。
そして見逃せないのが日本の気候です。農林水産省の基礎情報では、湿潤かつ温暖な日本の気候はかびの生育に適した環境だと説明されています。つまり、カビ米は特別な失敗をした家庭だけの話ではなく、条件がそろえばどの家でも起こりうるということです。
国もこの点を重く見ていて、農林水産省は2002(平成14)年度から毎年度、国産農産物のかび毒汚染実態調査を行っています。また総アフラトキシンについては、農産物を含む全ての食品に食品衛生法に基づく基準値が設定されています。
家庭でできるのは、毒の種類を見分けることではなく、カビを生やさない環境をつくることです。種類の名前は覚えなくて大丈夫。日本の台所はカビが育ちやすい前提で保存する、とだけ覚えておいてください。
カビ毒(マイコトキシン)=カビが産生する化学物質で、人や家畜の健康に悪影響を及ぼすもの。100種類以上が知られています。
アフラトキシン類=代表的なカビ毒のグループ。B1、B2、G1、G2、M1、M2などがあり、総アフラトキシンには食品衛生法に基づく基準値が設定されています(農林水産省の説明による)。
お米にはどんなカビが付く?政府米の調査でわかったこと
510検体の白米から見つかったカビの顔ぶれ
お米に付くカビの種類は、農林水産省の政府所有米穀のカビ・カビ毒実態調査で具体的に見ることができます。調査対象は国内で保管されていたタイ産・アメリカ産のMA米(白米)で、平成22〜24年度にカビの実態調査を510検体、カビ毒の実態調査を300検体行っています。
結果を見ると、最も多く出たのはAspergillus(コウジカビ属)で510検体中470、次いでEurotium、Penicillium(アオカビ属)と続きます。報告書には「コウジカビ属( Aspergillus)、アオカビ属(Penicillium)及びアカカビ属(Fusarium)のカビが確認されました。」と記されています。
この表から読み取れるのは、お米にはいろいろな種類のカビが同時に付きうるということです。1種類のカビだけを想定して見た目で判断しようとするのは、そもそも無理がある、と考えたほうが自然です。下の表は、報告書の数値を整理し直したものです。
| カビの属 | 510検体中の検出数 | 湿度タイプ |
|---|---|---|
| Aspergillus(コウジカビ属) | 470 | 中湿性 |
| Eurotium | 337 | 好乾性 |
| Penicillium(アオカビ属) | 275 | 中湿性 |
| Cladosporium | 85 | 中湿性 |
| Wallemia | 58 | 好乾性 |
| Mucor | 58 | 好湿性 |
| Rhizopus | 30 | 好湿性 |
| Alternaria | 17 | 好湿性 |
| Fusarium(アカカビ属) | 1 | — |
出典:農林水産省「政府所有米穀のカビ・カビ毒実態調査(平成22〜24年度)」をもとに作成。湿度タイプは報告書の分類による。輸入政府米の調査結果であり、家庭で生えたカビの安全性を示すものではありません。
乾いた環境を好むカビ、湿った環境を好むカビがいる
この調査で面白いのは、カビを湿度の好みで分類している点です。報告書では、Aspergillus・Penicillium・Cladosporiumを中湿性、Eurotium・Wallemiaを好乾性、Alternaria・Mucor・Rhizopusを好湿性としています。
ここから言えるのは、乾いているから絶対にカビない、とは言い切れないということです。比較的乾いた条件でも育つタイプのカビがいる一方で、水分が増えると好湿性のカビが加わってきます。報告書にも「好湿性カビの Alternaria、Mucor、Rhizopus 等も検出され」とあり、保管中にお米の水分が上がる場面があったことをうかがわせます。
台所でありがちなのは、密閉容器に入れたから安心と思い込むこと。容器を閉める前にお米や容器が湿っていれば、その湿気ごと閉じ込めることになります。乾燥・低温・短期間の3つを組み合わせて考えるのが、カビを防ぐ基本の考え方です。
