「ケーキを米粉で焼いてみたら、なんだか重たい」「レシピどおりに焼いたのに、真ん中が生っぽい」。米粉のお菓子づくりを始めると、こんな悩みにぶつかることがよくあります。米粉は小麦粉の代わりにそのまま入れ替えられる粉だと思われがちです。ところが、でんぷんの性質も、水の吸い方も、焼き上がるまでの時間も違う、別の個性を持った粉なんですよ。
結論から言うと、ケーキに使う米粉は「菓子・料理用」や「製菓用」と表示された粒の細かい粉を選び、小麦粉レシピの水分と焼き時間を見直すのが近道です。農林水産省の米粉の解説ページでは、同じ配合の生地でも米粉のほうが焼き時間が長くなることや、アミロースの多い少ないでしっとり感が変わることが紹介されています。
この記事では、農林水産省の公表資料をもとに、米粉と小麦粉の違い、ケーキに向く米粉の見分け方、しっとり・ふんわりの理屈、失敗の原因と立て直し方、そしてノングルテン表示の読み方まで、順番にほどいていきます。レシピの丸写しではなく、「なぜそうなるか」がわかると、手元のレシピを自分で調整できるようになります。
・米粉と小麦粉で、ケーキの生地と焼き上がりがどう違うのか
・上新粉・白玉粉・製菓用米粉のうち、ケーキに向く粉の見分け方
・しっとり感や型崩れを左右するアミロースとでんぷん損傷度の話
・膨らまない・硬い・生焼けといった失敗の原因と、ノングルテン表示の読み方
米粉でケーキを焼くと何が変わる?小麦粉との3つの違い

グルテンがない粉だから、膨らむ仕組みそのものが違う
米粉と小麦粉のいちばん大きな違いは、グルテンがあるかないかです。農林水産省の解説では「コメはグルテンを含んでいないため、米粉もグルテンを含みません。」と説明されています。小麦粉のケーキは、グルテンがつくる網目と、卵の泡やふくらし粉のガスが合わさって骨組みができます。ところが米粉にはその網目がないので、骨組みは卵の泡と、焼いて固まるでんぷんに頼ることになるんです。
台所でよくあるのが、「グルテンがないなら膨らまないのでは」と心配して、ふくらし粉を自己流で増やしてしまうケースです。ガスが増えても受け止める骨組みが弱いと、焼いている途中で膨らんだあと、冷めてしぼむ原因になります。
コツは、膨らみを「粉の力」ではなく「泡の力」で考えることです。スポンジ生地なら卵をしっかり泡立て、その泡を残したまま焼き固める。ふくらし粉を使うレシピなら、米粉向けに作られたレシピの分量に従うのが安全です。小麦粉のレシピを流用するときほど、膨らみ方の前提が違うことを頭に置いておきましょう。
生地の粘りが変わりにくく、泡がつぶれにくい
米粉の生地は、混ぜたあとも状態が変わりにくいという性質があります。農林水産省の解説ページでは「米粉の生地は時間が経っても生地の粘りはほとんど変わりません。また、小麦粉生地より粘性が低く、さらに、粉を混ぜるときに気泡がつぶれにくいという特徴があります」と紹介されています。
実は、意外と知られていないけれど、小麦粉のお菓子づくりで定番の「混ぜすぎるとグルテンが出て硬くなる」という注意は、米粉にはそのまま当てはまりにくいんです。グルテンのもとになるたんぱく質を持たないので、混ぜる回数で生地が締まっていく現象が起きにくい。粉を合わせるとき、ダマを残さないように底からしっかり混ぜても、小麦粉ほど神経質にならなくてよいわけです。
ただし、泡がつぶれにくいとはいえ、乱暴に混ぜれば泡は減ります。やりがちなのは、「混ぜても大丈夫」を「いくら混ぜても大丈夫」と受け取ってしまうこと。泡立てた卵に粉を加える場面では、粉っぽさが消えてつやが出たところで止めるのが目安です。米粉の性質は「失敗しにくい余裕」と考えて、泡を守る意識は持ち続けましょう。
でんぷんが固まる温度が高く、焼き時間が長くなる
3つ目の違いは焼き時間です。農林水産省の解説では「同じ配合の小麦粉と米粉の生地各250gを160℃で焼くと、米粉では45分間、小麦粉では38分間と焼き時間は米粉のほうが長くなります」と示されています。理由は、米のでんぷんが糊化する(水を含んで加熱され、やわらかく固まる)温度が小麦より高いためと説明されています。
この違いを知らずに、小麦粉のレシピと同じ時間でオーブンから出すと、表面はきれいなのに中心がしっとりを通り越して生っぽい、という失敗につながります。逆に「長めに焼けばいい」と時間だけ延ばすと、今度は端が乾いて硬くなりやすい。焼き時間の問題は、このあと詳しく扱います。
