圧力鍋は持っているけれど、カレーや角煮にしか使っていない。ご飯も炊けると聞いたことはあっても、水の量や火を止めるタイミングがわからない。焦がしたら鍋の手入れも大変そうで、なかなか試せない——そんな方は多いのではないでしょうか。圧力鍋は、蓋を閉めると中に蒸気が閉じ込められて圧力が上がり、ふつうの鍋より高い温度で水が沸く道具です。だからお米の芯まで短い時間で熱が届き、ふっくら炊き上げられます。その一方で、ふつうの鍋の感覚で火にかけると、焦げたり芯が残ったりしやすい道具でもあります。
結論から言うと、白米なら研いで浸水させたあと、強火で5分ほど加熱して圧をかけ、弱火で3〜5分、あとは火を止めて圧が自然に抜けるまで待つ、というのが基本の流れです。水は1合につき180〜250ml程度と幅があり、鍋の圧力の強さやお米の状態で調整します。この幅がなぜ生まれるのかを知っておくと、自分の鍋に合った水加減が見つけやすくなります。
この記事では、圧力で炊ける仕組み、おもり式とスプリング式の違い、手順と水加減、焦げや芯残りの原因、玄米の炊き方、消費者庁が呼びかけている安全な使い方、そして圧力IH炊飯器との使い分けまで、順番に理屈から解説します。
・圧力鍋だとご飯が速く炊ける仕組みと、炊飯器・土鍋との違い
・強火→弱火→自然減圧の基本手順と、1合180〜250mlの水加減の決め方
・焦げる・芯が残るといった失敗の原因と、硬く炊けたときの直し方
・玄米の炊き方と、やけどを防ぐための安全な使い方
圧力鍋でご飯を炊くと何が変わる?高い温度で炊ける仕組み

蓋を閉めて圧がかかると、水はより高い温度で沸く
圧力鍋でご飯がうまく炊けるいちばんの理由は、鍋の中の水がふつうの鍋より高い温度で沸くことにあります。水が沸騰する温度は、まわりの気圧によって変わります。高い山の上でご飯を炊くと芯が残りやすいと言われるのは、気圧が低くて水が低い温度で沸いてしまい、お米に十分な熱が届かないからです。圧力鍋はちょうどその逆で、蓋とパッキンで鍋を密閉し、発生した蒸気を閉じ込めることで中の圧力を高めます。圧力が上がると沸点も上がるので、平地の鍋より高い温度でお米を加熱できるわけです。
この原理は家電の炊飯器にも使われていて、圧力IH式はIH加熱に圧力をかけることで沸点を上げ、より高い温度で調理する方式だと説明されています。つまり圧力鍋は、圧力IH炊飯器と同じ考え方を、ガス火やIHコンロの上で手動でやっている道具だと言えます。やりがちなのは、ふつうの鍋と同じつもりで強火を続けてしまうことです。高い温度で一気に加熱される分、水分が飛ぶのも速く、底が焦げやすくなります。まずは手持ちの鍋の取扱説明書で、圧力の強さの表示と、炊飯時の火加減の案内を確認しておくのが近道です。
熱が芯まで届くから、炊き上がりまでが短い
圧力鍋のご飯が速く炊けるのは、高い温度の熱がお米の中心まで短い時間で届くからです。お米のでんぷんは、水を吸った状態で加熱されることで、やわらかく粘りのある状態に変わります。ふつうの鍋や炊飯器では、この変化をじっくり時間をかけて進めますが、圧力鍋は温度が高い分だけ変化が速く進みます。小型の圧力鍋なら、浸水なしでおよそ15分で炊き上がるという紹介もあります。
ただし、この速さには前提があります。お米の中心まで水が届いていないと、いくら温度が高くても芯は残ります。熱は高温でも、水はお米の表面から少しずつしか入っていかないからです。時短に気をとられて浸水を毎回省き、芯の残ったご飯になってしまうのは、よくあるつまずき方です。急ぐ日は浸水なしの手順も使えますが、ふだんは夏30分、冬1時間以上を目安に水を吸わせておくと、加熱の速さを生かしながら芯残りを防げます。時短の本当の効き目は、浸水した後の加熱時間が短いことだと考えておくとよいでしょう。
ふつうの鍋・土鍋・炊飯器と比べるとどう違う?
