米粉の袋や商品名に、ミズホチカラという品種名が書かれているのを見たことはありませんか。コシヒカリやヒノヒカリのように炊いて食べるお米の名前としてではなく、米粉、とくに米粉パンの話題でよく名前が挙がる品種です。ただ、なぜ品種名がわざわざ米粉の袋に書かれるのか、ほかの米粉と何が違うのか、ホームベーカリーでどう使えばいいのかまでは、意外と説明されていないんですよ。
結論から言うと、ミズホチカラは農研機構が九州で育成した米粉用・飼料米用の多収品種です。製粉したときにデンプンが傷みにくいこと、米粒が軟らかく細かい粉になりやすいことから、米粉パンがよくふくらむ品種と紹介されています。一方でアミロース含有率は22〜24%とされ、農林水産省の米粉の用途別基準でパン用とされる範囲とは数値が重なりません。品種名だけで選ぶのではなく、袋の用途表示まで見るのがコツです。
この記事では、農研機構のリーフレットや農林水産省・九州農政局の資料をもとに、ミズホチカラ米粉の素性、パンがふくらむ理屈、用途別基準の読み方、ホームベーカリーでの配合、ノングルテン米粉との違い、選び方と保存までを順に解説します。
・ミズホチカラがどこで、どんな目的で育成された品種なのか
・米粉パンがふくらみやすい理由(デンプン損傷・米粒の軟らかさ・アミロース)
・米粉の用途別基準3区分と、袋の表示の見方
・ホームベーカリーで焼くときの配合と、ノングルテン米粉との違い
ミズホチカラ米粉とは?九州で生まれた米粉用品種の素性

農研機構の九州研究拠点が育てた、米粉用・飼料米用の多収品種
ミズホチカラは、農研機構 九州沖縄農業研究センターが育成した、米粉用・飼料米用の多収米品種です。暖かい地域に向く晩生の品種と位置づけられていて、ごはんとして炊いて食べる主食用のお米とは、そもそも育てられた目的が違うんですね。
農研機構が2014年3月に作成した品種紹介リーフレットでは、この品種の特徴として、米粉パンのふくらみが抜群であること、新規需要向きの超多収米であること、倒れにくく低コスト生産が可能であることの3点が挙げられています。つまり、加工したときの性質と、田んぼでたくさん穫れる性質の両方を狙って作られた品種ということです。
よくある勘違いが、米粉の袋にミズホチカラと書いてあるのを見て、コシヒカリの米粉のような食べるお米の銘柄違いだと受け取ってしまうことです。食味の評価で選ばれた品種ではないので、炊いたごはんのおいしさの物差しで比べても意味がありません。
見るべきなのは、その粉が何の用途を想定して挽かれているか、という点です。品種名は粉の性質を知る手がかりのひとつ、くらいに考えておくと、あとで説明する用途表示の読み方ともつながってきます。
| 主な産地・育成元 | 農研機構 九州沖縄農業研究センターが育成。熊本県で米粉用として普及し、各地で飼料米用に生産 |
| 粉にしたときの性質 | 製粉時のデンプン損傷が少なく、パンなどの加工適性に優れると紹介。アミロース22〜24%(九州農政局資料) |
| 向いている使い方 | 米粉パン(リーフレットで米粉パンのふくらみが抜群と紹介) |
| 使い方のコツ | 品種名より先に、袋の用途表示(パン用など)とレシピの前提(グルテンの有無)を確認する |
韓国と台湾の品種を親に持つ、穂の大きな系譜
ミズホチカラの親は、韓国の多収インド型品種と台湾の多収日本型品種です。九州農政局の米粉用品種の資料では、この交配の組み合わせと、大きな穂がインディカ品種から取り入れられたことが説明されています。
これがなぜ大事かというと、日本で食べられている主食用のお米の多くは日本型(ジャポニカ)の系統で、粘りやもっちり感を重視して改良されてきたからです。ミズホチカラは、収量を上げるためにインド型の血を入れた品種なので、性質の出発点がそもそも違います。あとで触れるアミロース含有率が、コシヒカリ系の主食用品種と比べて高めの数値になっているのも、こうした系譜と無関係ではないと考えられます。
やりがちなのは、海外の品種の血が入っていると聞いて、日本のお米ではないと誤解することです。育成したのは日本の研究機関で、国内の田んぼで作られている品種です。
