炊飯器でケーキが焼けると聞いて、せっかくなら小麦粉ではなく米粉で作ってみたい。でも、米粉は膨らみにくいと聞くし、炊飯器のどのコースを選べばいいのか、生焼けにならないかも気になりますよね。
先に結論をお伝えすると、炊飯器ケーキを米粉で作るときは「高くふわふわに膨らませる」より「しっとり、もっちり焼き上げる」を目標にすると失敗が減ります。米粉にはグルテンがないため、小麦粉のように生地が大きく膨らむ骨組みをつくれません。その代わり水を抱え込む性質があり、蒸気で包むように加熱する炊飯器とは相性のいい面があるんです。粉は菓子・料理用の米粉を選び、膨らみはベーキングパウダーと卵の泡立てで補い、早炊きは避けて50~60分かけて焼くのが基本の考え方です。
この記事では、炊飯器でケーキが焼ける仕組みから、米粉と小麦粉の違い、農林水産省の用途別基準を使った粉の選び方、具体的な配合例、メーカーごとのケーキメニューの見方、生焼け・膨らまない・焦げるといった失敗の原因と対策まで、理屈から順番にお話しします。
・炊飯器でケーキが焼ける仕組みと、IH・マイコンでの熱の入り方の違い
・米粉が小麦粉より膨らみにくい理由と、炊飯器ケーキで活きる米粉の性質
・袋の用途表示で選ぶ米粉の選び方と、米粉150gを基準にした配合例
・生焼け・膨らまない・焦げる・崩れるときの原因と対策
炊飯器でケーキが焼けるのはなぜ?ご飯を炊く熱がそのまま使える理由

内釜を上下から包む熱が、オーブンとは違う「蒸し焼き」をつくる
炊飯器で焼くケーキは、オーブンで焼くケーキとは性格が違い、蒸気と熱で包み込む蒸し焼きに近い仕上がりになります。ここを最初に押さえておくと、仕上がりを見て迷わずに済みます。
炊飯器はもともと、ふたを閉めた内釜の中で米と水を加熱し、沸騰させてから蒸らす道具です。ケーキの生地を入れて加熱すると、底からの熱に加えて、生地から出た水分が蒸気になって釜の中にこもり、上下から包むように熱が回ります。料理メディアの解説でも、炊飯器は均一に加熱され、内部がしっとり仕上がりやすい蒸し焼き効果が特徴とされています。
そのため、オーブンのようなこんがりした焼き色や、さっくりした表面の皮はできにくく、上面は白っぽくしっとりした状態で仕上がるのが普通です。ここでやりがちなのが、上面が白いのを見て「まだ焼けていない」と思い込み、何度も加熱を重ねてしまうこと。中はとっくに火が通っているのに、底だけが焦げてしまう原因になります。
焼けたかどうかは表面の色ではなく、中心に竹串を刺して、生地がついてこないかで判断してください。見た目に焼き色が欲しい場合は、取り出したあと上下を返して盛りつけると、底の焼き色が上になって整って見えます。
オーブンで焼く米粉ケーキの粉選びや焼き時間の考え方は、こちらで詳しく説明しています。

IHとマイコンでは熱の伝わり方が違う
同じ炊飯器でも、加熱方式によってケーキへの熱の入り方は変わります。手元の炊飯器がIHかマイコンかを知っておくだけで、焼き時間の調整がしやすくなります。
IH炊飯器は、電磁力を利用して内釜そのものを発熱させ、高い火力で加熱する方式です。一方、マイコン炊飯器は、底部のヒーターから内釜へ熱が伝わる仕組みです。つまりマイコン式は熱の出どころが底に集まっていて、IH式は釜自体が熱を持つ、という違いがあります。
この違いは、ケーキでは焼きムラの出方に表れやすいと考えられます。底から熱が伝わるマイコン式では、底の生地が先に固まり、上のほうまで火が届くのに時間がかかる傾向があります。インターネットのレシピを見て、そこに書かれた時間どおりに焼いたのに中心がゆるかった、というのはよくある話で、レシピを書いた人の炊飯器と加熱方式や容量が違うことが原因のひとつです。
加熱方式は、炊飯器本体の表示や取扱説明書の仕様欄で確認できます。初めて焼くときは、レシピの時間を目安にしつつ、焼き上がりに竹串を刺して状態を見る「テスト焼き」のつもりで臨むと、次からその炊飯器に合った時間がつかめます。
ケーキモードがある機種と、ない機種で何が変わる?
