袋に「うるち米」と書かれたお米と、「白米」として売られているお米。同じものなのか、別のものなのか。レシピに「うるち米を使う」と書かれていて手が止まった、という方もいるのではないでしょうか。どちらも毎日の食卓で聞く言葉なのに、並べてみると違いを説明しにくい組み合わせです。
結論から言うと、うるち米と白米は、そもそも「比べる物差し」が違う言葉なんですよ。うるち米はデンプンの成分で分けたときの呼び名で、対になるのはもち米。白米は精米の度合いで分けたときの呼び名で、対になるのは玄米です。ふだん炊いているごはんの多くは、この2つの条件が重なった「うるち米の白米」にあたります。
この記事では、うるち米ともち米を分けるアミロースの話、白米と玄米を分ける精米の仕組み、4つの組み合わせでの整理、コシヒカリなどの品種名との関係、そして炊き方・保存・袋の表示の見方まで、理屈から順番にほどいていきます。読み終えるころには、お米の袋の一括表示を見るだけで、そのお米がどこに位置するのかがわかるようになります。
・うるち米と白米が「別の物差し」の言葉である理由
・うるち米ともち米の粘りを分けるアミロースの割合
・白米と玄米を分ける精米の仕組みと、4つの組み合わせの整理
・炊き方・保存・袋の表示で、どちらの違いを気にすればよいか
うるち米と白米の違いは「比べる物差し」がそもそも別

うるち米は「成分」で分けた名前、白米は「削り方」で分けた名前
うるち米と白米の違いをひとことで言うと、分類の基準が違うということです。うるち米は、お米に含まれるデンプンの性質で分けたときの呼び名。白米は、玄米をどこまで削ったか、つまり精米の度合いで分けたときの呼び名です。
なぜこう言い切れるかというと、お米の分け方には少なくとも2本の軸があるからです。1本目は「デンプンの成分」の軸で、ここではうるち米ともち米が向かい合います。農林水産省の農産物規格の解説でも、水稲はうるち・もち・醸造用の3種類に分けて扱われています。2本目は「精米の度合い」の軸で、こちらでは玄米と白米が向かい合います。玄米から胚芽と糠層を取り除いたものが白米です。
台所でよく起きるのは、この2本の軸を1本の線の上に並べてしまうことです。「うるち米か、白米か」と二択で考えると、どちらかを選ばなければいけない気がしますが、実際は両方に当てはまるお米がたくさんあります。たとえば、スーパーで買ういつものお米は、成分で見ればうるち米、削り方で見れば白米です。
見分けるコツは、「この言葉の反対語は何か」を考えることです。うるち米の反対はもち米、白米の反対は玄米。反対語がわかれば、その言葉がどちらの軸の話をしているのかがすぐに見えてきます。
なぜ混同されやすい?毎日のごはんが両方に当てはまるから
うるち米と白米が同じ意味だと思われやすいのは、ふだん食べているごはんが、両方の条件を同時に満たしているからです。茶碗によそう白いごはんは、ほぼ「うるち米の白米」。だから日常会話では、どちらの言葉で呼んでも話が通じてしまいます。
理由をもう少し掘ると、日本で栽培される水稲の主流がうるち米であること、そして家庭で炊くお米の多くが精米済みの白米であることが重なっています。うるち米は粘りが控えめで、ふだんのごはん・丼・チャーハンなど幅広い料理に使われるお米です。日常の「ごはん」の代表がうるち米の白米なので、言葉の境目がぼやけてしまうんですね。
混同がはっきり問題になるのは、ふだんと違うお米を扱う場面です。たとえば赤飯やおこわのレシピで「もち米と、うるち米を少し混ぜる」と書かれているとき。ここでの「うるち米」は、いつもの白いごはん用のお米を指していることが多いのですが、「白米と書いていないから別物を買わなきゃ」と迷ってしまう方がいます。逆に、玄米を買ったつもりが「うるち米」と書いてあったので白米だと思い込んだ、という取り違えも起きます。
こうした迷いを避けるには、レシピや袋の言葉が「成分の話」か「削り方の話」かを、まず切り分けることです。成分の話ならもち米との対比、削り方の話なら玄米との対比として読めば、ほとんどの迷いは解消します。
実は「白米」の反対は「うるち米」ではなく「玄米」です