カビ毒は不検出、それでも家庭のカビ米が安心にならない理由
同じ調査では、追加分析したカビ毒(総アフラトキシン、オクラトキシンA、シトリニン、ステリグマトシスチン)はいずれも不検出でした。報告書の表現では「いずれのカビ毒も検出されませんでした。」となっています。
ここで早合点しやすいのが、カビが生えてもカビ毒は出ないなら食べられる、という読み方です。これは違います。この調査は輸入政府米を対象にしたもので、家庭で生えたカビの安全性を示すものではありません。農林水産省の実態調査では、カビは常にカビ毒を作るわけではなく、温湿度の急激な変化など生育条件の変化によってカビ毒を産出することがあるといわれる、と説明されています。
家庭の米びつは、季節や置き場所で温度も湿度も変わります。条件次第で毒を作ることがある以上、目の前のカビがどちらなのかを台所で確かめる方法はありません。調査結果は、国が検査を続けていることの裏づけとして読み、自宅のカビ米を食べてよい根拠にはしない。この線引きを覚えておいてください。
カビ米を洗っても炊いても食べてはいけない3つの理由

理由1:カビ毒は熱に強く、炊飯の加熱では分解しない
一つめの理由は、炊いても毒が消えないことです。米穀機構のお米のFAQ(カビが生えた玄米について)は、研究者の監修のもとで「カビ毒は熱に強く、炊飯程度の加熱では分解しません。」と説明しています。
農林水産省も、かび毒は熱に強いものが多く、ゆでる、焼くなどの通常の調理条件では分解しない、としています。炊飯器の炊飯は、お米に水を吸わせて加熱し、でんぷんを糊化させるための工程です。カビ毒を壊すことを目的とした加熱ではありません。
やりがちなのは、炊き込みご飯やお粥のように長く煮れば大丈夫だろう、と考えることです。調理の時間を延ばしても、通常の調理条件で分解しないという性質は変わりません。むしろ味の濃い料理に混ぜると、異臭に気づきにくくなるぶん判断を誤りやすくなります。カビを疑ったお米は、料理法を変えて使う発想そのものを捨てるのが正解です。
理由2:表面を洗っても削っても、菌糸が奥まで入っている可能性がある
二つめの理由は、カビは表面だけにいるとは限らないことです。米穀機構のFAQには「精米して玄米の表面を削ったとしても、白米部分にまでカビの菌糸が侵入している可能性はあります。」と書かれています(米穀機構FAQ)。
カビは、目に見える点や綿のような部分だけでできているのではなく、根のように伸びる菌糸で広がります。目に見える部分はその一部にすぎず、米粒の内側に入り込んだ菌糸は、研いでも精米しても取りきれない可能性があるということです。
玄米を精米すると表面のぬか層が削られるため、カビも一緒に落ちるのでは、と考える人は少なくありません。精米で削れる範囲と仕組みは別の記事で詳しく解説していますが、カビ対策としては頼れない、というのが一次資料の立場です。

研ぎ水が濁らなくなるまで洗えばよい、という考え方も同じ理由で成り立ちません。洗って落ちるのは表面の汚れやぬかで、内側の菌糸や、すでに作られた毒ではないからです。
理由3:カビ毒が入っているかどうかは見た目でわからない
三つめの理由は、見た目では判断できないことです。農林水産省のかび毒の基礎情報には「食品にかびが生えているかどうかは肉眼で確認できる場合もありますが、かび毒が含まれているかどうかは見た目ではわかりません。」とあります。
つまり、カビの部分だけ取り除いて、残りのきれいに見える粒は大丈夫、という判断には根拠がありません。カビ毒は無色の化学物質なので、色やにおいで存在を確かめることはできないんです。
よくあるのが、袋の一部だけ黒い粒がまとまっているから、その周りをよけて使う、というやり方です。カビが見える部分の周辺にも、目に見えない段階の菌糸や毒が広がっている可能性があります。見えている範囲が全体ではない、という前提で考えてください。
少量でも長く食べ続けることがリスクになる