品種の系譜を知っておくと、ほかの米粉用品種や炊いて食べる品種と比べるときに、なぜ性質が違うのかを理屈で追えるようになります。主食用の品種の違いや特Aの読み方は、別の記事で整理しています。

熊本では米粉用、各地では飼料米用として作られている
作られている場所と用途について、農研機構のリーフレットは「熊本県で米粉用として普及しているほか各地で飼料米用に生産されています。」と紹介しています。同じリーフレットには、ミズホチカラのパン用米粉が熊本製粉から市販されていることも書かれています。
米粉に品種名が書かれる理由はここにあります。米粉は、どの品種をどう挽いたかで加工のしやすさが変わるため、品種名そのものが粉の性質を伝える情報になるんですね。主食用米の袋に産地と品種が書かれるのと似ていますが、米粉の場合は味よりも、パンや麺にしたときのふるまいを伝える意味合いが強くなります。
背景には米粉需要の伸びもあります。農林水産省の米粉のページの資料では、米粉の需要は平成30年度3.1万トンから令和6年度5.6万トンへと増えたとされ、グルテンフリーなどの食スタイルが注目されて堅調に推移していると説明されています。
注意点として、飼料米用に作られたものと、米粉として製粉・販売されているものは流通が別です。家庭で使うなら、米粉として売られている製品を選び、袋の表示で品種名と用途を確認しましょう。
倒れにくく収量が多い性質が、米粉用米に向く理由
米粉用米に求められるのは、加工しやすさだけではありません。たくさん穫れて、低いコストで作れることも大切です。ミズホチカラは収量が従来品種より2割以上多いとされ、背丈が低く茎が太いため倒伏に大変強く、直まき栽培にも適しているとリーフレットで紹介されています。
倒れにくいことが大事なのは、稲が倒れると収穫作業に手間がかかり、品質も落ちやすいからです。穂の大きい多収品種は実が重くなるぶん倒れやすくなりがちなので、背が低く茎が太い草姿はその弱点を補う性質といえます。直まきに向くのも、苗を育てて植える手間を省けるという意味で、低コスト生産につながります。
一方で、栽培上の注意もはっきり書かれています。ミズホチカラは成分名ベンゾビシクロンを含む水田除草剤で薬害を生じることが確認されていて、そうした除草剤は使えません。また九州農政局の資料では、穂が出る時期はヒノヒカリより1週間ほど遅く、収穫は10月末〜11月上旬とされています。
家庭で米粉を使う側には直接関係しない話に見えますが、作りやすさがあるからこそ米粉用として産地で選ばれている、という背景を知っておくと、品種名つきの米粉の意味が見えてきます。
パンがふくらむ理由は?カギは製粉で傷むデンプンの少なさ
製粉で傷んだデンプンが多いと、生地のふるまいが変わる
ミズホチカラが米粉パン向きとされる一番の理由は、製粉時のデンプン損傷の少なさです。農研機構のリーフレットでは「米粉製粉時のデンプン損傷が少なく、パンなどの加工適性に優れています。」と説明されています。
お米を粉にするときは、粒を砕く力がかかります。このときデンプンの粒そのものが傷つくと、損傷デンプンと呼ばれる状態になります。一般に、損傷デンプンが多い粉は水を吸いやすくなり、生地がべたついたり、発酵や焼成でのふくらみ方に影響したりするとされています。農林水産省の用途別基準で、菓子・料理用、パン用、麺用のいずれもでんぷん損傷度10%未満とされているのも、損傷の少なさが加工のしやすさにつながるからです。
やりがちな誤解は、粉が細かければ細かいほどよい、と考えることです。細かく挽こうと強い力をかければ、そのぶんデンプンが傷みやすくなります。細かさと傷みにくさを両立できるかどうかが、米粉の質を左右するんですね。
袋に損傷デンプンの数値が書かれていることは多くありません。だからこそ、品種名や用途表示、推奨マークといった間接的な情報が選ぶときの手がかりになります。
デンプン損傷(損傷デンプン)=製粉のときにデンプンの粒が傷ついた状態。農林水産省の米粉の用途別基準では、菓子・料理用、パン用、麺用のいずれも、でんぷん損傷度10%未満とされています。
