お米の売り場で「つきあかり」という名前を見かけて、コシヒカリやあきたこまちと何が違うのか、家で炊いてもおいしいのかと気になった方も多いのではないでしょうか。聞き慣れない名前だと、どんな食感なのか、どんな料理に向くのか見当がつきにくいものです。
先に結論をお伝えすると、つきあかりは農研機構が育成した早生で多収のうるち米で、コシヒカリより2週間ほど早く実ります。育成時の試験では、冷めたご飯でも長く保温したご飯でも味が落ちにくいと報告されていて、おにぎりやお弁当、作り置きのごはんと相性のよい品種です。アミロース含有率は白米で16〜17%とあきたこまちとほぼ同じで、粘りは強くやや硬めと評価されています。
この記事では、農研機構の育成報告と農林水産省の公表資料をもとに、つきあかりの生まれた経緯、名前の由来、他の品種との違い、作付が広がった地域、栽培上の特徴が袋選びにどうつながるか、そして家庭でおいしく炊くコツまでを、理屈から順にお話しします。
・つきあかりが誰に、どんな目的で育成された品種なのか
・コシヒカリ・あきたこまちとの熟期・アミロース・粒の大きさの違い
・冷めても保温しても味が落ちにくいとされる根拠と、向いている料理
・新潟県上越地方から島根県まで広がった作付の歩みと、袋の表示の見方
つきあかり米とは?コシヒカリより2週間早く実る農研機構育成の早生品種

育てたのは農研機構、新潟県上越市の北陸研究拠点で生まれた品種
つきあかりは、国の研究機関である農研機構(中央農業総合研究センター北陸研究センター)が育成したうるち米です。育成地は新潟県上越市にある北陸研究拠点で、どこかの産地団体やメーカーが独自に作った銘柄ではなく、公的な研究機関の品種開発から生まれたお米だと押さえておくと、位置づけがわかりやすくなります。
なぜここが大事かというと、品種の性質を確かめるときに、まず育成元の報告書を見れば一次情報にたどり着けるからです。つきあかりの場合、農研機構の育成報告に交配の組み合わせから食味試験、栽培上の注意点までがまとめて公表されています。
やりがちなのが、新潟県で作付が多いと聞いて「新潟県のブランド米」と思い込んでしまうことです。実際には育成地が新潟県上越市というだけで、後で触れるように島根県など他の地域でも採用されています。名前を見て産地を決めつけず、袋の原料玄米の欄で産地を確かめるのがコツです。
2005年度から2015年度まで続いた育成の道のり
つきあかりの育成は2005年度に始まり、2015年度に完了しました。その後、2016年4月に品種登録が出願され、2016年7月に出願公表されています。育成途中の系統名は北陸255号で、2013年から試験用として各地に配付されました。
お米の新品種は、交配してすぐに完成するものではありません。交配でできた種を何世代も育てて性質を固定し、収量・食味・病気への強さなどを毎年確認して、有望な系統だけを残していきます。系統名で各地に配付されるのは、育成地以外の気候でも育つか、狙いどおりの品質が出るかを確かめる段階です。
新しい品種名を見ると「最近できたばかりで、まだ評価が定まっていない」と感じる方もいるかもしれません。ただ、つきあかりは配付から各地の試験を経て普及した品種で、育成報告には府県の奨励品種決定調査の結果も載っています。気になる方は、品種名で育成報告を探して試験結果に目を通してみると、性質を自分で確かめられます。
目標は極良食味と多収の両立、業務用でも家庭でも使いやすい理由
農研機構の育成報告で、つきあかりの育成目標は極良食味品種の開発とされています。報告のタイトルにも「早生で多収の極良食味水稲品種」とあり、おいしさと収量の両方を狙った品種です。
この二つを両立させる意味は、お米を使う側の事情にあります。報告では、おにぎりや弁当では冷めてもおいしい米、店内で炊いて温かいご飯を出す業態では保温後に味が落ちにくい米が求められていると説明されています。業務用の需要が伸びる中で、量がとれて、しかも時間がたってもおいしい米が必要とされていたわけです。
