小麦粉の代わりに米粉でカステラを焼いてみたいけれど、ふくらむのか、パサパサにならないか、どの米粉を買えばいいのか。米粉売り場の前で迷う方は多いと思います。米粉の袋を見ても、製菓用・パン用・上新粉と並んでいて、どれが正解なのか分かりにくいんですよね。
先に結論をお伝えすると、カステラは米粉と相性のよいお菓子です。カステラは卵を泡立てた空気で膨らませるお菓子なので、小麦粉のグルテンに頼る部分が小さく、米粉に置き換えても形になりやすいんです。ポイントは、製菓用として売られている粒の細かい米粉を選ぶことと、卵をしっかり泡立てること。この2つで仕上がりの大半が決まります。
この記事では、農林水産省の「米粉の用途別基準」や米粉の特徴の解説、自治体の給食レシピ、製粉メーカー公式のレシピをもとに、粉の選び方から基本の配合、焼き方、うまくいかないときの原因、小麦粉レシピからの置き換え、ノングルテン表示の見方まで、理屈から順にお話しします。
・カステラに向く米粉の選び方(用途別基準の1番・粒の細かさ・でんぷん損傷度)
・公式レシピ3つの配合の違いと、自分に合う作り方の選び方
・膨らまない・焼き縮み・パサつきが起きる理由と防ぎ方
・小麦粉レシピからの置き換え方と、ノングルテン表示の正しい読み方
米粉でカステラはふくらむ?小麦粉なしでも形になる理由

カステラは卵の泡で膨らむお菓子だから、グルテンがなくても立ち上がる
結論からいうと、米粉でもカステラはきちんと膨らみます。理由は膨らむ仕組みにあります。カステラの生地を持ち上げているのは、泡立てた卵の中に抱き込まれた細かい空気です。オーブンの熱でその空気が膨らみ、卵のたんぱく質が熱で固まることで、ふんわりした骨格ができあがります。
一方、パンは小麦粉に含まれるグルテンの網目が発酵のガスを閉じ込めて膨らみます。農林水産省の米粉の特徴を説明したページでも、「米にはグルテンがないため米粉パンを作ると、膨らみにくくつぶれやすくなります」と書かれています(農林水産省「米の特徴」)。これはパンの話で、卵の泡で膨らませるカステラとは仕組みが違うんですね。
やりがちなのは、パンの説明を読んで「米粉は膨らまない粉だ」と思い込み、ベーキングパウダーを増やしたり、グルテンを足したりしてしまうこと。カステラで膨らみが足りないとき、原因の多くは粉ではなく泡立て不足にあります。
米粉でカステラを作るときは、粉そのものに膨らむ力を期待するのではなく、卵の泡をどう守るかに意識を向けるのがコツです。粉は泡を支える役目、膨らむのは卵の仕事、と覚えておくと迷いません。
農林水産省もケーキ類は「遜色なくできる」と紹介している
米粉でお菓子を作ることは、特別な裏技ではありません。農林水産省のページでは、「小麦粉で作るたこ焼き、お好み焼、天ぷら、ケーキ類、クッキー類などは、米粉を原料としてもまったく遜色なくできます」と紹介されています(農林水産省「米の特徴」米粉の用途)。カステラはスポンジケーキの仲間なので、この「ケーキ類」に入るお菓子と考えてよいでしょう。
根拠として大事なのは、ケーキ類は小麦粉の中でもグルテンの少ない薄力粉で作るお菓子だという点です。もともとグルテンをあまり働かせたくないお菓子なので、グルテンを含まない米粉との相性がよいわけです。
具体的な場面でいうと、薄力粉のカステラをよく焼く方ほど、米粉に替えたときの違和感は小さいはずです。逆に、もっちり重めの焼き菓子を想像して米粉を使うと、思ったより軽い食感に驚くかもしれません。米粉=もちもち、というイメージは、白玉粉や上新粉のお団子から来ていることが多いんです。
注意したいのは、同じページで粒の細かさにも触れている点です。どの米粉でも同じように仕上がるわけではないので、粉選びは次の見出しでじっくりお話しします。
小麦粉のカステラと比べると、しっとり感の出方が違う
米粉で焼いたカステラは、小麦粉のものと比べて、しっとり感の出方に違いが出る傾向があります。これは米粉に含まれるでんぷんの状態によるものです。
農林水産省の解説では、でんぷん損傷度(製粉のときにでんぷん粒が傷ついた割合)が高いと、スポンジケーキではしっとり感が増すと説明されています。また、アミロース含有率が低い米粉はしっとり感が出て、高い米粉はさらっとした食感で型崩れしにくいとされています。つまり、どの米粉を使うかで、しっとり寄りにもさらっと寄りにもなるんです。