アミロース=お米のデンプンを構成する成分のひとつ。含有率によって粘りや硬さが変わり、米粉では用途を分ける目安に使われています。
米粒が軟らかいから、弱い力で細かい粉になる
デンプンが傷みにくい理由は、米粒そのものの性質にあります。九州農政局の資料では、ミズホチカラと笑みたわわは米粒が軟らかく、弱い力で崩れやすいため、デンプン粒にほぐれて細かい粒になりやすいと説明されています。
理屈としてはこうです。硬い米粒を細かくしようとすると、強い力で何度も砕く必要があり、その過程でデンプン粒が傷つきます。軟らかい米粒なら、弱い力でもデンプン粒の単位でばらけてくれるので、細かい粉なのに傷みが少ない、という状態を作りやすいんですね。同じ製粉方法でも、品種によって仕上がりの粉の質が変わるのはこのためです。
家庭でよくある失敗は、手持ちのミルやフードプロセッサーで炊飯用のお米を挽いて、パン用米粉の代わりにしようとすることです。家庭用の機械では製粉会社の微細製粉と同じ細かさにはなりにくく、品種も違えば、粉の性質はまったく別物になります。米粉パンがうまくふくらまない原因になりやすいので、パンにはパン用として売られている米粉を使うのが近道です。
品種の性質と製粉の技術、その両方がそろって初めてパンに向く粉になる、と覚えておくとよいでしょう。
グルテン無添加の試験でも、きめの細かいパンになった
九州農政局の資料には、グルテンを加えずに米粉パンを作ったときの品種ごとの違いを示した研究データが載っています。そのなかでミズホチカラ(アミロース22.4%)は、よくふくらみ、適度なしっとり感があり、きめが細かいと評価されています。
ここが米粉パンの難しいところで、小麦粉のパンはグルテンが生地の骨組みになってガスを抱え込みますが、米粉にはグルテンがありません。そのため米粉だけのパンは、粉の細かさやデンプンの性質がふくらみを大きく左右します。グルテンという助けがない条件でふくらんだという結果は、粉そのものの力を示すデータとして意味があるんです。
ただし、読み違えやすい点があります。この試験はグルテン無添加の条件で行われたもので、家庭で使うレシピには小麦グルテンを加える配合も多くあります。試験でふくらんだから、どんなレシピでもグルテンなしで同じようにふくらむ、とは言えません。
レシピを選ぶときは、そのレシピがグルテンを加える前提か、加えない前提かを最初に確認しましょう。この点はあとの見出しで詳しく整理します。
アミロース22〜24%は高い?低い?6品種で並べると見える位置

アミロースは、ごはんの粘りと硬さを左右する成分
お米のデンプンは、アミロースとアミロペクチンという2つの成分でできています。一般に、アミロースが少ないほど粘りが強くもちもちした食感になり、多いほど粘りが少なくさっぱり、硬めの食感になる傾向があるとされています。もち米のように粘りの強いお米はアミロースがほとんどなく、粘りの少ない品種ほどアミロースが多い、という関係です。
ミズホチカラのアミロース含有率は、九州農政局の資料で22〜24%とされています。この数値は、米粉の世界では大事な意味を持ちます。小麦粉はたんぱく質の量で強力粉・薄力粉などに分けられますが、米粉はアミロース含有率によって加工の向き不向きが分かれるとされているからです。
やりがちなのは、炊いたごはんの感覚で、粘りの強いお米の粉ほどもっちりしたパンになると考えることです。九州農政局の資料の研究データでは、アミロースが少なすぎる品種はパンがふくらまない、型崩れするといった結果になっていて、ごはんの感覚とは逆向きになる場面があります。
米粉を選ぶときは、アミロースの数値が袋に書かれていなくても、品種名や用途表示から、粘り寄りの粉かさっぱり寄りの粉かを想像できるようにしておくと便利です。
グルテンなしで比べた研究データを、表で見てみる
九州農政局の米粉用品種の資料に掲載された研究データ(グルテン無添加の米粉パン試験)から、品種ごとのアミロース含有率とパンの状態を、お米の教科書で表に整理しました。