「業務用向け」と聞くと家庭には関係ないと思われがちですが、冷めても保温しても味が落ちにくい性質は、朝に炊いてお弁当に詰める、夕食まで保温しておく、といった家庭の使い方にもそのまま当てはまります。家族の食事時間がばらばらで保温が長くなりがちなご家庭こそ、性質を知っておく価値がある品種です。
| 主な産地・育成元 | 育成は農研機構(育成地は新潟県上越市の北陸研究拠点)。新潟県上越地方、島根県などで作付 |
| 食感・味の傾向 | 外観・うま味に優れると報告。粘りは強くやや硬い。特有の香りはなくコシヒカリと差がない |
| 向いている料理・食べ方 | 白飯・炊き込みご飯・酢飯・おにぎりの調理適性評価がいずれも総合評価A |
| 炊き方のコツ | まずは内釜の目盛りどおりに炊き、好みに合わせて次回から微調整する |
名前の由来と親の品種は?宮崎の香り米かばしこを母に選んだわけ
ご飯のつやが月あかりのように輝くことから付いた名前
つきあかりという名前は、炊き上がったご飯のつやが良く、月あかりのように輝くことから名付けられたと、農研機構の育成報告に記されています。見た目のつやを名前にしたところに、この品種の持ち味が表れています。
ご飯のつやは、炊き上がりの表面の状態で決まります。粒の表面が適度な粘りで覆われ、粒が崩れずにふっくら立っていると、光を反射してつやが出やすくなります。育成時の官能試験でも、つきあかりは外観の評価が高かったと報告されていて、名前の由来は試験結果とも一致しています。
台所でありがちなのは、つやの少なさを品種のせいだと思ってしまうことです。つやは研ぎすぎて粒が割れたり、炊き上がり後に蒸らしが足りなかったり、ほぐさずに放置して表面が乾いたりしても落ちます。つきあかりのつやを楽しむなら、炊き上がったら早めにしゃもじで底から返し、余分な蒸気を逃がしてあげるのがコツです。
母本かばしこは、コシヒカリの系譜とは別の食味遺伝資源
つきあかりの母方には、宮崎県の在来品種かばしこが使われています。かばしこは香り米で、2004年に行われた日本の在来品種の食味評価では、コシヒカリより劣るものの、試験に使われた品種の中では最も良い結果でした。そこで、コシヒカリの系譜とは異なる食味の遺伝資源として選ばれたと報告されています。
なぜわざわざ別の系譜を使うのかというと、いま国内で作られている良食味品種の多くはコシヒカリの血を引いていて、性質が似通いやすいからです。同じ系譜の中だけで交配を重ねると、新しい特徴を加える余地が狭くなります。在来品種を親に入れるのは、おいしさの方向性に新しい要素を持ち込むための工夫です。
「おいしい米同士をかけ合わせれば、もっとおいしい米ができる」と考えがちですが、育種はそれほど単純ではありません。在来品種は収量や倒れにくさに課題があることも多く、何世代もかけて弱点を補う必要があります。つきあかりの育成に10年度分の時間がかかった背景には、こうした地道な選抜があります。
実は香り米が親なのに、つきあかりには特有の香りがない
意外と知られていないのですが、母方のかばしこは香り米なのに、つきあかりには特有の香りはなく、香りの点ではコシヒカリと差がないと報告されています。親の性質がそのまま子に出るわけではない、という好例です。
香り米の独特の香りは、特定の遺伝的な性質によって生まれるとされています。交配と選抜の過程でどの性質を残すかは育成者が選べるため、食味の良さにかかわる部分は受け継ぎつつ、香りは一般的なうるち米と同じ方向に整えられたと考えられます。
この点を知らずに「香り米の子どもなら、炊いたときに独特の香りがするのでは」と心配して手に取らない方もいるかもしれません。普段のご飯として食べる分には、香りの面で特別な扱いは要らない品種です。逆に、香り米ならではの香りを楽しみたい方には向かないので、目的に合わせて選び分けてください。
父方の北陸200号・北陸208号が運んだ大粒と長い穂