やりがちな失敗は、焼き上がった直後に切って食べて「パサパサしている」と判断してしまうこと。共立食品の公式レシピでは、焼いてから2~3日で水分が出てしっとりすると案内されています。焼きたての食感だけで米粉を見限るのはもったいないんですよ。
しっとりさせたい方は、焼いたあとにラップで包んで寝かせる時間まで含めて「カステラ作り」と考えるのがおすすめです。粉の性質と寝かせ方、この両方で食感が決まります。
長崎風・台湾カステラ・カップカステラは作り方が別物
ひと口に米粉カステラといっても、検索すると出てくるレシピは大きく3種類に分かれます。長方形の型で焼く長崎風のもの、メレンゲで膨らませて湯煎焼きする台湾カステラ、そしてカップで焼く小さなカステラです。
違いは膨らませ方にあります。長崎風は卵を全卵のまま泡立てる方法、台湾カステラは卵白だけを泡立ててメレンゲにする方法、カップカステラはベーキングパウダーの力を借りる方法が中心です。膨らませ方が違えば、粉の混ぜ方も焼く温度も変わってきます。
よくあるのは、台湾カステラのレシピの温度で長崎風の生地を焼いてしまうなど、別のレシピの数字を組み合わせて失敗するケース。それぞれの配合は焼き方とセットで成り立っているので、数字だけを借りてくると崩れやすいんです。
まずは作りたいカステラがどのタイプかを決め、そのタイプのレシピを最初から最後まで通して使いましょう。
共立て(ともだて)=卵を卵白と卵黄に分けず、全卵のまま砂糖と一緒に泡立てる方法。長崎風のカステラで使われます。
別立て(べつだて)=卵白と卵黄を分け、卵白だけを泡立ててメレンゲにしてから卵黄の生地と合わせる方法。台湾カステラやシフォンケーキで使われます。
湯煎焼き=天板にお湯を張り、蒸気と湯の熱でじんわり火を通す焼き方です。
どの米粉を買えばいい?カステラに向く粉を見分ける3つの物差し
まずは用途別基準の「1番 菓子・料理用」を目安に選ぶ
米粉選びで最初に見たいのは、袋に表示された用途です。農林水産省は平成29年3月29日に「米粉の用途別基準」を公表し、「米粉の主な用途について、菓子・料理用、パン用及び麺用に分類する。」としています(農林水産省「米粉の用途別基準」PDF)。1番が菓子・料理用、2番がパン用、3番が麺用です。
なぜ用途で分けるかというと、米粉は粒の大きさやでんぷんの状態によって、向くお菓子や料理が違うからです。基準表にカステラの名前そのものは出てきませんが、1番の菓子・料理用の用途例にはスポンジケーキが挙げられています。カステラはスポンジケーキ系のお菓子なので、1番を選ぶのが目安になります。
やりがちなのは、パン用の米粉を家にあるからとそのままカステラに使ってしまうこと。パン用は膨らみを出すための調整がされている製品もあり、お菓子用とは性格が違う場合があります。
なお、この基準は米粉製造業者の自主的な取り組みを促すためのもので、すべての米粉に番号が書かれているわけではありません。番号表示がない場合は、「製菓用」「お菓子用」と書かれた製品を選べば方向は外れません。
| 項目 | ソフトタイプ | ミドルタイプ |
|---|---|---|
| アミロース含有率 | 15%未満 | 15%以上20%未満 |
| 基準に挙げられた用途の例 | 柔らかいスポンジケーキ(例:シフォンケーキ)、クッキー | スポンジケーキ、クッキー、天ぷら粉、お好み焼き粉、唐揚げ粉、惣菜類(とろみ付け等) |
| 粒度(全用途共通) | 粒径75μm以下の比率が50%以上 | |
| 澱粉損傷度(全用途共通) | 10%未満 | |
| 水分含有率 | 10%以上15%未満 | |
出典:農林水産省「米粉の用途別基準」をもとにお米の教科書編集部が整理。1番全体のアミロース含有率は20%未満。
粒が細かい米粉ほど、口当たりがなめらかになる
2つ目の物差しは粒の細かさです。用途別基準では、どの用途でも粒径75μm以下の粒が50%以上という条件が共通しています。そして農林水産省の米粉の用途を説明したページでは、洋菓子について「粉の粒度は微細粒粉が良い」とされ、粗いと舌触りが悪くなめらかさがないと説明されています(農林水産省「米の特徴」米粉の用途)。