意外と知られていないけれど、白米という言葉と対になるのは玄米です。うるち米と白米を並べて「どちらが上か」「どちらが体にいいか」と比べる話をときどき見かけますが、そもそも比べる相手が違います。比べるなら、うるち米はもち米と、白米は玄米と比べるのが筋です。
理屈はシンプルで、玄米は籾から籾殻を取り除いた状態の米粒、白米はそこからさらに胚芽と糠層を取り除いた状態です。つまり白米と玄米の違いは「どこまで削ったか」であって、デンプンの種類とは関係がありません。うるち米を削れば「うるち米の白米」、削らなければ「うるち米の玄米」になります。同じように、もち米にも白米と玄米があります。
この視点を持っていないと、たとえば「玄米はうるち米じゃないの?」という質問に答えられなくなります。正解は「ふつう売られている玄米の多くは、うるち米の玄米」です。玄米かどうかと、うるち米かどうかは、別々に決まっている性質なんですよ。
お米を選ぶときは、まず「粘りの性質(うるち・もち)」、次に「削り方(白米・玄米)」の順に確認すると、頭の中がすっきり整理できます。この順番は、後で紹介する炊き方や保存の注意を考えるときにもそのまま使えます。
うるち米=デンプンにアミロースを含み、粘りが控えめなお米。ふだんのごはん用。対になるのはもち米。
白米=玄米から胚芽と糠層を取り除いたお米。精白米・精米とも呼ばれる。対になるのは玄米。
玄米=籾から籾殻だけを取り除いた状態の米粒。胚芽と糠層が残っている。
もちもち派とあっさり派はなぜ分かれる?粘りを決めるデンプンの割合
アミロースとアミロペクチン、2種類のデンプンの配合が粘りを決める
うるち米ともち米の違いは、デンプンの「配合」の違いです。お米のデンプンは、アミロースとアミロペクチンという2種類でできていて、このうちアミロースがどれくらい含まれるかで、炊き上がりの粘りが変わります。
アミロースは鎖がまっすぐに近い形のデンプン、アミロペクチンは枝分かれの多い形のデンプンです。枝分かれの多いアミロペクチンは、加熱されると互いに絡み合いやすく、それが粘りとして感じられます。一方でアミロースが多いほど、炊き上がりはさらっとした方向に寄ります。うるち米のデンプンは、アミロペクチンとアミロースがおおよそ8対2の割合とされ、もち米はほぼアミロペクチンだけでできています。
台所でこの違いがはっきり出るのは、炊いたあとの手ざわりです。うるち米のごはんは一粒一粒がほどけやすく、しゃもじで切るように混ぜられます。もち米を蒸したおこわは、粒どうしがくっつき合って、ひとかたまりになりやすい。同じ「お米」でも、デンプンの配合が違うだけで、これだけ扱いが変わるんですね。
ここで覚えておきたいのは、「粘り=おいしさの量」ではないということです。粘りの強さは好みや料理との相性で選ぶもので、どちらが上という話ではありません。料理に合わせてうるち米ともち米を使い分ける、と考えるのが基本です。
うるち米のアミロースは17〜23%、もち米はほぼ0%
数字で見ると、うるち米ともち米の差はとても…ではなく、はっきりと開いています。農研機構の資料では、従来のうるち米のアミロース含量は17〜23%とされています。一方、米穀安定供給確保支援機構の資料では、もち米のアミロース含量はほぼ0%に近いと説明されています。
この差が粘りに直結する理由は、前の項目で見たとおりです。アミロース含量の低い米ほど、軟らかく粘りのある炊き上がりになるとされています。うるち米は2割前後のアミロースを含むので、粘りはありつつも粒感が残る。もち米はアミロースをほとんど含まないので、粘りが前面に出ます。
やりがちなのは、「もち米を少し混ぜればもっちりする」と考えて、割合を決めずに混ぜてしまうことです。もち米側のアミロースがほぼ0%なので、混ぜる量が増えるほど、全体の炊き上がりは粘りの強い方向へ動きます。ふだんのごはんの延長として楽しみたいのか、おこわに近づけたいのかで、混ぜる量の考え方が変わってきます。
混ぜて炊くときは、まずレシピに書かれた割合と、炊飯器の取扱説明書のもち米・おこわに関する案内を確認しましょう。機種によっては、もち米を混ぜた場合の水位の見方が書かれていることがあります。
