小麦粉のホットケーキミックスと同じ感覚で米粉を使ったら、生地がゆるすぎた、粉っぽさが残った、外だけ焦げて中が生っぽかった。米粉でパンケーキを焼くと、こうした小さなつまずきが起きがちです。その多くは腕前の問題ではなく、米粉と小麦粉の性質がもともと違うことから起きています。
先に結論を言うと、パンケーキの米粉レシピは菓子・料理用の米粉を選ぶこと、公表されたレシピの配合どおりに量ること、生地の状態を見てから弱めの中火で焼くことの3点でほぼ決まります。米粉にはグルテンがないので、小麦粉のレシピの粉だけを米粉に置き換えると、水分や膨らみのバランスが崩れやすいんです。
この記事では、農林水産省の米粉に関する資料と、三菱電機の食情報サイト、農林水産省北陸農政局がそれぞれ公開している米粉パンケーキ(ホットケーキ)のレシピを材料に、配合の読み方、粉の選び方、混ぜ方と焼き方の理屈、グルテンフリー表示の見方までを順番に説明します。
・米粉で焼くとしっとり・モチモチになりやすい理由(グルテン・吸水・でんぷん損傷度)
・公表された2つの米粉レシピの配合の違いと、その読み取り方
・袋のどこを見て米粉を選べばよいか(用途別基準の1番〜3番)
・粉っぽさと焦げを防ぐ、混ぜ方・休ませ方・火加減の考え方
米粉で焼くと食感が変わるのはなぜ?粉の性質から見る3つの違い

グルテンがない米粉は、生地のつながり方が小麦粉と違う
米粉の生地が小麦粉の生地と違うふるまいをする一番の理由は、グルテンの有無です。農林水産省の米粉の特徴を説明するページには「米にはグルテンがないため米粉パンを作ると、膨らみにくくつぶれやすくなります」と書かれています(農林水産省「米粉の特徴」)。
小麦粉は水を加えて混ぜるとグルテンの網目ができ、その網目が気泡を抱え込んで生地を支えます。米粉にはこの網目ができないため、生地を支える力は主にでんぷんと卵、ベーキングパウダーの泡に頼ることになります。同じページでは、米粉パンの場合はグルテンを15~20%加えると小麦粉と同様の作り方でパンが作れると説明されています。裏を返せば、米粉だけでは小麦粉と同じ弾力は出ないということです。
台所でよく起きるのが、手元の小麦粉パンケーキのレシピの粉だけを米粉に替えてしまう失敗です。水分量や膨らませる材料の量は小麦粉の性質に合わせて組まれているので、粉だけ替えると生地がゆるすぎたり、焼き上がりが平たくなったりしやすくなります。最初は米粉で作ることを前提に組まれたレシピを選び、その配合を崩さずに焼いてみるのが近道です。
同じ米粉でも吸水量が違うから、水分は粉に合わせて考える
米粉は銘柄によって水の吸い方が違う、という点も押さえておきたいところです。農林水産省は、原料米の品種や製粉方法が多様で、製造工場によって吸水量などの品質にバラツキが生じることを、米粉の用途別基準を作った背景として挙げています。
三菱電機の食情報サイトに掲載されている米粉パンケーキのレシピでは、材料欄で米粉を水で溶くととろりとなるタイプと指定しています(三菱電機 クラブ ミツビシ)。わざわざ注記があるのは、粉によって同じ水分量でも生地のとろみが変わるからだと読めます。参考までに、農林水産省の資料では米粉パンは加水量が粉の約100%前後と多くバッター状の生地になり、約60%の小麦粉パンのように手でこねられないとされています。米粉は水分をたっぷり抱えた生地になりやすい粉なんです。
やりがちなのは、前に使っていた米粉と別の銘柄に替えたのに、同じ分量で作って生地の固さが変わってしまうケースです。銘柄を替えたら、まずはレシピどおりに混ぜて、生地がお玉からとろりと流れるかを目で確かめてください。極端にゆるい・固いと感じたら、その粉はレシピの想定と違うタイプかもしれません。袋の用途表示を見直すのが先です。
でんぷん損傷度とアミロースが、しっとり感を左右する
米粉のパンケーキがしっとり・モチモチに仕上がりやすいのには、でんぷんの状態も関わっています。農林水産省は「でんぷん損傷度が低いと米粉パンにおいては膨らみが大きくなり、反対にでんぷん損傷度が高いと米粉パンやスポンジケーキでは、しっとり感が増します」と説明しています(農林水産省「米粉の特徴」)。