理由はシンプルで、カステラはきめの細かさを楽しむお菓子だからです。粗い粒が混じると、焼き上がりの断面にざらつきが出て、口に入れたときに粉っぽさとして感じやすくなります。
やりがちなのは、和菓子用の粉や粒の粗い製品を使って、なめらかさが出ないと悩むケース。粉の問題なのに、泡立てや焼き方を何度も見直してしまうんです。
袋の表示で「微粒」「超微粒」「製菓用」といった言葉があれば、粒の細かさを意識した製品と判断しやすくなります。たとえば共立食品の『米の粉』の商品ページには、「国産のお米を使用した米粉。超微粒の米粉はダマになりにくく、お菓子やお料理などに幅広く使えます。」と説明されています(共立食品「米の粉」)。

でんぷん損傷度とアミロースで、しっとり寄りかさらっと寄りかが決まる
3つ目の物差しは、でんぷんの状態です。袋に数値が書かれていることは少ないものの、仕組みを知っておくと仕上がりの違いを理解しやすくなります。
農林水産省のページでは、「でんぷん損傷度が大きいと粉に対する吸水量も多くなります」と説明されています(農林水産省「米の特徴」)。傷ついたでんぷんは水を抱え込みやすいので、同じ水分量でも生地がかたく感じられることがあるんです。また、損傷度が高いとスポンジケーキではしっとり感が増す一方、パンでは損傷度が低いほうが膨らみが大きくなるとされています。
アミロースも同じように食感に関わります。アミロース含有率が高い米粉はさらっとした食感で型崩れしにくく、低い米粉はしっとり感が出る傾向があります。用途別基準で1番がアミロース20%未満とされ、さらにソフトタイプとミドルタイプに分かれているのはこのためです。
実際の買い物では、数値を見比べるより「製菓用」と表示された製品を選び、同じ製品を使い続けるのが近道です。製品を替えると、ここで説明した性質が変わり、同じレシピでも生地の状態が変わることがあります。
上新粉・白玉粉はカステラの代わりにならない
家にある上新粉や白玉粉で代用できないか、と考える方もいると思います。結論としては、カステラには製菓用の米粉を選んだほうが無難です。
理由は、粉の作られ方と用途が違うからです。農林水産省東海農政局の米粉の種類のページでは、上新粉はうるち米が原料でだんご・柏餅・草餅・ういろうなどに、白玉粉はもち米を水挽製法で加工して白玉だんご・求肥・大福餅などに使われると紹介されています(農林水産省東海農政局「米粉の種類」)。もち米が原料の白玉粉は、焼くと粘りが強く出やすく、ふんわりしたカステラの食感とは方向が違います。
また、用途別基準の資料には、「上新粉など、既存用途向けの米穀粉は対象としない。」と明記されています(農林水産省「米粉の用途別基準」PDF)。上新粉は和菓子向けの伝統的な粉として、パンや洋菓子向けの米粉とは別枠で扱われているわけです。
やりがちな失敗は、上新粉で焼いてざらつきや重さが出てしまうこと。和菓子には和菓子の粉、カステラには製菓用の米粉、と使い分けるのがいちばん確実です。
カステラ米粉の基本配合は?公式レシピ3つを並べて見える違い

自治体の給食レシピは、バター入りでカップに分けて焼く
いちばん手軽なのが、栃木県さくら市の学校給食レシピとして公開されている米粉カステラです。米粉72g、砂糖大さじ5、全卵108g(2個)、無塩バター45g、牛乳大さじ1、ベーキングパウダー小さじ1で、カップ4個・4人分の配合になっています(さくら市 学校給食レシピ「米粉カステラ」PDF)。焼き方はオーブン170℃で20~25分です。
この配合の特徴は、砂糖とバターを混ぜてから卵と牛乳を加え、最後にふるった米粉とベーキングパウダーをさっくり混ぜる、という手順です。卵の泡に頼りきらず、ベーキングパウダーの力で膨らませるので、泡立てに慣れていない方でも形になりやすい作り方です。
注意したいのは、これはカップで焼く小さなカステラで、長方形の型で焼く長崎風のカステラとは別物だという点。分量を倍にして大きな型で焼くと、中心まで火が通る時間が変わり、生焼けや焦げの原因になります。
カップの大きさで火の通りが変わるので、焼き時間の幅の中で竹串を刺して生地がついてこないか確認しましょう。レシピには米粉の代わりに小麦粉でもよいと書かれており、粉を替えても成り立つ配合であることがわかります。