「低アミロース米」はうるち米ともち米のあいだにいる
うるち米ともち米のあいだには、低アミロース米と呼ばれる系統もあります。これはうるち米の仲間ですが、アミロース含量が従来のうるち米より低く、粘りが強めに出やすいお米です。
農研機構の資料では、低アミロース系統の品種は、胚乳デンプン中のアミロース含量が数〜17%程度とされています。従来のうるち米が17〜23%、もち米がほぼ0%なので、ちょうどそのあいだを埋める位置にあることがわかります。デンプンの割合で粘りが決まるという理屈を当てはめると、低アミロース米がもっちりした方向に寄るのは自然な結果です。
ここで起きやすい誤解は、「もっちりしているから、もち米の一種だろう」と思ってしまうことです。低アミロース米はあくまでうるち米の側に分類される系統で、もち米とは別物です。逆に、「うるち米はどれも同じ粘り」と考えるのも正確ではありません。同じうるち米の中にも、アミロース含量の幅があるからです。
袋の品種名から粘りの傾向を知りたいときは、その品種を育成した道県や研究機関の品種紹介を確認するのが確実です。二次的なランキングの評価ではなく、育成元の説明を読むと、その品種がどういう狙いで作られたのかがわかります。
アミロースが少ないほど食味評価が高い傾向とされる理由
うるち米のおいしさについては、アミロース含量が低いほど食味評価が高くなる傾向がある、とされています。北海道大学の研究論文では、タンパク質含量が低いほど、そしてアミロース含量が低いほど、うるち米の食味評価が高くなるとされています。
理由としては、日本で好まれるごはんの食感が、適度な粘りと軟らかさを持つ方向にあることが挙げられます。アミロースが少なめのうるち米は、炊き上がりが軟らかく粘りが出やすいので、その好みに合いやすいわけです。ただしこれは「傾向」の話で、アミロースが低ければ低いほど誰にとってもおいしい、という意味ではありません。
台所で気をつけたいのは、料理によっては粘りが強すぎると扱いにくいことです。たとえばチャーハンや丼ものでは、粒がほぐれやすいほうが調理しやすく、タレや具とのなじみも変わります。粘りの強いお米を選んだ結果、パラッとさせたい料理でまとまってしまう、というのはよくある話です。
お米を選ぶときは「ふだんの白いごはんとして食べるのか」「料理に使うのか」をまず決めて、そのうえで粘りの傾向を見ると失敗が減ります。食味の評価は、日本穀物検定協会の食味ランキングのように評価年が明記された資料で確認するのがおすすめです。
| 項目 | 従来のうるち米 | 低アミロース米 | もち米 |
|---|---|---|---|
| アミロース含量 | 17〜23% | 数〜17%程度 | ほぼ0%に近い |
| 炊き上がりの傾向 | 粘りは控えめで粒がほどけやすい | うるち米の中では粘りが強め | 粘りが強く、粒どうしがくっつきやすい |
| 主な使い道 | ふだんのごはん・丼・チャーハン | もっちりしたごはんを楽しみたいとき | 赤飯・おこわ・餅・和菓子 |
出典:農研機構「食糧」掲載資料、米穀安定供給確保支援機構の資料をもとにお米の教科書編集部で整理
白米と玄米はどこで分かれる?精米で取り除く5〜6%の糠層

玄米は籾殻を外しただけ、白米は胚芽と糠層まで外したもの
白米と玄米の違いは、お米の外側をどこまで取り除いたかです。玄米は籾から籾殻を取り除いた状態の米粒で、胚乳・胚芽・糠層がそのまま残っています。白米は、その玄米からさらに胚芽と糠層を取り除き、胚乳の部分を取り出したものです。
京都大学の実験テキストでは、玄米を100%としたとき、胚芽が2〜3%、糠層が5〜6%を占め、胚乳部が91〜93%にあたると説明されています。精米とは、この胚芽と糠層を取り除いて胚乳部を取り出す操作のこと。つまり白米は、玄米の重さのうち1割に満たない外側の部分を落としたお米、と考えるとイメージしやすくなります。
この「1割弱の差」が、見た目や炊き方に大きく効いてきます。玄米が褐色をしているのは、糠層が残っているからです。白米が白く見えるのは、その糠層を取り除いて胚乳がむき出しになっているから。名前のとおり、色の違いがそのまま削り方の違いを表しています。