| 品種 | アミロース含有率 | グルテン無添加でのパンの状態 |
|---|---|---|
| ぴかまる | 10.0% | ふくらまない |
| ヒノヒカリ | 16.1% | もちもち食感だが気泡が粗く、型崩れ |
| 日本晴 | 18.1% | 形と味のバランス |
| ミズホチカラ | 22.4% | よくふくらむ・適度なしっとり感・きめが細かい |
| 笑みたわわ | 22.6% | よくふくらむ |
| ふくのこ | 28.3% | パサパサ |
並べてみると、アミロースが低い側ではふくらまない・型崩れする、高すぎる側ではパサパサになる、という両端の傾向が見えます。ミズホチカラはその中間よりやや高い位置で、よくふくらむ結果になっています。この表はあくまでグルテン無添加という一つの条件での結果で、製粉方法やレシピが変われば仕上がりも変わる点には注意してください。
実はパン用基準の数値とは重ならない
意外と知られていないけれど、ミズホチカラのアミロース含有率22〜24%は、農林水産省の米粉の用途別基準でパン用とされる15%以上20%未満の範囲には入りません。数値だけを当てはめると、20%以上の麺用の範囲に近い位置です。
それなのにパン向きと紹介されるのはなぜか。ここまで見てきたとおり、パンのふくらみはアミロースだけで決まるわけではなく、米粒の軟らかさ、細かい粒になりやすいこと、損傷デンプンの少なさといった複数の性質が重なって決まるからです。用途別基準はアミロースの範囲で目安を示したものですが、品種ごとの個性まですべてを言い表すものではない、と読むのが自然でしょう。
やりがちな失敗は、ここから逆に、アミロースが基準の範囲外だからミズホチカラはパンに向かない、あるいは用途別基準は当てにならない、と極端に結論づけることです。どちらも行き過ぎです。
実際の買い物では、品種名と基準の数値を突き合わせるより、その製品自体がパン用として表示されているかを確認するのが確実です。用途別基準は製品ごとに適合を見る仕組みなので、袋の表示がいちばん信頼できる情報になります。
笑みたわわとミズホチカラ、似た数値の2品種
表のなかで、ミズホチカラとよく似た結果になっているのが笑みたわわです。アミロース含有率は22.6%とほぼ同じ水準で、グルテン無添加の試験でもよくふくらむと評価されています。九州農政局の資料では、この2品種がどちらも米粒が軟らかいグループとして紹介されています。
似た結果になる理由は、アミロースの数値が近いことに加えて、米粒の軟らかさという性質を共有しているからです。弱い力でデンプン粒にほぐれやすいので、細かく傷みの少ない粉になりやすい、という同じ理屈が当てはまります。
ここで注意したいのは、似た性質だからといって、レシピの水分量などをそのまま入れ替えて同じ仕上がりになるとは限らないことです。製粉する会社や製粉の方法が違えば、粒の細かさや吸水のしかたも変わります。品種名は同じでも、製品ごとに焼き上がりに差が出ることがある、と考えておきましょう。
米粉パン用の品種名を見かけたら、ミズホチカラと同じ系統の性質を持つ品種かどうかを判断する材料として、アミロースと米粒の硬さの2点を思い出すと整理しやすくなります。
袋のどこを見る?米粉の用途別基準3区分の読み方
菓子・料理用/パン用/麺用、違うのはアミロースの範囲
米粉の袋に書かれている用途表示の土台になっているのが、農林水産省が2017年3月29日に公表した米粉の用途別基準です。中身について農林水産省は「菓子・料理用、パン用、麺用があり、でんぷん損傷度はいずれも10%未満ですが、アミロース含量がそれぞれ20%未満、15%以上20%未満、20%以上と異なっています。」と説明しています。
| 項目 | 菓子・料理用 | パン用 | 麺用 |
|---|---|---|---|
| アミロース含有率 | 20%未満 | 15%以上20%未満 | 20%以上 |
| でんぷん損傷度 | 10%未満 | 10%未満 | 10%未満 |
| ミズホチカラとの関係 | 数値は範囲外 | 数値は範囲外だが、パン向き品種と紹介 | アミロースの数値は範囲内 |