製粉メーカーの長崎風は、はちみつとみりんでしっとり仕上げる
長方形のカステラを焼きたいなら、共立食品の公式レシピ『米粉のカステラ』が参考になります。卵4個、砂糖50g、はちみつ40g、米粉80g、ベーキングパウダー小さじ1、みりん大さじ1を、20cm×20cm×8cmの型で焼く配合です(共立食品「米粉のカステラ」)。
焼き方は180℃で6分焼いてから170℃に下げて35分、所要時間は約60分と案内されています。小麦粉と乳製品を使わない配合で、バターや牛乳のかわりに、はちみつとみりんが水分としっとり感を担っています。
はちみつは水分を抱え込みやすい甘味料なので、焼き上がったあとも生地が乾きにくくなります。公式レシピで焼いて2~3日で水分が出てしっとりすると書かれているのも、この配合の性格によるところが大きいと考えられます。
やりがちなのは、はちみつを砂糖に置き換えてしまうこと。甘さは似ていても、水分を抱える力が違うので、しっとり感が落ちやすくなります。最初はレシピどおりの材料でそろえるのがおすすめです。
台湾カステラは卵を分けてメレンゲで膨らませる
ふるふるとした食感の台湾カステラを米粉で作るなら、波里の公式レシピ『米粉の台湾カステラ』があります。『お米の粉 手作りお菓子の薄力粉』70g、卵4個、油50g、砂糖60g、牛乳60gで、スクエアケーキ型にオーブンシートを敷いて焼く配合です(波里「米粉の台湾カステラ」)。
このレシピの軸は別立てです。卵を卵白と卵黄に分け、卵白は冷蔵庫で冷やしておき、牛乳と油を湯煎で温めて混ぜたところへ卵黄、米粉を加えます。別に卵白に砂糖を加えてメレンゲを作り、数回に分けて混ぜ合わせます。
長崎風との大きな違いは、ベーキングパウダーを使わず、メレンゲの泡だけで膨らませる点です。そのぶん泡のきめと混ぜ方が仕上がりを左右します。なお、このレシピは特定の米粉製品を指定したものなので、別の製品で作る場合は生地のかたさに差が出ることがあります。
台湾カステラは焼く温度が低く、時間が長いのも特徴です。詳しい焼き方は後半でお話しします。
| 項目 | さくら市 給食レシピ | 共立食品 米粉のカステラ | 波里 米粉の台湾カステラ |
|---|---|---|---|
| 米粉 | 72g | 80g | 70g |
| 卵 | 108g(2個) | 4個 | 4個 |
| 甘み | 砂糖大さじ5 | 砂糖50g・はちみつ40g | 砂糖60g |
| 油脂・水分 | 無塩バター45g・牛乳大さじ1 | みりん大さじ1(乳製品なし) | 油50g・牛乳60g |
| 膨らませ方 | ベーキングパウダー小さじ1 | 全卵の泡立て+ベーキングパウダー小さじ1 | 別立てのメレンゲ |
| 焼き方 | 170℃で20~25分 | 180℃で6分→170℃で35分 | 150℃で60分程湯煎焼き |
| 型 | カップ4個 | 20cm×20cm×8cm | スクエアケーキ型 |
出典:各公式レシピの記載をもとにお米の教科書編集部が整理。分量は各レシピの型・製品を前提としたものです。
どのレシピを選ぶ?作る人・場面別の選び方
3つのレシピは、どれが優れているというより、作る人と場面で向き不向きが分かれます。選び方の目安をお伝えします。
お菓子作りに慣れていない方や、子どもと一緒に作りたい方には、さくら市の給食レシピが向いています。ベーキングパウダーが膨らみを助けてくれるので、泡立ての出来に左右されにくく、カップに分けるので焼き時間も短めです。おやつやお弁当のデザートにも使いやすい大きさです。
贈り物にしたい方、切り分けて家族で楽しみたい方には、長方形で焼く共立食品のレシピが合っています。はちみつとみりんでしっとりさせる配合で、乳製品を使わないので、牛乳やバターを控えたい家庭でも選びやすい作り方です。
ふるふるの食感が好きな方、メレンゲ作りに少し慣れている方には、台湾カステラがおすすめです。ただし湯煎焼きの準備が必要で、焼き時間も長いので、時間に余裕のある日に作るのがよいでしょう。
やりがちなのは、最初から難しいレシピに挑戦して失敗し、米粉そのものを苦手に感じてしまうこと。まずはカップのレシピで米粉の扱いに慣れ、次に長方形、最後に台湾カステラと段階を踏むと、失敗の原因を切り分けやすくなります。
