お粥のレシピや炊飯器の取扱説明書を開くと、全粥・七分粥・五分粥・三分粥といった言葉が並んでいて、どれが何を指しているのか迷うことがあります。全粥って普通のお粥のこと?五分粥とは何が違うの?炊飯器のどの目盛りに合わせればいいの?と、台所で手が止まった経験がある方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、全粥は米1に対して水5の割合で炊くお粥で、5倍粥とも呼ばれます。自治体が公開しているお粥の作り方の資料でも、炊飯器メーカーの案内でも、この割合が全粥の目安として示されています。そこから七分粥・五分粥・三分粥と数字が小さくなるほど水が増え、さらさらとした仕上がりに変わっていきます。数字の意味さえわかれば、レシピの表記で迷うことはぐっと減りますよ。
この記事では、全粥の意味と割合の読み方から、鍋で生米から炊く方法、炊飯器のおかゆメニューの使い方、炊いたごはんから手早く作る方法、時間が経つとのり状になってしまう理由、そして資料ごとの割合の表記の違いまで、家庭の台所で役立つ知識として理屈から整理していきます。
・全粥が5倍粥と呼ばれる理由と、米1対水5という割合の意味
・七分粥・五分粥・三分粥・重湯との違いと、数字の読み方
・鍋・炊飯器・炊いたごはんから、それぞれ全粥を作るときのコツ
・保温するとのり状になる理由と、割合の表記を確かめるコツ
全粥とは?米1に水5で炊く5倍粥のこと

全粥は米1に対して水5で炊くお粥と覚えておけば迷わない
全粥は、米1に対して水5の割合で炊くお粥のことです。お粥の種類の中では水がもっとも少なく、粒の形が残ったぽってりとした仕上がりになります。
この割合は、出どころの違う複数の資料で同じように示されています。苫小牧市が公開しているお粥の作り方の資料では、全粥を5倍粥として米1・水5の割合が表にまとめられています。また、三菱電機の炊飯器でのおかゆの炊き方の案内でも、全粥は米1に対して水5とされています。自治体の資料とメーカーの案内という別々の出典で同じ割合が示されているので、家庭で炊くときの基本の目安として押さえておいてよいでしょう。
台所でやりがちなのが、米は計量カップで、水は計量カップとは別の容器で、と道具を混ぜて量ってしまうことです。割合は同じ単位どうしで比べてはじめて意味を持つので、量る道具がばらばらだと、5倍のつもりが4倍にも6倍にもなってしまいます。米をカップ1杯量ったなら、水も同じカップで5杯、と揃えるのが確実です。
コツは、まず米の量を決めてから水を5倍にすることです。水から決めると米の量が中途半端になりがちで、割合がぶれやすくなります。仕上がりが硬い・ゆるいと感じたら、次回は水を少しずつ調整して、自分の好みの全粥を見つけていきましょう。
全粥(ぜんがゆ)=米1に対して水5の割合で炊くお粥。5倍粥とも呼ばれる。
○倍粥=米に対して何倍の水で炊くかを表した呼び方。全粥は5倍粥、七分粥は7倍粥、五分粥は10倍粥、三分粥は20倍粥にあたる(苫小牧市の資料より)。
全粥はお粥の中で一番濃い基準の位置にある
全粥は、七分粥・五分粥・三分粥と並ぶお粥の区分の中で、水がもっとも少ない基準の位置にあるお粥です。呼び名の由来については資料によって説明が分かれるため断定は避けますが、ほかの区分と比べたときの位置づけとして理解しておくと整理しやすくなります。
苫小牧市の資料の表では、左から三分粥(20倍粥)、五分粥(10倍粥)、七分粥(7倍粥)、全粥(5倍粥)の順に並んでいます。つまり全粥を起点に、水を増やしていくほどお米の割合が薄まり、七分・五分・三分と数字が小さくなっていく関係です。全粥は区分の端にある、もっとも米の割合が多いお粥と考えると位置がつかめます。
よくある勘違いは、全粥を水を多めにして炊いた普通のご飯、くらいの感覚でとらえてしまうことです。ご飯はお米が水をほぼ吸いきって粒が立った状態ですが、全粥は粒のまわりにとろみのある水分が残った状態で、食べたときの口当たりがまったく違います。水を少し足したやわらかめのご飯とは別の料理と考えたほうが、仕上がりのイメージがずれません。