ここで押さえておきたいのは、米粉のケーキは「同じ温度で同じ時間」では焼き上がりがずれる、という前提です。初めのうちは米粉用に書かれたレシピの時間を基準にし、竹串を刺して生地がついてこないかで中心の焼け具合を確かめる習慣をつけると、失敗がぐっと減ります。
| 項目 | 米粉 | 小麦粉 |
|---|---|---|
| グルテン | 含まない | 含む |
| 生地の粘り | 粘性が低く、時間が経ってもほとんど変わらない | 米粉の生地より粘性が高い |
| 焼き時間(同じ配合の生地各250g・160℃) | 45分間 | 38分間 |
| パンの加水量(参考) | 100%前後(バッター生地になる) | 粉の約60% |
ケーキ向きの米粉はどれ?上新粉・白玉粉・製菓用の見分け方
上新粉や白玉粉は、もともと和菓子のための粉
スーパーの粉売り場には、上新粉、白玉粉、道明寺粉、そして「米粉」と書かれた袋が並んでいます。どれもお米の粉ですが、ケーキに向くのは基本的に「米粉」として売られている粒の細かい粉です。農林水産省の解説では「うるち米を原料にしたものでよく知られているものが、上新粉。これは、団子、柏餅や和菓子、せんべい等の米菓に使われています。」と紹介されています。
白玉粉はもち米を水挽きにした粉で、大福もちや求肥、白玉だんごに使われます。道明寺粉はもち米を加熱して乾燥させたアルファー化型の粉で、さくら餅やおはぎの材料です。どれも、もちもち・むっちりした和菓子の食感を出すための粉なんですね。
やりがちなのが、「米粉が手元にないから上新粉で代用しよう」と、スポンジケーキに上新粉を使ってしまうこと。上新粉は団子向けの粒の大きさで作られていることが多く、洋菓子に使うと舌にざらつきが残りやすくなります。和菓子用の粉と洋菓子用の米粉は、同じお米の粉でも「別の道具」と考えて使い分けるのがコツです。
洋菓子に微細粒の米粉が向く理由
ケーキに向く米粉を選ぶとき、いちばん大事なのは粒の細かさです。農林水産省の解説ページでは、洋菓子・調理用の米粉について「食品に滑らかさが要求されるので、粉の粒度は微細粒粉が良いでしょう。」と説明されています。粒度とは粉の粒の大きさのことで、通常は製粉機の網の目の大きさで表されるとされています。
なぜ細かさが大事かというと、スポンジやクリームのように口当たりのなめらかさを楽しむお菓子では、粒の粗さがそのまま舌触りに出るからです。同じページでは、粗いと舌触りが悪く滑らかさがないとも紹介されています。また、洋菓子・調理用には米粉のみを使い、グルテンは加えないとされています。
台所での失敗例としては、粒の粗い粉で焼いたケーキが、焼きたてはふんわりでも、冷めると口の中でほろほろ崩れてざらつく、というものがあります。袋の表示に「製菓用」「お菓子用」「微細粉」などの記載があるか、裏面の用途欄にケーキや焼き菓子が挙がっているかを確認すると選びやすくなります。
袋の用途表示「菓子・料理用」を手がかりにする
米粉には、用途を示す共通の目安があります。2017年3月29日に農林水産省が公表した米粉の用途別基準です。解説ページでは「用途別基準では、米粉の主な用途について、菓子・料理用、パン用および麺用に分類します。」と説明されています。この基準は、事業規模の大小に関わりなく、すべての米粉製造業者を対象とした自主的な取組みとされています。
ケーキを焼くなら、目印になるのは「菓子・料理用」の表示です。パン用の米粉は、パンの膨らみを優先して作られている粉なので、ケーキに使えないわけではありませんが、レシピが想定する食感とずれることがあります。自主的な取組みなので、すべての袋にこの表示があるとは限らない点にも注意しましょう。
見落としやすいのは、「米粉」とだけ書かれた袋を、どれも同じものだと思って買ってしまうことです。表示がない場合は、商品の裏面の「おすすめの使い方」や、メーカーの公式サイトのレシピがどんなお菓子を想定しているかを見ると、その粉の得意分野がわかります。用途別基準の数値の詳細は図表で示されているので、気になる方は農林水産省の解説ページで確認してください。
| 項目 | 上新粉 | 白玉粉 | 米粉(菓子・料理用) |
|---|---|---|---|