つきあかりは、かばしこを母、北陸200号を父とした組み合わせから得た種を母にして、さらに北陸208号を父として交配した三系交配で生まれました。父方の系統には、みずほの輝きに由来する大粒で穂が長い性質が含まれていると報告されています。
三系交配は、二つの品種だけでは集めきれない性質を、三つ目の親を加えることでまとめる方法です。かばしこから食味の要素を、北陸系の系統から大粒・多収につながる要素を取り込むことで、おいしさと収量の両立を目指したと読み取れます。
大粒という性質は、食卓にも影響します。粒が大きいと一粒ごとの存在感が出やすく、おにぎりにしたときにも食べ応えを感じやすくなります。一方で、後の章で触れるように大粒ゆえの栽培上の注意点もあります。性質には裏表があると知っておくと、袋の表示を見るときの目が変わります。
三系交配=二つの品種をかけ合わせてできた種に、さらに三つ目の品種をかけ合わせる交配方法。三つの親の性質を組み合わせられる。
系統名=品種名が付く前の育成途中の呼び名。つきあかりは北陸255号の名前で試験用に配付された。
在来品種=各地で古くから作られてきた品種。かばしこは宮崎県の在来品種とされている。
コシヒカリ・あきたこまちと何が違う?熟期・アミロース・粒の大きさで比べる

熟期はコシヒカリより2週間ほど早く、あきたこまちよりわずかに遅い
つきあかりの出穂期・成熟期は、コシヒカリより2週間ほど早く、あきたこまちよりわずかに遅いと、農研機構の研究報告ページで紹介されています。育成地では早生に分類される品種です。
熟期の違いは、作る側にとって大きな意味があります。同じ農家が熟期の違う品種を組み合わせて作ると、田植えや稲刈りの時期をずらせて、作業が一度に集中しません。コシヒカリより先に収穫できる品種は、作業の分散に役立つため、産地で早生品種が求められてきました。
食べる側から見ると、早生品種は新米として出回る時期が早めになる傾向があります。ただし、店頭に並ぶ時期は産地や流通によって変わるので、「早生だからいつ頃に出る」と決めつけるのは避けたほうが無難です。新米を選ぶときは、袋の産年表示と精米年月日を確かめるのが確実です。
アミロースは16〜17%、あきたこまちとほぼ同じ数字が意味するもの
つきあかりのアミロース含有率は、白米で16〜17%と報告されています。コシヒカリより3%ほど低く、あきたこまちとほぼ同じ値です。
お米のでんぷんは、アミロースとアミロペクチンという二種類でできています。一般にアミロースが少ないほど炊いたご飯の粘りが強く、やわらかくなる傾向があるとされています。ただ、食感はアミロースだけで決まるわけではなく、タンパク質の量や粒の大きさ、炊き方なども関わります。実際、育成報告では玄米のタンパク質含有率が高くなると食味が低下する傾向があると書かれています。
よくある誤解が、数字ひとつで食感を断定してしまうことです。アミロースがあきたこまちと同程度でも、日本穀物検定協会の官能試験では「粘りは強くやや硬い」と評価されています。数字は目安として使い、最後は自分の舌と炊き方で好みに寄せていく、という付き合い方がちょうどいいと思います。
千粒重が2g程度重い大粒、粒の大きさは食べ心地にどう効くか
つきあかりはあきたこまちより多収で、千粒重は2g程度重いと報告されています。府県の奨励品種決定調査では、対照品種に比べて4%多収で、千粒重は23.5g対22.1gでした。
千粒重とは玄米1,000粒の重さのことで、粒の大きさを比べる物差しです。重いほど粒が大きいと考えてかまいません。粒が大きいと、収量が増えやすいだけでなく、炊いたときに一粒ごとの存在感が出やすくなります。おにぎりや丼のように、ご飯そのものを味わう料理で粒の大きさを感じやすいでしょう。
一方で、大粒の品種は栽培の管理によっては品質のばらつきが出やすい面もあります。つきあかりの場合は、腹白や胴割れへの注意が育成報告に書かれています。このあたりは章を改めて詳しく説明しますので、粒の大きさは「食べ応え」と「品質管理の難しさ」の両面を持つ性質だと覚えておいてください。