レシピで全粥と書かれていたら米1対水5、七分粥なら米1対水7、と頭の中で割合に置き換えるのがコツです。呼び名のまま覚えるより、割合で覚えたほうが、量を増やしたり減らしたりするときにも計算しやすくなります。
5倍の水がとろりとしたお粥に変わる理由
5倍もの水を入れるのにお粥がとろりとまとまるのは、お米のでんぷんが水と熱によって水を抱え込み、粘りを出すためとされています。お粥のとろみは、このでんぷんの性質から生まれるものです。
生のお米のでんぷんは、粒の中でぎゅっと詰まった状態で、水を加えて加熱すると少しずつほどけて水を取り込み、ふくらみながら粘りを出していきます。ご飯を炊くときはその変化が少ない水の中で起こるので粒どうしが離れたまま仕上がり、お粥では多めの水の中で起こるので、粒の外に溶け出したでんぷんが水にとろみをつけます。5倍の水が全部お米に吸われるのではなく、吸われきれなかった水がとろみのある汁になる、というイメージです。
やりがちな失敗は、蓋をせずに長く煮続けて水が蒸発し、5倍で始めたのに仕上がりが硬くなってしまうケースです。割合はあくまで鍋に入れる量の目安なので、加熱中に飛んでいく水分が多ければ、そのぶん濃いお粥になります。
コツは、鍋で炊くときは蓋を少しずらして水分の飛びすぎと吹きこぼれの両方を防ぐことです。なお、粘りの出方はお米の品種によっても違いがあるとされ、同じ割合で炊いても口当たりの印象が変わることがあります。

七分粥・五分粥・三分粥・重湯は何が違う?数字が小さいほど水が多い理由
○分の数字は水の多さの目安で、小さいほどさらさらになる
七分粥・五分粥・三分粥の数字は、お粥の水の多さを表す目安です。全粥を基準に、七分→五分→三分と数字が小さくなるほど水が増え、さらさらとした仕上がりになります。
苫小牧市の資料では、七分粥は7倍粥(米1・水7)、五分粥は10倍粥(米1・水10)、三分粥は20倍粥(米1・水20)とされています。○分の数字と○倍の数字が逆向きに動くのがわかりにくいところで、○分は小さいほど水が多く、○倍は大きいほど水が多い、という関係になっています。三分粥は全粥の4倍の水を使う計算になり、粒よりも汁の割合が多い仕上がりです。
台所での失敗として多いのが、七分粥は全粥より少し硬め、と逆に覚えてしまうことです。数字が大きいほうが濃い、と思い込んで水を減らしてしまうと、ねらいとは反対の仕上がりになります。七分粥は全粥より水が多い、と一度しっかり整理しておくと、レシピを見たときに迷いません。
コツは、○分を見たら○倍に置き換えて考えることです。七分なら7倍、五分なら10倍、三分なら20倍、と割合で覚えておけば、どの区分のお粥を炊くときも、米の量に掛け算をするだけで水の量が決まります。
割合を一覧で並べると水の差がはっきりわかる
全粥・七分粥・五分粥・三分粥の違いは、表に並べると一目でわかります。生米から炊く場合と、炊いたごはんから作る場合とで割合の数字が変わる点にも注目してください。
下の表は、苫小牧市のお粥の作り方の資料と、東京都西多摩保健所のお粥のレシピに掲載されている数字を、お米の教科書編集部が1枚に整理したものです。生米から炊く割合と、ごはんから作る割合、東京都のレシピで使われている米の量の例を並べています。
| 種類 | 生米から炊く割合 | ごはんから作る割合 | 東京都レシピの米の量 |
|---|---|---|---|
| 全粥(5倍粥) | 米1対水5 | ごはん1対水2 | 米100g(2人分) |
| 七分粥(7倍粥) | 米1対水7 | ごはん1対水3 | 米80g |
| 五分粥(10倍粥) | 米1対水10 | ごはん1対水4 | 米50g |
| 三分粥(20倍粥) | 米1対水20 | ごはん1対水8 | 米20g |
表を見ると、水が多い区分ほど東京都のレシピでの米の量が少なくなっていることがわかります。水を増やすぶん米を減らし、出来上がりの量が大きく膨らみすぎないよう調整されていると読み取れます。三分粥を全粥と同じ米の量で炊くと、鍋に入りきらないほどの量になりかねません。水の多い区分を炊くときは、米の量から先に見直すのがコツです。