もう1つの要素がアミロースです。同じページでは、日本の一般的なうるち米はアミロース含有率17~23%程度の中アミロース米で、もち米は0%とされています。アミロースが多いとさらっとした食感で型崩れしにくく、少ないとしっとり感が増す傾向があると説明されています。ごはんの粘りの違いと同じ理屈が、粉になっても生きているわけです。
品種によるごはんの食感の違いについては、こちらの記事でも詳しく扱っています。

パンケーキでいえば、どの粉を使うかでしっとり寄りにも、軽め寄りにも振れるということです。ただ、袋にでんぷん損傷度やアミロースの数値が書かれていることは多くありません。数値を追うより、次の章以降で説明する用途の表示と、公表レシピの指定に従うほうが現実的です。
でんぷん損傷度=製粉のときにでんぷんの粒がどれだけ傷ついたかの度合い。農林水産省の説明では、高いほど米粉パンやスポンジケーキのしっとり感が増すとされます。
アミロース=米のでんぷんを構成する成分の1つ。多いとさらっと、少ないとしっとりした食感になる傾向があり、もち米は0%とされています。
パンケーキの米粉レシピ、公表された2つの配合を並べると何が見える?
三菱電機のレシピは、ヨーグルト入りで粉150g
1つ目は、三菱電機の食情報サイト(クラブ ミツビシ)に掲載されている米粉パンケーキです。直径14~15cmのパンケーキ4枚分として、米粉150g(水で溶くととろりとなるタイプ)、ベーキングパウダー大さじ1/2(6g)、卵1個、砂糖15g、塩小さじ1/4、無糖ヨーグルト70g、牛乳30gという配合が紹介されています。焼くための油とバター、仕上げのメープルシロップやハチミツは適量です。
この配合の特徴は、水分の多くをヨーグルトでまかなっている点です。牛乳だけで水分を足す配合に比べて生地に重さととろみが出やすく、ゆるくなりすぎるのを防ぐ役割があると考えられます。砂糖が控えめなので、甘いトッピングを前提にした組み立てとも読めます。
混ぜ方の案内も具体的です。粉類を泡立て器で静かにさっくり混ぜておき、別のボウルで卵に砂糖・塩・ヨーグルト・牛乳を混ぜてから、粉を加えて静かにさっくり混ぜ合わせる流れです。ベーキングパウダーをグラムでも併記しているので、計量スプーンの山盛り・すり切りの差で膨らみが変わる心配を減らせます。はかりがあるなら、グラムで量るのがおすすめです。
注意したいのは、米粉の種類指定があることです。とろりとなるタイプではない米粉で同じ配合にすると、生地の状態が変わる可能性があります。初回は指定に合う粉を選んでおくと、失敗したときの原因が粉なのか手順なのかを切り分けやすくなります。
北陸農政局のレシピは、牛乳と溶かしバターで粉160g
2つ目は、農林水産省北陸農政局が米粉の普及のために公開している米粉のホットケーキです(北陸農政局「米粉のホットケーキ」)。材料は米粉160g、ベーキングパウダー小さじ2、牛乳140ml、バター40g、卵2個、砂糖60g、バニラエッセンス少々で、所要時間は20分とされています。
手順は、米粉をふるい、卵・牛乳・溶かしバター・砂糖・バニラエッセンスを混ぜたところに米粉とベーキングパウダーを加えて混ぜる流れです。焼くときはフライパンを温めてバターを塗り、お玉一杯分の生地を流し入れ、表面にぶつぶつが出たらひっくり返します。
三菱電機の配合と比べると、卵が2個、溶かしバターも入り、砂糖も多めです。卵と油脂、砂糖が多い生地は、焼き色がつきやすく、コクのある仕上がりになりやすい組み立てといえます。同レシピのポイントとして、市販のミックスよりしっとり・モチモチに仕上がることが紹介されています。
この配合で気をつけたいのは焼き色です。砂糖とバターが多い分、火が強いと中まで火が通る前に表面が濃く色づきやすくなります。後の章で説明する弱めの火加減と、生地を休ませる工程とセットで考えると扱いやすくなります。
配合の違いから読み取れること:1つの配合を一般化しない
2つを並べてみると、同じ米粉のパンケーキでも、水分の入れ方、膨らませる材料の量、甘さの設計がまったく違うことがわかります。お米の教科書で公開レシピの記載をそのまま表に整理しました。