もう一つ知っておきたいのが、カビ毒の影響の出方です。農林水産省のかび毒の解説ページには「食品を通して体内に取り込むかび毒はごくわずかであっても、長い間、何度もとり続けた場合には、健康に悪影響を及ぼす可能性があることがわかっています。」と書かれています。
ここが、カビ米を少しなら平気だろうと考えてはいけない理由です。お米は毎日のように食べる主食なので、気になるお米を少しずつ消費していくと、結果として何度もとり続けることになりかねません。
同じページで農林水産省は「かびが生えた食品は食べないようにしましょう。」と呼びかけています。お米を無駄にしたくない気持ちは大切ですが、主食だからこそ、疑わしいものは食卓に乗せない判断が合理的です。なお、もしカビを疑うお米を食べてしまい体調に異変を感じた場合は、自己判断せず医療機関に相談してください。
米穀機構のFAQは、カビが生えた玄米について「結論から言うと、食べないほうが賢明です。」と答えています(米穀機構FAQ)。炊いても毒は分解しない、削っても菌糸が残る可能性がある、見た目で毒はわからない。この3点がそろっている以上、洗う・炊く・よけるの工夫では安全側に寄せられません。
袋の一角に黒い粒が固まっているのを見つけ、その部分だけスプーンですくって捨て、残りを普段どおり研いで炊いてしまうケース。原因は、カビは見える部分だけにいて、研げば落ちると考えてしまうことです。実際には菌糸が周囲や米粒の内側に広がっている可能性があり、カビ毒は見た目でも加熱でも判断・除去できません。対策は、カビを見つけた袋や米びつの中身はまとめて処分し、容器を洗って乾かしてから新しいお米を入れることです。
黒い点・綿のような塊・かび臭さ…カビを疑うサインと処分の目安
見た目のサイン:変色した粒、綿のような塊、粒どうしの固まり
カビを疑うきっかけで多いのは見た目の変化です。普段の白米や玄米と違う色の粒が混じっている、表面に綿のようなものが付いている、粒どうしがくっついて塊になっている、といった変化は、保管中に水分が入った可能性を示すサインです。
色については注意が必要です。カビの色は種類によって違い、黒、緑、白などいろいろな見え方をします。横浜市衛生研究所が紹介している事例では、お米に生えた黒い綿状のカビはRhizopus属と推定され、「マイコトキシンは産生しません」と報告されています(横浜市衛生研究所)。
ただしこれは専門機関が調べた個別の事例です。家庭では、目の前のカビが何属なのかを見分けることはできません。黒いから安全、緑だから危険といった色での判断はせず、変色そのものを処分のサインとして扱うのが現実的です。
においのサイン:かび臭さ・すえた臭い・いつもと違う異臭
見た目に変化がなくても、においで気づくことがあります。米びつや袋を開けたときのかび臭さ、湿ったようなにおい、すえたような異臭は、カビや傷みを疑う手がかりです。
判断の軸になるのは、米穀機構のFAQにある「カビに限らず、変色、異臭のある食品は口にしないことが原則です。」という一文です(米穀機構FAQ)。カビかどうかを正確に見極められなくても、変色や異臭があればその時点で食べない、というシンプルな基準で十分なんです。
やりがちなのは、炊いたらにおいが飛ぶかもしれない、と試しに炊いてしまうこと。炊いてにおいが弱まったとしても、カビ毒が熱に強いという性質は変わりません。もう一つの落とし穴は、虫食いやぬかのにおいなど、カビ以外の異変との見分けに時間をかけすぎることです。原因の特定より、変色・異臭があるかどうかで判断するほうが確実です。
処分の目安:迷ったら袋ごと、容器は洗って乾かしてから
処分の範囲は、カビや異臭に気づいた袋・容器の中身全体を目安にすると判断がぶれません。前の章で見たとおり、見えている部分が汚染の全体とは限らないからです。
処分したあとに大事なのが容器の後始末です。米びつや保存容器にカビが残ったまま新しいお米を入れると、そこからまたカビが広がる原因になります。容器は中を空にして洗い、水気が残らないようにしっかり乾かしてから使い直してください。水分はカビの大きな原因なので、濡れたまま戻すのは逆効果です。