| 原料 | うるち米 | もち米(水挽式) | 主にうるち米の微細粒粉 |
| 主な用途 | 団子・柏餅・米菓 | 大福もち・求肥・白玉だんご | 洋菓子・お好み焼き・ホワイトソースなど |
| ケーキへの向き | 舌触りがざらつきやすい | もちもち食感になり洋菓子向きではない | なめらかに仕上がりやすい |
しっとりか、さらっとか。食感を左右するアミロースとでんぷん損傷度

アミロースが多いと型崩れしにくく、少ないとしっとり
同じ「菓子・料理用」の米粉でも、焼き上がりの食感に差が出ることがあります。その理由のひとつがアミロースです。農林水産省の解説では「米粉ケーキを作る場合、アミロース含有率が高い米粉を使うと、さらっとした食感で型崩れしにくく、アミロース含有率が低い米粉はしっとり感が出ます。」と説明されています。
アミロースはでんぷんを構成する成分のひとつで、ご飯でいえば「粘りの少なさ・硬さ」に関わる成分です。同じページでは、日本の一般的なうるち米はアミロース含有率17~23%程度、もち米は0%とされています。もち米で作るお餅がよく伸びるのは、アミロースを含まないからなんですね。ケーキでも同じ理屈が働き、アミロースが少ない粉ほどしっとり、多い粉ほどさらっと形を保ちやすくなります。
やりがちなのは、「しっとりさせたいから」と白玉粉を混ぜてみて、もちっと重い生地になってしまうことです。食感の調整は、別の種類の粉を足すより、製品説明で「しっとり」「ふんわり」などの仕上がりが案内されている米粉を選ぶほうが確実です。ショートケーキの土台のように形を保ちたいのか、しっとり食べたいのかで、粉選びを考えましょう。
ご飯として食べるお米の品種でも、粘りや食感の違いが語られます。品種の話に興味がある方はこちらもどうぞ。

でんぷん損傷度が高い粉は、水を多く吸う
もうひとつ、米粉の個性を左右するのが「でんぷん損傷度」です。農林水産省の解説では「米粉の吸水性は、粉砕時に生ずるでんぷん損傷度(でんぷん粒に割れや傷があること、その度合い)に由来し、でんぷん損傷度が大きいと粉に対する吸水量も多くなります。」と説明されています。
つまり、お米を粉にするときにでんぷんの粒がどれだけ傷ついたかで、粉が吸う水の量が変わるということです。同じページでは「でんぷん損傷度が低いと米粉パンにおいては膨らみが大きくなり、反対にでんぷん損傷度が高いと米粉パンやスポンジケーキでは、しっとり感が増します。」とも紹介されています。
台所で起きやすいのは、米粉の銘柄を変えたとたん、いつものレシピで生地が硬くなったり、逆にゆるくなったりすることです。これは腕のせいではなく、粉が吸う水の量が違うから。銘柄を変えたら、最初の一回は生地の状態をよく見て、硬いと感じたら牛乳や水を少しずつ足して調整する、という気持ちで臨むと安心です。
袋に書かれない性質とは、銘柄を固定して付き合う
アミロースやでんぷん損傷度は、ケーキの仕上がりを左右する大事な性質ですが、家庭向けの袋にその数値が載っているとは限りません。農林水産省の解説では、米粉の加工性に影響を与える成分として、粒度、吸水性(でんぷん損傷度)、アミロース含有率、水分含有率、グルテン添加率が挙げられています。これだけの要素があるので、「米粉」とひとくくりにすると、仕上がりがぶれるのは自然なことなんです。
やりがちな失敗は、毎回安い・目についた銘柄を買って、焼くたびに食感が違うと悩んでしまうこと。原因が粉なのか手順なのか切り分けられず、上達しにくくなります。
コツは、慣れるまでは同じ銘柄の米粉を使い続けることです。そのうえで、その粉のメーカーが公式に出しているレシピを基準にすると、水分量や焼き時間がその粉の性質に合わせて組まれているので失敗が少なくなります。好みの食感がつかめてから、別の銘柄を試して違いを確かめるという順番がおすすめです。
アミロース=でんぷんを構成する成分のひとつ。日本の一般的なうるち米は含有率17~23%程度、もち米は0%とされる。米粉ケーキでは高いとさらっと型崩れしにくく、低いとしっとりする。
でんぷん損傷度=粉砕時にでんぷん粒に生じた割れや傷の度合い。大きいほど吸水量が多くなり、スポンジケーキではしっとり感が増すとされる。
粒度=粉の粒の大きさ。通常は製粉機の網の目の大きさで表される。
スポンジ・シフォン・パウンド、生地の厚みで焼き上がりはどう変わる?