ケーキモード(ケーキコース)がある炊飯器なら、モードを選んでスイッチを入れるだけで、温度と火力の管理を炊飯器に任せられます。ない機種でも通常の炊飯で焼くことはできますが、早炊きは避けるのが基本です。
ケーキモードの利点は、自動で温度・火力を管理し、焦げつきを抑えて焼き上げてくれる点にあるとされています。ご飯の炊飯は、米に水を吸わせて沸騰させ、水がなくなったところで加熱を切り替える流れですが、ケーキの生地は米と水の状態とは違います。ケーキ用のコースは、そうした生地に合わせて加熱が組まれていると考えると理解しやすいでしょう。
ケーキモードがない場合、料理メディアのレシピでは通常の炊飯コースで焼く方法が紹介されています。このとき早炊きを選んでしまうのが典型的な失敗で、加熱時間が短くなる分、生地の中心まで火が通りきらず生焼けになりやすくなります。焼き時間は50~60分が目安とされ、早炊きは避けるべきとされています。
大切なのは、取扱説明書の調理メニューの一覧と、炊飯以外の調理についての注意書きを先に読んでおくことです。取扱説明書に記載のない使い方は避けるのが安全で、ケーキを焼いてよいかどうか、どのコースを使うかは機種ごとの案内に従ってください。
IH炊飯器=電磁力を利用して内釜自体を発熱させ、高い火力で加熱する方式。
マイコン炊飯器=底部のヒーターから内釜に熱が伝わる方式。
ケーキモード=ケーキを焼くためのコース。選んでスイッチを入れると、温度や火力の管理を炊飯器が自動で行う。搭載の有無と名称は機種ごとに違う。
米粉と小麦粉は何が違う?膨らみにくさとしっとり感の正体
グルテンがないから、小麦粉のようには膨らまない
米粉のケーキが小麦粉のケーキほど高く膨らまないのは、米粉にグルテンが含まれていないからです。これは失敗ではなく、粉の性質そのものなんですよ。
グルテンは、小麦粉に水を加えてこねたときにできるたんぱく質で、パンが膨らんだ形を保つ骨組みの役目をしています。生地の中で発生したガスや、泡立てた卵の空気を、網目のような構造で抱え込んでくれるわけです。米粉だけではこのグルテンの網目をつくれないため、生地が気泡を支えきれず、同じ配合でも膨らみが控えめになります。米粉の扱いに詳しい人の解説でも、クッキーやふわふわのケーキ、食パンなどは米粉だけでは難しいとされています。
やりがちなのは、小麦粉のケーキのレシピをそのまま米粉に置き換えて、膨らまないことに戸惑うパターンです。粉を替えたのに、膨らませる工夫を何も足していないのが原因です。
米粉のケーキでは、膨らみをベーキングパウダーの力と、卵をしっかり泡立てて含ませた空気で補います。なお、グルテンを含まないのはあくまで米粉の性質で、それだけで体によい、安全だという意味ではありません。小麦を避けたい事情がある場合は、ほかの材料の原材料表示も一つずつ確認し、体調や食事制限については医師・管理栄養士に相談してください。
水は抱え込むのに、油は抱え込まない
米粉には、水をよく抱え込む一方で、油はあまり吸わないという独特の性質があります。炊飯器ケーキのしっとり感と、配合を守るべき理由は、どちらもここから来ています。
米粉は小麦粉に比べて油の吸収率が低いとされ、そのため揚げ物の衣に使うとサクサクに仕上がる、と紹介されています。お好み焼きやチヂミに使うと、外はカリッと、中はもっちりになる、というのも同じ性質の表れです。一方で保水力があり、水分はしっかり抱え込みます。焼き菓子にすると、小麦粉のふっくら感とは違う、もっちりした食感になりやすいのはこのためです。
ケーキで気をつけたいのは、この保水力が裏目に出る場面です。生地がかたく見えるからと牛乳を目分量で足すと、米粉は水分を抱え込んだまま重い生地になり、中心まで火が通りにくくなります。生焼けの原因として水分過多が挙げられているのは、こういう流れがあるからです。
牛乳などの水分はレシピどおりに計って入れ、目分量で足さないのが基本です。また、油を吸いにくいからといって油を多めに入れても、生地がしっとりするわけではありません。炊飯器では多量の油が焦げや故障の原因になるおそれもあるので、油脂もレシピの量を守りましょう。
実は、米粉の弱点は炊飯器だと気になりにくい
意外と知られていないけれど、米粉の膨らみにくさは、炊飯器ケーキではそれほど大きな弱点になりません。目指す食感を合わせれば、むしろ炊飯器向きの粉だと考えることもできます。