ここで注意したいのは、玄米か白米かは「削り方」だけで決まり、品種やうるち・もちとは関係がないことです。同じ品種のうるち米でも、精米前なら玄米、精米後なら白米と呼び名が変わります。袋を見るときは、品種名とは別に「玄米か精米か」を確認しましょう。
精米には「こすり合わせる」方法と「削る」方法がある
玄米を白米にする精米には、大きく分けて摩擦式と研削式の2つの考え方があります。どちらも目的は同じで、胚芽と糠層を取り除いて胚乳を取り出すことですが、外側の落とし方が違います。
京都大学の実験テキストによると、摩擦式は、穀粒どうしの摩擦力と金属部との接触によって、糠層を薄い片状にはがしていく方法です。研削式は、高速で回転する金剛砂のロールで玄米の表面を削り、磨いていく方法とされています。前者は「こすり合わせて剥がす」、後者は「やすりのように削る」とイメージすると違いがつかめます。
同じテキストでは、精米は食味を向上させるために行う操作だとも説明されています。糠層には独特の風味や香りがあり、残っていると炊き上がりの味や香りに影響します。白米が玄米よりもあっさりと感じられるのは、この糠層が取り除かれているからです。
家庭で知っておきたいのは、精米の方法そのものより「精米された時期」です。精米後のお米は外側を守っていた糠層がなくなっているので、玄米より環境の影響を受けやすくなります。精米したてのお米を選ぶ、買ったら早めに食べる、という意識が、白米をおいしく食べるいちばんの近道です。
玄米を白米と同じ感覚で炊いて芯が残る失敗
白米と玄米の違いを知らずに起きやすいのが、玄米を白米と同じ手順で炊いて、硬さや芯が残る失敗です。原因は、玄米の外側に残っている糠層にあります。
白米は胚乳がむき出しなので、浸水するとお米の表面から比較的すんなりと水が入っていきます。一方、玄米は糠層に包まれているため、その層が水の通り道をふさぐ形になります。白米と同じ感覚で浸水を済ませ、白米の目盛りで炊いてしまうと、中心まで水と熱が届かず、ぼそぼそした炊き上がりになりやすいわけです。
よくある場面は、「白米に少し玄米を混ぜてみよう」と思い立ち、いつものコースでそのまま炊いてしまうケースです。白米部分はふっくら炊けているのに、玄米の粒だけが硬く残る。混ぜる量が増えるほど、この差は目立ちます。
対策としては、まず炊飯器の取扱説明書で玄米の扱いを確認することです。機種によっては玄米コースや玄米用の水位線があり、浸水や加熱の時間が白米とは別に設定されています。具体的な浸水時間や水の量は、メーカーや機種によって案内が違うので、手元の取扱説明書の値に従いましょう。
玄米を白米と同じ浸水・同じ目盛りで炊くと、糠層が水を通しにくいため芯が残りやすくなります。「玄米は白米とは別の炊き方」と考え、取扱説明書の玄米の項目を先に確認しましょう。
4つの組み合わせで整理すると、袋のお米がすぐ読める
うるち白米・うるち玄米・もち白米・もち玄米の4マス
ここまでの2本の軸を掛け合わせると、お米は4つのマスに整理できます。うるち米の白米、うるち米の玄米、もち米の白米、もち米の玄米です。縦にうるち・もち、横に白米・玄米を置いた表を思い浮かべると、どのお米も必ずどこかのマスに入ります。
この整理が成り立つのは、2本の軸がお互いに独立しているからです。デンプンの配合は稲の性質で決まり、精米しても変わりません。うるち米を精米してももち米にはならないし、もち米を精米せずに玄米のまま残してもうるち米にはなりません。だから「成分」と「削り方」を別々に選べるわけです。
台所でこの4マスが役に立つのは、袋の表示を読むときです。袋に品種名だけが大きく書かれていると、それがどのマスなのか一瞬わからなくなります。でも「うるちかもちか」「精米か玄米か」の2点を確かめれば、迷わずマスが決まります。
ふだんスーパーの米売り場に並ぶお米の多くは「うるち米の白米」のマスにあたり、同じ売り場の別の棚に「うるち米の玄米」、和菓子や赤飯用の棚に「もち米の白米」が置かれていることが多いです。マスごとに用途がはっきり違うので、まずは今日使いたい料理から逆算してマスを選びましょう。