同じご飯でも、道具が変わると加熱の仕組みが変わり、手間や仕上がりの傾向も変わります。圧力鍋は加熱そのものは短い反面、火加減を自分で切り替える必要があります。土鍋やふつうの鍋は大気圧の下で炊くので温度は上がりきりませんが、ゆっくり加熱できる分だけ火加減の失敗が目立ちにくい面があります。炊飯器はスイッチを押せば加熱の制御を機械が引き受けてくれます。どれが上というより、何を手放して何を取るかの違いです。
| 項目 | 圧力鍋 | 土鍋・ふつうの鍋 | 圧力IH炊飯器 |
|---|---|---|---|
| 加熱の仕組み | 密閉して圧を上げ、高い温度で炊く | 大気圧の下で、火加減で炊く | IH加熱に圧力を加えて沸点を上げる |
| 火加減の手間 | 強火→弱火→消火の切り替えが必要 | 吹きこぼれや焦げを見ながら調整 | 機械が自動で制御 |
| 保温 | できない(食べる分を炊く) | できない | 保温機能あり |
| 向いている人・場面 | 玄米を炊きたい、加熱を短くしたい人 | 火加減を楽しみたい人 | 手間をかけずに毎日炊きたい人 |
表のとおり、圧力鍋の弱点は保温ができないことと、火加減を自分で見る必要があることです。逆に言えば、食べる分だけをその都度炊く暮らし方や、炊飯器では時間のかかる玄米を炊きたい場面で持ち味が出ます。
おもり式とスプリング式、どう違う?道具で変わる3つのポイント
おもり式は音と揺れで加圧がわかる
圧力鍋には、圧力を調整する仕組みとして大きくおもり式(重り式)とスプリング式(弁式)の2種類があります。おもり式は、金属の重りが蒸気の出口を塞いでいて、中の圧力が上がると重りが持ち上がって揺れ、シュシュという音を立てます。この音と揺れが、加圧が始まった合図になります。
ご飯を炊くときにこの合図が大事なのは、弱火に切り替えるタイミングを決める目印になるからです。強火のまま音が鳴り続けているのに気づかずにいると、蒸気と一緒に水分がどんどん外へ出ていき、底が焦げる原因になります。台所を離れて別の家事をしていて、戻ったら焦げたにおいがしていた、というのはおもり式でありがちな失敗です。おもり式を使うなら、加熱を始めたら鍋のそばを離れず、重りが揺れ始めたらすぐに火を弱めるのが基本です。音が大きい分、集合住宅の朝や夜に使うときは気になる人もいるので、その点も知っておくとよいでしょう。
おもり式(重り式)=金属の重りで蒸気口を塞ぎ、加圧すると重りが揺れて音で知らせるタイプ。
スプリング式(弁式)=ばねを使った弁で圧力をコントロールするタイプ。音が静か。
インジケーターロッド=鍋の中の圧力を示す部品。上がっていれば加圧中、下がれば減圧済みの目安になる。
スプリング式は静かで、目印は表示を見る
スプリング式は、ばねの入った弁で圧力をコントロールする仕組みで、おもり式のような大きな音がしません。静かで扱いやすい反面、音で加圧を知ることができないので、蓋についたインジケーターロッド(ピン)が上がってくるのを目で見て確認します。鍋の中の圧力を示す部品で、調理の加減や蓋を開けてよい時期を知らせてくれるものです。
静かなぶん、加圧に気づくのが遅れやすいのがスプリング式の注意点です。強火のまま時間が過ぎ、ピンが上がってからしばらく経ってから弱火にしたため、水分が減って焦げた、ということが起こりがちです。加熱中は鍋の真横で蓋の表示を見ておき、ピンが上がったら弱火に切り替える、という流れを体に覚えさせておくと安定します。また、製品によっては圧力の強さを切り替えられるものもあり、どの段階で炊くかによって弱火の時間も変わります。この点は次の項目で説明します。
アルミ・ステンレス・多層構造で、温まり方と重さが変わる