薄い生地が得意。ロールケーキが向いている理由
米粉で初めてケーキを焼くなら、薄く焼く生地から始めるのがおすすめです。農林水産省の解説では「焼き時間が長くなると水分含量の低下や端部がかたくなったりするので、焼き時間を短くするにはロールケーキのように厚さが薄い生地が適しています。」と説明されています。
理由は、先ほどの焼き時間の話とつながっています。米粉は小麦粉より焼き上がるまでに時間がかかるので、厚い生地ほど中心が焼けるのを待つあいだに、外側や端が乾いてしまいます。薄い生地なら熱が中心まで早く届くので、しっとりした状態のまま焼き上げやすいんです。
やりがちな失敗は、ホール型のスポンジから挑戦して、中心の焼け具合を見極めきれずに出すのが早すぎたり遅すぎたりすること。天板に薄く広げるロールケーキの生地なら、焼け具合が表面から判断しやすく、巻いてクリームと合わせれば多少の乾きも気になりにくくなります。米粉の扱いに慣れるための一品として、手順の流れを下にまとめました。
スポンジは泡を生かし、パウンドは焼き時間に気を配る
同じケーキでも、スポンジとパウンドでは米粉の付き合い方が少し違います。スポンジは卵の泡が膨らみの主役なので、泡がつぶれにくい米粉の性質がそのまま味方になります。また、でんぷん損傷度が高い粉ではスポンジケーキのしっとり感が増すとされているので、しっとりしたスポンジを目指すなら、粉の性質を生かしやすい生地です。
一方のパウンドケーキは、背の高い型に詰めて焼くので、生地に厚みがあります。米粉は焼き時間が長くなる傾向があるため、中心まで火を通そうとすると、表面や型に接した部分が乾きやすくなります。やりがちなのは、表面が色づいた時点で「焼けた」と判断して取り出し、切ってみると中心がねっとりしているパターンです。
パウンドで気をつけたいのは、焼き色ではなく中心の状態で判断することです。竹串を中心に刺して生地がついてこないか確かめ、表面が先に色づきすぎるようならアルミ箔をかぶせて焼き色の進みを抑えるのも手です。型を浅いものに替えて厚みを抑えるのも、米粉の性質に合わせたやり方といえます。
シフォンは、生地の厚みと泡の安定を優先して考える
シフォンケーキは、背の高い筒型で焼く、ケーキの中でも厚みのある生地です。米粉のシフォンも作られていますが、焼き時間が長くなりやすいという米粉の性質を考えると、ロールケーキより一段難しいお菓子と考えておくのがよいでしょう。
シフォンは、メレンゲの泡でふくらませ、焼き上がってから逆さにして冷ますことで、ふくらんだ形を保ちます。グルテンの網目がない米粉では、この形を支える力を泡とでんぷんに頼ることになります。冷ます途中で生地が型から外れて落ちたり、中心が沈んだりするのは、中まで焼き固まる前に取り出したことが原因になりやすいんです。
挑戦するなら、米粉シフォン用に作られたレシピに沿って、メレンゲをしっかり立てること、焼き時間を短く切り上げないことの2点を意識しましょう。アミロースが多い粉は型崩れしにくいとされているので、粉の説明に形の保ちやすさが案内されているかを確認するのもヒントになります。
作りたいケーキと好みで選ぶ、米粉ケーキの始め方
ここまでの話を、作る人のタイプ別に整理してみます。はじめて米粉でお菓子を焼く人は、ロールケーキのような薄い生地から入り、焼き時間と生地の扱いに慣れるのが近道です。しっとりした食感が好きな人は、しっとり感をうたった米粉を選び、スポンジ系のお菓子を試してみてください。でんぷん損傷度やアミロースの性質から、しっとりに寄りやすい粉が向いています。
デコレーションケーキのように形をきれいに保ちたい人は、型崩れしにくさが案内されている粉を選ぶと扱いやすくなります。焼き菓子全般を作りたい人は、クッキーやドーナツのように、小麦粉とは配合を変える必要があるお菓子もあるので、このあとの失敗の章を読んでから取りかかると安心です。
家族の食事の都合で小麦粉を使わないお菓子を作りたい場合は、粉選びに加えて、ベーキングパウダーやチョコレートなど他の材料の表示も確認することが大切です。この点は最後の表示の章で詳しく触れます。いずれのタイプでも、最初の一本は米粉用に書かれたレシピに忠実に作り、そこから好みに寄せていく順番が失敗の少ない進め方です。
膨らまない・硬い・粉っぽい…よくある失敗はなぜ起きる?