重湯(おもゆ)はお粥の上にできる汁のこと
重湯(おもゆ)は、お粥を炊いたときにできるとろみのある汁の部分のことです。粒を含まない、お粥の上澄みにあたるものと考えるとわかりやすいでしょう。
東京都西多摩保健所のお粥のレシピでは、重湯について、五分粥以上の水の多いお粥を炊いたときにできるおかゆの汁をよそう、という作り方が紹介されています。水がたっぷりあるお粥ほど、粒の外に汁の層ができやすいので、そこからすくい取るという考え方です。全粥のように水が少ないお粥では汁の層が少なく、重湯として取り分けるのは難しくなります。
やりがちな失敗は、全粥を炊いて上の汁だけをすくおうとして、ほとんど取れずに困ってしまうことです。重湯を取りたいなら、はじめから五分粥や三分粥のように水の多い区分で炊く必要があります。区分によって作れるものと作れないものがある、と覚えておくと段取りで迷いません。
コツは、重湯をすくうときに鍋底をかき混ぜないことです。かき混ぜると粒や溶け出したでんぷんが汁に混ざり、さらりとした汁ではなくなります。お玉を表面に沿わせて、静かにすくい取りましょう。
五分粥と5倍粥は別物なので取り違えに注意
名前が似ていて混同しやすいのが、五分粥と5倍粥です。5倍粥は全粥のことで米1対水5、五分粥は10倍粥で米1対水10。水の量が2倍違う、まったく別のお粥です。
苫小牧市の資料の表でも、全粥(5倍粥)と5分粥(10倍粥)は別の列に並んでいます。どちらにも5という数字が入っているため、レシピを流し読みしたときに取り違えが起こりやすいのです。○分と○倍はどちらも数字を含む呼び方ですが、意味する方向が逆なので、数字だけを拾って読むと誤解のもとになります。
たとえば、5倍で炊けばいいんだなと思って五分粥のレシピを読み、米1対水5で炊いてしまうと、ねらいより2倍濃い、全粥の仕上がりになります。反対に、全粥のつもりで米1対水10で炊くと、さらさらの五分粥になってしまいます。どちらも食べられないわけではありませんが、思っていた食感とは違うものができあがります。
コツは、レシピの呼び名を見たら、すぐ横に割合を書き添えておくことです。メモ書きでも、取扱説明書の余白でもかまいません。全粥=5倍、五分粥=10倍と並べて書いておけば、数字の5に引っぱられて取り違える心配がなくなります。
鍋で生米から炊くなら、強火で沸騰させてから弱火にする理由

まずは米の量を決めて、水を5倍にする
鍋で全粥を炊くときは、まず米の量を決めて、水をその5倍にするところから始めます。東京都西多摩保健所のレシピでは、全粥は米100gを米1対水5の割合で炊き、2人分の量として紹介されています。
米の量から決めるのは、お粥は炊き上がると量が大きく増えるからです。全粥は米の5倍の水を使うので、ご飯を炊く感覚で米を量ると、思っていたより多くのお粥ができあがります。東京都のレシピで米100gが2人分とされているのも、お粥にすると量がふくらむことを踏まえた分量と読み取れます。
やりがちな失敗は、いつものご飯と同じ量の米で炊きはじめて、食べきれない量のお粥を作ってしまうことです。お粥は時間が経つと食感が落ちやすいので、作りすぎは避けたいところです。また、鍋が小さいと5倍の水と米が入りきらず、吹きこぼれの原因にもなります。
コツは、食べる人数から米の量を逆算し、水を入れたあとに鍋の深さに十分な余裕があるかを確認することです。なお、ここで紹介している割合は白米を前提にした目安です。玄米は表面にぬか層が残っていて水の吸い方が白米と違うため、同じ感覚では炊けないことがあります。

強火で沸騰させてから弱火にするのは粒を壊さないため
鍋でお粥を炊くときの火加減は、強火で沸騰させてから弱火に落とす、が基本の流れです。最初に一気に温度を上げ、そのあとは静かに煮ることで、粒の形を保ちながらとろみを出していきます。