表で見ると、3区分ともでんぷん損傷度は共通で、違いはアミロースの範囲だけだとわかります。つまり、傷みの少ない粉であることは前提で、そのうえでアミロースによって向く用途を振り分けている、という考え方です。ミズホチカラの位置づけは前の見出しで触れたとおり、数値上は麺用の範囲にありながら、パン向きの品種として紹介されている少し特殊な存在です。
小麦粉はたんぱく質、米粉はアミロースで分ける理由
小麦粉の強力粉・中力粉・薄力粉は、たんぱく質の量で区分されています。たんぱく質が水と合わさってグルテンになり、その量が生地の弾力やふくらみを決めるからです。一方、米粉にはグルテンができないため、同じ物差しが使えません。そこで米粉では、デンプンの性質を左右するアミロース含有率で加工適性を分けている、というのが農林水産省の資料で示されている考え方です。
これを知っておくと、米粉を小麦粉の代わりに使うときの戸惑いが減ります。たとえば小麦粉のレシピで強力粉を使っているから米粉も強いものを、と考えても、米粉には強い・弱いという区分がありません。見るべきは、パン用・菓子料理用・麺用という用途の区分です。
よくある失敗は、米粉ならどれも同じと考えて、手元にある米粉で何でも作ろうとすることです。粉の性質によって、パンがふくらまなかったり、麺がまとまらなかったりします。
米粉のレシピを見るときは、材料欄に用途の指定(パン用米粉など)があるかを確認し、あればそれに合わせるのが失敗を減らす基本です。
原因は、粉の用途がレシピの前提と合っていないことです。用途別基準ではパン用と菓子・料理用でアミロースの範囲が違い、粉の細かさや製粉の方法も用途に合わせて調整されています。対策は、パンのレシピにはパン用と表示された米粉を使うこと。家にある米粉で代用する場合は、ふくらみ方が変わる前提で、まずは少量で試しましょう。
推奨マークと用途表示で、目的に合う粉かを確かめる
用途別基準は、作って終わりの数値ではなく、実際の製品選びにつながる仕組みがあります。農林水産省の用途別基準のページでは、日本米粉協会が、高品質な米粉の推奨に向けて、用途別基準に適合する製品に推奨マークを付与する仕組みを開始したと紹介されています。
つまり、袋に推奨マークと用途の番号・名前が入っていれば、その製品は用途別基準に照らして確認された粉だと判断できます。品種名だけでは、その粉がどの用途向けに挽かれたかまではわかりませんが、用途表示があれば迷わずに済みます。
やりがちなのは、品種名がパン向きで有名だから、表示を見ずにどの製品も同じだと思って買うことです。同じ品種でも、製品によってはパン用以外の用途で売られていることも考えられますし、ミックス粉として他の材料が加えられている場合もあります。
買うときは、品種名、用途表示、原材料欄の3か所を見る習慣をつけましょう。原材料欄に米粉以外の材料が入っていないかを確認するのは、次のグルテンの話にも関わってきます。米粉のお菓子での粉選びについては、こちらの記事でも解説しています。

ホームベーカリーで焼くなら?農研機構レシピの配合と手順

材料はパン用微細製粉の米粉200gに小麦グルテン50g
ミズホチカラ系の米粉でパンを焼くときの手がかりとして、農研機構のリーフレットにはホームベーカリーで作る米粉パンのレシピが載っています。材料は、パン用微細製粉の米粉200g、小麦グルテン50g、砂糖15g、塩4g、スキムミルク10g、ドライイースト4g、水200ml、無塩バター30gとショートニング20gです。油脂はバター30gのみでもよいとされています。
この配合でまず押さえたいのは、米粉と小麦グルテンをあらかじめ混ぜておくことです。米粉にはグルテンがないので、小麦グルテンを加えて生地の骨組みを補い、ふくらみを支える設計になっています。農林水産省の米粉の特性に関するページでも、米粉パンではグルテンを15〜20%添加することが可能と説明されています。
やりがちな失敗は、グルテンを米粉と別々に入れて、混ざりきらないまま捏ね始めることです。グルテンが一部に固まると、生地の骨組みが均一にできません。