圧力鍋の材質は、ご飯の炊きやすさにも関わります。アルミは熱の伝わりが速く、沸騰までの時間が短いのが持ち味で、軽くて扱いやすいとされています。ステンレスは熱の伝わり方がゆっくりで圧がかかるまでに時間がかかりますが、圧力値が高く、保温力が抜群だと紹介されています。両者のよいところを合わせたのが多層構造で、ステンレスにアルミを圧着させることで、高い圧力を保ったまま頑丈で劣化しにくく、軽くしているとされます。
| 項目 | アルミ | ステンレス | 多層構造 |
|---|---|---|---|
| 熱の伝わり方 | 速い。沸騰までが短い | ゆっくり。圧がかかるまで時間がかかる | アルミとステンレスの利点を活用 |
| 重さ | 軽量で扱いやすい | アルミより重い | ステンレスより軽量化 |
| 圧力・保温 | 時短料理向き | 圧力値が高く、保温力も高い | 高圧力のまま頑丈で劣化しにくい |
| 気をつけたい点 | 温まりが速い分、火加減の切り替えを早めに | 加圧までの時間を見込んで待つ | 他の材質に比べて価格が高い |
ご飯を炊く視点で言えば、アルミは加圧までが速いぶん、弱火への切り替えが遅れると焦げにつながりやすく、ステンレスは加圧まで時間がかかるので、強火の時間をレシピどおりに切ってしまうと圧が十分に上がらないことがあります。材質の違いはそのまま火加減のクセになるので、手持ちの鍋がどちらかを知っておくだけでも失敗が減ります。
超高圧・高圧・低圧で、弱火の時間が変わる
圧力鍋には圧力の強さの違いがあり、同じご飯でも弱火で加熱する時間が変わります。加圧後の加熱時間は鍋によって異なり、超高圧は1分、高圧は2〜3分、低圧は4〜5分を目安にするのが基本だと紹介されています。圧が強いほど温度が高くなり、短い時間で芯まで火が通るからです。
ここでよくあるのが、ネットで見つけたレシピの時間を、自分の鍋の圧力を確かめずにそのまま使ってしまう失敗です。高圧の鍋を前提にしたレシピを低圧の鍋で使えば、加熱が足りずに芯が残りやすくなりますし、低圧前提の時間を超高圧の鍋で使えば、水分が飛びすぎて焦げやすくなります。圧力の強さは取扱説明書や本体の表示に書かれていることが多いので、まずはそこを確認し、自分の鍋に合った弱火の時間を選ぶようにしましょう。切り替え式の鍋なら、ご飯を炊くときにどちらの設定を使うかを決めておくと、毎回の仕上がりが揃います。
圧力鍋でご飯を炊く基本手順|強火5分・弱火3〜5分の流れ

研いだら浸水。夏30分・冬1時間以上が目安
圧力鍋で炊く場合も、最初の準備はふつうの炊飯と同じで、お米を研いで水を吸わせます。浸水の目安は、夏場は30分、冬場は1時間以上とされています。季節で時間が違うのは、水温によってお米が水を吸う速さが変わるからです。水温が高い夏は吸水が速く、冷たい冬はゆっくりにしか水が入っていきません。
圧力鍋は高い温度で一気に加熱するので、短い時間で炊けるのが魅力です。しかし、加熱が短いということは、加熱中にお米が水を吸える時間も短いということです。浸水が足りないまま炊くと、表面はやわらかいのに中心が硬い、芯のあるご飯になりがちです。特に冬場、夏と同じ30分で済ませてしまい、芯が残るのはありがちな失敗です。研いだお米は、ざるに上げたまま放置せず、鍋か別の容器で水に浸けておきましょう。浸水の時間を延ばしすぎることへの考え方や、季節による違いは、別の記事でくわしく解説しています。

強火で加圧したら弱火に。合図を見逃さない
加熱は、強火で圧をかけてから弱火で保つ、という二段階です。紹介されている一例では、最初に強火で5分ほど加熱し、その後3〜5分ほど弱火で加圧したら、あとは火を止めて待つだけという流れになっています。強火の時間は鍋の大きさや材質、お米の量で前後するので、時間よりも、おもり式なら重りが揺れて音がし始めたとき、スプリング式ならピンが上がったときを、弱火に切り替える合図にするのが確実です。
弱火の時間は、前の項目のとおり鍋の圧力の強さでも変わります。手持ちの鍋が超高圧なのか低圧なのかを確認したうえで、3〜5分の幅のどこに合わせるかを決めましょう。