東京都西多摩保健所のお粥のレシピでは、炊いたごはんから作る場合について「ごはん 1 対 水 2 の割合で鍋に入れ、強火で熱し、沸騰後、弱火にして煮てください。」と案内されています。生米から炊く場合も、強火で沸騰させてから弱火で煮る流れは共通の考え方として応用できます。強火のまま煮続けると、鍋の中で湯が激しく動いてお米の粒がぶつかり合い、粒が崩れて粘りばかりが出た仕上がりになりやすくなります。
やりがちな失敗は、早く仕上げたくて強火のまま煮てしまうことです。お粥は水が多いぶん沸騰すると泡が立ちやすく、強火のままだと吹きこぼれやすくなります。粒が崩れて、ぼってりとした糊のような口当たりになるのも強火で煮続けたときによく見られる状態です。
コツは、沸騰したのを確認したらすぐに火を弱め、表面がふつふつと静かに動く程度を保つことです。煮る時間はレシピや鍋の大きさによって変わるので、粒のやわらかさを見ながら仕上がりを判断しましょう。
吹きこぼれと焦げつきは、かき混ぜ方と火加減で防ぐ
鍋で全粥を炊くときに起こりやすい失敗が、吹きこぼれと鍋底の焦げつきです。どちらも、火加減とかき混ぜ方を少し意識するだけで防ぎやすくなります。
吹きこぼれは、お米から溶け出したでんぷんで湯に粘りが出て、泡が消えにくくなることで起こるとされています。ご飯を炊くときより水が多く、泡が立つ量も多いので、蓋を完全に閉めて強火にかけていると、泡が蓋を押し上げてあふれやすくなります。焦げつきは、弱火にしたあとも鍋底に米粒が沈んでくっついたままになることで起こります。
状況:早く仕上げたくて、蓋をぴったり閉めたまま強火で煮続けた。
原因:溶け出したでんぷんで泡が消えにくくなり、泡が蓋を押し上げてあふれる。
対策:沸騰したらすぐに弱火へ。蓋は少しずらして蒸気の逃げ道を作る。焦げつきが心配なときは、沸騰直後に一度だけ鍋底からやさしくはがすように混ぜる。
反対に、焦げつきを心配して何度もかき混ぜすぎるのも失敗のもとです。かき混ぜるたびに粒がこすれて崩れ、粘りが強く出すぎてしまいます。混ぜるのは鍋底についた粒をはがす程度にとどめ、あとは静かに煮るのがコツです。
土鍋や厚手の鍋がお粥に向くといわれる理由
お粥は土鍋や厚手の鍋で炊くとよい、といわれることがあります。熱をゆっくり伝え、冷めにくい鍋は、弱火で静かに煮る工程と相性がよいためです。
薄い鍋は熱が伝わりやすい反面、火加減の影響をそのまま受けるので、弱火にしても鍋底だけが熱くなって焦げつきやすい傾向があります。厚手の鍋や土鍋は熱をため込み、鍋全体にゆっくりと伝えるので、鍋の中の温度が急に変わりにくく、静かに煮る状態を保ちやすくなります。火を止めたあとも余熱が続くため、粒の芯までやわらかく仕上げやすいのも特徴です。
ただし、土鍋には注意点もあります。熱をため込むぶん、沸騰に気づくのが遅れると吹きこぼれやすく、底が焦げやすい場面もあります。火を止めても温度がしばらく下がらないので、ちょうどいいと思ったところで火を止めると、余熱で想定より水分が飛んで硬めになることもあります。
コツは、土鍋で炊くときは沸騰のタイミングを見逃さないよう鍋のそばを離れないこと、そして少し早めに火を止めて余熱で仕上げることです。手持ちの鍋でも十分においしく炊けるので、道具をそろえる前に、まずはいつもの鍋で火加減に慣れてみてください。
炊飯器なら白米メニューではなく、おかゆメニューと専用の目盛りで
おかゆメニューを選んで、内釜のおかゆ目盛りに水を合わせる
炊飯器でお粥を炊くときは、おかゆメニューを選び、内釜についているおかゆ用の水位目盛りに水を合わせるのが基本です。ただし、おかゆ目盛りが全粥を前提にしているとは限りません。白米用の目盛りとは位置が違うので、目盛りを読み間違えないよう注意しましょう。
三菱電機の炊飯器でのおかゆの炊き方の案内では、おかゆメニューを使うときは内釜のおかゆの水位目盛に合わせて水を入れるよう案内されています。そのうえで、同社の内釜の「おかゆ」の水位目盛は七分粥になっていて、お好みに応じてお米の量と水の量を加減するよう説明されています(全粥は米1に対して水5、七分粥は水7、五分粥は水10)。また、水を目盛り以上に増やすとふきこぼれるおそれがあるため、やわらかめが好みならお米の量を減らして調整するよう案内されています。おかゆメニューは、多めの水を前提に加熱の強さや時間が組まれているので、メニューと目盛りをセットで使うことで、ふきこぼれにくく粒の形も残りやすい仕上がりになるよう設計されていると考えられます。