材料をそろえるときは、米粉がパン用の微細製粉であること、グルテンを別に用意する配合であることを確認しましょう。リーフレットでは、グルテンがあらかじめ混ざったグルテンミックス米粉でも代用できるとされています。
早焼き食パンコースのある機種を使う
このレシピは、ホームベーカリーの早焼き食パンコースで焼く前提になっています。リーフレットには「※パナソニック製等「早焼きコース」のある機種を使用して下さい。」という注記があります。
ホームベーカリーのコースは、捏ね・発酵・焼成の時間や温度の組み合わせが機種とコースごとに決まっています。レシピの配合は、その組み合わせで焼いたときにちょうどよくなるよう調整されているので、別のコースで焼くと、発酵が進みすぎたり足りなかったりして、ふくらみ方が変わる可能性があります。リーフレットにはコースを指定する理由までは書かれていませんが、配合とコースはセットで考えるのが基本です。
よくある失敗は、手持ちの機種に早焼きコースがないのに、通常の食パンコースでそのまま焼いてしまうことです。機種によっては米粉パン専用のコースがある場合もあるので、取扱説明書で米粉パンの扱いを確認しましょう。
コースの名前や内容はメーカーにより異なります。自分の機種の取扱説明書に米粉パンのレシピが載っていれば、そちらの配合と手順を優先するのが確実です。
油脂は捏ね始めから5分後に加える
レシピの手順で特徴的なのが、油脂を最初から入れず、捏ね工程開始から5分後に投入する点です。
パン作りでは一般に、油脂を最初から入れると粉と水がなじむ前に油が粉の粒をおおってしまい、グルテンの骨組みができにくくなるとされています。先に粉と水、グルテンをなじませて生地のつながりを作ってから油脂を入れることで、ふくらみを妨げにくくする、という考え方です。このレシピでも、最初に米粉とグルテンをなじませ、そのあとで油脂を加える順番が指定されています。
やりがちな失敗は、自動投入の機能や手間を省くために、油脂を最初に全部入れてしまうことです。機種によっては、捏ねの途中で材料を入れる合図が鳴るものもあるので、その機能を使えるか確認しましょう。合図がない機種では、捏ね始めの時刻を見ておき、5分たったら手で加えます。
バターは冷えて固いままだと生地になじみにくいので、小さく切って、扱いやすい状態にしておくと入れやすくなります。ショートニングを用意しない場合は、リーフレットのとおりバター30gのみで作れます。
同じ配合でも焼き上がりに差が出るのはなぜか
レシピどおりに作っても、焼き上がりが毎回同じになるとは限りません。リーフレットにも「※米粉の特性等により焼き上がりに差があります。」と注記されています。
差が出る理由のひとつは、米粉そのものの違いです。品種が同じでも、製粉の方法や粒の細かさ、粉の水分量は製品ごとに異なり、生地が水を吸う量も変わります。前の見出しで見たとおり、損傷デンプンの量は吸水やふくらみ方に影響するとされているので、製品が変われば同じ水の量でも生地の状態が変わりえます。
原因は、製品ごとに粉の細かさや吸水のしかたが違うことです。レシピの配合は特定の粉で調整されていることが多く、別の製品に替えると生地の硬さやふくらみが変わります。対策は、粉の袋にレシピが載っていればそれを優先すること。替えた直後は配合を記録しておき、焼き上がりを見て少しずつ調整しましょう。
もうひとつは、機種やコース、室温などの条件です。同じ早焼きコースでもメーカーにより工程は異なります。焼き上がりに差が出たら、まず粉と機種・コースがレシピの前提と合っているかを確認するのが近道です。
グルテンは入れる?入れない?ノングルテン米粉との違いを整理
農研機構レシピのパンには、小麦が入っている
前の見出しで紹介した農研機構のレシピは、米粉200gに小麦グルテン50gを加える配合です。つまり、このパンは米粉パンではあっても、小麦由来の原料を含むパンです。ここは見落としやすいので、はっきり押さえておきましょう。