| 成分\削り方 | 白米(胚芽と糠層を除去) | 玄米(籾殻のみ除去) |
|---|---|---|
| うるち米(アミロース17〜23%) | ふだんの白いごはん。丼・チャーハン・おにぎりなど幅広く使う | 褐色で糠層つき。白米とは別の浸水・炊き方が必要 |
| もち米(アミロースほぼ0%) | 赤飯・おこわ・餅・和菓子づくりに使う | 糠層つきのもち米。粘りと糠層の両方を考えて炊く |
農林水産省・農研機構・米穀安定供給確保支援機構・京都大学の公開資料をもとに整理
もち米にも「白米」がある——赤飯やお餅に使うのはもち米の白米
意外と見落とされがちなのが、もち米にも白米があるということです。お餅や赤飯に使うもち米は、ほとんどが精米済みの「もち米の白米」です。「白米=ふだんのごはん用のお米」という思い込みがあると、この点で混乱します。
理屈は4マスの表のとおりで、もち米も稲の実なので、籾殻を外せば玄米、胚芽と糠層を取れば白米になります。もち米の特徴であるアミロースがほぼ0%という性質は、精米しても変わりません。だから精米済みのもち米は、白いのに強い粘りを持つ、という組み合わせになるわけです。
台所で起きやすいのは、もち米を買ってきたときに「白米だから、いつものお米と同じように炊けばいい」と考えてしまうことです。見た目は白くても、デンプンの性質はうるち米とまったく別物なので、炊き方の考え方も変わります。この失敗については、炊き方の見出しで詳しく取り上げます。
見分けるポイントとして、一般に、うるち米の白米はやや半透明、もち米の白米は乳白色で不透明に見えるとされています。ただし品種や状態で見え方は変わるので、目で判断するより袋の表示を確認するのが確実です。もち米は袋の名称や商品名にその旨が書かれていることが多いので、買うときにひと目確認しましょう。
読者タイプ別:どのマスのお米を選べばいい?
4マスの整理ができたら、あとは自分の使い方に合うマスを選ぶだけです。料理の目的によって選ぶマスがはっきり分かれるので、タイプ別に見ていきましょう。
毎日のごはんを炊く人は、うるち米の白米が基本です。浸水と水加減の基準が炊飯器の目盛りにそのまま合わせてあることが多く、迷いが少ないマスです。粘りの好みで品種を選び分けると、同じマスの中でも違いを楽しめます。
赤飯・おこわ・お餅を作りたい人は、もち米の白米を選びます。レシピによっては、もち米にうるち米を一部混ぜるものもあります。このとき「うるち米」と書かれているのは、ふだんの白米のことだと考えて問題ありません。
玄米ごはんに挑戦したい人は、うるち米の玄米から始めるのが一般的です。ただし、炊き方は白米とは別物なので、炊飯器に玄米コースや玄米用の目盛りがあるかを先に確認しましょう。いきなり全量を玄米にするより、手順を確認しながら少しずつ慣れていくほうが失敗が少なくなります。
お米の違いを家族に説明したい人は、「縦がうるち・もち、横が白米・玄米」の4マスを紙に描いて見せるのがいちばん伝わりやすい方法です。
コシヒカリやあきたこまちは「うるち米」?品種名はもう1本の別の軸
品種名は「どの稲か」を示す名前で、うるち・もちとは重なる
コシヒカリやあきたこまちといった品種名は、うるち・もち、白米・玄米とはまた別の軸の名前です。品種名は「どういう稲から採れたお米か」を示す名前で、その品種がうるち米なのかもち米なのかは、品種ごとに決まっています。
理由は、うるち・もちの違いがデンプンの性質、つまり稲の遺伝的な性質で決まるからです。品種を作るときには、その性質も含めて育成されます。コシヒカリやあきたこまちはうるち米の品種なので、精米すれば「うるち米の白米」、精米しなければ「うるち米の玄米」になります。品種名の中に、すでに「うるちかもちか」が含まれているイメージです。
やりがちなのは、「コシヒカリとうるち米、どっちがいいの?」と比べてしまうことです。コシヒカリはうるち米の中の1品種なので、比べるならコシヒカリと別のうるち米の品種、という形になります。比べる相手を間違えると、どれだけ調べても答えが出ません。