長方形のカステラを焼く手順と、泡立てが仕上がりを決める理由
白っぽくもったりするまで泡立てるのが、いちばん大事な工程
長崎風のカステラで仕上がりを最も左右するのは、卵の泡立てです。共立食品の公式レシピでも、卵・砂糖・はちみつをハンドミキサーで白っぽくもったりするまで泡立てる工程を、重要なポイントとして挙げています。
理由は、先ほどお話ししたとおり、カステラの膨らみは卵の泡が担っているからです。泡立てが足りないと、抱き込む空気が少なく、焼いても高さが出ません。さらに、泡が粗いと焼いている間に泡がつぶれやすく、断面に大きな穴があいたり、目の詰まった重い食感になったりします。
目安は、泡立て器やミキサーを持ち上げたときに生地がリボン状に落ち、落ちた跡がしばらく表面に残る状態です。色も、卵の黄色から白っぽいクリーム色に変わってきます。
泡立てを終えたら、最後にミキサーの速度を落として少し混ぜ、大きな泡を細かい泡に整えておくと、焼き上がりのきめがそろいやすくなります。手間に見えますが、ここを丁寧にするかどうかで仕上がりが変わります。
みりんを一部の生地に混ぜてから戻すのは、泡を守るため
共立食品のレシピでは、泡立てた生地の一部を取り分けてみりんを混ぜ、それを本体に戻すという手順になっています。直接みりんを全体に入れないのには理由があります。
泡立てた生地に液体を直接注ぐと、液体が一か所にたまり、その部分を混ぜるために何度もヘラを動かすことになります。混ぜる回数が増えるほど泡はつぶれていきます。少量の生地にあらかじめ液体をなじませておくと、生地どうしの状態が近くなり、少ない回数で全体に混ざるんです。
この考え方は、粉を加えるときにも同じです。米粉を一度に加えて底からゆっくり大きく混ぜ、粉が見えなくなったら止める。混ぜすぎると泡が消え、焼き上がりが沈んだり、目が詰まったりします。
米粉はグルテンができないので、小麦粉のように混ぜすぎで生地が粘ってかたくなる心配は小さい粉です。ただし、それは粉の話であって、泡は混ぜれば混ぜるほど減っていきます。混ぜすぎの失敗は米粉でも起きる、と覚えておきましょう。
180℃から170℃に下げる焼き方には意味がある
共立食品のレシピでは、180℃で6分焼いてから170℃に下げて35分焼く、という2段階の温度設定になっています。最初に少し高めの温度で焼くのは、生地の表面と外側を早めに固め、泡が膨らむ力を逃がさないためと考えられます。
そのあと温度を下げるのは、カステラが高さのあるお菓子だからです。高い温度のまま焼き続けると、外側と表面ばかりが焼けて焦げやすくなり、中心はまだ生、ということが起こりがちです。温度を落として時間をかけることで、中心まで均一に火を通します。
やりがちな失敗は、オーブンの予熱が終わる前に生地を入れてしまうこと。最初の数分の温度が足りないと、泡が膨らみきる前に生地がだれてしまいます。泡立てた生地は時間がたつほど泡が消えていくので、生地が完成するタイミングに予熱が終わっているよう段取りしておきましょう。
オーブンは機種によって焼き色のつき方が違います。表面の色づきが早いときは、アルミホイルをかぶせて焦げを防ぎ、焼き上がりは竹串を中心に刺して生地がついてこないかで確認します。
焼けたらすぐ切らず、寝かせてから温めた包丁で切る
焼き上がったカステラは、すぐに切りたくなるものですが、少し待つのがコツです。共立食品の公式レシピでは、焼いてから2~3日で水分が出てしっとりすると案内されています。
焼きたてのカステラは、表面や外側の水分が飛んでいて、中との水分に差がある状態です。粗熱がとれたらラップなどで包んで置いておくと、中の水分が全体に回り、しっとりと落ち着いた食感になっていきます。ここで包まずに置いておくと、表面から乾いてパサつく原因になります。
切るときは、包丁を温めてから使うのがポイントとして挙げられています。冷たい刃だと生地がくっつき、断面がちぎれたように荒れてしまいます。お湯で包丁を温めて水気をふき取り、ひと切りごとに刃をふいて温め直すと、きれいな断面になります。
日持ちの目安は材料や保存環境によって変わり、出所の示せる共通の数値はありません。季節や室温に気をつけ、早めに食べきるのが安心です。