理由は、炊飯器の加熱と米粉の性質の組み合わせにあります。炊飯器は蒸気がこもる中で、上下から包むように加熱する蒸し焼きに近い調理です。そこへ、水分を抱え込む米粉の生地を入れると、水分が逃げにくい条件が重なり、しっとり、もっちりした方向に仕上がりやすくなります。高さよりも口当たりで勝負するケーキだと考えると、米粉の性質が素直に活きるわけです。
反対に、ショートケーキのスポンジのように高さがあって、きめの細かいふわふわした生地を思い描いて焼くと、どうしても「思ったより膨らまない」と感じてしまいます。粉の性質と仕上がりの期待がずれているだけなのに、失敗だと思い込んでしまうのはもったいない話です。
米粉で焼くなら、蒸しパンとケーキの中間のような、しっとり、もっちりした食感を目標にしてください。そのうえで、卵の泡立てとベーキングパウダーで軽さを足していくと、米粉らしさを残したまま重たくなりすぎない仕上がりに近づきます。
| 項目 | 米粉 | 小麦粉 | 炊飯器ケーキへの影響 |
|---|---|---|---|
| グルテン | 含まない | 含む | 米粉は膨らみをベーキングパウダーと卵で補う |
| 水と油 | 水を抱え込み、油は吸いにくい | 米粉より油を吸いやすい | しっとりしやすい反面、水分の入れすぎは生焼けのもと |
| 焼き菓子の食感 | もっちり | ふっくら膨らむ | 米粉は高さより口当たりを目標にする |
どの米粉を買えばいい?袋の「用途」表示で9割迷わなくなる

米粉には国が示した「1番・2番・3番」の用途区分がある
米粉を買うときにまず見てほしいのは、袋に書かれた用途の表示です。米粉には、農林水産省が示した用途別の基準があり、大きく3つの区分に分けられています。
この用途別基準は、米粉製造業者の自主的な製品づくりを後押しする目的で定められたもので、米粉を1番の菓子・料理用、2番のパン用、3番の麺用の3つのカテゴリーに分けています。基準は2017年3月29日に公表され、2018年1月から実施されています。同じ米粉という名前でも、何に使う前提でつくられた粉なのかが、この番号で読み取れるわけです。
基準の内容と米粉の特性は、農林水産省の米粉関連のページや、米粉の特性を解説したページで確認できます。同省の資料では、米粉の需要量は2024年に56,000トンとされ、2018年比で25,000トン増えたと示されています。
やりがちなのは、袋の表示を見ずに、家にある米粉やたまたま目についた米粉を使ってしまうことです。レシピが想定している粉と違うと、生地のまとまり方や仕上がりが変わってしまいます。ケーキを焼くなら、まず袋の用途表示に菓子・料理用とあるかどうかを確かめましょう。
| 項目 | 1番 | 2番 | 3番 |
|---|---|---|---|
| 用途 | 菓子・料理用 | パン用 | 麺用 |
| 粒度の目安 | 洋菓子に適した粒度として平均粒径18~28μm | 平均粒径75μm以下 | 麺づくり向けの区分 |
| 炊飯器ケーキでの扱い | 基本はこの区分を選ぶ | レシピが指定している場合のみ | ケーキ向けの区分ではない |
ケーキには菓子・料理用(1番)を選ぶ理由
炊飯器ケーキに使う米粉は、菓子・料理用(1番)が基本です。お菓子に使う前提で、粒の細かさなどが整えられた区分だからです。
米粉の性質を左右する要素のひとつが、粒の大きさ(粒度)です。資料では、洋菓子に適した粒度として平均粒径18~28μmという値が示されており、パン用は平均粒径75μm以下とされています。粒の大きさが違えば、水を吸う速さや生地のなめらかさも変わってくる傾向があります。用途に合わせて粉を選ぶのは、生地の状態をレシピの想定に近づけるためなんです。
台所でよくあるのが、パン用の米粉を買ったついでにケーキにも使い、生地の状態がレシピの説明と合わずに戸惑うケースです。粉そのものが悪いわけではなく、想定している用途が違うだけです。逆に、ケーキ用に買った菓子・料理用の米粉でパンを焼こうとして、うまく膨らまないこともあります。
袋を見るときは、商品名よりも用途の欄や裏面の説明を優先して読みましょう。菓子・料理用と書かれていれば、ケーキにもそのまま使えます。レシピに「製菓用米粉」と書かれている場合も、同じ考え方で菓子向けの粉を選べば大きく外れません。