袋を見るときは、品種名で「どの稲か」、精米の表示で「白米か玄米か」を確認し、品種の育成元の紹介ページで「うるちかもちか」や食感の傾向を確かめる、という3段構えにすると整理しやすくなります。品種どうしの食味を比べたいときは、評価年が明記された資料を使いましょう。
コシヒカリは1956年に福井県で生まれたうるち米
うるち米の品種として最も名前が知られているのが、コシヒカリです。農林水産省の広報誌affでは、コシヒカリは1956年に福井県で誕生した品種で、甘みと粘り気が強く、冷めてもおいしいことから多くの人に好まれていると紹介されています。
同じ記事では、1979年から作付面積1位が続いていることにも触れられています。日本で日常的に食べられている「うるち米の白米」の代表格が、このコシヒカリだと考えるとわかりやすいでしょう。粘り気が強いとされるのは、うるち米の中でも食感の好みに合う方向へ育成された結果です。
ここで押さえたいのは、粘り気が強いとはいっても、コシヒカリはもち米ではなく、あくまでうるち米だということです。「もちもちしているから、もち米の仲間かな」と考えてしまう方もいますが、分類上はうるち米の品種です。うるち米の中にも粘りの強弱があり、その中で粘りのある側に位置づけられている、という見方が正確です。
コシヒカリの産地ごとの違いや炊き方のコツは、こちらの記事でくわしく解説しています。

| 分類・誕生 | うるち米。1956年に福井県で誕生(農林水産省の広報誌affより) |
| 食感・味の傾向 | 甘みと粘り気が強く、冷めてもおいしいと紹介されている |
| 向いている料理・食べ方 | 日常のごはん。冷めてもおいしい性質から、おにぎりやお弁当にも |
| 炊き方のコツ | 白米なら炊飯器の白米の目盛りが基準。玄米で買った場合は玄米の扱いに切り替える |
あきたこまちはコシヒカリを親に持つ秋田県のうるち米
もうひとつ、名前をよく見かけるうるち米の品種があきたこまちです。秋田県で生まれた品種で、コシヒカリを親に持つことが知られています。親子関係があるので、品種の系統としてもうるち米の流れにあります。
品種どうしに親子関係があるのは、新しい品種が既存の品種を掛け合わせて育成されるからです。親の性質のうち、残したいものを受け継ぎ、改良したい部分を変えていく。その過程で、うるち・もちといったデンプンの性質も受け継がれます。うるち米を親にした品種がうるち米になるのは、この流れからすると自然なことです。
あきたこまちは、粘りのある食感で、冷めてもおいしいと紹介されることが多い品種です。また、秋田県ではカドミウムを吸収しにくい性質を持たせた「あきたこまちR」への切り替えも進められています。名前に「R」がついていても、うるち米の品種である点は変わりません。食感や性質の詳しい説明は、育成元である秋田県の品種紹介で確認するのが確実です。
こうして見ると、品種名は「うるち米の中のどれか」を指す名前だとわかります。うるち米と白米の違いを理解したうえで品種を見ると、「この品種のうるち米を、白米で買うか玄米で買うか」という選び方ができるようになります。
炊き方と保存は「どの軸の違いか」で変わる
うるち米ともち米の差は「粘りの出方」に出る
炊き方を考えるときも、2本の軸を分けて考えるとすっきりします。まず、うるち米ともち米の違いは、炊き上がりの「粘りの出方」に表れます。
理由は、ここまで見てきたデンプンの配合です。うるち米はアミロースを17〜23%含むので、炊いても粒の形が保たれやすく、ほどよい粘りに落ち着きます。もち米はアミロースがほぼ0%に近く、アミロペクチンが中心なので、加熱すると粘りが強く出て、粒どうしがくっつきやすくなります。同じ火加減でも、お米側の性質で結果が変わるということです。
このため、炊飯器では白米用のコースとは別に、もち米やおこわ向けの扱いを用意している機種があります。うるち米用の基準をもち米にそのまま当てはめると、仕上がりが想定と違ってしまうのは、この粘りの出方の違いが原因です。