薄力粉のレシピをそのまま置き換えて、生地が硬くなる
米粉のお菓子でいちばん多い失敗は、薄力粉のレシピの粉だけを米粉に入れ替えてしまうことです。農林水産省の解説では、ドーナツを例に「小麦粉と同じ配合で米粉ドーナツを作ると、米粉のほうが小麦粉より多く吸水するため生地がかたくなり、うまくできません。」と説明されています。
原因は吸水量の違いです。同じ重さの粉でも、米粉のほうが水を多く抱え込むため、生地に回る水分が足りなくなり、硬くまとまってしまいます。同じページでは、水分を増やして型に絞り入れて焼く焼きドーナツにすると、小麦粉と同程度の硬さが得られると紹介されています。米粉に合わせて「水を増やし、形を型に任せる」という発想の転換ですね。
ケーキでも考え方は同じです。小麦粉のレシピを流用するなら、生地の状態を見ながら牛乳や水を足し、小麦粉のときと同じくらいのなめらかさになるよう調整します。ただし、どれくらい足すかは粉の銘柄によって変わるので、最初から米粉用のレシピを使うほうが確実です。「小麦粉製品のほとんどは米粉で代替できる」とされていますが、それは配合を米粉に合わせて組み直す前提だと考えましょう。
薄力粉のレシピで粉だけ米粉に替えると、米粉のほうが水を多く吸うため生地が硬くなりやすくなります。原因は腕ではなく吸水量の違い。対策は、米粉用に書かれたレシピを使うか、生地のなめらかさを見ながら水分を少しずつ足すこと。銘柄を変えたときも吸水量が変わるので、同じ確認をしましょう。
粉っぽさ・ぱさつきは、水分と糖の不足から
焼き上がりが粉っぽい、口の中でぱさぱさする、という失敗もよくあります。農林水産省の解説では、クッキーについて、小麦粉と同じ配合では粉っぽくぱさぱさした仕上がりになり、牛乳と砂糖を加えると薄力粉のクッキーに近くなると紹介されています。
ここから読み取れるのは、米粉のお菓子では水分と糖が食感を支える大事な役割を担っているということです。糖には水分を抱え込む働きがあるので、甘さを控えようと砂糖を減らすと、ぱさつきが出やすくなります。同じページでは、米粉のクッキーは甘さを感じにくいとも紹介されていて、「甘さが足りないから砂糖を足す」のではなく、もともとそういう性質の粉だと知っておくことも大切です。
ケーキでありがちなのは、健康を気にして砂糖や油脂を自己流で減らし、ぱさついた生地になってしまうケースです。米粉のレシピで砂糖や牛乳が多めに感じられても、それは食感を保つための配合であることが多いもの。減らしたい場合は一度にたくさん減らさず、少しずつ様子を見て調整しましょう。焼きすぎによる乾燥も粉っぽさの原因になるので、焼き時間の見直しもあわせて行うのが効果的です。
膨らみが足りないときに見直したいこと
「膨らまない」という悩みには、いくつかの原因が重なっていることが多いです。農林水産省の解説では、パンについて「米粉は小麦粉と同じ方法ではうまく膨化しませんが、加水量や焼き時間、添加材料の工夫で膨らみが良くなります」と説明されています。
同じページでは、膨らみを助ける工夫として、片栗粉などのでんぷん、キサンタンガムなどの増粘多糖類、イモ類、糊化した米粉などが挙げられています。これはパンについての解説ですが、「水の量」「焼き時間」「副材料」の3方向から見直すという考え方は、ケーキにも応用できます。
ケーキで膨らみが足りないときは、まず卵の泡立てが十分だったかを振り返ってください。グルテンのない米粉では、泡が膨らみの主役です。次に、焼き時間が短すぎて、膨らんだ生地が固まる前に取り出していないか。最後に、生地が硬すぎて泡が広がれなかった可能性も考えられます。原因を一つずつ確かめると、次の一本で何を変えればいいかがはっきりします。副材料を足す場合は、自己流ではなく、その材料を使う前提で書かれたレシピに従いましょう。
焼き時間と焼き色はどう読む?オーブンの前で迷わないために
小麦粉レシピの時間で取り出すと、中が生っぽくなる
