皮に黒い点が出てきて、そのまま食べるには少し柔らかくなったバナナ。そんなときに作りたくなるのが米粉のバナナケーキです。ただ、いざ作ろうとすると迷うところがいくつも出てきます。小麦粉のレシピをそのまま米粉に置き換えていいのか、スーパーに並ぶ米粉のどれを買えばいいのか、焼いたら固くなったり膨らまなかったりしないか。米粉はお米から作られた粉なので、小麦粉と同じ感覚で扱うと仕上がりが変わることがあります。
結論からお伝えすると、家庭で作るなら農林水産省北陸農政局が公開しているレシピの配合を基準にするのが分かりやすい出発点です。パウンド型18cm 1台分に、米粉100g・バナナ1本・卵2個・砂糖50g・無塩バター50g・ベーキングパウダー小さじ1。180℃のオーブンで約40分焼きます。粉は菓子・料理用として売られている、粒の細かい米粉を選ぶのが基本です。
この記事では、公的機関が公開している2つのレシピの配合を並べて比べ、米粉の粒の細かさや粉砕方式で仕上がりがどう変わるのか、バナナはどこまで熟したら使いどきなのか、膨らまない・ベタつくといった失敗がどの工程で起きるのかを、理屈から順に整理していきます。
・公的レシピに基づく米粉バナナケーキの基本配合と焼き方
・パウンド型とマフィン型で配合・焼き時間がどう違うか
・製菓用米粉の選び方(用途区分・粒の細かさ・粉砕方式)
・膨らまない・ベタつく・固くなる失敗の原因と対策
米粉バナナケーキの基本配合は米粉100gにバナナ1本・卵2個

公的レシピの配合はパウンド型18cmに米粉100g
最初に覚えておきたいのは、米粉バナナケーキには公的機関が公開している配合があるということです。農林水産省北陸農政局が米粉の利用を広めるために公開している米粉のバナナケーキのレシピでは、パウンド型18cm 1台分として、米粉100g、ベーキングパウダー小さじ1、砂糖50g、卵2個、無塩バター50g、バナナ1本、レモン1/2個(皮をすりおろし、果汁を絞る)という材料が示されています。
この配合の分かりやすいところは、米粉に対して砂糖とバターがそれぞれ半量になっている点です。数字が覚えやすいので、2回目からはレシピを見ずに計量できます。ネットには米粉のバナナケーキのレシピが数多くありますが、粉の種類や型の大きさがまちまちで、どれを信じていいか分からなくなりがちです。迷ったときは、こうした公的な配合をいったん基準に置き、そこから甘さやバナナの量を好みで動かすほうが、失敗したときに原因を突き止めやすくなります。
注意したいのは、型の大きさを変えるときです。18cmより大きな型に同じ量の生地を入れると、生地が薄く広がって焼き色や火の通りが変わります。まずはレシピどおりの18cmのパウンド型で焼いてみて、仕上がりを確かめてから調整するのが近道です。
砂糖をしっかり溶かすひと手間が食感を左右します
このレシピで唯一ポイントとして書かれているのが、砂糖の溶かし方です。北陸農政局のレシピには、「湯せんにかける等して、」「砂糖をしっかり溶かすこと」と添えられています(北陸農政局 米粉のバナナケーキ)。卵に砂糖を加えて泡立て器でよく混ぜる工程で、砂糖の粒が残らないようにするということです。
なぜここが大事なのか。砂糖は卵の水分に溶けることで生地全体に均一に行き渡ります。溶け残った粒があると、焼いている途中でその部分だけ溶けて生地の状態にムラが出やすくなります。冬場の台所のように卵が冷えていると砂糖は溶けにくいので、ボウルの底を湯せんで温めながら混ぜると溶けるのが早くなります。
やりがちなのは、冷蔵庫から出したばかりの卵に砂糖を入れ、数回混ぜただけで次の工程に進んでしまうことです。泡立て器ですくって、ザラザラした粒が見えなくなるまで混ぜるのが目安になります。湯せんの湯は熱すぎると卵が固まり始めるので、手で触れて温かいと感じる程度にしておくと扱いやすくなります。
| 出典・分量 | 農林水産省北陸農政局のレシピ/パウンド型18cm 1台分 |
| 材料 | 米粉100g、ベーキングパウダー小さじ1、砂糖50g、卵2個、無塩バター50g、バナナ1本、レモン1/2個 |
| 焼き温度・時間 | オーブンを180℃に予熱し、180℃で約40分 |