コツは、「もち米は別の食べ物を作るつもりで扱う」ことです。ふだんのごはんの延長ではなく、おこわや赤飯という別の料理を作る意識で、レシピと取扱説明書の両方を確認しましょう。炊飯器でもち米が扱えるかどうか、どのコースを使うかは機種によって違うので、メーカーの案内に従うのが確実です。
白米と玄米の差は「糠層が水を通しにくいこと」に出る
もう1本の軸、白米と玄米の違いは、炊き方では「水の入りやすさ」に表れます。糠層のある玄米は、白米よりも水を吸わせるのに手間がかかります。
白米は、胚芽と糠層を取り除いた胚乳がむき出しになっているので、浸水すると表面から水が入りやすい状態です。玄米は、胚乳の外側を糠層が包んでいるため、その層が水の侵入を遅らせます。だからこそ、玄米には白米とは別の浸水や加熱の設定が用意されていることが多いんですね。
この違いは、うるち米ともち米のどちらにも当てはまります。うるち米の玄米でも、もち米の玄米でも、糠層があれば水は入りにくい。つまり「玄米だから炊き方を変える」という判断は、うるち・もちの判断とは別に、独立してする必要があるということです。
白米と玄米の違いや、玄米の浸水の考え方は、こちらの記事でさらにくわしく解説しています。

浸水時間や水の量の具体的な値は、炊飯器メーカーや機種によって案内が違います。1社の値を一般化せず、手元の取扱説明書の玄米の項目を確認しましょう。
もち米をうるち米と同じ目盛りで炊いてべたつく失敗
うるち米ともち米の違いを知らずに起きやすいのが、もち米をいつもの白米の目盛りで炊いてしまい、べたついた炊き上がりになる失敗です。見た目が白いので、「白米だから同じでいい」と思い込んでしまうのが原因です。
前の項目で見たように、もち米はアミロースがほぼ0%で、炊くと粘りが強く出ます。うるち米の白米を基準にした水位で炊くと、粘りの強さに加えて水分も多めに感じられ、べたっとした仕上がりになりやすくなります。デンプンの性質が違うのに、基準をそのまま流用したことが失敗の正体です。
よくある場面は、年末にお餅用に買ったもち米が余り、「普通のごはんとして炊いてしまおう」と炊飯器に入れるケースです。また、うるち米にもち米を混ぜる場合も、割合が増えるほど同じ問題が起きやすくなります。
対策は、もち米を炊く前に、炊飯器の取扱説明書でもち米・おこわの扱いを確認することです。機種によっては専用のコースや目盛りがあります。専用の扱いがない機種なら、もち米用のレシピに沿って炊くのが安全です。具体的な水の量は機種やレシピによって違うので、案内に書かれた値に従いましょう。
精米済みのもち米を「白米だから」といつもの白米の目盛りで炊くと、粘りが強く出てべたつきやすくなります。白いかどうかではなく、うるち米かもち米かで炊き方を決めましょう。
保存は「白米ほど早め」——10〜15℃・乾いた場所が基本
保存について気にしたいのは、うるち・もちの違いよりも、白米か玄米かの違いです。白米は外側を守っていた糠層が取り除かれているので、精米後は環境の影響を受けやすくなります。
精米されたお米は、10〜15℃程度の低温で、直射日光を避けた乾いた場所に置くのがよいとされています。温度が高い、湿気が多い、光が当たる、といった条件がそろうと、お米の風味が落ちやすく、虫が発生するリスクも高まります。常温での保存は、とくに気温が上がる季節に虫の発生リスクが高いとされます。
やりがちなのは、買ってきた袋のまま、コンロの近くやシンク下に置いてしまうことです。台所の中でも温度と湿気がこもりやすい場所なので、白米の保存には向きません。袋のまま保存する場合も、置き場所には気を配りましょう。
家庭でできる方法としては、ペットボトルやチャック付きの袋に入れて密封し、冷蔵庫の野菜室に入れる方法がよく紹介されています。季節によって食べきりの目安も変わり、暑い時期ほど早めに食べきるのが基本です。袋のままでよいのか、どこに置くとよいのかは、こちらで詳しく解説しています。

うるち米と白米の違いで迷いやすい疑問——袋の表示と栄養の話
袋の一括表示で「成分」と「削り方」の両方を確かめる
お米の袋を手に取ったとき、うるち米かどうか、白米か玄米かを確かめるには、裏面の一括表示を見るのが確実です。表面の大きな商品名やキャッチコピーではなく、表示欄の項目に注目しましょう。