状況:卵をさっと泡立てただけで粉を入れ、ヘラで何度もぐるぐる混ぜてから型に流した。
原因:抱き込んだ空気が少ないうえ、混ぜる回数が多くて泡がつぶれた。カステラは粉ではなく卵の泡で膨らむので、泡が減れば高さも出ません。
対策:白っぽくもったりし、生地の跡が表面にしばらく残るまで泡立てる。粉は一度に加えて底から大きく混ぜ、粉気が消えたら止めましょう。
米粉の台湾カステラは湯煎焼きとメレンゲで決まる
卵黄生地は、温めた牛乳と油に混ぜて作る
台湾カステラの卵黄生地は、牛乳と油を湯煎で温めて混ぜたところに卵黄を加え、そのあと米粉を混ぜて作ります。波里の公式レシピもこの流れです。
油と牛乳は、そのままでは混ざりにくい組み合わせです。温めておくと油がなじみやすくなり、卵黄がつなぎの役目をして、なめらかで均一な生地になります。この生地がなめらかであるほど、あとで合わせるメレンゲとも混ざりやすくなるんです。
米粉はダマになりにくい粉ですが、温めた液体に一度に入れると、ところどころ固まりが残ることがあります。泡立て器でしっかり混ぜ、粉気のないなめらかな状態にしておきましょう。ここはメレンゲと違って泡を気にしなくてよい工程なので、しっかり混ぜて大丈夫です。
やりがちなのは、牛乳と油を熱くしすぎてしまうこと。熱すぎると卵黄に火が入って、ぼそぼそした状態になります。湯煎の温度で、手で触れて温かいと感じる程度を目安にするとよいでしょう。
メレンゲは冷やした卵白で作り、数回に分けて合わせる
波里のレシピでは、卵を卵白と卵黄に分けたあと、卵白を冷蔵庫に入れておくよう案内されています。卵白に砂糖を加えてメレンゲを作り、卵黄生地と数回に分けて混ぜ合わせます。
冷やした卵白で作ると、泡が細かく、しっかりしたメレンゲになりやすいとされています。きめの細かいメレンゲは、焼いている間も泡が安定し、台湾カステラ特有のふるふるした食感につながります。
数回に分けて合わせるのは、性質の違う2つの生地を、泡を減らさずに混ぜるためです。最初に少量のメレンゲを卵黄生地に入れてしっかり混ぜ、生地をなじみやすくしてから、残りのメレンゲを泡をつぶさないようにさっくり合わせます。
よくある失敗は、メレンゲを泡立てすぎてぼそぼそにしてしまうこと。ぼそぼそのメレンゲは卵黄生地と混ざりにくく、混ぜる回数が増えて結局泡が消えてしまいます。角の先が少しおじぎするくらい、つやのある状態を目指しましょう。

150℃で60分の湯煎焼きは、じっくり火を通すため
台湾カステラは焼き方が独特です。波里の公式レシピには「150℃に予熱したオーブンで60分程湯煎焼きして出来上がり」とあります(波里「米粉の台湾カステラ」)。長崎風よりも低い温度で、長い時間をかけて焼きます。
湯煎焼きにすると、天板のお湯から出る蒸気が生地の表面を守り、急に乾いたり割れたりするのを防いでくれます。お湯が型の下側の温度上昇をやわらげるので、底だけが先に焼き固まることも起きにくくなります。メレンゲの泡は急な加熱に弱いので、ゆっくり温めることで泡を壊さずに膨らませるわけです。
やりがちなのは、途中でお湯がなくなってしまうこと。長時間焼くので、天板のお湯は途中で減っていきます。お湯がなくなると底から焦げたり、乾いた焼き上がりになったりします。
型の底から水が入り込まないよう、底が抜けるタイプの型はアルミホイルで外側を覆うなどの準備をしておきましょう。オーブンシートを型に敷くのも、波里のレシピで案内されている手順です。
レシピどおりなのに仕上がりが違う?米粉ならではの3つの理由
米粉は製品によって吸水量が違うと、国の基準にも書かれている
同じレシピ、同じ分量で作ったのに、前回と生地のかたさが違う。米粉を使っているとそういうことが起こります。これは腕の問題ではなく、米粉という粉の性質によるものです。
農林水産省の米粉の用途別基準の資料では、基準を作った趣旨として、「米粉製造業者によって製品の吸水量が異なるなど製品の品質の違いがみられ」ることが挙げられています(農林水産省「米粉の用途別基準」PDF)。背景には、小規模な米粉製造業者が多く、米粉用米の品種や製粉方法もさまざまだという事情があるとされています。