やりがちな失敗は、白米の目盛りの位置に水を合わせてから、なんとなく水を足して炊いてしまうことです。足す量が勘頼りになるので、硬すぎたりゆるすぎたりと、毎回仕上がりがばらつきます。せっかく専用の目盛りがあるなら、それを使ったほうが安定します。
コツは、内釜の内側をよく見て、おかゆ用の目盛りがどこにあるかを炊く前に確認しておくことです。全粥の目盛りや七分粥・五分粥の目盛りが分かれている機種もあれば、おかゆ全般で一つの目盛りという機種もあります。手持ちの炊飯器の取扱説明書で、目盛りの見方を一度確かめておきましょう。
白米メニューでお粥を炊くとふきこぼれるのはなぜか
お粥の水量で白米メニューを使うと、ふきこぼれの原因になります。炊飯器のメニューは、それぞれの水の量に合わせて加熱の仕方が決められているからです。
三菱電機の案内では、「『おかゆ』の水位は高めになっているため、『おかゆ』以外のメニューで炊くと、ふきこぼれの原因となります」と説明されています。白米メニューは、ご飯の水量に合わせて強い火力で一気に炊き上げるよう組まれていることが多く、水がたっぷり入った状態でその加熱をすると、でんぷんで粘りの出た湯が泡立って、蒸気口からあふれやすくなります。
状況:おかゆメニューを探すのが面倒で、白米メニューや早炊きのまま水を多めにして炊いた。
原因:ご飯向けの加熱がそのまま多めの水にかかり、粘りの出た湯が泡立って蒸気口からあふれる。
対策:お粥は必ずおかゆメニューで炊く。おかゆメニューがない機種では、炊飯器で炊かずに鍋で炊くか、取扱説明書でお粥の扱いを確認する。
ふきこぼれると、炊飯器の周りが汚れるだけでなく、蒸気口や内ぶたの掃除にも手間がかかります。炊飯器のメニューは、それぞれの水量で安全に炊けるよう決められているもの、と考えて、お粥にはお粥専用のメニューを使いましょう。
目盛りの位置やメニューの種類はメーカー・機種で違う
おかゆメニューや目盛りの位置は、メーカーや機種によって違います。ここで紹介した案内は三菱電機のもので、ほかのメーカーの炊飯器にそのまま当てはまるとは限りません。
炊飯器のおかゆメニューは、全粥と五分粥を選び分けられるもの、おかゆが一つにまとまっているものなど、機種ごとに作りが違います。内釜の目盛りの刻み方や、一度に炊けるお粥の量の上限も、取扱説明書ごとに定められています。お粥は水が多いぶん、ご飯と同じ合数までは炊けないと決められている機種もあるので、量の上限は特に見落とさないようにしたいところです。
よくある失敗は、以前使っていた炊飯器の感覚のまま、新しい炊飯器で同じように水を入れてしまうことです。目盛りの位置が違えば、同じつもりでも水の量が変わってしまいます。また、無洗米でお粥を炊く場合の目盛りの使い方も機種によって案内が異なることがあります。
コツは、炊飯器を買い替えたら、お粥を炊く前に取扱説明書のおかゆのページを一度読んでおくことです。メニュー名、目盛りの位置、炊ける量の上限の3点を確認しておけば、初回から大きく失敗することはまずありません。

炊いたごはんから全粥を作るなら水はごはんの2倍が目安
ごはん1対水2で鍋に入れ、沸騰したら弱火で煮る
生米から炊く時間がないときは、炊いたごはんから全粥を作ることもできます。その場合の目安は、ごはん1に対して水2です。
東京都西多摩保健所のお粥のレシピでは、炊いたごはんやレトルトごはんから簡単におかゆを作る方法として、「ごはん 1 対 水 2 の割合で鍋に入れ、強火で熱し、沸騰後、弱火にして煮てください。」と案内されています。生米からの割合が米1対水5なのに、ごはんからだと1対2で済むのは、ごはんはすでにお米が水を吸ってふくらんだ状態だからです。炊く段階で吸った水のぶん、あとから足す水が少なくて済む、という理屈です。