| 作り方のコツ | 湯せんにかけるなどして砂糖をしっかり溶かす。バナナは最後にさっと混ぜる |
溶かしバターにレモンを合わせてから加える流れ
このレシピの手順は、卵に砂糖を加えて泡立て器でよく混ぜ、米粉とベーキングパウダーを合わせて加え、溶かしバターにレモンを混ぜて加え、最後にバナナを混ぜて型に入れる、という順番です。ポイントは、バターを溶かしてからレモンの皮と果汁を混ぜ、それを生地に加えているところです。
溶かしバターを使う配合は、バターを室温に戻して砂糖とすり混ぜるタイプのレシピと比べて、準備が手軽です。電子レンジや湯せんでバターを溶かせばすぐに使えるので、思い立ったときに作りやすい配合といえます。レモンの皮と果汁は、バナナの甘い香りに爽やかな香りを重ねる役割として材料に入っています。
やりがちな失敗は、溶かしバターが冷えて固まりかけた状態で生地に加えることです。バターがかたまりのまま残ると、生地に均一に混ざらず、焼いたときに油っぽい部分ができやすくなります。バターは使う直前に溶かし、液体のうちにレモンと合わせて生地に入れると混ざりやすくなります。レモンの皮をすりおろすときは、白いわたの部分まで削ると苦みが出やすいので、表面の黄色い部分だけを使うのがコツです。
バナナは最後にさっと混ぜるのが基本
レシピでは、バナナはフォークでつぶすか、包丁でザクザク切り、生地の最後に加えてさっと混ぜる流れになっています。生地を先に仕上げてからバナナを加えるのは、バナナの水分と果肉を生地に均一に散らしつつ、混ぜる回数を必要以上に増やさないためと考えると分かりやすいでしょう。
バナナは水分の多い果物です。つぶしたバナナを生地の早い段階で入れて長く混ぜると、果肉がペースト状になって生地全体に溶け込み、焼き上がりの食感が均一になります。一方で、最後にさっと混ぜると果肉の粒が適度に残り、切ったときにバナナの存在感が出ます。どちらがよいというより、好みの仕上がりに合わせて選べる部分です。
注意したいのは、バナナを加えたあとの生地をすぐ型に流して焼くことです。ベーキングパウダーは水分と合わさると反応が始まるので、生地を作ったまま長く置かずに、予熱が済んだオーブンへ入れる段取りにしておくと膨らみが安定しやすくなります。オーブンの予熱は、材料を計量する最初の段階で始めておくと慌てずに済みます。
パウンド型とマフィン、配合はどれくらい違う?
2つの公的レシピを並べると見えること
米粉のバナナ菓子は、北陸農政局のパウンドケーキのほかに、青森県が公開している米粉料理集にもバナナマフィンのレシピがあります。お米の教科書では、この2つの公的レシピの配合を同じ項目で並べてみました。
並べてみると、作る量も材料の構成もかなり違うことが分かります……と言いたくなるところですが、もう少し具体的に見ていきましょう。北陸農政局のパウンドケーキは18cm型1台分で米粉100g、青森県のマフィンは15個分で米粉260gです。マフィンのほうはバターと砂糖がそれぞれ200gと、米粉に対する油脂と砂糖の割合が高めで、さらに生クリームとくるみが加わります。ベーキングパウダーはどちらも小さじ1ですが、米粉の量が違うので、粉に対する割合はパウンドケーキのほうが高い計算になります。
このように、同じ米粉のバナナ菓子でも、レシピごとに配合の考え方が違います。一方のレシピの焼き時間を、もう一方の配合に当てはめるのは避けたほうが無難です。作りたい形が決まったら、その形のレシピの配合と焼き方をセットで使うのが失敗を減らす基本です。
| 項目 | 北陸農政局 バナナケーキ | 青森県 バナナマフィン |
|---|---|---|
| 型・分量 | パウンド型18cm 1台分 | マフィンカップ 15個分 |
| 米粉 | 100g | 260g(微細粒米粉を使用) |
| バナナ・卵 | バナナ1本・卵2個 | バナナ1本半・卵2個半 |
| 砂糖・無塩バター | 各50g(バターは溶かして使う) | 各200g(バターは室温で柔らかくする) |
| その他の材料 | ベーキングパウダー小さじ1、レモン1/2個 | ベーキングパウダー小さじ1、生クリーム大さじ3、くるみ大さじ4 |