粘りは強くやや硬い、という評価の読み方
日本穀物検定協会が2014年度に行った官能試験では、つきあかりは炊飯直後も4時間保温後もコシヒカリより総合評価が高く、粘りは強くやや硬いと評価されました。育成地の試験でも、外観とうま味に優れ、総合評価はあきたこまちより明らかに優り、コシヒカリより有意に優ると報告されています。
粘りが強いのにやや硬い、という組み合わせは一見矛盾するようですが、粒の表面には粘りがあり、中は芯までしっかりしている、という状態をイメージすると理解しやすくなります。べちゃっと崩れるやわらかさではなく、粒感を保ちながらまとまる食感です。
ただし、こうした試験結果はあくまで育成時の条件で比べたものです。編集部として優劣の順位をつけるつもりはありませんし、好みは人それぞれです。食味ランキングでの評価年ごとの格付けは、今回の調査では確認できなかったため、この記事では扱いません。気になる方は日本穀物検定協会が公表する最新年版で、産地と品種の組み合わせごとに確認してください。
| 項目 | つきあかり | コシヒカリ | あきたこまち |
|---|---|---|---|
| 熟期 | 育成地では早生 | つきあかりより2週間ほど遅い | つきあかりよりわずかに早い |
| アミロース(白米) | 16〜17% | つきあかりより3%ほど高い | つきあかりとほぼ同じ |
| 香り | 特有の香りはない | つきあかりと差はない | — |
| 粒の大きさ・収量 | 大粒で多収 | — | つきあかりより千粒重が2g程度軽い |
| 冷めたご飯(室温2時間) | 総合評価はコシヒカリと同等 | つきあかりと同等 | — |
| 草丈・倒れにくさ | 稈長はあきたこまちより約10cm短く、倒伏に強い | — | つきあかりより倒伏に弱い |
※「—」は今回参照した育成報告で比較の記載がない項目。数値は育成時の試験条件によるもの
コシヒカリ以外の品種の選び方や、品種ごとの違いの見方は、こちらの記事でも整理しています。

冷めても保温しても味が落ちにくいのはなぜ?おにぎり・お弁当で選ばれる理由
室温で2時間置いた冷やご飯でも、コシヒカリと同等の評価
育成地で行われた試験では、炊いたご飯を室温で2時間置いた冷飯の総合評価が、コシヒカリと同等だったと農研機構の育成報告に記されています。炊きたてだけでなく、冷めた状態でも評価された点がつきあかりの特徴です。
ご飯が冷めるとおいしさが落ちるのは、炊いてやわらかくなったでんぷんが、温度が下がるにつれて再び硬い状態に戻っていくためだとされています。この変化が進むと、粒がぼそぼそして甘みも感じにくくなります。冷めても評価が落ちにくい品種は、おにぎりやお弁当のように、時間がたってから食べる場面で力を発揮します。
ただし、冷めてもおいしい品種だからといって、どんな状態でも同じとは限りません。炊き上がりを放置して表面が乾いたご飯は、品種に関係なく食感が落ちます。お弁当に詰めるなら、炊き上がったらほぐして粗熱を取り、乾かないようにふたをしてから持ち運ぶのが基本です。衛生面の扱いは、季節に応じて保冷剤を使うなど一般的な注意を守ってください。
4時間保温しても外観・香り・味で上回った日本穀物検定協会の試験
日本穀物検定協会が2014年度に行った官能試験では、つきあかりは炊飯直後だけでなく、4時間保温した後もコシヒカリより総合評価が高く、保温後は外観・香り・味の評価でコシヒカリに優ったと報告されています。
保温中のご飯は、温かいまま水分が少しずつ抜けたり、釜の中で黄ばみやにおいが出たりして、時間とともに味が落ちていきます。業務用の店内炊飯では、炊いたご飯を一定時間保温しながら出すため、保温後の劣化が少ない品種が求められてきました。つきあかりはその要望に応えた品種のひとつです。