火を止めた後の待ち時間も、炊飯の一部
火を止めたら、鍋の圧が自然に抜けるまで蓋を開けずに待ちます。ここは単なる待ち時間ではなく、ふつうの炊飯でいう蒸らしにあたる大切な工程です。圧が下がっていく間も鍋の中は高い温度に保たれていて、お米の表面に残った水分が中まで行き渡り、粒全体が均一にやわらかくなっていきます。
やりがちなのは、早く食べたいからと、蓋の弁を操作して急いで蒸気を抜いたり、鍋に水をかけて冷まして減圧したりすることです。この工程を縮めると、蒸らしが足りずに芯が残ったり、表面だけべたついた仕上がりになったりします。蒸らす時間が短いことは、焦げの原因の一つとしても挙げられています。ピンが下がって圧が抜けたことを確認してから蓋を開け、しゃもじで底から大きく返すようにほぐすと、余分な水蒸気が逃げて粒が立ちやすくなります。この待ち時間まで含めて炊飯時間だと考えておくと、段取りが組みやすくなります。
水加減は1合180〜250mlの幅で調整する
圧力鍋で炊くときの水の量は、1合につき180〜250ml程度と幅をもって紹介されています。幅があるのは、鍋の圧力の強さ、蓋の密閉具合、お米の種類や乾燥具合によって、炊いている間に逃げる水分と、お米が吸う水分が変わるからです。圧力鍋は密閉されていて蒸発が少ないので、ふつうの鍋より少なめの水で炊けるのが特徴です。量の目安としては、2合以上炊く場合は米1合に水180ccを目安にするという案内もあります。
水加減は、ふつうの炊飯器の目盛りの感覚で多めに入れてしまい、べちゃっとした仕上がりになるのがよくある失敗です。逆に、少なめにしすぎると焦げの原因になります。最初は取扱説明書にご飯の水量が書かれていればそれに従い、書かれていなければ幅の少なめのほうから試して、好みに合わせて少しずつ増やしていくと調整しやすくなります。

焦げた・芯が残った…失敗はどこで起きている?
焦げの原因は、水分・浸水・蒸らしのどれかが足りないこと
圧力鍋でご飯を焦がしてしまう原因として、炊く前の水分の量が少ないこと、お米の浸水時間が短いこと、蒸らす時間が短いことが挙げられています。どれも、鍋の底にあるお米に十分な水が行き渡らないまま、高い温度の熱を受けてしまうという点で共通しています。
圧力鍋は温度が高い分、底の水分がなくなってから焦げつくまでの時間も短くなります。水を少なめにすればかために炊けるだろうと考えて水を減らしすぎたり、浸水を省いたり、早く食べたくて蒸らしを縮めたりすると、少しずつの不足が重なって底が焦げます。また、弱火に切り替えるのが遅れて強火の時間が長くなるのも、水分を飛ばしてしまう原因です。
状況:前回やわらかすぎたので、思い切って水を減らし、浸水も短めにして炊いた。蓋を開けたら底一面が焦げついていた。
原因:圧力鍋は高温で加熱されるため、水分が足りないと焦げるまでが速い。水を減らす・浸水を短くする・蒸らしを縮めるが重なると、底のお米が水不足のまま熱を受ける。
対策:水加減は一度にたくさん変えず、少しずつ調整する。かためにしたいときも浸水と蒸らしは削らず、弱火の時間を幅の短いほうに寄せて様子を見る。
芯が残る・硬いのは、熱より水が届いていないサイン
炊き上がったご飯に芯が残るとき、多くの人はまず加熱が足りなかったと考えます。しかし圧力鍋の場合、温度は十分に上がっていることが多く、問題はお米の中心まで水が届いていないことにある場合が少なくありません。でんぷんがやわらかく変わるには水と熱の両方が必要で、水がない部分はいくら加熱しても硬いまま残ります。