| 項目 | 三菱電機 クラブ ミツビシ | 農林水産省 北陸農政局 |
|---|---|---|
| 米粉 | 150g(水で溶くととろりとなるタイプ) | 160g(ふるって使う) |
| ベーキングパウダー | 大さじ1/2(6g) | 小さじ2 |
| 水分・油脂 | 無糖ヨーグルト70g、牛乳30g | 牛乳140ml、バター40g |
| 卵・砂糖 | 卵1個、砂糖15g、塩小さじ1/4 | 卵2個、砂糖60g、バニラエッセンス少々 |
| 特徴的な工程 | 粉類を先に合わせ、静かにさっくり混ぜる | 混ぜ終えたら1時間ほど休ませる |
ここから言えるのは、米粉パンケーキには決まった黄金比があるわけではないということです。農林水産省が指摘するように、米粉は製造工場によって吸水量にばらつきがあります。それぞれのレシピは、想定している米粉に合わせて水分量を組んでいると考えるのが自然です。
やりがちなのが、2つのレシピのいいとこ取りをして、ヨーグルトも牛乳もバターも入れてしまうアレンジです。水分と油脂が想定より増え、生地がゆるくなって焼き上がりが平たくなる原因になります。まずはどちらか1本を選び、その配合どおりに作ってから、好みに応じて次の1枚で少しずつ変えるほうが、何が効いたのかを判断しやすくなります。
米粉はどれを買えばいい?袋の表示で確かめたい3つのポイント

用途別基準の1番(菓子・料理用)が目安になる理由
米粉選びの手がかりになるのが、農林水産省が平成29年3月29日に公表した米粉の用途別基準です。この基準は「米粉の主な用途について、菓子・料理用、パン用及び麺用に分類する。」としています(農林水産省「米粉の用途別基準」)。1番が菓子・料理用、2番がパン用、3番が麺用です。
| 項目 | 1番 菓子・料理用 | 2番 パン用 | 3番 麺用 |
|---|---|---|---|
| アミロース含有率 | 20%未満 | 15%以上25%未満 | 20%以上 |
| その他の主な条件 | 澱粉損傷度10%未満、粒径75μm以下の比率が50%以上、水分含有率10%以上15%未満 | 澱粉損傷度10%未満、グルテン添加率18~20%程度(添加の旨を明記) | 一部、菓子・料理用を含む |
| パンケーキでの考え方 | スポンジケーキやお好み焼き粉と同じ区分で、目安にしやすい | グルテン入りの場合があり、表示の確認が必要 | アミロースが多く、さらっとした食感寄り |
1番はさらに参考として、アミロース15%未満のソフトタイプ(柔らかいスポンジケーキ、シフォンケーキ、クッキー)と、15%以上20%未満のミドルタイプ(スポンジケーキ、クッキー、天ぷら粉、お好み焼き粉など)に分けて例示されています。パンケーキという名前で書かれた公式の記載は見当たりませんが、生地の性質が近いスポンジケーキやお好み焼き粉と同じ1番を目安にするのが妥当だと考えられます。
ケーキ全般で米粉を使うときの粉の選び方は、こちらの記事でも詳しく説明しています。

パン用(2番)の米粉は、グルテン入りのことがある
意外と見落としやすいのが、パン用の米粉です。用途別基準では、2番パン用はグルテン添加率18~20%程度とされ、グルテンを添加している旨を明記する必要があると定められています。米粉と書いてあっても、パン用の中には小麦由来のグルテンが入っている製品があるということです。
なぜパン用にグルテンを加えるのか。先に触れたとおり、米にはグルテンがなく、そのままでは小麦粉のパンのように生地が膨らみを保てないからです。農林水産省は、グルテンは小麦由来なので表示が必要だと説明しています。パンケーキはベーキングパウダーで膨らませる生地なので、パン用の性質を必要としません。
台所で起きやすいのは、家にあったパン用米粉をそのままパンケーキに使ってしまうケースです。焼けないわけではありませんが、グルテンが入っていれば食感は小麦粉寄りになり、米粉らしいしっとり感とは違う仕上がりになる可能性があります。グルテンを含まないものを選びたい理由がある場合は、なおさら袋の原材料欄と用途表示を確かめてください。