また、同じ場所に置いていた別のお米の袋も確認しましょう。置き場所の湿気や温度が原因なら、隣の袋も同じ条件にさらされています。カビを見つけたときは、処分と同時に置き場所を見直すチャンスだと考えてください。
なぜ家のお米にカビが生える?温度と水分が入り込む4つの経路
経路1:温度が高い場所に置いている
カビが育つ条件の一つめは温度です。米穀機構のFAQでは、玄米でも精白米でも、お米はなるべく低温の場所、理想的には15℃以下で保存することが勧められています。
逆に言えば、15℃を超える場所に長く置くほど、カビにとって育ちやすい時間が長くなるということです。台所は調理の熱、コンロ周り、日当たりなどで温度が上がりやすい場所です。コンロの横やオーブンの近く、日が差し込む窓際は、本人が気づかないうちにお米を温めてしまいます。
やりがちなのは、使いやすさ優先で調理台のすぐ横に米びつを置くこと。毎日使う場所ほど温度は上がりやすいので、置き場所は使いやすさより涼しさを優先して選ぶのがコツです。季節によって同じ場所でも温度が変わるので、夏に向けて置き場所を見直す習慣をつけておくと安心です。
経路2:梅雨の湿気でお米自体の水分が上がる
二つめは湿度です。お米は周りの空気の湿気を吸ったり吐いたりする性質があります。米穀機構のFAQには「梅雨時のように、環境湿度が高い季節も、お米の水分が高くなりがち」とあり、こうした季節はなるべく早く使い切るよう勧めています(米穀機構FAQ)。
ポイントは、湿気が入るのは容器の外側だけではないということです。お米の粒そのものの水分が上がると、カビが育ちやすい状態になります。前の章で見たとおり、水分が多いと好湿性のカビまで加わってくるので、湿度の高い季節は保存の条件が一段厳しくなると考えてください。
梅雨入り前に大袋を買い置きすると、湿度の高い時期をまるごとお米と一緒に過ごすことになります。梅雨から夏にかけては、購入量を少なめにして、短い期間で回すのが理にかなっています。
経路3:濡れた手や計量カップでお米を扱う
三つめは、毎日の計量で入り込む水分です。米穀機構のFAQでは、計量時に濡れた手でお米を扱う、洗い水がかかるなどで水分量が増えると、と具体的な場面を挙げたうえで「お米の水分量が増えてしまうと、低温で繁殖するカビが生えやすくなるので注意が必要です。」と説明しています(米穀機構FAQ)。
ここで注目したいのは、低温で繁殖するカビ、という表現です。つまり、涼しい場所に置いていても、水分が入れば安心できないということ。温度管理と水分管理は、片方だけでは足りないんです。
台所でよくあるのは、お米を研いだあと、濡れた手のまま次の分を計る、あるいは濡れた計量カップを米びつに戻すこと。1回ごとの水分はわずかでも、同じ場所に何度も入れば、そこだけ湿った状態が続きます。計量カップは乾いたものを使い、米びつの中に入れっぱなしにしないのが基本です。
経路4:洗い水がかかる場所や、シンクの近くに置いている
四つめは、置き場所そのものが水に近いケースです。洗い水がかかることも、米穀機構のFAQが挙げる水分増加の原因の一つです。シンクのすぐ横や、水はねが届く調理台、配管が通るシンク下などは、水分と湿気が集まりやすい場所です。
シンク下は収納として便利ですが、湿気がこもりやすく、温度も上がりやすい場所です。扉を閉めると空気が動かないため、袋の外側に湿気がたまりやすくなります。
玄米は精米されていないぶん、表面のぬか層を含めて扱い方を意識したいお米です。白米と玄米の違いや、それぞれの保存のコツは別の記事でまとめています。

置き場所を決めるときは、水が飛ばないこと、熱がこもらないこと、空気がよどまないこと、の3点を確認してください。この3点を満たせない場所しかない場合は、次の章で紹介する冷蔵庫での保存も選択肢になります。