原料の品種で食感が変わる?アミロースの話
米粉の食感は、粒の細かさだけでなく、原料のお米に含まれるでんぷんの性質でも変わります。そのカギになるのがアミロースです。
お米のでんぷんには、アミロースとアミロペクチンという2種類があり、その割合で炊いたご飯の粘りや硬さが変わることが知られています。米粉でも同じで、アミロースが多い米粉はさらっとして型崩れしにくく、アミロースが少ない米粉はしっとり感が出やすいとされています。製菓に向く品種としては、アキヒカリ、ハナエチゼン、ニュウヒカリ、コシヒカリ、あきさかり、あきだわらが挙げられています。
ここでやりがちなのは、品種名だけで仕上がりを決めつけてしまうことです。同じ品種でも、製粉の方法や粒度によって粉の性質は変わります。品種はあくまで食感の傾向を考えるヒントのひとつと捉えておくのが無難です。
袋に原料の品種が書かれている場合は、しっとり系に仕上げたいのか、形をしっかり保ちたいのかを考えるときの手がかりにしてください。まずは菓子・料理用の米粉で一度焼き、食感の好みがはっきりしてから品種にこだわる、という順番で十分です。粒度やアミロースによる食感の違いは、こちらの記事でも詳しく取り上げています。

米粉のミックス粉を使うときに確認したいこと
手軽に始めたいなら、米粉を使ったパンケーキミックスなどのミックス粉も選択肢になります。ただし、ミックス粉を使うときは、レシピもその粉に合わせて選ぶのが前提です。
ミックス粉は、粉に甘みや膨らませる材料などがあらかじめ配合された製品で、計量の手間が減るのが利点です。たとえば、パナソニックが公開している米粉ケーキのレシピでは、米粉パンケーキミックスを使った配合が紹介されています。どの材料がどれだけ入っているかは製品ごとに違うので、原材料表示を見れば、そのミックス粉が何でできているかを確認できます。
やりがちなのは、米粉だけで作るレシピにミックス粉を使ったり、ミックス粉にさらにベーキングパウダーを足したりして、配合のバランスを崩してしまうことです。どちらも、レシピが想定している材料の割合から外れてしまいます。
ミックス粉を使うなら、袋に載っている作り方か、そのミックス粉を指定したレシピに従うのが確実です。米粉だけで作るレシピのときは、プレーンの菓子・料理用米粉を使い、膨らませる材料は自分で計って加えましょう。小麦を使わないお菓子にしたい場合は、ミックス粉の原材料表示もあわせて確認してください。
炊飯器ケーキ米粉の基本レシピ|配合と焼き時間の目安
まずは米粉150gの抹茶ケーキ配合を基準にする
米粉で炊飯器ケーキを焼くなら、料理メディアで紹介されている米粉の抹茶ケーキの配合を基準にすると、材料の割合がつかみやすくなります。
その配合は、米粉150g、抹茶10g、砂糖80g、ベーキングパウダー8g、卵2個、牛乳150ml、サラダ油10gです。焼くときは、通常の炊飯コースかケーキモードを使うと紹介されています。粉に対して卵と牛乳で水分を、ベーキングパウダーと卵の泡で膨らみを、サラダ油で口当たりを補う、という役割分担になっているのが読み取れます。
この配合を見ると、油が10gと控えめなのがわかります。米粉は油を吸いにくい性質があるため、油を多く入れなくても生地がまとまりやすいと考えられます。ここで「しっとりさせたいから」と油を増やすと、炊飯器では焦げや内釜を傷める原因になるおそれがあるので注意が必要です。
初めて焼くときは、まずこの配合どおりに作り、焼き上がりの高さや中心の火の通り方を確認してください。自分の炊飯器での焼き時間をつかんでから、甘さを調整する、味を変えるといったアレンジに進むと、失敗の原因を切り分けやすくなります。
ベーキングパウダーは米粉100gあたり小さじ1~1.5が目安
米粉ケーキのベーキングパウダーは、米粉100gあたり小さじ1~1.5程度が目安とされています。米粉のケーキでは、膨らみのかなりの部分をこの材料に頼っていると考えてください。
理由は、先ほどお話ししたグルテンの有無です。小麦粉のケーキなら、グルテンの骨組みが気泡を支えてくれますが、米粉にはそれがありません。そのため、ベーキングパウダーが発生させるガスと、泡立てた卵の空気が膨らみの主役になります。基準にした抹茶ケーキの配合でも、米粉150gに対してベーキングパウダー8gが使われています。