確認する場所は、袋の表面の用途の表記と、裏面の原材料名です。原材料に小麦たん白、グルテンなどの記載があればグルテン入りです。用途表示に1番・2番・3番の区分が書かれている製品なら、それも判断材料になります。
上新粉は基準の対象外。推奨マークも手がかりになる
米の粉というと上新粉を思い浮かべる人も多いと思います。ただ、用途別基準には「上新粉など、既存用途向けの米穀粉は対象としない。」と明記されています(農林水産省「米粉の用途別基準」)。団子や柏餅など昔からの和菓子に使われてきた粉は、この基準の枠の外にあるということです。
この記事で紹介している2つのレシピは、どちらも材料を米粉と記載しています。上新粉で同じ配合にした場合に同じ仕上がりになるかは、公表された情報からは確認できません。粒の細かさや水の吸い方が想定と違う可能性があるので、パンケーキに使うなら製菓用・料理用と書かれた米粉を選ぶほうが確実です。
もう1つの手がかりが推奨マークです。農林水産省の用途別基準のページでは、日本米粉協会が用途別基準に適合する製品に協会の推奨マークを付与する仕組みを開始したことが紹介されています(農林水産省「米粉の用途別基準」紹介ページ)。
ただし、用途別基準そのものは、製造業者の自主的な取組を促すためのものと位置付けられています。マークや区分の表示がない米粉が品質的に劣るという意味ではありません。表示がない場合は、製菓用・お菓子作りに、といった袋の用途説明を読んで選べば十分です。
混ぜ方と生地の休ませ方で、粉っぽさはここまで変わる
粉類を先に合わせておくのは、ベーキングパウダーを散らすため
三菱電機のレシピでは、米粉とベーキングパウダーを先に泡立て器で静かにさっくり混ぜておく手順になっています。北陸農政局のレシピでも、米粉は最初にふるっておく工程があります。どちらも、液体と合わせる前に粉の状態を整えておくという考え方です。
理由はシンプルで、ベーキングパウダーが一か所に固まったまま液体と合わさると、生地の中で膨らむ場所と膨らまない場所のムラができやすいからです。少量の粉で生地全体を膨らませる材料なので、偏りがそのまま焼き上がりの凹凸やまだらな食感になって表れます。
やりがちな失敗は、計量した材料を全部ボウルに入れてから一度に混ぜてしまうことです。粉どうしが固まったまま液体に入ると、その中にベーキングパウダーが閉じ込められて、膨らみにムラが出やすくなります。農林水産省は、米粉は小麦粉のようにグルテンの影響でダマがつぶしにくくなることはないと説明していますが、粉類を先に合わせておくほうが確実です。結果として、焼いたあとに白い粉の塊が残ることがあります。
コツは、粉類のボウルと液体のボウルを分けることです。粉類は泡立て器で全体の色が均一になるまで軽く混ぜ、液体は卵がしっかり溶けるまで先に混ぜておきます。そのうえで粉を液体に加えると、少ない混ぜ回数でなめらかな生地になります。
実は、米粉の生地はグルテンより泡を守るために静かに混ぜる
小麦粉のパンケーキでは、混ぜすぎるとグルテンができて固くなるから、さっくり混ぜるようにとよく言われます。意外と知られていないけれど、米粉にはそもそもグルテンがないので、この理由は米粉にはそのまま当てはまりません。農林水産省も、米粉の衣はグルテン形成がないため時間が経っても粘性がほとんど変わらないと説明しています。
それでも三菱電機のレシピは、粉を合わせる場面で静かにさっくり混ぜるよう案内しています。米粉の場合に気にしたいのは、グルテンではなく泡のほうだと考えられます。農林水産省の米粉の調理科学のページでは、スポンジケーキの米粉生地は小麦粉生地より粘性が低く、粉を混ぜるときに気泡がつぶれにくいと説明されています。それでも、ベーキングパウダーが出し始めた泡や、卵を混ぜたときに入った空気は、勢いよくかき回せば外へ逃げやすくなります。静かに混ぜるのは、せっかくの泡を無駄にしないためと考えられます。
具体的には、泡立て器を立てて勢いよくぐるぐる回すと、生地の表面に細かい泡が浮いては消える状態になります。このまま焼くと、膨らみが弱く、目の詰まった重い食感になりやすくなります。