お米の表示は、消費者庁の食品表示基準で、玄米と精米についてのルールが定められています。一括表示の「名称」の欄を見れば、精米か玄米かといった種類がわかり、もち米の場合はそれがわかる書き方がされています。また、「原料玄米」の欄には、産地・品種・産年が記載されていることが多く、ここで品種名も確認できます。
見落としやすいのが、精米の時期を示す欄です。精米したお米の場合、いつ精米されたかの表示があり、現在の表示基準では「精米時期」という項目名になっています。前の項目で見たように、白米は精米後に環境の影響を受けやすいので、この欄を確認しておくと、新しいものを選ぶ目安になります。
つまり、一括表示の「名称」で白米か玄米か(ともち米かどうか)、「原料玄米」で品種、「精米時期」で鮮度を確認する、という順番で見れば、ここまでの2本の軸と品種名の軸がすべて読み取れます。表示の細かな規定は改定されることがあるので、気になる場合は消費者庁の食品表示基準を確認しましょう。
栄養の違いは「うるちかもちか」より「白米か玄米か」で大きく出る
「うるち米と白米、栄養はどう違うの?」という疑問もよく聞かれます。ただ、ここまで見てきたとおり、この2つは比べる物差しが違うので、栄養を比べる組み合わせとしては成り立ちません。栄養の差が大きく出るのは、白米と玄米のほうです。
理由は、白米と玄米の違いが「胚芽と糠層を取り除いたかどうか」だからです。玄米は、白米では取り除かれる胚芽と糠層を含んでいるため、成分の構成が白米とは異なります。一方、うるち米ともち米の違いは、主にデンプンの中のアミロースとアミロペクチンの比率の違いです。同じ「白米どうし」なら、うるち米ともち米で外側の構造は変わりません。
ここで気をつけたいのは、成分が違うことと、体にいい・悪いを結びつけないことです。白米と玄米は、食感・風味・炊きやすさ・保存のしやすさがそれぞれ違い、どちらを選ぶかは食べ方や好みによって決まります。体調や食事制限について判断が必要な場合は、医師・管理栄養士に相談してください。
成分の具体的な値を知りたいときは、文部科学省の日本食品標準成分表で、うるち米ともち米、玄米と精白米がそれぞれ別の食品として掲載されているので、そちらを確認するのが確実です。
レシピの「うるち米」指定は、何を求めているのか
レシピで「うるち米」と指定されているとき、多くの場合は「もち米ではなく、ふだんのごはん用のお米を使ってください」という意味です。つまり、白米か玄米かではなく、成分の軸での指定だと読むのが自然です。
理由は、うるち米という言葉がもち米との対比で使われる言葉だからです。赤飯やおこわ、和菓子のレシピのように、もち米とうるち米を使い分ける料理でこの言葉がよく出てくるのは、粘りの強さを調整するためにどちらを使うかを明確にしたいからです。
迷いやすいのは、レシピに「うるち米」とだけ書かれていて、白米か玄米かが書かれていないときです。この場合、特に断りがなければ、家庭で一般的に使う精米済みのお米、つまりうるち米の白米を想定していることが多いでしょう。玄米を使うレシピであれば、たいてい「玄米」と明記されています。
確認のコツは、レシピの材料欄と手順を両方読むことです。手順に「研ぐ」「浸水する」とあれば、ふだんの白米を想定しているケースがほとんどです。迷ったら、まずはいつも炊いているうるち米の白米で作ってみるのが、もっとも失敗の少ない選び方です。
まとめ
うるち米と白米は、どちらが良い悪いを比べる言葉ではなく、お米を別々の角度から説明する言葉です。成分で見るならもち米と、削り方で見るなら玄米と比べる。この整理さえできれば、レシピの指定も袋の表示も、迷わず読めるようになります。まずは今日、台所にあるお米の袋を裏返して、一括表示の「名称」と「原料玄米」の欄を確かめるところから始めてみてください。
※表示基準や品種の情報は改定されることがあるため、最新の内容は農林水産省・消費者庁などの一次情報でご確認ください。

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