やりがちな失敗は、生米と同じ感覚で、ごはんに5倍の水を入れてしまうことです。ごはんはすでに水を含んでいるので、5倍の水を足すとさらさらの水の多いお粥になり、全粥のつもりがまったく違う仕上がりになります。生米からとごはんからでは、割合の数字が違うと覚えておきましょう。
コツは、ごはんも水も同じ器で量ることです。ごはんを茶碗に1杯なら、水も同じ茶碗で2杯。量る道具をそろえれば、割合がぶれずに済みます。
生米から炊く全粥は米1対水5、炊いたごはんから作る全粥はごはん1対水2が目安です。ごはんはすでに水を吸ってふくらんでいるので、足す水が少なくて済みます。生米の割合をそのままごはんに当てはめると、水の多いさらさらのお粥になってしまうので注意しましょう。
七分粥・五分粥・三分粥なら、ごはん1対水3・4・8
ごはんから作るときも、七分粥・五分粥・三分粥と水の多い区分を作り分けられます。東京都西多摩保健所のレシピでは、七分粥はごはん1対水3、五分粥はごはん1対水4、三分粥はごはん1対水8が目安とされています。
生米からの割合と見比べると、全粥が5倍→2倍、七分粥が7倍→3倍、五分粥が10倍→4倍、三分粥が20倍→8倍と、ごはんからの数字はどれも小さくなっています。ごはんがすでに水を含んでいるぶん、どの区分でも足す水が少なくて済むのは同じ理屈です。水の多い区分ほど差が大きく開いているので、三分粥を作るときほど、生米の割合と取り違えないよう気をつけたいところです。
やりがちな失敗は、生米の表とごはんの表を混ぜて読んでしまうことです。たとえば五分粥を作ろうとして、ごはんに生米の割合である10倍の水を入れると、三分粥よりもさらに水の多いお粥になってしまいます。どちらの表を見ているのかを、量る前に確かめるのが大切です。
コツは、先ほどの比較表のように、生米からとごはんからの割合を1枚の紙に並べて、台所に貼っておくことです。どちらから作るかを決めてから、該当する列だけを見るようにすれば、取り違えを防げます。
生米から炊いた全粥とは口当たりが違う
ごはんから作る全粥は手軽ですが、生米から炊いた全粥とは口当たりが違うことは知っておきたいポイントです。どちらが正しいということではなく、仕上がりの特徴が異なります。
生米から炊く全粥は、お米が多めの水の中で少しずつ水を吸い、でんぷんがゆっくりと溶け出していくので、粒のまわりにとろみのある汁がまとわりつくような仕上がりになりやすいとされています。一方、ごはんから作る場合は、一度炊いてふくらんだ粒を水で煮直すので、粒の形が比較的はっきり残り、汁とのなじみ方が生米からとは異なる傾向があります。
やりがちな失敗は、ごはんから作ったお粥を生米から炊いたもののように仕上げようとして、長く煮込みすぎてしまうことです。長く煮るほど粒が崩れて粘りが出ますが、そのぶん水分も飛んで、どろっと重たい口当たりになりがちです。ごはんから作るお粥は、手早く仕上げるのが持ち味と考えましょう。
コツは、時間のあるときは生米から、忙しいときや少量だけ欲しいときはごはんから、と場面で使い分けることです。どちらの作り方も知っておくと、お粥を作るハードルが下がります。
冷やごはんやパックごはんは先にほぐしてから煮る
冷蔵庫の冷やごはんや、パックのごはんからでも全粥は作れます。東京都西多摩保健所のレシピでも、炊いたごはんのほかにレトルトごはんから作れると案内されています。
冷えたごはんは、炊きたてに比べて粒どうしがくっついて固まりになっていることが多く、そのまま鍋に入れると、固まりの中まで水が行き渡りにくくなります。固まりの外側だけがやわらかくなり、中は硬いまま、というむらのある仕上がりになりやすいのです。
やりがちな失敗は、固まったごはんを鍋に入れてから、お玉で強くつぶしながらほぐそうとすることです。加熱中に強くつぶすと粒が崩れて粘りが出すぎ、のりのような口当たりになってしまいます。また、ほぐれないまま煮込み時間だけを延ばすと、水分が飛んで硬めに仕上がります。
コツは、鍋に入れる前に、分量の水の中でごはんを箸でやさしくほぐしておくことです。粒がばらけた状態で火にかければ、水が全体に行き渡り、むらなく仕上がります。冷凍ごはんを使う場合は、包装や取扱いの表示に従って解凍してから同じようにほぐすと扱いやすくなります。