焼き時間の失敗は、米粉のケーキでとくに起きやすいものです。先ほど紹介したとおり、農林水産省の解説では、同じ配合の生地各250gを160℃で焼くと、米粉では45分間、小麦粉では38分間と、米粉のほうが焼き時間が長くなると説明されています。理由は、米のでんぷんが糊化する温度が高いためとされています。
この性質を知らずに、小麦粉のレシピに書かれた時間どおりにオーブンから出すと、表面は焼き色がついて焼けているように見えても、中心はでんぷんが十分に固まっていない状態になります。切ったときに中心がねっとりしていたり、冷めるにつれて沈んでしまったりするのは、この「焼き不足」が原因であることが多いんです。
対策は、時間ではなく生地の状態で判断することです。竹串を中心に刺して、ぬれた生地がついてこないかを確かめましょう。表面を指で軽く押して弾力が戻るかも目安になります。焼けていなければ数分ずつ延ばして確認を繰り返します。米粉用のレシピなら、もともと長めの焼き時間で組まれていることが多いので、それに従うのが安心です。
米のでんぷんは糊化温度が高く、同じ配合でも米粉のほうが焼き時間が長くなるとされています。表面の焼き色だけで判断して取り出すと、中心が生っぽく沈む原因に。竹串で中心の焼け具合を確かめ、足りなければ少しずつ延ばして確認しましょう。
焼きすぎると、端が硬くなるという逆の失敗も
焼き不足を恐れて長く焼きすぎると、今度は逆の失敗が起きます。農林水産省の解説では、焼き時間が長くなると水分含量の低下や端部が硬くなることが指摘されています。米粉はもともと焼き時間が長くなりやすいので、厚い生地を焼くほど、この乾燥と端の硬さが出やすくなるわけです。
台所でありがちなのは、パウンドケーキの中心を焼き切るまでオーブンに入れておいた結果、型に接していた側面や角がカリカリに硬くなってしまうパターンです。食べてみると、中はしっとりしているのに外側がぱさぱさ、という差が出てしまいます。
この失敗を防ぐコツは、焼き時間そのものを短くできる形を選ぶことです。ロールケーキのような薄い生地が適しているとされるのはこのためです。厚みのあるケーキを焼きたい場合は、浅い型に替えて厚みを抑える、表面が先に色づいたらアルミ箔をかぶせる、焼き上がったら早めに型から出して乾燥した熱気にさらさない、といった工夫で乾きを抑えられます。焼き不足と焼きすぎ、その両方の間でちょうどいいところを探る意識を持ちましょう。
焼き色が薄いのは、米粉の性質と知っておく
米粉のお菓子は、小麦粉のものと比べて焼き色が淡く仕上がりやすい傾向があります。農林水産省の解説では、クッキーについて「米粉クッキーは焼き色が薄いので、大豆粉など他の粉を加えると焼き色が濃くなります。」と紹介されています。パンについても、米でんぷんは糊化温度が高く焼き上がりに時間がかかり、焼き色が薄いと説明されています。
この性質を知らないと、「まだ色が薄いから焼けていない」と判断して焼き続けてしまい、結果的に焼きすぎて乾燥させてしまうことがあります。焼き色の薄さは、米粉の場合、焼け具合のサインとして当てにならないことがあるんです。
コツは、焼き色ではなく竹串と弾力で焼け具合を判断すること。そのうえで、見た目にこんがりした色をつけたい場合は、大豆粉など他の粉を少し加える方法が紹介されています。ただし、他の粉を加えると食感や風味も変わり、小麦を使わないお菓子を作りたい場合は、加える粉の原材料表示も確認が必要です。焼き色の淡さは米粉らしさとして楽しむのもひとつの考え方です。
ノングルテンとグルテンフリーは同じ?袋の表示の読み方
お米には、もともとグルテンが含まれていない
米粉の袋を見ると、「ノングルテン」や「グルテンフリー」という言葉が書かれていることがあります。その前提として知っておきたいのが、お米そのものの性質です。農林水産省の解説では、米にはそもそもグルテンが含まれていないと説明されています。小麦粉のケーキで生地を支えるグルテンが、米粉にははじめから存在しないということです。