やりがちな失敗は、甘さを控えたい、風味が気になるといった理由でベーキングパウダーを減らしてしまうことです。膨らまない原因として、ベーキングパウダーの量不足が挙げられているとおり、減らした分だけ生地は重く、詰まった食感になります。逆に、計量スプーンに山盛りで入れて量が大きくぶれるのも、仕上がりが安定しない原因です。
計量スプーンはすりきりで量り、米粉と一緒に合わせてから生地に加えると、全体に均一に行き渡ります。量を変えるのは、レシピどおりに一度焼いて仕上がりを確かめてからにしましょう。
手順は「室温に戻す→泡立てる→釜に塗る→炊く」の流れ
米粉の炊飯器ケーキは、材料の温度、卵の泡立て、内釜の下準備、加熱コースの4点を押さえれば、手順そのものはシンプルです。
米粉ケーキをうまく焼くコツとして、材料を事前に室温に戻しておくこと、泡立てと混ぜ方に注意すること、内釜に油やバターを塗っておくことが挙げられています。冷蔵庫から出したばかりの卵や牛乳は、泡立ちが悪く、生地全体の温度も低いため、膨らみや火の通りに影響します。内釜に油を塗るのは、焼けたケーキが釜に張りつくのを防ぐためです。
ポイントは、Step2の泡立てを手早く済ませないことです。米粉の生地では、ここで含ませた空気が膨らみを支えます。また、加熱中はフタを開けないのが基本です。蒸気が逃げると、炊飯器ならではの蒸し焼きの条件が崩れてしまいます。
時間を短くしたくて早炊きを選ぶと、加熱時間が足りず、外側は固まっているのに中心が生のまま、という仕上がりになりがちです。焼き時間は50~60分が目安で、早炊きは避けるべきとされています。様子を見たくて途中でフタを開けるのも、こもっていた蒸気が逃げる原因になります。ケーキモードか通常の炊飯コースを選び、終わるまでフタは閉めたままにしましょう。
ホットケーキミックス版と並べると、米粉版の特徴が見える
炊飯器ケーキの定番として紹介されることが多いのが、ホットケーキミックスを使う配合です。米粉版と並べてみると、米粉で作るときに何を自分で補っているのかがよくわかります。
料理メディアで紹介されている5合炊飯器用の基本レシピは、ホットケーキミックス200g、卵2個、牛乳150ml、砂糖40g、バター30gです。ミックス粉にはあらかじめ膨らませる材料が入っているため、ベーキングパウダーを別に加える工程がありません。一方、米粉の抹茶ケーキはプレーンの米粉を使うので、ベーキングパウダー8gを自分で加えています。
| 項目 | ホットケーキミックス版 | 米粉の抹茶版 | 見るべきポイント |
|---|---|---|---|
| 粉 | ホットケーキミックス200g | 米粉150g・抹茶10g | 米粉版は袋の用途表示を確認 |
| 膨らませる材料 | ミックス粉に配合済み | ベーキングパウダー8g | 米粉版は量を減らさない |
| 卵・水分 | 卵2個・牛乳150ml | 卵2個・牛乳150ml | 目分量で足さない |
| 甘み・油脂 | 砂糖40g・バター30g | 砂糖80g・サラダ油10g | 油は増やしすぎない |
どちらの配合でも、卵2個と牛乳150mlという水分の骨格は共通しています。違いは膨らませる材料をどこから得るかと、油脂の種類と量です。米粉で作るときは、ミックス粉に頼れない分、ベーキングパウダーの計量と卵の泡立てを丁寧に行うことが、仕上がりを左右すると覚えておきましょう。
メーカーごとにケーキメニューはどう違う?取扱説明書で見るべき場所
象印は「ケーキモード」を搭載した機種がある
象印の炊飯器には、ケーキを焼くためのケーキモードを搭載した機種があります。モードを選べば、温度と火力の管理を炊飯器に任せられるタイプです。
たとえば、5.5合のIH炊飯器であるNP-VJ10は、ケーキモードを搭載し、マイコンで火力と温度を制御することで焦げつきを抑えて焼き上げる機種として、製品紹介サイトで取り上げられています。IHで内釜を発熱させつつ、その加熱の強さと温度をマイコンが管理する仕組みです。ここで紹介した機種名は一例で、どの機種にケーキモードがあるかはシリーズによって違います。
やりがちなのは、同じメーカーなら全機種にケーキモードがあると思い込むことです。同じメーカーでも、機種によって調理メニューの内容は異なります。ケーキモードがあるつもりで調理メニューを探して見つからず、慌てて別のコースで焼いてしまう、ということも起こりがちです。