お粥がのり状になるのはなぜ?保温と作り置きの落とし穴
おかゆは保温せずに早めに食べるのが基本
全粥に限らず、お粥は炊きあがったら保温せずに早めに食べるのが基本です。時間が経つほど、さらりとしたとろみが失われ、のり状に変わっていきます。
三菱電機の炊飯器でのおかゆの炊き方の案内では、「おかゆは保温せずに早めに食べてください。時間が経つとおかゆがのり状になります。」と説明されています。ご飯なら保温しておいても食べられますが、お粥は水が多く、保温中も温かい状態が続くことで食感の変化が進みやすい料理だということがわかります。
台所でよくあるのが、朝に炊いたお粥を炊飯器に入れっぱなしにして、昼に食べようとしたらべったりしていた、という失敗です。ご飯と同じ感覚で保温してしまうと、せっかくの炊きたての口当たりが失われてしまいます。
コツは、食べる時間から逆算して炊きはじめ、炊きあがったらすぐに器によそうことです。家族で食べる時間がずれる場合は、全員分を一度に炊かず、食べる人ごとに少量ずつ作るのも一つの方法です。炊いたごはんから作る方法なら、少量でも手早く作れます。
時間が経つとのり状になる理由はでんぷんの変化
お粥が時間とともにのり状になるのは、お米のでんぷんが水を吸い続け、粒が崩れていくためとされています。お粥のとろみを生んだ性質そのものが、時間が経つと裏目に出るわけです。
炊きあがった直後のお粥は、粒の形が残りつつ、そのまわりに溶け出したでんぷんでとろみのある汁ができている状態です。そのまま温かい状態が続くと、粒は汁の水分をさらに吸い込んでふくらみ、やがて形を保てなくなって崩れていきます。崩れた粒からまたでんぷんが溶け出し、汁の粘りが増していく。この繰り返しで、粒と汁の区別がなくなった、のりのような状態になっていくと考えられます。
やりがちな失敗は、のり状になったお粥に水を足して強く混ぜ、元に戻そうとすることです。崩れてしまった粒は元の形には戻らないので、水を足しても炊きたてのような粒感はよみがえりません。かえって粘りが増し、重たい口当たりになることもあります。
コツは、のり状になる前に食べきれる量だけを炊くことです。お粥は作り置きに向かない料理と割り切り、食べる直前に必要なぶんだけ作る習慣をつけると、いつでも炊きたての口当たりを楽しめます。
食べきれなかったお粥は早めに冷まし、温め直すときに水を足す
どうしても食べきれずに残ってしまったお粥は、温かいまま放置せず、早めに冷ましてから冷蔵庫に入れ、なるべく早めに食べきるようにしましょう。温め直すときは、少し水を足すのがコツです。
冷めたお粥は、粒がさらに水分を吸っているため、炊きたてより硬く、もったりとした状態になっています。そのまま温めると鍋底にくっつきやすく、焦げの原因にもなります。水を少し足してからゆっくり温めると、全体がなじんで食べやすい口当たりに近づきます。
やりがちな失敗は、残ったお粥を鍋に入れたまま常温に置いておくことです。水分の多い料理を温かいまま長く置いておくのは、衛生面からも避けたいところです。保存する場合は清潔な容器に移し、冷めたら冷蔵庫へ、という流れを意識しましょう。
コツは、温め直すときに水を少しずつ足しながら様子を見ることです。最初から多く入れすぎると、元の全粥よりゆるいお粥になってしまいます。とろみの具合を見て、好みの濃さに整えてください。
たまご粥のアレンジと場面別の使い分け
卵を1個加えるだけでたまご粥になる
全粥はそのままでも食べられますが、卵を加えるだけで、手軽にたまご粥にアレンジできます。東京都西多摩保健所のレシピでも、おかゆを作るときに卵を1個加えるとたまご粥になると紹介されています。
卵は加熱すると固まる性質があるので、お粥の中に溶き入れると、ふわっとした卵がとろみのある汁にからみ、口当たりに変化が生まれます。お米だけのお粥に比べて、食べたときの満足感も増します。全粥は水が少なめでぽってりしているので、卵がなじみやすく、たまご粥のベースとして扱いやすいお粥です。