梅雨の時期、シンク下の米びつにお米を入れたまま、研いだ直後の濡れた計量カップを米びつの中に戻していたケース。原因は、湿気がこもりやすい置き場所と、毎日の計量で入り込む水分が重なったことです。お米の水分が増えると、低温でも繁殖するカビが生えやすくなるとされています。対策は、置き場所を水と熱から離れた涼しい場所に移すこと、計量カップは乾いたものを使い米びつの外で保管すること、梅雨の時期は購入量を減らして早めに使い切ることです。
カビを寄せつけない保存の基本は「15℃以下」と「1カ月」
温度の目安は15℃以下、まずは置き場所を決める
カビを防ぐ保存の第一歩は、置き場所の温度です。米穀機構のFAQには「玄米、精白米をとわず、お米はなるべく低温の場所(理想的には 15℃」とあり、玄米でも白米でも、理想的には15℃以下が目安とされています(米穀機構FAQ)。
農林水産省も、農産物中のかび毒については生産段階や貯蔵段階での対策が最も有効だという立場です。基礎情報のページには「農産物中のかび毒については、特に生産段階や貯蔵段階において、必要に応じて汚染を防止、低減するための対策を行うことが最も有効です。」とあります(農林水産省)。家庭でいえば、保存の段階で手を打つことが一番効くということです。
冬場は室内の涼しい場所でも条件を満たしやすいですが、夏場は室温が上がるため、常温の置き場所では難しくなります。季節ごとに置き場所の温度を意識し、暑い時期は冷蔵庫のような低温を保ちやすい場所に移すことを考えてください。
保存量は1カ月くらいで食べきる量に絞る
温度と並ぶもう一つの軸が、保存する量です。米穀機構のFAQは「1カ月くらいで食べきる量だけ保存することが勧められます。」としています(米穀機構FAQ)。
保存期間が長いほど、温度や湿度が変わる機会が増え、計量のたびに水分が入るチャンスも増えます。前に見たとおり、カビは温湿度の急な変化などの条件でカビ毒を作ることがあるといわれています。保存期間を短くすることは、こうした変化にさらされる回数そのものを減らすことにつながります。
家族の人数や食べる量によって、1カ月で食べきれる量は違います。大袋のほうが割安に見えても、食べきるまでに季節をまたぐなら、カビのリスクを抱える期間が長くなる点は覚えておいてください。お米の袋のまま保存してよいかや、置き場所・容器の選び方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

米びつの手入れと、古いお米との継ぎ足しに注意
見落としやすいのが、米びつそのものの状態です。新しいお米を買ったとき、米びつの底に残った古いお米の上にそのまま継ぎ足していませんか。底のお米はいつまでも使われずに残り、長期間保存しているのと同じ状態になります。
保存量は1カ月くらいで食べきる量、という目安を守るには、米びつを一度空にしてから新しいお米を入れる流れが必要です。残っているお米は先に使い切り、空になったタイミングで容器を洗って乾かす。この習慣があれば、底に古いお米がたまり続けることを防げます。
容器を洗ったあとは、水気が完全になくなるまで乾かしてから使ってください。せっかく容器をきれいにしても、湿ったままお米を入れると、お米の水分を上げる原因になります。手入れのタイミングを、新しい袋を開けるときと決めておくと続けやすいです。
実は冷蔵庫に入れただけでは安心できない、暮らし方別の使い分け
意外と知られていないけれど、冷蔵庫に入れればカビは生えない、とは言い切れません。米穀機構のFAQが注意しているのは、お米の水分が増えると低温で繁殖するカビが生えやすくなる、という点でした。冷蔵庫は温度の条件を満たしやすい一方で、出し入れのたびに容器の外側に水滴が付いたり、濡れた手で扱ったりすれば、水分が入る経路は残ります。温度だけで安心せず、密閉できる容器に入れる、出したらすぐ戻す、濡れた手で触らない、という水分管理とセットで使うのがコツです。
暮らし方によって、取りやすい対策は変わります。一人暮らしや二人暮らしで炊く量が少ないなら、小さめの袋を選び、冷蔵庫で保存する方法が取り入れやすいでしょう。家族が多く消費が早い家庭なら、涼しい場所に米びつを置き、1カ月で回す運用がしやすいはずです。玄米を食べる家庭は、精米で表面を削ってもカビ対策にならない点を踏まえ、とくに保存期間を短く保つことを意識してください。梅雨から夏にかけては、どの家庭でも購入量を一段減らすのが無理のない対策です。