ありがちなのは、冬に浸水を夏と同じ短い時間で済ませたケースや、圧力の弱い鍋で高圧向けの短い加熱時間を使ったケースです。前者は水が足りず、後者は熱を加える時間が足りません。どちらに当てはまるかで対策が変わるので、まずは浸水時間を見直し、それでも芯が残るなら鍋の圧力の強さに合った弱火の時間に合わせてみましょう。急いで減圧して蒸らしを縮めた場合も、表面の水分が中まで行き渡らず芯が残ることがあります。原因を一つずつ切り分けていくと、自分の鍋のクセが見えてきます。
硬く炊けてしまったら、水や日本酒で蒸らし直す
水加減や蒸らしが足りずに硬いご飯になってしまっても、捨てる必要はありません。硬いご飯でも、日本酒や水をかけて蒸らし直すことで、ふっくらとした仕上がりに戻せると紹介されています。硬さの原因は水分不足なので、外から水分を補って、もう一度熱をかけて蒸気を行き渡らせれば、中までやわらかくなるという理屈です。
やりがちなのは、水を一度にたくさん入れてしまうことです。入れすぎると今度は表面だけがべちゃっとして、食感がちぐはぐになります。全体にふりかける程度にとどめ、蓋をして弱火で加熱するか、火を止めた状態で少し置いて蒸らすのが基本です。焦げてしまった部分は、焦げのにおいが全体に移らないよう、上の焦げていない部分だけを先に器に移しておくとよいでしょう。日本酒を使う場合はアルコールが残らないよう加熱し、お子さんが食べる場合などは水で蒸らし直すほうが扱いやすいです。
実は、仕上がりを決めるのは火を止めた後の待ち時間
意外と知られていないけれど、圧力鍋のご飯の出来を大きく左右するのは、火にかけている時間よりも、火を止めてから圧が抜けるまでの待ち時間です。加熱が短くて済む圧力鍋では、全体の調理時間のうち、余熱で蒸らしている時間の割合が大きくなります。強火と弱火の分数ばかり気にして、この待ち時間を急いでしまうと、せっかくの高温加熱が生きてきません。
焦げの原因にも蒸らし不足が挙げられていたように、待ち時間は水分を粒の中まで行き渡らせる工程です。急いで減圧すると、鍋の中の温度が急に下がり、表面の水分が中まで入る前に蒸らしが終わってしまいます。弱火の時間を多少変えるより、待ち時間を毎回しっかり取ることのほうが、仕上がりを安定させる近道です。炊き上がりの時間から逆算するときは、加熱の時間だけでなく、この自然減圧の時間まで見込んで火にかけ始めるようにしましょう。
玄米こそ圧力鍋の出番?浸水1時間・弱火20分の理由
玄米が硬く炊けやすいのは、ぬか層が水を通しにくいから
玄米を炊いて、白米と同じ感覚でやったら硬くてぼそぼそしていた、という経験は少なくありません。玄米は精米で削る前のお米で、表面がぬか層に覆われています。このぬか層は水を通しにくく、白米に比べて中まで水が届くのに時間がかかります。そのため、白米と同じ浸水時間や加熱時間では、芯まで水と熱が回らずに硬く仕上がりがちです。
ここで圧力鍋が力を発揮します。高い温度で加熱できるので、水が通りにくい玄米でも中まで熱を届けやすく、短い時間でふっくらもちっと炊き上がるとされています。炊き上がりまでの時間は、炊飯器や土鍋の約半分という紹介もあります。とはいえ、温度の高さで水不足を補えるわけではないので、浸水はきちんと取ることが前提です。白米と玄米で何が違うのか、ぬか層の性質や保存の違いまで知りたい方は、別の記事も参考にしてみてください。

玄米の基本手順は、水を替えて1時間浸水し、弱火20分・蒸らし15分
圧力鍋で玄米を炊く手順として、玄米を軽く水で洗い、2回ほど水を替えて1時間浸水させ、圧力鍋に玄米と水、塩を入れて軽くかき混ぜてから蓋をして強火で加熱し、ピンが上がってきたら弱火にして20分加熱、その後火を止めて15分蒸らすという流れが紹介されています。白米より弱火の時間がぐっと長いのは、ぬか層に覆われた玄米の中心まで熱を通すためです。
玄米は白米の手順をそのまま使わないのが基本です。洗うのは軽くでよく、2回ほど水を替えたら1時間浸水。ピンが上がったら弱火で20分、火を止めて15分蒸らします。白米より弱火の時間が長い分、強火のまま放置すると焦げやすくなるので、加圧の合図だけは見逃さないようにしましょう。