コツは、泡立て器をボウルの底から大きく動かして、粉が見えなくなったところで止めることです。米粉は小麦粉のように混ぜすぎで固くなる心配が少ない分、ダマが残っているなら焦らずほぐしてかまいません。ただし勢いではなく、静かに動かすことを意識してください。
1時間休ませると粉っぽさが消える理由
米粉パンケーキで多い悩みが、焼き上がりに粉っぽさが残ることです。北陸農政局のレシピは、この点について「生地を混ぜ終えた時点で、1時間ほど生地を休ませておくと、粉っぽさがなくなります。」と案内しています(北陸農政局「米粉のホットケーキ」)。
粉っぽさが消える理由としては、休ませている間に米粉の粒が水分を吸い、生地全体になじむことが考えられます。第1章で触れたように、米粉は水分を多く抱える性質があり、吸水量も粉によって違います。混ぜた直後はまだ粒の内側まで水が行き渡っておらず、そのまま焼くとざらつきや粉の味として残りやすいわけです。
状況:朝食に急いで焼こうと、生地を混ぜ終えた直後にフライパンへ流したら、焼き上がりがざらついて粉の味が残った。
原因:米粉が水分を十分に吸う前に焼いたため。休ませる工程があるレシピで、その工程を省いたことが原因になりやすい。
対策:休ませる指示があるレシピでは、その時間を確保する。時間がない日は、休ませる工程を含まないレシピを選ぶ。
注意したいのは、休ませる工程はレシピによって有無が違うことです。三菱電機のレシピには休ませる工程の記載がありません。ベーキングパウダーの量や水分の組み立てが違うので、休ませる指示のあるレシピで休ませ、指示のないレシピは手順どおりに焼くのが原則です。自己判断で工程を足したり省いたりすると、膨らみ方が変わる可能性があります。
フライパンで焼くとき、火加減と返すタイミングはどこを見る?
弱めの中火が基本になるのは、表面が先に色づきやすいから
焼くときの火加減について、三菱電機のレシピは「フライパンを弱めの中火で熱して薄く油をぬり、1/4量の生地を丸く流し入れる。表面にプツプツと気泡ができたら裏返し、両面を薄く色づくまで焼く」と案内しています(三菱電機 クラブ ミツビシ)。
弱めの中火がすすめられる理由は、パンケーキの生地には砂糖や卵、乳製品が入っていて、表面が中より先に色づきやすいからだと考えられます。生地には厚みがあるので、中心まで熱が届くには時間がかかります。火が強いと、中が固まる前に外側だけが焼き色の限界を超えてしまうんです。
状況:早く焼き上げたくて火を強めたら、裏返した面が黒っぽく焦げ、切ると中心がべたっとしていた。
原因:火が強すぎて、中まで熱が届く前に表面が焦げた。砂糖や溶かしバターの多い配合ほど起きやすい。
対策:弱めの中火を守り、表面の気泡を目安に返す。1枚目は火加減の確認用と考え、焼き色を見て2枚目以降で微調整する。
特に北陸農政局の配合のように砂糖やバターが多い生地は、同じ火加減でも焼き色がつくのが早くなります。1枚目は試し焼きと割り切って、裏返したときの色を確認してから2枚目の火加減を決めると、全体の仕上がりが揃いやすくなります。
プツプツの気泡が、裏返すタイミングの目印
2つのレシピは、裏返すタイミングをどちらも表面の気泡で判断しています。三菱電機のレシピは表面にプツプツと気泡ができたら、北陸農政局のレシピは表面にぶつぶつが出たら返すという案内です。時間で決めるのではなく、生地の変化を見て判断するやり方です。
気泡が目安になる理由は、生地の中でベーキングパウダーが出した泡が表面まで上がってきて、それが割れたまま閉じなくなるのは、生地のまわりが固まり始めた合図だからです。まだ生地がゆるいうちに返すと、上の面の生の生地が流れて形が崩れたり、フライ返しにくっついたりします。
やりがちなのは、焼き色が気になって何度も裏をのぞいてしまうことです。そのたびに生地が動いて底面がフライパンから離れ、熱の伝わり方がムラになります。結果として、焼き色が斑点状になったり、膨らみが片寄ったりしやすくなります。