やりがちな失敗は、卵を入れたあとにぐるぐるとかき混ぜすぎることです。卵が細かくなりすぎて汁に溶け込み、ふわっとした食感が失われます。また、卵を入れてから長く煮込むと、卵が固くなりすぎてしまいます。
コツは、お粥が仕上がる直前に溶き卵を回し入れ、少し置いてから大きくひと混ぜする程度にとどめることです。卵が固まりすぎる前に火を止めれば、余熱でほどよく火が通ります。味つけは塩を少し加える程度から試し、好みで調整してみてください。
レシピや資料ごとに書かれた割合を確かめる
ここまで全粥は米1対水5と説明してきました。家庭向けの資料やメーカーの案内では5倍が目安とされていますが、お粥の呼び名と割合の書き方は、資料によって表記が異なることもあります。
家庭で炊く全粥は米1対水5が目安です。手元のレシピや炊飯器の取扱説明書に割合が書かれていれば、その数字に合わせるのが確実です。
家庭で炊くときに気をつけたいのは、呼び名だけを見て割合を思い込んでしまうことです。レシピに全粥と書かれていたら、そのレシピに書かれた割合を確認しましょう。呼び名より、割合の数字を見て判断する習慣をつけると迷いません。
離乳食や介護の場面では、専門家の指示がいちばん優先
全粥という言葉は、離乳食や高齢者向けの食事の資料でもよく使われています。この記事では家庭の台所で役立つ調理の知識としてお粥を扱っていますが、離乳食や介護・療養の場面では、それぞれの専門家の指示を優先してください。
この記事で割合の出典として紹介した苫小牧市の資料は、離乳食の献立例の資料です。また、東京都西多摩保健所のレシピは、高齢者にやさしい簡単料理レシピとして全粥から重湯までを紹介しています。ただ、食べる人の状態に合わせて何をどの程度食べるかは一人ひとり異なります。
やりがちなのが、ネットで見かけた割合や段階の進め方を、自己判断でそのまま取り入れてしまうことです。体調や食事制限については医師・管理栄養士に相談を。施設や医療機関から指示が出ている場合は、その指示に従うのが基本です。
家庭で家族みんなのためにお粥を炊く、という範囲であれば、この記事の割合や作り方を参考にしていただいて大丈夫です。特別な配慮が必要な方の食事は、指示された内容を優先する、という線引きを覚えておいてください。
こんな人にはこの作り方:場面別の使い分け
全粥の作り方は、鍋・炊飯器・炊いたごはんからの3通りがあります。どれが正解ということはなく、台所の状況や食べる量に合わせて選ぶのがいちばんです。
まず、ほったらかしで炊きたい人には炊飯器のおかゆメニューが向いています。内釜のおかゆ目盛りに水を合わせてスイッチを押すだけなので、火加減を見張る必要がありません。次に、粒の状態を見ながら好みの仕上がりに近づけたい人や、炊飯器でご飯を炊いている最中にお粥も作りたい人には、鍋で生米から炊く方法が合っています。そして、一人分だけ欲しい人や、とにかく早く食べたい人には、炊いたごはんからごはん1対水2で作る方法が手軽です。
やりがちな失敗は、どの作り方でも同じ割合で作ろうとしてしまうことです。鍋と炊飯器の生米からなら米1対水5、ごはんからならごはん1対水2、と作り方ごとに数字が違うことを忘れないようにしましょう。
コツは、まずは手持ちの道具でいちばん手軽な方法を一つ選んで、繰り返し作ってみることです。何度か作るうちに、水の量や火加減の感覚がつかめて、ほかの方法にも応用できるようになります。
まとめ
全粥は、割合さえ押さえれば難しい料理ではありません。生米からなら米1対水5、炊いたごはんからならごはん1対水2。この二つの数字を覚えておけば、鍋でも炊飯器でも、思いどおりのお粥に近づけます。まずは今夜、茶碗1杯のごはんと茶碗2杯の水で、小さな鍋に全粥を作ってみてください。強火で沸騰させてから弱火に落とし、炊きたてをすぐにいただく。その一杯で、お粥の水加減の感覚がぐっとつかみやすくなるはずです。
※炊飯器のメニューや目盛りの位置は機種により異なります。お使いの機種の取扱説明書でご確認ください。

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