手元の象印の炊飯器でケーキが焼けるかどうかは、取扱説明書の調理メニュー一覧で確認してください。取扱説明書は象印のウェブサイトから探せる場合があります。メニュー名、使える量、注意事項はその機種の説明に従いましょう。
タイガーは調理メニュー「パン・ケーキ」がある機種がある
タイガーの炊飯器には、調理メニューとしてパン・ケーキのコースを搭載した機種があります。ケーキを焼くときは、このメニューの有無をまず確認します。
販売サイトの製品説明では、5.5合のIH炊飯器JPW-L100HDや1升のIH炊飯器JPW-L180HDが、調理メニュー「パン・ケーキ」を搭載し、土鍋蓄熱コート釜で炊き上げる機種として紹介されています。ケーキという言葉がメニュー名の単独の項目ではなく、パンとひとまとまりになっている点が、象印のケーキモードとは名前の付け方が違うところです。
ここでの失敗は、メニュー名の違いで迷うことです。ケーキモードという名前が見つからないからといって、ケーキを焼くメニューがないとは限りません。逆に、名前が似ていても中身が違う可能性もあるので、名前だけで判断しないことが大切です。
タイガーの炊飯器を使っている場合は、取扱説明書の調理メニューのページで、パン・ケーキのコースの有無と、使い方の説明を確認してください。製品情報はタイガーのウェブサイトで確認できます。同じシリーズでも容量違いでメニューが異なる場合に備えて、型番で照らし合わせるのが確実です。
パナソニックはベーカリーの米粉ケーキコースでレシピを公開
パナソニックは、炊飯器ではなくホームベーカリーで米粉ケーキを焼くレシピを公開しています。炊飯器ケーキとは道具が違いますが、米粉ケーキの材料構成を知る参考になります。
公開されているのは、コンパクトベーカリーSD-CB1の米粉ケーキコースを使ったオレンジ香るココア米粉ケーキです。材料は、太白ごま油30g、牛乳130g、米粉パンケーキミックス150g、ココア9g、アーモンドスライス30g、オレンジピール30gとされています。内容はパナソニックのレシピページで確認できます。
やりがちなのは、このレシピの分量や手順を、そのまま炊飯器に持ち込んでしまうことです。ホームベーカリーの米粉ケーキコースと、炊飯器のケーキモードや通常の炊飯コースでは、加熱の仕組みも容量も違います。分量どおりに入れても、炊飯器では火の通り方が変わる可能性があります。
この配合から読み取れるのは、米粉のケーキでも、ミックス粉を使えば牛乳と油を加えるだけで材料がそろう、ということです。炊飯器で焼く場合は、炊飯器向けとして紹介されているレシピを使い、ベーカリーのレシピは味の組み合わせの参考にとどめるのが安全です。
ケーキメニューがない炊飯器で焼くときの考え方
ケーキメニューがない炊飯器でも、取扱説明書で炊飯以外の調理が禁止されていなければ、通常の炊飯コースで焼く方法があります。その場合は、焼き時間と焼き上がりの確認を自分で行う前提です。
料理メディアの米粉抹茶ケーキのレシピでも、通常の炊飯またはケーキモードで炊くと紹介されています。ケーキモードのように自動で温度管理をしてもらえない分、炊飯コースの加熱が生地に合うかどうかは、炊飯器ごとに差が出ます。生焼けの原因として炊飯器との相性が挙げられているのは、このためです。
ありがちなのが、1回で完璧に焼こうとして、炊飯コースを何度も繰り返して加熱してしまうことです。中心がゆるい原因が加熱不足なのか、水分過多なのかを見ないまま加熱を重ねると、底が焦げる一方で中の状態が変わらない、ということも起こります。
最初の1回は、中心に竹串を刺して状態を確かめ、生焼けなら追加で10~15分加熱するという流れで様子を見ましょう。そのとき、何分追加したかをメモしておくと、次からはその炊飯器に合った焼き方が見えてきます。
①調理メニューの一覧:ケーキモードやパン・ケーキのコースがあるか。名前はメーカーや機種で違います。
②炊飯以外の調理の注意書き:ケーキを焼いてよいか、使ってはいけない材料や量の決まりがないか。
③仕様欄の加熱方式:IHかマイコンか。焼きムラや焼き時間の調整を考える手がかりになります。どの機種が優れているかではなく、手元の機種で何ができるかを確かめるのが目的です。
生焼け・膨らまない・焦げる…失敗はどこで起きている?