やりがちなのは、白米の感覚で玄米をごしごし研いでしまうことです。玄米は表面がぬか層で守られているので、汚れを流す程度に軽く洗えば十分です。また、弱火の20分を強火のまま過ごしてしまうと、白米以上に長い時間加熱する分、焦げの被害も大きくなります。加圧の合図が出たらすぐに弱火にし、タイマーを使って時間を管理すると安心です。
発芽玄米は1.2〜1.5倍の水で、好みのやわらかさに
発芽玄米を炊く場合の水の量は、発芽玄米の1.2〜1.5倍程度が目安とされ、ふつうのやわらかさが好みなら1.2倍、やわらかめが好みであれば1.5倍くらいがちょうどいいと紹介されています。幅があるのは、発芽玄米は製品によって乾燥具合や加工の仕方が違い、水の吸い方が変わるためです。
ここで気をつけたいのは、発芽玄米と玄米を同じものとして扱ってしまうことです。発芽玄米は、玄米をわずかに発芽させたもので、ふつうの玄米とは水の吸い方や炊き上がりの傾向が異なります。パッケージに炊き方や水加減が書かれている場合は、そちらを優先しましょう。最初は1.2倍で炊いて食感を確かめ、もう少しやわらかくしたければ1.5倍に近づけていく、というように一方向に少しずつ寄せていくと好みが見つけやすくなります。発芽玄米と玄米の違いや、白米に混ぜて炊く場合の考え方は、それぞれの性質を知ってから選ぶと迷いにくくなります。
玄米は膨らむ分、鍋に入れる量に注意する
圧力鍋で玄米を炊くときに忘れてはいけないのが、鍋に入れる量です。圧力鍋は、中身を入れすぎると蒸気の出口が塞がれやすくなり、安全に使えなくなります。消費者庁は、水と食材を合わせて鍋の容量の2/3以下、豆類や麺類はさらに少なく1/3以下で調理するよう呼びかけています。お米も炊いているうちに水を吸って膨らむので、取扱説明書に書かれている炊飯量の上限を必ず確認しておきましょう。
玄米は弱火の時間が長く、加熱中に泡が出やすいこともあるため、たくさん炊こうとして鍋いっぱいに入れるのは避けたいところです。家族の人数が多いからといって上限を超えて炊くより、2回に分けて炊くほうが安全で、仕上がりも安定します。炊いた玄米を食べきれない場合は、早めに小分けにして冷凍しておくと、次からは温めるだけで食べられます。安全に関わる部分は、次の章で消費者庁の注意喚起をもとにくわしく見ていきます。
やけどを防ぐには?消費者庁が呼びかける圧力鍋の使い方
事故の多くは、高温の中身によるやけど
圧力鍋は便利な道具ですが、使い方を誤ると大きなけがにつながります。消費者庁の注意喚起によると、「事故情報データバンクには、令和3年3月までに圧力鍋に関連する事故情報が231件寄せられており、多くが高温の内容物に触れることによる熱傷で、治療に要する期間が1か月以上の事故も多く発生しています」とされています(消費者庁「圧力鍋の事故に注意」)。
ご飯を炊くときは、中身が料理より単純なぶん、つい気が緩みがちです。けれども、圧力がかかった鍋の中は、ふつうの鍋より高い温度になっています。その状態で蓋が開けば、熱い蒸気とご飯が一気に噴き出します。台所に小さなお子さんがいる家庭では、加熱中や減圧中に子どもが鍋に近づかないよう、使う場所と時間帯にも気を配りましょう。毎日の炊飯に使う道具だからこそ、慣れた頃の油断がいちばん危ないと考えておくのが安心です。
中身は2/3以下。お米は膨らむことを見込んでおく
中身の入れすぎは、圧力鍋の事故につながりやすいポイントです。消費者庁は、「水と食材を合わせて2/3以下、豆類・麺類の場合は1/3以下で調理する」よう呼びかけています(消費者庁の注意喚起)。入れすぎると、加熱中に泡や中身が蒸気の出口まで上がってきて、出口を塞いでしまうおそれがあるからです。