つまり、米粉は小麦粉のように規格がそろった粉ではなく、製品ごとに個性がある粉なんです。レシピに書かれた製品と違う米粉を使えば、同じ分量でも生地の状態が変わるのは自然なことといえます。
対策は、レシピで指定された製品があればまずはそれを使うこと。手持ちの米粉を使うなら、生地の状態を見ながら水分を少しずつ調整し、同じ製品を使い続けて自分の基準を作っていくのが近道です。
状況:いつもの米粉が品切れで、別の製品を同じ分量で使ったら、生地がもったりかたく、焼き上がりも重くなった。
原因:米粉は製品によって吸水量が違います。でんぷん損傷度が大きい粉ほど水を多く吸うため、同じ水分量では生地がかたくなりやすいんです。
対策:製品を替えたら、生地の流れ方を前回と比べて確認する。かたい場合は牛乳など水分を少しずつ足して調整し、同じ製品を使い続けて基準を作りましょう。
でんぷんの状態で、しっとり感の出方が変わる
2つ目の理由は、でんぷんの状態の違いです。前の見出しでもお話ししたとおり、でんぷん損傷度が高い米粉は水を多く吸い、スポンジケーキではしっとり感が増すとされています。アミロース含有率の低い米粉もしっとり感が出る傾向があります。
カステラに当てはめると、しっとりした食感を目指すなら、こうした性質の粉が向いていることになります。ただ、損傷度が高い粉は水を多く吸うため、配合によっては生地がかたくなりやすいという面もあります。しっとり感と生地の扱いやすさは、ちょうど裏表の関係なんです。
具体的には、同じ製菓用の米粉でも、焼き上がりがしっとり寄りになる製品と、ふんわり軽い寄りになる製品が出てきます。どちらがよいかは好みの問題で、優劣ではありません。
好みの食感に近づけたい場合は、粉を変えるより先に、寝かせ時間や包み方を工夫するほうが手軽です。粉選びと寝かせ方の両方から、食感を調整していきましょう。
実は、焼きたてで判断しないのが米粉カステラのコツ
意外と知られていないけれど、米粉カステラは焼きたてがいちばんおいしい、とは限らないお菓子です。共立食品の公式レシピでも、焼いてから2~3日で水分が出てしっとりすると案内されています。
焼きたてのカステラは、オーブンの熱で表面の水分が飛び、外側がやや乾いた状態です。包んで置いておくと、中に残った水分やはちみつが抱えた水分が全体に行き渡り、生地がなじんで食感がまとまっていきます。カステラを寝かせる、という昔からの考え方は、米粉でも同じように当てはまるわけです。
やりがちなのは、焼きたてを食べて「米粉はパサつく」と判断し、次から水分や油を増やしてしまうこと。配合をいじると今度は生地が重くなったり、焼き縮みが大きくなったりして、かえって遠回りになります。
まずはレシピどおりに焼き、粗熱をとってからラップで包み、翌日以降に食べ比べてみてください。寝かせたあとの食感を基準に配合を見直すと、失敗の原因を正しく切り分けられます。
米粉カステラの仕上がりが安定しないとき、見直す順番は「泡立て→混ぜすぎ→粉の製品→寝かせ方」です。粉のせいにする前に、まず卵の泡が十分か、混ぜすぎていないかを確認しましょう。製品を替えたときだけは、生地の状態を前回と比べて水分を調整します。
小麦粉レシピからの置き換えと、ノングルテン表示の読み方
置き換えの割合は、使う米粉の案内に従う
手持ちの小麦粉のカステラレシピを米粉にしたい、という方も多いと思います。置き換えの割合は、まず使う米粉の製品の案内を確認するのが基本です。
たとえば共立食品の『米の粉』の商品ページでは、「薄力粉3~5割を米の粉におきかえてお楽しみいただけます」と案内されています(共立食品「米の粉」)。強力粉の場合は、同社のFAQで2~3割が目安とされ、200gなら米粉40g+強力粉160g、または米粉60g+強力粉140gという例が示されています(共立食品 FAQ)。
ここで注意したいのは、これは特定の製品の場合の目安だという点です。米粉は製品によって吸水量が違うので、ほかの製品にそのまま当てはまるとは限りません。また同社の説明でも、この米の粉は薄力粉と同じものではないとされています。
一部を置き換える方法は、小麦粉の生地に米粉のしっとり感や軽さを足したいときに使いやすい方法です。小麦粉をまったく使わずに作りたい場合は、次にお話しする方法を選びましょう。