生焼けは「水分の入れすぎ」と「炊飯器との相性」から
米粉の炊飯器ケーキで多い失敗が生焼けです。主な原因は、水分の入れすぎと、炊飯器との相性の2つとされています。
米粉は保水力があり、水分をしっかり抱え込む粉です。牛乳を多めに入れたり、果物などの水分の多い材料を足したりすると、生地は水を抱え込んだまま重くなり、中心まで火が通るのに時間がかかります。さらに、炊飯器の容量や加熱方式によっては、レシピに書かれた時間では足りないこともあります。焼き時間は50~60分が目安とされますが、これはあくまで目安で、炊飯器ごとに差が出ます。
台所でありがちなのは、生地がかたく見えて牛乳を足し、そのうえ早炊きで焼いてしまうという、水分過多と加熱不足が重なるケースです。外側はしっかり固まっているので一見焼けているように見えますが、切ってみると中心が湿ったままで、ねっとりしています。
対策は、水分をレシピどおりに計ること、早炊きを避けることです。焼き上がったら竹串を中心に刺し、生地がついてくるようなら、追加で10~15分加熱して、もう一度竹串で確認しましょう。加熱を追加するときもフタは開けっぱなしにせず、確認したらすぐ閉めて蒸気を逃がさないようにします。
膨らまないのは、ベーキングパウダーと卵の泡立て
焼き上がりが平たく、詰まった食感になってしまう場合は、ベーキングパウダーの量と卵の泡立てを見直してください。この2つが、米粉ケーキの膨らみを支える主役だからです。
米粉にはグルテンがないため、生地自体に気泡を支える力が弱く、ベーキングパウダーが出すガスと、卵を泡立てて含ませた空気が膨らみを担っています。膨らまない原因として、ベーキングパウダーの量不足と卵の泡立て不足が挙げられているのは、そのどちらかが欠けると膨らみの元がなくなってしまうからです。
やりがちなのが、卵を冷蔵庫から出してすぐに泡立てることです。冷たい卵は泡立ちにくく、十分に空気を含まないまま次の工程に進んでしまいがちです。また、粉を加えたあとに混ぜすぎると、せっかく含ませた泡がつぶれてしまうこともあります。
対策としては、卵などの材料を室温に戻してから使い、砂糖と合わせてしっかり泡立てること、ベーキングパウダーは米粉100gあたり小さじ1~1.5程度を目安にすりきりで量ることです。粉を加えたら、粉っぽさがなくなったところで混ぜるのをやめましょう。それでも膨らみが足りないと感じる場合は、米粉の性質上の限界もあるので、しっとり系のケーキとして楽しむと割り切るのも一つの考え方です。
焦げ・張りつきは「油の量」と「釜底」に原因がある
底が焦げる、ケーキが釜に張りつくといった失敗は、油の使い方と、生地が釜底に直接触れていることが原因とされています。
多量の油を使うと、内釜の温度が上がりすぎて温度センサーが誤作動をおこすおそれがあり、焦げつきや内釜を傷める原因になるとされています。炊飯器は、釜の温度を見ながら加熱を調整する道具です。油が多いと、その温度の上がり方が想定と変わってしまうわけです。また、生地が釜底に直接触れていると、そこに熱が集中して焦げやすくなります。
釜にくっつかないようにと、内釜に油を多めに流し入れたり、生地の油を増やしたりするのは逆効果です。多量の油は温度の上がりすぎにつながり、焦げや内釜を傷める原因になるおそれがあります。油やバターは薄く塗る程度にとどめ、焦げが心配なら釜の底にクッキングシートを敷きましょう。
張りつき防止は、内釜にバターやオイルを薄く塗る方法と、オーブンシートやクッキングシートを敷く方法が有効とされています。シートを使うと、焦げの対策にもなり、取り出すときもシートごと引き上げられます。生地の油脂もレシピの量を守り、しっとりさせたいからと増やさないことが、焦げを防ぐいちばんの近道です。
取り出すときに崩れるのは、熱いうちに出すから
焼き上がりはうまくいったのに、取り出すときにケーキが割れたり崩れたりする場合は、取り出すタイミングを見直してください。少し冷ましてから釜から出すと、崩れにくくなるとされています。
焼き上がった直後のケーキは、中に蒸気と熱を抱えていて、生地がまだやわらかい状態です。米粉のケーキはグルテンの骨組みがない分、熱いうちは形を保つ力が弱く、そのまま持ち上げたり逆さにしたりすると、自分の重さで割れてしまうことがあります。時間をおいて温度が下がると、生地が落ち着いて形が安定してきます。
ありがちなのが、焼き上がりの香りにつられて、すぐに内釜を逆さにしてお皿に出してしまうことです。側面が釜に張りついているところと、すでに離れているところがあると、ケーキの一部だけが釜に残ってちぎれてしまいます。