| 焼き方 | 180℃で約40分 | 170℃で25分 |
マフィンは170℃で25分、型が小さいと何が変わるか
青森県のマフィンは、マフィンカップに生地を入れ、残りのくるみをのせて170℃で25分焼く手順です。北陸農政局のパウンドケーキが180℃で約40分なのと比べると、温度も時間も控えめになっています。
この違いは、型の大きさと生地の厚みから考えると理解しやすくなります。オーブンの熱は生地の外側から中心へ伝わっていきます。パウンド型のように生地が厚くまとまっていると、中心まで火が通るのに時間がかかります。マフィンカップは1個あたりの生地が少なく、中心までの距離が短いので、比較的短い時間で焼き上がります。配合自体も違うので単純な比較はできませんが、型の大きさが焼き時間に影響するという考え方は、ほかのレシピを読むときにも役立ちます。
やりがちな失敗は、パウンドケーキの生地をマフィンカップに分けて、パウンド型と同じ時間で焼いてしまうことです。小さい型で長く焼くと、表面が焼けすぎて乾いた食感になりやすくなります。型を変えたいときは、目的の型で書かれたレシピを使うか、焼き時間の途中で竹串を刺して焼き具合を確かめるようにしましょう。
生クリームとくるみが入るマフィン配合の特徴
青森県のマフィンの手順は、バターを室温で柔らかくして砂糖を混ぜ、溶き卵を3回に分けて混ぜ、フォークでつぶしたバナナと生クリームを混ぜ、最後に米粉とベーキングパウダーを木べらで混ぜる流れです。北陸農政局のレシピが卵と砂糖を泡立て器で混ぜるところから始めるのに対し、こちらはバターと砂糖をすり混ぜるところから始まります。
卵を3回に分けて加えるのは、柔らかくしたバターに一度に大量の水分を入れると、バターと卵が分離しやすくなるためと説明されることが多い工程です。少しずつ加えて、そのつどなじませることで、生地がなめらかにつながります。生クリームが加わる分、生地に乳脂肪のコクが足され、くるみを混ぜ込んだり上にのせたりすることで、食感に変化がつきます。
注意したいのは、卵を入れるときのバターの温度です。バターが冷たく固いままだと砂糖とうまく混ざらず、卵を加えたときに分離しやすくなります。指で押して跡が残る程度まで柔らかくしておくと作業がスムーズです。くるみは生地に混ぜる分と上にのせる分に分けて使う手順なので、最初に分けておくと迷いません。
1台か15個か、作る量と食べ方で型を選ぶ
どちらの型を選ぶかは、食べる人数と食べ方で決めるのが現実的です。北陸農政局のパウンドケーキは1台分で、切り分けて家族で食べるのに向いています。青森県のマフィンは15個分と数が多いので、まとめて焼いて配ったり、来客の多い日に用意したりする場面に向いています。
パウンド型の利点は、切り口にバナナの果肉が見え、厚みのある断面を楽しめることです。焼いてから好きな厚さに切れるので、食べる量の調整もしやすくなります。マフィンの利点は、1個ずつ手に取れることと、焼き時間が短いことです。一方で、15個分を焼くにはマフィン型やカップをそろえる必要があり、家庭のオーブンでは一度に入りきらないこともあります。
やりがちなのは、マフィンの配合を半分に減らそうとして、卵2個半の半分という扱いにくい分量で迷ってしまうことです。量を調整したいときは、もともと少量で作れるパウンドケーキの配合を使うほうが計量しやすいでしょう。初めて作るなら、材料の数が少なく、手順もシンプルな北陸農政局のパウンドケーキから始めるのがおすすめです。
米粉はどれを買えばいい?袋で見るべきは用途と粒の細かさ

菓子・料理用の1番を目安にする
米粉を買うときに最初に見たいのが、袋の用途表示です。農林水産省は平成29年3月29日に米粉の用途別基準を公表し、米粉を菓子・料理用(1番)、パン用(2番)、麺用(3番)に分類しています。バナナケーキに使うなら、菓子・料理用の1番が目安になります。
1番の用途例としては、スポンジケーキ、クッキー、天ぷら粉、お好み焼き粉、唐揚げ粉が挙げられています。この基準では、1番のアミロース含有率は20%未満とされています。アミロースはでんぷんの成分の一つで、その割合によって焼き菓子の膨らみや食感が変わるため、用途ごとに目安が設けられています。