小麦粉を使わずに作るなら、米粉専用のレシピから始める
小麦粉を一切使わないカステラを作りたいなら、小麦粉のレシピを全量置き換えるより、最初から米粉で作る前提のレシピを使うほうが確実です。
理由は、全量を置き換えると、粉の吸水量や生地の粘りの違いがそのまま仕上がりに出てしまうからです。小麦粉のレシピは小麦粉の性質に合わせて水分や焼き時間が組まれているので、粉だけ替えると、生地がゆるすぎたり、焼き時間が合わなかったりすることがあります。
米粉専用のレシピなら、そうした調整がすでに済んでいます。今回紹介した3つのレシピは、いずれも米粉で作る前提の配合です。共立食品のレシピは小麦粉と乳製品を使わない配合、さくら市のレシピは米粉の代わりに小麦粉でもよいと書かれた配合、と性格が異なります。
やりがちなのは、小麦粉のレシピで米粉に全量を替え、生地がゆるくて型からあふれそうになる、膨らまないといった失敗です。小麦粉を使わないことが目的なら、レシピ選びの段階から米粉専用のものを選びましょう。
ノングルテン表示は、グルテン1ppm以下を示す表示
米粉の袋で見かける『ノングルテン』という表示。これは「米粉だから」つく表示ではなく、基準を満たした製品につく表示です。
農林水産省が平成29年3月29日に公表した米粉製品の表示に関するガイドラインでは、グルテン含有量が1ppm以下の米粉に『ノングルテン(Non-Gluten)』と表示し、1ppm以下である旨を付記することとされています。さらに2020年10月には、ノングルテン米粉製造工程管理JAS(JAS0014)が制定され、「製品のグルテン含有量が1ppm以下となるように製造工程を管理する」ことが定められています(農林水産省「ノングルテン米粉」)。最終製品を対象とした第三者認証は日本米粉協会が運営しています。
ここで大事なのは、ノングルテン表示がない米粉は、グルテンを加えていなくても、この基準を満たしていると保証されたものではないという点です。米粉の製造ラインで小麦粉を扱っている場合などもあるため、表示の有無で区別されています。
グルテンを気にしてカステラを作るなら、米粉の袋の表示だけでなく、ベーキングパウダーなどほかの材料の原材料表示も確認しましょう。
ノングルテン=農林水産省のガイドラインに基づき、グルテン含有量が1ppm以下の米粉に使われる表示。1ppm以下である旨の付記とセットで表示されます。
ノングルテン米粉製造工程管理JAS(JAS0014)=2020年10月に制定された、グルテン含有量が1ppm以下となるよう製造工程を管理するための規格です。
小麦アレルギーの家族がいる場合は、表示確認と医師への相談を
米粉はグルテンを含まない粉ですが、だからといって「米粉で作れば誰でも安心」と言い切ることはできません。お米の教科書では、アレルギーに関わる判断を断定しない立場をとっています。
理由は、カステラは米粉だけでできているお菓子ではないからです。卵は今回紹介したどのレシピにも使われていますし、さくら市のレシピにはバターと牛乳、波里のレシピには牛乳が入っています。また、米粉以外の材料や、作る台所の環境でも、小麦が混じる可能性はあります。
具体的には、米粉の袋のノングルテン表示を確認する、ほかの材料の原材料表示も見る、調理器具や作業台を小麦粉と分けるといった点に気を配ることになります。ただし、どこまで気をつければよいかは人によって違います。
小麦アレルギーなど体調や食事に制限がある場合は、自己判断せず、医師や管理栄養士に相談してください。そのうえで、製品の表示と相談内容に沿って材料を選ぶのが安全な進め方です。
まとめ|カステラ米粉は製菓用の細かい粉と泡立てで仕上がりが決まる
最初の一歩は、製菓用と書かれた米粉を1袋選び、カップで焼く給食レシピか長方形のレシピをそのままの分量で作ってみることです。焼けたら包んで寝かせ、翌日以降の食感を基準にすると、次の一回で何を変えればよいかが見えてきます。
※製品の表示や公式レシピの内容は変更されることがあるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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