取り出すときは、内釜を炊飯器から出して少し置き、粗熱が取れてからにしましょう。オーブンシートを敷いていればシートの端を持って引き上げ、敷いていない場合は、側面を確認してから皿をかぶせて逆さにします。熱い内釜を扱うので、やけどには注意してください。
誰が作るかで変わる?目的別の米粉ケーキの選び方
初めての人は、ミックス粉の炊飯器ケーキで「自分の炊飯器」を知る
炊飯器でケーキを焼くこと自体が初めてなら、最初はホットケーキミックスや米粉のミックス粉など、配合がまとまった粉から始めるのも一つの方法です。
炊飯器ケーキの失敗は、配合の問題と、炊飯器との相性の問題が重なって起こることがあります。初めてのうちは、生焼けになったとき、それが水分の量のせいなのか、炊飯器の加熱が合っていないせいなのかを見分けにくいものです。膨らませる材料がすでに入っているミックス粉なら、配合の誤差が出にくい分、炊飯器側のクセに目を向けやすくなります。
やりがちなのは、最初から米粉、抹茶、果物など、いくつもの要素を同時に試してしまうことです。うまくいかなかったときに、どこを直せばいいのかがわからなくなってしまいます。
まずはミックス粉の配合で一度焼き、ケーキモードか通常の炊飯コースで何分かかったか、竹串での状態はどうだったかを確かめてください。そのうえでプレーンの米粉に切り替えれば、変えたのは粉だけなので、米粉の性質による違いがはっきり見えます。フライパンで焼く米粉のパンケーキの配合は、こちらで紹介しています。

小麦粉を使わないお菓子にしたい人は「全部の材料」を見る
小麦粉を使わずにケーキを作りたい場合は、粉を米粉に替えるだけでなく、ほかのすべての材料を確認することが大切です。米粉だけ見て安心してしまうのが、いちばんの落とし穴です。
米粉そのものはグルテンを含みませんが、ケーキに使う材料は米粉だけではありません。ミックス粉やベーキングパウダー、トッピングなど、使う材料に何が含まれているかは製品ごとに違います。そのため、米粉を使っていることだけを根拠に、小麦を使っていないケーキだと判断するのは早計です。
よくあるのは、米粉を使ったからと安心して、手元にあったホットケーキミックスを混ぜたり、原材料を確かめないままトッピングを加えたりしてしまうケースです。米粉のケーキを作ったつもりでも、ほかの材料から小麦が入ってしまうことがあります。
小麦を使わないお菓子にしたいなら、米粉は菓子・料理用のプレーンなものを選び、ベーキングパウダーやトッピングを含めて、すべての材料の原材料表示を確認してから使いましょう。ミックス粉を使う場合も、袋の原材料表示を見て判断してください。
抹茶やココアで味を変えたい人は、粉の量を基準に考える
米粉ケーキに抹茶やココアを加えて味を変えたい場合は、基準にした配合の中で、粉の一部として扱うと考えると整理しやすくなります。
基準にした米粉の抹茶ケーキでは、米粉150gに抹茶10gが加えられています。パナソニックのベーカリー向けレシピでは、米粉パンケーキミックス150gにココア9gという組み合わせが紹介されています。抹茶やココアは粉末なので、加えると生地全体の粉の量が増え、水分とのバランスが変わります。米粉が水分を抱え込む性質を考えると、粉末を増やしすぎると生地が重くなりやすいと考えられます。
やりがちなのは、風味を強くしたいからと、抹茶やココアを目分量で多めに入れることです。生地の状態が変わり、膨らみや火の通りに影響することがあります。
味を変えるときは、抹茶やココアの量が明記されたレシピを選び、その分量どおりに作るのが確実です。最初は紹介された配合で一度焼き、風味の強さを確かめてから調整しましょう。
まとめ
米粉はグルテンがない分、小麦粉のように高くは膨らみませんが、水分を抱え込む性質が、蒸気で包む炊飯器の加熱とよくかみ合います。最初の一歩は、手元の炊飯器の取扱説明書を開いて、ケーキモードやパン・ケーキのコースがあるか、炊飯以外の調理ができるかを確かめることです。そのうえで、米粉150gの基準配合を分量どおりに一度焼き、何分で中心まで火が通ったかをメモしておけば、次からはその炊飯器に合ったあなたの焼き方ができあがります。
※炊飯器の調理メニューや使い方は機種ごとに異なります。最新情報は各メーカーの取扱説明書・ウェブサイトでご確認ください。

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