注意したいのは、パン用の2番です。2番にはグルテンを18〜20%程度添加したものがあり、その場合はグルテンを添加している旨を明記することになっています。グルテンを避けたくて米粉を選ぶ人が、パン用の米粉を何気なく使うと、意図せずグルテンを含む粉を使うことになりかねません。袋の表示で、用途と原材料を必ず確認しておきましょう。
米粉の用途別基準:農林水産省が平成29年に公表した基準。菓子・料理用(1番)、パン用(2番)、麺用(3番)に分け、共通の目安として粒径75μm以下の比率が50%以上、澱粉損傷度10%未満、水分含有率10%以上15%未満などを定めています。
微細粒米粉:粒の細かい米粉。菓子・料理で滑らかな口当たりを出すのに向くとされています。
損傷でんぷん:製粉時に傷ついたでんぷん。損傷度が高いと吸水量が増える性質があります。
粒が粗いとザラつく、微細粒が向く理由
用途別基準では、共通の目安として粒径75μm以下の比率が50%以上であることが示されています。粒の細かさが重視されるのは、焼き菓子の口当たりに直結するからです。農林水産省の米粉の特性に関する解説では、菓子・料理で滑らかさを出すには「微細粒粉が向いていて、粗いと舌触りが悪く滑らかさがない」と説明されています(農林水産省 米粉の特性)。
バナナケーキは、バナナの果肉のしっとり感と生地のきめ細かさで食べるお菓子です。粒の粗い粉を使うと、口に入れたときに粉っぽさやザラつきを感じやすくなります。青森県の米粉料理集でも、「(注)米粉は、微細粒米粉を使用」と明記されています(青森県 米粉料理集)。
やりがちなのは、家にあった粒の粗い米粉や、自分でお米をミキサーにかけて粉にしたもので代用することです。家庭の機器で細かい粒にそろえるのは難しく、焼き上がりの口当たりが変わる原因になります。製菓用として売られている米粉を選び、袋に用途や粒の細かさについての説明があれば目を通しておくと安心です。
ロール粉砕と気流粉砕で吸水が違う
同じ製菓用の米粉でも、製法によって性質が違います。農林水産省北陸農政局の米粉に関する資料では、ロール粉砕の米粉と気流粉砕の米粉の違いが紹介されています。
ロール粉砕の米粉は料理用・菓子用で、適度な吸水力があり、成形も可能で、パンケーキやクッキーなどの焼き菓子にも適するとされています。気流粉砕の米粉はパン用・菓子用で、ロール粉砕より粒度が細かく、澱粉損傷が最小限で吸水率は低く、水分と混ぜてもさらさらした状態になると説明されています。成形はできませんが、メレンゲとの相性がよく、ふんわり軽いお菓子づくりに向くとされています。
ここで大切なのは、吸水率の違いです。同じ100gの米粉でも、吸水の多い粉と少ない粉では、同じ量のバナナや卵を加えたときの生地のゆるさが変わります。レシピを作った人が使った粉と違うタイプの粉を使うと、生地が固すぎたりゆるすぎたりする原因になります。資料でも、米粉の吸水率は粉砕時の澱粉損傷率や粉砕前の浸水・乾燥の具合で変わるため、メーカーや商品によって出来上がりや食感に違いが出る要因になると説明されています。

上新粉は代わりになる?
和菓子づくりでおなじみの上新粉も、うるち米から作られる粉です。家にある上新粉で代用できないかと考える人もいるでしょう。ただ、農林水産省の用途別基準には「上新粉など、既存用途向けの米穀粉は対象としない。」と明記されています(米粉の用途別基準)。
つまり、上新粉は製菓用米粉と同じ物差しで粒の細かさや吸水の性質が管理されているわけではありません。だんごや柏餅のように、もちもちとした弾力を出す和菓子向けの粉として流通しているものです。洋菓子のレシピに使う場合、粒の細かさや吸水の違いから、レシピどおりの生地の状態や口当たりにならない可能性があります。
やりがちなのは、米粉と上新粉を同じものと考えて、レシピの米粉を上新粉にそのまま置き換えることです。公的レシピの配合は製菓用の米粉を前提にしているので、まずは菓子・料理用と表示された米粉を用意するのが確実です。上新粉を使いたい場合は、上新粉を使うと明記されたレシピを探すほうが失敗を避けられます。
小麦粉のレシピを米粉に置き換えると何が起きる?