コツは、生地を流したらあまり触らず、表面の様子だけを見ることです。気泡が全体に出て、ふちのツヤが少し落ち着いてきたら、フライ返しを生地の下に深く差し入れて一気に返します。返したあとは、両面が薄く色づくまで焼けば完成です。
油とバターは薄く。ホットプレートで焼くときの考え方
三菱電機のレシピはフライパンに薄く油をぬる、北陸農政局のレシピはフライパンを温めてバターを塗るという手順です。どちらも、たっぷり油をひくのではなく、薄く塗る程度にしている点が共通しています。
油が多いと、生地の底面が揚げ焼きのような状態になり、焼き色がまだらになったり、表面がカリッと固くなったりしやすくなります。パンケーキらしい均一な薄い焼き色を目指すなら、キッチンペーパーなどで余分な油を拭き取るくらいがちょうどいいと考えられます。バターは焦げやすいので、焼き色が早く濃くなるようなら火をさらに少し弱めます。
ホットプレートで何枚も同時に焼きたい場合もあると思います。ホットプレートは機種によって温度の目盛りや加熱の特徴が違うため、適した温度はお使いの機種の取扱説明書で確認してください。考え方はフライパンと同じで、表面の気泡を見て返し、両面が薄く色づいたら取り出します。
注意したいのは、プレートの中央と端で温度に差が出やすい点です。中央の生地だけ早く色づくようなら、焼き色を見て位置を入れ替えると揃いやすくなります。1枚目で焼き色を確認してから、まとめて焼き始めるのはフライパンと同じです。
グルテンフリーとノングルテン、袋の表示はどこが違う?
ノングルテン米粉は、グルテン含有量1ppm以下という基準
米粉の袋に、ノングルテンという表示を見かけることがあります。これは日本米粉協会の第三者認証制度に基づく表示で、農林水産省の資料によると、サンプル検査でグルテン含有量が1ppm以下であること、および同じ製造工場で安定して生産されていることが確認された米粉に認証マークが付与される仕組みです(農林水産省資料)。
なぜ米粉なのにわざわざ基準があるのか。米そのものにはグルテンがありませんが、製粉する工場で小麦粉も扱っていれば、製造の過程で混入する可能性があります。さらに前の章で触れたように、パン用の米粉にはグルテンを添加した製品もあります。米粉という名前だけでは、グルテンを含まないとは言い切れないわけです。
用途別基準と同時に公表された表示のガイドラインでは、ノングルテンの表示をする場合は第三者機関の検査を受け、グルテン含有量が1ppm以下の製品である旨を付記するとされています。米粉を使った加工製品については、原材料にグルテン・小麦を含まないノングルテン米粉を使っている旨を表示する考え方が示されています。
グルテンを含まない米粉を選びたい理由があるなら、袋のノングルテンの表示や認証マークの有無を確認するのが手がかりになります。表示がない米粉は、グルテンが入っているという意味ではありませんが、1ppm以下であることが確認された製品とも言えません。
欧米のグルテンフリー表示とは、物差しが違う
グルテンフリーという言葉のほうが耳になじみがあるかもしれません。日本米粉協会の資料では、欧米のグルテンフリー表示は20ppm未満または20ppm以下を基準にしていると整理されています。これに対して、ノングルテン表示は日本産米粉を対象に1ppm以下という基準です。
数字を見比べるとわかるように、同じようにグルテンを含まないことを伝える表示でも、基準になっている値が違います。ノングルテンの1ppm以下は、欧米のグルテンフリーの基準より低い値に設定されているということです。
台所で起きやすい誤解は、グルテンフリーと書かれた輸入のミックス粉と、国内のノングルテン米粉を同じものだと考えてしまうことです。どちらもグルテンを抑えた製品であることに変わりはありませんが、どの基準で表示されているかは製品ごとに違います。米粉以外の原料が混ざったミックス粉なら、原材料欄の確認も欠かせません。
表示を比べるときは、どの基準による表示なのか、認証マークがあるのかを確認してください。パッケージに説明がない場合は、製造元の案内を確認するのが確実です。