家庭でありがちなのは、「保温に強い品種だから」と、翌日まで保温しっぱなしにしてしまうことです。試験で確かめられているのは4時間保温後の評価までで、それより長い保温での味の保証はありません。食べきれない分は、炊きたてのうちに小分けして冷凍するほうが、品種の持ち味を生かせます。保温時間の目安は、お使いの炊飯器の取扱説明書を確認してください。
白飯・炊き込みご飯・酢飯・おにぎり、すべてで総合評価A
炊飯の専門機関による調理適性評価では、白飯・炊き込みご飯・酢飯・おにぎりのいずれも総合評価がAだったと報告されています。白米については、腹白があるためA’という評価でした。
一つの品種が複数の料理で同じ評価を得るのは、使い勝手の面で大きな強みです。炊き込みご飯は具や調味料の水分が加わる、酢飯は合わせ酢を吸わせて冷ます、おにぎりは握ってから時間がたつ、と料理ごとにご飯に求められる性質が違います。粘りがありつつ粒がしっかりしたつきあかりは、どの使い方でも崩れにくい性質だと読み取れます。
一方で、白米の評価がA’になっているのは見逃せない点です。腹白は粒の見た目に関わる性質で、炊いたご飯の味とは別の評価軸ですが、精米の見た目を気にする方は知っておくとよいでしょう。腹白については、栽培特性の章で詳しく説明します。
業務用で求められる冷めと保温への強さに応えた育種の狙い
つきあかりの育成の背景には、業務用米の需要の伸びがあります。農林水産省が公表している普及事例の資料でも、導入の背景として中食・外食向けの業務用米の需要の伸びと、多収品種による生産コストの低減が挙げられています。
業務用で使われるお米は、コンビニのおにぎりやお弁当、外食店のご飯のように、炊いてから食べるまでに時間がかかる場面が中心です。だからこそ、冷めても保温しても味が落ちにくい性質と、安定して量がとれる性質が同時に求められます。つきあかりはその両方を育種の目標に据えた品種です。
家庭の台所に置き換えると、共働きで夕食の時間がそろわない、部活のお弁当を毎朝作る、週末に作り置きのおにぎりを用意する、といった生活には、業務用と似た条件がそろっています。銘柄を選ぶときに「炊きたてがおいしいか」だけでなく「時間がたってもおいしいか」という視点を加えると、選択肢が広がります。
同じように冷めてもおいしいと紹介される早生の品種については、こちらで詳しく取り上げています。

どこで作られている?新潟県上越地方から島根県まで広がった作付の歩み
上越市・妙高市で2017年約100ha、2018年約800haへ
育成地のある新潟県上越地方では、上越市と妙高市の2市合計で、つきあかりが2017年に約100ha、2018年に約800ha作付けされたと農研機構の育成報告に記されています。品種登録の出願から間もない時期に、作付が急速に広がったことがわかります。
短い期間で作付が伸びた理由として、育成地の近くで試験を重ねてきたため地域の気候に合うことが確かめられていた点、早生で作業を分散できる点、業務用の需要に応えられる点が考えられます。品種の普及は、農家にとっての作りやすさと、買い手にとっての使いやすさが両方そろって初めて進みます。
ここで注意したいのは、作付面積の数字は年によって大きく変わるということです。2018年の数字を見て「いまも同じ規模」と考えるのは早計です。作付面積や順位は、必ず何年のデータなのかを確かめてから読むようにしてください。この記事でも、数字には年を添えています。
新潟県は2018年産から産地品種銘柄(選択銘柄)に設定
新潟県では、つきあかりが2018年に種子対策品種とされ、2018年産から産地品種銘柄(選択銘柄)に設定されました。育成報告では、2018年11月30日現在の農産物検査数量7029トンから、作付面積は1000ha以上と推定されています。
産地品種銘柄とは、農産物検査で産地と品種の組み合わせを証明できる銘柄のことです。これに設定されると、検査を受けたお米について、袋に産地と品種を表示して流通させやすくなります。種子対策品種とされたのも、安定して種もみを供給する体制づくりの一環と読み取れます。