米粉パンという言葉から、小麦をまったく使っていないパンを想像する人は少なくありません。でも実際には、ふくらみやすさを優先して小麦グルテンを加えるレシピや、グルテン入りのミックス粉を使う製品も多くあります。農林水産省のページでも、米粉パンではグルテンを添加する方法が説明されています。
やりがちな失敗は、米粉を使ったパンだから小麦は入っていないと思い込み、家族や来客に出してしまうことです。小麦を避けたい事情がある人にとっては、思わぬトラブルにつながりかねません。
手作りでも市販品でも、米粉パンを人に出すときは、グルテンを加えたかどうか、原材料に小麦が含まれているかを確認して伝えるようにしましょう。市販のミックス粉は、原材料欄を見ればグルテンの有無がわかります。
ノングルテン米粉のJASは、1ppm以下を管理する規格
米粉には、グルテンを含まないことを確認する仕組みもあります。ノングルテン米粉の製造工程管理JAS(JAS0014)について、農林水産省は「製品のグルテン含有量が1ppm以下となるように製造工程を管理する規格」と説明しています。認証は日本農林規格認証アライアンス(JASCERT)が行い、令和3年6月に始まりました。また、ノングルテン米粉製品の第三者認証制度は日本米粉協会が管理運営しています。
なぜこうした規格が必要かというと、米そのものにはグルテンがなくても、製粉や包装の工場で小麦を扱っていれば混入する可能性があるからです。規格は、原料だけでなく製造工程まで管理することで、グルテンの混入を抑えることを目的にしています。
やりがちな誤解は、米粉ならどれもノングルテンだと考えることです。規格や認証は、それに沿って管理・確認された製品につくものなので、すべての米粉が対象になっているわけではありません。
グルテンを含まないことを重視する場合は、袋に認証の表示があるかを確認しましょう。表示がない製品については、製造元の情報で確認するのが確実です。
ミズホチカラ米粉が、ノングルテン認証品とは限らない
ここまでの話をまとめると、ミズホチカラという品種名と、ノングルテンという表示は、まったく別の軸の情報です。品種名は原料のお米が何かを示し、ノングルテンの認証は製造工程でグルテンの混入を管理しているかを示します。品種名がついているからといって、認証の有無はわかりません。
逆に、ノングルテンの認証がある米粉でも、品種が何かは製品によって違います。パンのふくらみを重視するなら品種や用途表示を、グルテンを避けることを重視するなら認証表示を、というように、目的に応じて見る場所を変えるのが合理的です。
やりがちなのは、米粉ならアレルギーの人でも安心、グルテンフリーだから体にいい、と受け取ってしまうことです。米粉かどうかと、特定の原材料を含まないかどうか、体に合うかどうかは別の話で、表示を確認しないまま判断するのは避けましょう。
食物アレルギーや食事制限がある場合、どの製品を選ぶか、体調にどう影響するかについては、医師・管理栄養士に相談してください。ここで紹介した規格や品種の情報は、表示を読むための手がかりとして使ってもらえればと思います。
何に使う?目的別の選び方と、買ったあとの保存
食パンを焼きたい人は、パン用表示の製品から
ホームベーカリーで食パンを焼くのが目的なら、パン用と表示された米粉から選ぶのが基本です。ミズホチカラは米粉パン向きの品種として紹介されていますが、それはパン用に適した製粉をしたうえでの話です。袋にパン用、またはパン用の推奨マークの表示があるかを確認しましょう。
理由は、ここまで見てきたとおり、パンのふくらみは品種の性質と製粉の質の両方で決まるからです。農研機構のリーフレットでも、ミズホチカラのパン用米粉が市販されていることが紹介されていて、レシピの材料もパン用微細製粉の米粉と指定されています。品種だけでなく、パン用に挽かれていることが前提なんですね。
よくある失敗は、パン用の米粉を買ったのに、グルテンの有無を確認せずにレシピを選ぶことです。グルテン入りのミックス粉に、さらにグルテンを加える配合のレシピを合わせると、配合が想定とずれてしまいます。