米粉という名前だけでは、グルテンを含まないとは言い切れません。パン用米粉にはグルテン添加品があり、製造工程で混入する可能性もあります。グルテンを含まない米粉を選びたいときは、ノングルテンの表示(グルテン含有量1ppm以下)や認証マーク、原材料欄で確認しましょう。
製造工程を管理するJAS0014という規格もある
ノングルテン米粉には、製造工程の管理に関する国の規格もあります。農林水産省のページでは、「令和2年10月に農林水産省は、米粉の製造工程において、グルテンが混入する可能性のある箇所を特定し、グルテンの混入を防ぐことにより、製品のグルテン含有量が1ppm以下となるように製造工程を管理する規格である「ノングルテン米粉の製造工程管理JAS(JAS0014)」を制定しました。」と説明されています(農林水産省「ノングルテン米粉」)。
日本米粉協会の認証が製品のサンプル検査を軸にしているのに対し、JAS0014は製造工程そのものでグルテンの混入を防ぐ管理能力に着目した規格です。同じページでは、令和3年6月30日に第1号の認証が行われたことも紹介されています。主に企業間の取引で、工程管理の能力を示すための仕組みとされています。
家庭でパンケーキを焼く立場からすると、JASの認証を直接目にする機会は多くないかもしれません。ただ、ノングルテンという表示の背景に、製品検査と工程管理という2つの仕組みがあることを知っておくと、表示の意味を読み違えにくくなります。
米粉なら安心、と思い込まないために
ここまで見てきたように、米粉のグルテンに関する表示には段階があります。ノングルテンの認証を受けた米粉、表示のない一般的な米粉、グルテンを添加したパン用米粉。同じ米粉という名前でも、中身の条件は違います。
だからこそ、米粉で作ったパンケーキだからグルテンの心配はない、と一律に考えるのは避けたいところです。粉だけでなく、ベーキングパウダーやトッピングなどほかの材料の原材料表示も関わってきます。お米の教科書では、表示の仕組みを説明することはできても、特定の食事制限に合うかどうかを判断することはできません。
小麦などの食物アレルギーや、医師から食事の指導を受けている場合の材料選びについては、医師・管理栄養士に相談してください。この記事で扱っているのは、あくまで家庭のおやつとして米粉パンケーキを焼くための、粉の性質と表示の読み方です。
家庭での使い方としては、グルテンを含まないものを選びたいときに袋の表示を確認する、という習慣を持っておくだけでも十分役に立ちます。原材料欄と用途表示、認証マークの3か所を見る癖をつけておきましょう。
場面別に考えるパンケーキの米粉レシピ:アレンジと焼いたあと
朝に焼きたい人は、粉類の計量を前の晩に済ませておく
平日の朝に米粉パンケーキを焼きたい人にとって、ネックになるのは時間です。北陸農政局のレシピは所要時間20分とされていますが、そこに1時間ほど生地を休ませる工程が加わると、朝の短い時間には収まりにくくなります。
そこで取り入れやすいのが、休ませる工程の記載がない三菱電機のレシピを選ぶことと、粉類の計量を前の晩に済ませておくことです。米粉とベーキングパウダーを量ってボウルや保存袋に合わせておけば、朝は液体を混ぜて合わせるだけで焼き始められます。粉類だけなら水分が入っていないので、生地の状態が変わる心配もありません。
やりがちなのは、朝の時間を節約しようと、液体まで混ぜた生地を作り置きしてしまうことです。ベーキングパウダーは水分と合わさると反応が始まる材料なので、作ってから長く置いた生地で同じ膨らみになるかは、公表レシピの範囲では確認できません。作り置きを前提にしたレシピでない限り、生地は焼く直前に合わせるのが無難です。
時間に余裕のある週末は北陸農政局のレシピで休ませる工程まで含めて作り、平日は三菱電機のレシピで手早く焼く、という使い分けも1つの方法です。
しっとり重めが好きか、軽めが好きかで配合を選ぶ
好みの食感で選ぶなら、配合の組み立てが手がかりになります。北陸農政局のレシピは卵2個と溶かしバター、多めの砂糖を使い、同レシピのポイントとして市販ミックスよりしっとり・モチモチに仕上がると紹介されています。コクがあって、トッピングなしでも甘さを感じる仕上がりを好む人に向いた組み立てです。