買う側として覚えておきたいのは、袋に品種名が書かれているからといって、どの産地でも同じ性質になるわけではない点です。同じ品種でも、気候や土、栽培の管理によって食味や見た目に差が出ることがあります。気に入った袋があれば、品種名だけでなく産地もメモしておくと、次に同じものを選びやすくなります。
島根県はハナエチゼンの代わりに令和4年2月に採用
島根県では、早生品種ハナエチゼンの代替として、つきあかりが令和4年2月に島根県農産物種子等生産品種に採用されました。農林水産省の普及事例資料によると、作付面積は令和4年35ha、令和5年96haに拡大し、令和6年は約200haとなり、令和6年にはハナエチゼンからの完全転換が進められました。
島根県の比較試験では、令和元〜5年の平均で、つきあかりはハナエチゼンより成熟期が4日遅く、収量は674kg/10aで13%多収だったと報告されています。同じ早生の枠の中で、収量を上げつつ品種を切り替えたことがわかります。
この事例から読み取れるのは、つきあかりが育成地の北陸だけでなく、西日本の産地でも早生品種の受け皿として使われているということです。店頭で島根県産のつきあかりを見かけることもあるかもしれません。産地が違えば育つ環境も違うので、気になる方は産地違いで袋を見比べてみるのも、品種を知る手がかりになります。
適地は東北中南部・北陸・関東以西、あきたこまちが作れる地域
育成報告では、つきあかりの適地を、早晩性の特徴から判断して、東北中南部、北陸および関東以西の、あきたこまちの栽培が可能な地域としています。熟期があきたこまちに近いため、同じ物差しで栽培できる地域が示されているわけです。
お米の品種は、穂が出る時期と実る時期が気候に合っていないと、うまく育ちません。早すぎれば暑い時期に実って品質が落ちやすく、遅すぎれば寒くなって実りきらないおそれがあります。熟期が近い品種を基準にすることで、どの地域で作れるかの目安を立てやすくなります。
「適地が広い」と聞くと、全国どこでも同じように作られていると受け取りがちですが、実際の作付はそれぞれの県や地域の判断で決まります。新潟県や島根県のように制度上の位置づけを決めて導入した地域もあれば、試験段階の地域もあるはずです。どこで作られているかを知りたいときは、各県の公表資料を確かめてください。
作付面積は年によって変わります。新潟県上越地方は2018年約800ha、島根県は令和6年約200haというように、数字は必ず年とセットで読みましょう。産地が違えば育つ環境も違うため、袋を選ぶときは品種名と一緒に産地も確かめるのが基本です。
腹白・胴割れって何?栽培の弱点から知る、袋を選ぶときの見どころ
腹白が出やすい品種、白く濁る部分の正体
つきあかりは腹白が出やすい品種で、育成報告では過剰な穂肥や早期の落水を避けるよう注意点として挙げられています。腹白とは、精米した粒の腹側に白く濁った部分が出る状態のことです。
白く濁って見えるのは、粒の中にでんぷんがすき間なく詰まりきらず、光が乱反射するためとされています。実る時期の天候や水・肥料の管理によって、でんぷんの詰まり方に差が出ると考えられています。調理適性評価で白米がA’とされたのも、この見た目の点が理由でした。
精米の袋を開けて白く濁った粒が混じっていると、古いお米や品質の悪いお米と思ってしまう方もいるかもしれません。腹白はあくまで見た目の性質で、炊いたご飯の味とは別の評価軸です。つきあかりの場合は品種としてこうした傾向があると知っておけば、袋を開けたときに慌てずに済みます。
大粒ゆえに、刈り遅れると胴割れしやすい
育成報告では、つきあかりは大粒のため、刈り遅れると胴割れを招きやすいと注意点が書かれています。胴割れとは、米粒の内部に亀裂が入る状態のことです。
粒の内部に亀裂が入るのは、実った後に乾燥と吸湿をくり返したり、急に乾かしたりして、粒の外側と内側で水分の差が生じるためとされています。粒が大きいほど内外の差が出やすく、収穫の時期や乾燥の方法に気を配る必要があります。