では、なぜわざわざ表示があるのか。それは、製粉や加工の過程で、小麦粉など外部からグルテンが混入する可能性があるからです。同じ解説では「米にはそもそもグルテンが含まれておらず、グルテン含有量1ppm以下とするには、製造工程を管理し外部からのグルテン混入を防止すれば良いことになります」と説明されています。
ここで勘違いしやすいのが、「米粉なら、どの製品も同じようにグルテンが入っていない」と考えてしまうことです。原料のお米にグルテンがなくても、製造する工場で小麦粉も扱っていれば混入の可能性はゼロとは言い切れません。表示は、その製品がどこまで管理されているかを読み取る手がかりなんです。
ノングルテンは1ppm以下、日本独自の基準
「グルテンフリー」と「ノングルテン」は、似ているようで基準が違います。農林水産省の解説によると、欧米の基準であるグルテンフリーはグルテン含有量20ppm以下とされ、これに対して日本独自のノングルテンは1ppm以下という、より厳しい基準が設定されています。
この基準に関わる仕組みとして、2017年6月に発足した日本米粉協会が認証制度を構築したと紹介されています。認証の要件には、ノングルテン米粉が主原料であること、小麦(特定原材料)不使用であること、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を行うこと、日本米粉協会の講習を受講することなどが挙げられています。さらに2020年には、ノングルテン米粉の製造工程管理JASが農林水産省により制定され、最終製品のグルテンが1ppm以下となるよう工程を管理するとされています。
つまり、ノングルテンの表示や認証は、「米粉だからグルテンがない」という原料の話ではなく、「製造工程でグルテンの混入を管理している」という証しだと読むのが正確です。袋にどちらの表示があるか、認証マークがあるかを見ると、その製品の管理の水準がわかります。詳しい制度の内容は農林水産省の解説ページで確認できます。
グルテンフリーは欧米の基準でグルテン含有量20ppm以下、ノングルテンは日本独自の基準で1ppm以下。お米にはもともとグルテンがないので、表示が示しているのは「製造工程で混入を管理しているかどうか」です。
表示を確認するときに気をつけたいこと
米粉のケーキを作るとき、粉の表示だけを見て安心してしまうのはよくある見落としです。ケーキには米粉のほかに、ベーキングパウダー、チョコレート、ミックス粉など、いろいろな材料を使います。粉がノングルテンでも、ほかの材料に小麦由来の原料が含まれていれば、ケーキ全体としての条件は変わってしまいます。小麦を使わないお菓子を作りたい場合は、すべての材料の原材料表示を確認しましょう。
もうひとつ注意したいのが、パン用の米粉です。農林水産省の解説では、米粉にグルテンを15~20%加えると小麦粉と同様の作り方でパンを作ることができ、その場合は添加した旨の明記が必要とされています。パン用やミックス粉の中には、グルテンを加えた製品もあるということです。ケーキ用に流用するときは、原材料欄にグルテンや小麦の記載がないかを確かめてください。
なお、米粉やノングルテン表示は、特定の体質や食事制限への対応を保証するものではありません。体調や食事制限については医師・管理栄養士に相談を。この記事では、表示の意味と読み方の説明にとどめています。家庭で楽しむお菓子づくりとして、表示を正しく読み取る力を身につけておくと、粉選びの迷いがぐっと減ります。
まとめ
米粉のケーキづくりは、小麦粉と同じ粉だと思わずに、「水を多く吸い、焼き上がるまで時間がかかり、泡がつぶれにくい粉」として付き合うところから始まります。最初の一歩は、菓子・料理用の米粉を一つ決めて、そのメーカーや米粉用に書かれたレシピでロールケーキのような薄い生地を焼いてみること。焼き上がりの食感を確かめたら、水分や焼き時間を少しずつ自分好みに寄せていけば、米粉ならではのしっとりしたケーキに近づけます。
※米粉の用途別基準やノングルテンの認証制度の詳細は、最新情報を公式サイトでご確認ください。

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