お米は炊いているうちに水を吸って膨らみ、加熱中は泡も立ちます。生米と水の時点で上限ぎりぎりまで入れると、炊けていく途中で鍋の中の空間が足りなくなります。量をたくさん炊きたいときほど、この上限を思い出してください。多くの圧力鍋の取扱説明書には、ご飯を炊ける量の上限が別に書かれていることがあるので、2/3以下の原則とあわせて、そちらも確認しておくと確実です。上限を超える量が必要な日は、無理をせず回数を分けて炊きましょう。
4つの安全装置と、使う前の点検
圧力鍋には、事故を防ぐための安全装置が備わっています。加圧されると蒸気を逃がしてそれ以上圧力が上がらないようにする圧力制御弁、鍋の中の圧力を示して蓋を開けてよい時期を知らせるインジケーターロッド、内圧がかかったときに押し上げられて蓋を開けられなくする安全ロックピン、そして内圧が上がりすぎたときにパッキンをスリットから飛び出させて減圧する安全窓です。ただし、これらの装置が働くためには、部品が汚れや詰まりのない状態であることが前提です。
消費者庁は「メーカーや機種によって構造が異なりますが、使用前には蒸気口など圧力調整部分に詰まりがないか確認することが重要です」としています(消費者庁の注意喚起)。ご飯を炊いた後は、でんぷん質が蒸気口やパッキンにこびりつきやすいので、使い終わったら蓋やパッキンの汚れをしっかり落とし、パッキンにぬめりや劣化がないかもあわせて確認しておきましょう。点検は使う直前と洗った後の2回が目安です。
蓋は、圧が下がったのを確かめてから開ける
最後に、炊飯の場面で特に気をつけたいのが、蓋を開けるタイミングです。消費者庁は、「完全に蓋を閉めた状態で調理を行い、鍋の中の圧力が下がったことを確認してから蓋を開ける」よう呼びかけています(消費者庁の注意喚起)。蓋の閉め方が不完全なまま加熱しないこと、圧が残ったまま開けないことが基本です。
状況:朝の忙しい時間、火を止めてしばらく経ったので大丈夫だろうと蓋に手をかけた。
原因:見た目では鍋の中の圧力はわからない。インジケーターロッドが上がっている間は圧が残っており、無理に開けると高温の蒸気やご飯が噴き出すおそれがある。
対策:ピンが下がったことを目で確認してから開ける。間に合わない日は、前の晩に炊いておくなど段取りのほうを変える。減圧は取扱説明書に書かれた方法だけで行う。
先に説明したとおり、自然に圧が抜けるまでの時間は蒸らしの時間でもあります。安全のためにも、おいしく炊くためにも、ここは急がないのがいちばんの近道です。
圧力IH炊飯器とどう使い分ける?保温と暮らし方で選ぶ
圧力IH炊飯器も、圧で沸点を上げる同じ考え方
家電の炊飯器にも、圧力をかけて炊くタイプがあります。圧力IH炊飯器は、IH加熱(電磁誘導加熱)で内釜そのものを発熱させ、そこに圧力をかけることで沸点を上げ、より高い温度で炊く仕組みだと説明されています。ふっくらした粒立ちや甘み、冷めてもおいしさが長持ちする点が支持されているとされます。さらに、土鍋の釜を使い、高火力と熱、対流でご飯のうまみを引き出すとうたう土鍋圧力IH炊飯器もあります。
つまり、圧力鍋と圧力IH炊飯器は、高い温度で炊くという考え方は共通で、違うのは火加減を誰が受け持つかです。圧力鍋は強火から弱火への切り替えや、圧が抜けるのを待つ判断を自分で行いますが、圧力IH炊飯器はそれを機械が自動で制御します。圧力鍋を使っていて、火加減の切り替えを忘れて焦がすことが続く場合は、自分の暮らしのリズムに手動の炊飯が合っていない可能性もあります。どちらがすぐれているかではなく、手間をかけられる時間があるかどうかで考えると選びやすくなります。
保温できるのは炊飯器。おいしく保てるのは2〜3時間が目安
圧力鍋と炊飯器の大きな違いは、保温ができるかどうかです。圧力鍋で炊いたご飯は、そのまま鍋に入れておくと冷めていくだけなので、食べる分を炊いて、残りは早めに冷凍するのが基本です。一方、炊飯器の保温については、もっともおいしく食べられるのは2〜3時間程度、許容範囲は4〜6時間程度までで、これを超えるとご飯の水分が蒸発し、パサつきや変色が生じるとされています。