一方、三菱電機のレシピは砂糖15gと控えめで、水分はヨーグルトと牛乳です。ヨーグルトのほのかな酸味があり、メープルシロップやハチミツ、果物などのトッピングで甘さを足す前提の配合と読めます。甘さを自分で調整したい人や、食事寄りに食べたい人に合わせやすい設計です。
具体的な使い分けを挙げると、おやつとして子どもと一緒に作るなら手順がわかりやすく甘さのある北陸農政局の配合、朝食でベーコンや卵を添えて食べたいなら甘さ控えめの三菱電機の配合、といった選び方ができます。
注意したいのは、2つの配合の長所を組み合わせようとして材料を増やすと、水分と油脂のバランスが崩れやすいことです。好みに寄せたいなら、まず片方を配合どおりに作り、その味を基準にして次回のトッピングや添えるものを変えるほうが失敗しにくくなります。
卵・牛乳を替えるアレンジは、配合のバランスごと考える
米粉パンケーキのアレンジとして、卵や牛乳を使わない作り方や、豆乳に替える作り方を探している人もいると思います。ここで知っておきたいのは、この記事で紹介した2つのレシピは、どちらも卵と乳製品を使う前提で組まれていることです。
卵は、グルテンのない米粉の生地で、焼いたときに固まって形を支える役割を担っていると考えられます。牛乳やヨーグルトは水分源であると同時に、生地のとろみにも関わります。これらを抜いたり別のものに替えたりすると、水分量も、生地を支える力も変わります。米粉は粉によって吸水量にばらつきがあるので、変化はさらに読みにくくなります。
やりがちなのは、レシピの牛乳を同じ量の水や別の飲料に替えて、ほかはそのまま焼いてしまうことです。とろみが変わって生地が広がりすぎたり、焼き色がつきにくくなったりする原因になります。
卵や牛乳を使わない米粉パンケーキを作りたい場合は、既存のレシピを自分で置き換えるより、最初からその材料で組み立てて公表されているレシピを探して、その配合どおりに作るのが確実です。食事制限のための置き換えを考えている場合は、前の章で触れたとおり、医師・管理栄養士への相談を優先してください。
焼いたあとは、食べ切れる量を焼くのが一番確実
パンケーキを焼きすぎたとき、どう保存するかも気になるところです。三菱電機のレシピでは、焼いた米粉のパンケーキをラップで包み、密封袋などに入れて冷凍保存も可能で、食べるときは電子レンジで軽く温めて解凍するよう案内されています。ただ、常温や冷蔵、冷凍でどのくらいの期間置けるかについて、公的機関や今回のレシピの公開元が示した目安は確認できませんでした。お米の教科書では、出所を示せない保存期間の数値は書かないことにしています。
そのうえで言えるのは、焼いたものは粗熱が取れたら乾燥しないよう包み、早めに食べるのが基本だということです。米粉の生地は水分を多く含むので、時間が経つと食感が変わりやすいと考えられます。特にヨーグルトや牛乳、卵を使った生地は傷みやすい材料を含むため、温かい場所に長く置かないようにしてください。
やりがちなのは、多めに焼いてお皿に重ねたまま、台所に置きっぱなしにしてしまうことです。重なった部分に湯気がこもって表面がべたつき、食感が落ちる原因にもなります。
いちばん確実なのは、食べ切れる量だけ焼くことです。今回紹介した三菱電機のレシピは直径14~15cmで4枚分なので、家族の人数に合わせて作る量の目安にしやすい配合です。余りそうなときは生地を作る前に量を調整し、焼いたものの保存に頼らない段取りを考えましょう。
まとめ
米粉はグルテンがなく、粉ごとに水の吸い方も違うので、小麦粉の感覚のままではつまずきやすい粉です。だからこそ、まずは三菱電機か北陸農政局、どちらか1本のレシピを選び、指定に合う米粉を用意して配合どおりに焼いてみてください。1枚目で火加減と焼き色を確かめれば、次の1枚から仕上がりがぐっと安定します。
※米粉の表示制度やレシピの内容は変わることがあります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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