買ったら、まず袋の裏の原材料欄とレシピを確認し、グルテンが入っている粉か、自分で加える粉かを把握してから焼き始めましょう。
お菓子や料理にも使いたい人は、用途表示を優先する
パンだけでなく、お菓子や料理にも米粉を使いたい人は、品種名よりも用途表示を優先して選ぶのがおすすめです。用途別基準では、菓子・料理用とパン用でアミロースの範囲が違い、粉の性質も用途ごとに調整されています。
パン用の粉でお菓子が作れないわけではありませんが、焼き菓子やケーキのレシピは菓子・料理用の米粉を前提にしていることが多く、粉を替えると生地の状態やふくらみ方が変わる可能性があります。とろみづけや揚げ物の衣のような料理の使い方でも、レシピがどの粉を前提にしているかを確認しておくと安心です。
やりがちなのは、パン用に買った米粉が余ったので、そのままケーキに使って食感が想像と違った、というケースです。粉が違えば仕上がりも違うのは自然なことなので、失敗というより前提の違いと考えましょう。
家にある粉で作るなら、まず少量で試し、記録を残しておくと次に活かせます。米粉でケーキを作るときの粉選びは、こちらの記事でも詳しく解説しています。

食パンを焼く人は、パン用表示と、グルテンが入っているかどうかを確認。お菓子や料理にも使いたい人は、菓子・料理用の表示を優先。小麦を避けたい人は、品種名ではなく原材料欄とノングルテンの認証表示を確認。目的ごとに、袋の見る場所を変えるのがコツです。
品種名で選ぶより、用途表示と配合の前提をそろえる
ミズホチカラという品種名は、米粉パン向きの粉を探すときの頼れる手がかりです。ただ、品種名だけで仕上がりが決まるわけではありません。用途表示、グルテンの有無、レシピの前提の3つがそろって、初めて狙った仕上がりに近づきます。
理由は単純で、同じ品種でも製粉の方法や製品の形(米粉だけか、ミックス粉か)が違えば、粉のふるまいが変わるからです。前の見出しで紹介したリーフレットの注記どおり、米粉の特性によって焼き上がりには差が出ます。品種名は粉の素性を知るための情報、用途表示と原材料は使い方を決めるための情報、と役割を分けて考えると整理しやすくなります。
やりがちなのは、評判のよい品種名を選べば、どんなレシピでもうまくいくと期待してしまうことです。品種名がパン向きでも、レシピがお菓子用の粉を前提にしていれば、仕上がりはずれます。
選ぶ順番の目安は、目的(パン・お菓子・料理)を決める、用途表示を確認する、原材料とグルテンの有無を確認する、そのうえで品種名を参考にする、という流れです。この順番なら、品種名に振り回されずに済みます。
開封後は湿気とにおいを避けて、袋の表示に従う
米粉を買ったあとの保存は、まず袋に書かれた保存方法と賞味期限に従うのが基本です。保存の条件は製品によって表示が違うので、一般的な目安より袋の表示を優先しましょう。
そのうえで気をつけたいのが、湿気とにおいです。米粉は細かい粉なので、空気に触れる面積が大きく、湿気を吸ったり、周りのにおいを移されたりしやすい状態にあります。湿気を吸うと粉が固まったり、計量したときの重さと実際の粉の量がずれたりして、パンの配合にも影響しかねません。
やりがちな失敗は、開封した袋の口を軽く折っただけで、コンロの近くやシンクの下に置いておくことです。温度や湿度が上がりやすい場所は、粉の状態が変わる原因になります。においの強い食品の近くも避けたほうが無難です。
開封後は袋の口をしっかり閉じるか、密閉できる容器に移して、湿気の少ない涼しい場所に置きましょう。賞味期限が近いものから使えるよう、購入日や開封日を書いておくと管理しやすくなります。
まとめ
次に米粉を買うときは、袋の裏で品種名、用途表示、原材料欄の3か所を見比べてみてください。その3つがわかれば、レシピとの組み合わせで迷うことはぐっと減ります。
※品種・基準・製品の情報は記事作成時点の公表資料にもとづいています。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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