胴割れした粒は、精米のときに割れて砕け米になりやすく、炊いたときに割れた部分からでんぷんが溶け出して、ご飯がべたつく原因になることがあります。家庭でできる対策としては、研ぐときに力を入れすぎないことです。粒を強くこすり合わせると、割れやすい粒をさらに傷めてしまいます。研ぎ方は、水を加えたら軽くかき混ぜる程度にとどめるのが基本です。
いもち病・縞葉枯病・倒伏、育てる側の事情が食卓に関係する理由
つきあかりはいもち病の真性抵抗性遺伝子Pii・Pikを持つと推定され、葉いもち・穂いもちへの圃場での抵抗性は中とされています。縞葉枯病には罹病性で、常発地では防除を徹底するよう注意書きがあり、白葉枯病にはやや弱いとされています。一方で、稈長があきたこまちより約10cm短く、倒伏にはあきたこまちより強いと報告されています。
こうした栽培上の性質は、一見食べる側には関係ないように思えます。しかし、病気や倒伏は収量だけでなく、お米の品質にも影響します。稲が倒れると穂が地面に近づいて湿気を帯び、品質が落ちやすくなるとされています。倒れにくさは、安定した品質のお米を届けるための土台です。
また、湛水直播は可能なものの、適性があるとは言えないとも書かれています。作る側にとっての得手不得手がはっきり示されているのは、公的機関が育成した品種ならではです。こうした情報を知っておくと、産地ごとの品質の差や年ごとの出来の違いにも、理由があると想像しやすくなります。
袋の表示は原料玄米の欄と精米年月日を見る
精米の袋には、名称や原料玄米、内容量、精米年月日などが表示されています。つきあかりを選ぶときは、原料玄米の欄で産地と品種、産年を確かめ、精米年月日で精米からどのくらいたっているかを確かめるのが基本です。
精米年月日が大事なのは、お米は精米した時点から少しずつ風味が落ちていくためです。玄米の状態ではぬか層に守られていますが、精米で表面がむき出しになると、空気や湿気の影響を受けやすくなります。品種の性質がどんなに良くても、精米から時間がたったお米ではその持ち味を感じにくくなります。
やりがちなのが、品種名だけを見て袋を選び、精米年月日を確かめないことです。保温や冷めへの強さを期待してつきあかりを選んでも、精米から日数がたったものでは、炊き上がりのつやや香りが物足りなく感じるかもしれません。買うときは精米年月日を必ず見て、食べきれる量を選ぶようにしましょう。
原因は、品種の評判を信じて袋の表示を確かめないこと。精米から時間がたつと、品種に関係なく風味やつやが落ちやすくなります。対策は、原料玄米の欄で産地・品種・産年を、精米年月日で精米からの日数を確かめ、食べきれる量を買うこと。保存は高温多湿を避け、密閉できる容器に移すのが基本です。
買ったお米の保存場所や容器の選び方は、こちらの記事が参考になります。

つきあかり米をおいしく炊くコツと、向いている料理・食べ方
水加減はまず目盛りどおり、粘りが強くやや硬い性質から考える
つきあかりを初めて炊くときは、炊飯器の内釜の目盛りどおりの水加減から始めるのが基本です。そのうえで、炊き上がりの硬さを確かめ、次回から好みに合わせて調整します。
目盛りから始める理由は、つきあかりが「粘りは強くやや硬い」と評価されているからです。粘りが強い品種だからと水を減らすと、もともとやや硬めの粒がさらに硬くなりかねません。逆に、硬めを嫌って最初から水を大きく増やすと、粘りの強さと重なってべたつきやすくなります。基準を一度決めてから動かすほうが、自分の好みに早くたどり着けます。
新米の時期は水分を多く含んでいるため、同じ目盛りでもやわらかく炊き上がることがあります。調整するときは、一度にたくさん変えず、少しずつ変えて炊き上がりを比べるのがコツです。水加減の細かい目安は、お使いの炊飯器の取扱説明書に案内がある場合はそれに従ってください。メーカーによって案内が異なるため、ほかの機種の目安をそのまま当てはめないようにしましょう。
浸水と研ぎ方は、取扱説明書の案内に合わせる