2008年の事故米穀問題とは?家庭のカビ米との違い
事故米穀の問題は、流通と制度の問題として報じられた
カビ米という言葉を検索すると、2008年の事故米穀の問題が出てくることがあります。これは、家庭のお米にカビが生えた話とは別の問題です。食品衛生法に違反する輸入米などの事故米穀が、本来の食用外の用途から外れて流通した、制度上の問題として報じられました。
この問題を受けて、内閣府には事故米穀の不正規流通問題に関する有識者会議が設けられ、調査報告書(第一次取りまとめ)が出されています。厚生労働省が公開している資料にも「事故米穀の不正規流通問題に関する有識者会議」という名称が記載されています(厚生労働省)。
やりがちなのは、この問題を思い出して、家のお米も同じように危ないのではと不安になることです。ここで扱われたのは流通経路と制度の問題で、台所の米びつの保存とは原因も対策も違います。家庭でできることは、これまで見てきた保存の基本を守ることに尽きます。
問題を受けて、違反米の扱いを関係機関で共有する仕組みが整えられた
制度面では、厚生労働省が平成20年12月15日付で、食安輸発第1215001号の通知を出しています。通知の件名は「食品衛生法違反に該当するミニマムアクセス米及び麦の食用外用途への転用について」です(厚生労働省)。
この通知では、違反通知書を交付する場合に、所轄の地方農政事務所に写しを送付することが示されています。つまり、食品衛生法に違反した輸入米や麦の情報を、食品衛生の担当と農政の担当の間で共有するための手続きです。
ここで押さえておきたいのは、この問題が、ある機関だけで情報が止まってしまうことの危うさから生まれた対応だということです。家庭の保存とは直接関係しない話ですが、カビ米という言葉の背景を理解するうえで、何が問題になったのかを正しく知っておくと、必要以上に不安にならずにすみます。
輸入政府米は、販売前に全量を開けて確認している
現在の政府所有の輸入米については、農林水産省が販売前の検査体制を示しています。前の章で紹介した実態調査の報告書には「販売の直前に全量を解袋し、カビ状異物の有無の確認とカビ毒の検査を行った上で、販売をしています。」と書かれています(農林水産省)。
また、総アフラトキシンには食品衛生法に基づく基準値が設定されており、農林水産省は国産農産物のかび毒汚染実態調査を毎年度続けています。流通の段階では、こうした基準と検査の仕組みが動いています。
一方で、家庭に届いたあとの保存は、それぞれの家に任されています。どれだけ流通の段階で管理されていても、家で湿気や高温にさらせば、お米にカビが生えることはありえます。事故米穀の話は流通側の仕組みとして理解し、家庭では保存という自分の担当範囲をしっかり守る。この役割分担で考えるとすっきりします。
| 項目 | 家庭で生えたカビ米 | 事故米穀(2008年の問題) |
|---|---|---|
| 何のこと | 保存中のお米にカビが生えたもの | 食品衛生法違反の輸入米などが食用外用途から外れて流通した問題 |
| 主な原因 | 高い温度、湿気、計量時の水分、長期保存 | 流通経路と制度の管理 |
| 対応 | 食べずに処分し、保存を見直す | 有識者会議の調査、厚生労働省の通知による情報共有 |
まとめ
まずは今日、米びつの置き場所が水や熱の近くにないか、計量カップが濡れたまま中に入っていないかを確かめてみてください。次にお米を買うときは、1カ月くらいで食べきれる量を選び、米びつを空にして洗い、しっかり乾かしてから入れ替える。この流れを一度つくってしまえば、カビ米に悩む場面はぐっと減らせます。
※各機関の最新の情報は、本文中のリンク先のページでご確認ください。

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