機種によっては、低めの約64℃と高めの約74℃で保温温度を切り替えられるものや、6時間ごとに加温する機能を備えたものもあります。低めの60度程度で保温して変色や乾燥を抑える考え方を取り入れた機種もあるようです。また、電気代の面では、保温は4時間程度までを目安にし、それ以上なら電子レンジで温め直すほうが効率的だという考え方や、約7〜8時間以上保温するなら2回に分けて炊いたほうがお得だという考え方も紹介されています。長時間の保温をあてにせず、炊いたら早めに食べるか冷凍するという点では、圧力鍋も炊飯器も同じだと考えておくとよいでしょう。
暮らし方別、圧力鍋と炊飯器の選び分け
どちらで炊くのが合っているかは、家族の人数や生活の時間帯、炊きたいお米の種類によって変わります。圧力鍋は加熱が短く、玄米も比較的短い時間で炊けるのが持ち味ですが、火加減の切り替えと減圧の待ち時間には付き合う必要があります。炊飯器はスイッチひとつで任せられ、保温もできますが、玄米コースなどは時間がかかる傾向があります。読者のタイプ別に整理すると、次のようになります。
| こんな人 | 向いている炊き方 | 理由 |
|---|---|---|
| 玄米をよく食べる人 | 圧力鍋 | 炊き上がりまでが炊飯器や土鍋の約半分とされる |
| 帰宅後すぐに炊いて食べたい人 | 圧力鍋 | 加熱が短く、おかずを作る間に炊ける |
| 家族の食事時間がばらばらな人 | 圧力IH炊飯器 | 保温があり、2〜3時間程度ならおいしく保てる |
| 朝に炊きたてを用意したい人 | 圧力IH炊飯器 | 予約炊飯で火の番が要らない |
| 台所を離れる時間が多い人 | 圧力IH炊飯器 | 弱火への切り替え忘れによる焦げが起きない |
どちらか一つに決める必要はありません。ふだんの白米は炊飯器、玄米や急ぎの日は圧力鍋というように、場面で使い分けるのも一つの方法です。
炊飯器があっても、圧力鍋を覚えておく理由
すでに炊飯器を使っている家庭でも、圧力鍋でご飯を炊ける手順を知っておくと役に立つ場面があります。たとえば、炊飯器のご飯が足りなくなったときに追加で少量を炊きたい場合や、炊飯器で白米を炊いている間に玄米も用意したい場合です。圧力鍋なら、コンロ一口で短い時間で炊けるので、炊飯器を二度回すより段取りが組みやすくなります。
ただし、圧力鍋は炊飯専用の道具ではないので、ご飯を炊いた後に料理にも使うなら、そのたびに蒸気口とパッキンの汚れを落とす手入れが欠かせません。手入れを怠ってでんぷん質が詰まったまま次の料理に使うのは、先に見た安全面からも避けたいところです。また、炊飯器と違ってご飯の目盛りがないため、毎回同じ量りで水を量ることも大切です。量り方を毎回そろえておけば、自分の鍋に合った水加減がだんだん決まっていきます。持っている道具の役割を増やすつもりで、まずは少量から試してみてください。
まとめ|圧力鍋のご飯で覚えておきたいこと
圧力鍋のご飯は、強火と弱火の分数を覚えるより、なぜその手順なのかを知っておくほうが失敗が減ります。圧がかかると高い温度で炊けるから加熱は短くて済み、そのぶん浸水と、火を止めた後の待ち時間が仕上がりを左右します。焦げや芯残りが出たら、水の量、浸水の時間、弱火の時間、待ち時間のどこが足りなかったかを一つずつ見直してみてください。玄米を炊くなら、2回ほど水を替えて1時間浸水し、弱火20分、蒸らし15分という手順が基本です。最初の一歩として、今夜は取扱説明書で自分の鍋の圧力の強さと炊飯量の上限を確認し、白米を少量だけ炊いてみましょう。
※最新情報は公式サイトでご確認ください。

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