浸水の時間や研ぎ方も、炊飯器メーカーの取扱説明書の案内に合わせるのが確実です。炊飯器によっては、炊飯コースの中に浸水の工程が組み込まれているものもあります。
浸水が大事なのは、お米の芯まで水を吸わせておかないと、加熱したときに外側だけがやわらかくなり、中に芯が残りやすいからです。つきあかりは大粒なので、粒の中心まで水が届くのに時間がかかることも考えられます。鍋で炊く場合など浸水の工程がない炊き方では、浸水を省かないようにしましょう。
研ぎ方は、前の章でも触れたように力を入れすぎないことが大切です。最初の水はお米がぬかのにおいを吸わないよう手早く捨て、あとは軽くかき混ぜて水を替える程度で十分とされています。無洗米のつきあかりを使う場合は研ぐ必要はありませんが、水加減は無洗米用の目盛りや取扱説明書の案内に合わせてください。
おにぎり・お弁当・作り置きに向く理由
つきあかりは、おにぎりの調理適性評価で総合評価Aとされ、室温で2時間置いた冷飯でもコシヒカリと同等の評価でした。冷めてから食べる料理と相性のよい品種です。
おにぎりに向くのは、粘りが強いのに粒がしっかりしているという食感の組み合わせのおかげです。粘りがあると握ったときにまとまりやすく、粒がしっかりしていると時間がたっても潰れにくく、ふんわりした口当たりを保ちやすくなります。大粒で一粒ごとの存在感があることも、具の少ない塩むすびのようなシンプルな食べ方で生きてきます。
作り置きでやりがちなのが、炊きたての熱いご飯をそのまま密閉容器に詰めてしまうことです。こもった蒸気が水滴になってご飯に戻り、べたつきや傷みの原因になります。おにぎりやお弁当にするときは、粗熱を取ってから包む、詰めるのが基本です。冷凍する場合も、粗熱を取ってから小分けにしてラップで包むと、温め直したときの食感が戻りやすくなります。
シンプルな塩おにぎりの握り方や塩加減の理屈は、こちらで詳しく解説しています。

炊き込みご飯・酢飯にも、暮らし方別の使い分け
調理適性評価では、炊き込みご飯と酢飯も総合評価Aでした。つきあかりは白いご飯だけでなく、味をつけるご飯にも向く品種です。
炊き込みご飯は、しょうゆなどの調味料や具の水分が加わるため、粒が崩れやすく、べたつきやすい料理です。粒がしっかりしたつきあかりは、具と調味料を加えても粒感が残りやすいと考えられます。酢飯も、合わせ酢を吸わせながら混ぜる工程で粒が潰れると口当たりが重くなるので、粒の強さが生きます。いずれも、水加減はレシピや炊飯器の炊き込みコースの案内に合わせてください。
暮らし方別に使い分けるなら、毎朝お弁当を作る方は冷めてもおいしい性質を生かしてお弁当用に、家族の帰宅時間がばらばらな方は保温後の評価の高さを生かして夕食用に、週末にまとめて炊く方は冷凍の作り置き用に、という選び方が考えられます。やわらかく粘りの強いご飯が好みの方は、水加減を少しずつ増やして調整するとよいでしょう。
原因は、つきあかりの「粘りは強くやや硬い」という性質を、水不足と勘違いすること。一気に水を増やすと、粘りの強さと重なってべたつきやすくなります。対策は、まず目盛りどおりに炊いて基準をつくり、次回から少しずつ水を増やして比べること。新米の時期は水分が多いので、増やしすぎに注意しましょう。
まとめ
つきあかりは、業務用の需要に応えるために、おいしさと収量の両立を狙って生まれた品種です。名前のとおりご飯のつやが良く、冷めても保温しても味が落ちにくいという性質は、お弁当や作り置き、食事の時間がそろわないご家庭の毎日にもそのまま役立ちます。最初の一歩として、次にお米を買うときは袋の原料玄米の欄と精米年月日を確かめてつきあかりを選び、目盛りどおりに炊いて塩むすびにしてみてください。炊きたてと、少し冷めたあとの食感を食べ比べると、この品種の持ち味が自分の舌でつかめるはずです。
※作付面積や品種の位置づけは年によって変わるため、最新の情報は農研機構・農林水産省・各県の公表資料でご確認ください。

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