ケーキ類は米粉でも遜色なく作れるとされている
小麦粉のバナナケーキのレシピを持っていて、それを米粉で作れないかと考える人も多いはずです。農林水産省の米粉に関する解説では、「小麦粉で作るたこ焼き、お好み焼、天ぷら、ケーキ類、クッキー類などは、米粉を原料としてもまったく遜色なくできます。」と説明されています(農林水産省 米粉の特性)。
ケーキ類が米粉に置き換えやすいのは、ふくらみの主役がグルテンではないからです。パンはこねてグルテンの網目を作り、発酵で出たガスを閉じ込めて膨らませます。一方、バナナケーキのような焼き菓子は、卵の泡やベーキングパウダーから出る気体で膨らみます。グルテンの働きに頼らない分、グルテンを含まない米粉でも形になりやすいのです。
ただし、遜色なくできるからといって、小麦粉と同じ量・同じ手順でそのまま置き換えてよいとは限りません。米粉と小麦粉では水の吸い方が違い、米粉の中でも製品によって吸水の性質が違います。初めて作るなら、最初から米粉用に作られたレシピを使い、慣れてから手持ちのレシピの置き換えに挑戦するのが確実です。

グルテンがないから混ぜすぎを気にしなくていい
実は、米粉のお菓子づくりには、小麦粉にはない気楽さがあります。小麦粉のケーキでは、粉を入れたら混ぜすぎないようにと言われます。混ぜすぎるとグルテンができて、生地が固く締まりやすいからです。グルテンは小麦のたんぱく質であるグリアジンとグルテニンが水と結びついてできるもので、お米にはこれが含まれていません。
農林水産省北陸農政局の資料では、米粉スイーツの利点として、「お菓子づくりでは、面倒なふるう手間がなかったり、グルテンがないため混ぜすぎても失敗しないなど」と紹介されています(北陸農政局 米粉資料)。粉をふるわずに使える製品があることも、手軽さにつながっています。
意外と知られていないけれど、米粉のケーキで気をつけたいのは混ぜすぎよりも、粉のダマと混ぜ不足のほうです。粉が均一に行き渡らないと、焼いたあとに粉っぽい部分が残ります。とはいえ、ベーキングパウダーは水分と合わさると反応が始まるので、混ぜ終えた生地をいつまでも置いておくのは避けましょう。粉が見えなくなるまでしっかり混ぜ、すぐに焼く。この流れを意識すると仕上がりが安定します。
吸水の差で生地のゆるさが変わる
小麦粉のレシピを米粉に置き換えたときに起きやすいのが、生地のゆるさの違いです。農林水産省の米粉の特性に関する解説では、洋菓子向けの米粉について、でんぷん損傷度の高い米粉・低い米粉は商品の食感や形状の求め方で使い分ける必要があり、でんぷん損傷度が抑えられた米粉では膨らみ(比容積)が増すと説明されています。前の章で触れたように、ロール粉砕と気流粉砕でも吸水率が違います。
バナナケーキの生地は、バナナ・卵・溶かしバターの水分と油分を粉が受け止めてできあがります。粉の吸水が少ないと生地はゆるく流れやすくなり、多いと重くもったりした生地になります。どちらに転ぶかは、使う米粉の性質と、もとのレシピが想定していた粉によって変わります。
同じ配合でも、使うバナナの大きさや熟し具合によって水分量は変わります。生地の状態がレシピの写真や説明と大きく違うと感じたら、粉の種類が合っているかを最初に疑ってみてください。水分を足したり粉を足したりして無理に調整するより、レシピの指定に合った粉に変えるほうが、結果として仕上がりが安定します。
状況:手持ちの小麦粉のバナナケーキのレシピで、粉だけを同じ量の米粉に置き換えたら、生地が水っぽく流れ、焼き上がりが中まで固まらずベタついた。
原因:米粉は製品によって吸水率が違い、吸水の少ない粉では、小麦粉を前提にした水分量が多すぎることがある。
対策:最初は米粉用に作られたレシピを使い、レシピが指定する種類の米粉をそろえる。置き換えるときは、生地の状態を見ながら少量で試してから本番に進む。
アミロースの割合と型崩れの関係
米粉の性質のなかで、焼き菓子の形に関わるのがアミロースです。農林水産省の解説では、ケーキではアミロースの割合が膨らみ(比容積)や形状、食感に影響し、高いと型崩れしにくいとされています。用途別基準では、菓子・料理用の1番のアミロース含有率は20%未満という目安が示されています。
アミロースはでんぷんを構成する成分の一つで、お米の品種によって割合が違います。粘りの強いもち米はアミロースをほとんど含まず、うるち米は品種によって幅があります。焼き菓子にした場合、アミロースの割合が生地の固まり方や冷めたあとの形の保ち方に影響すると考えられています。
家庭でアミロースの数値を測ることはできませんが、製菓用として流通している米粉は、こうした基準を踏まえて用途を示しています。焼き上がったケーキが冷めるとしぼんで型崩れするようなら、粉の用途や種類がレシピに合っているかを見直すポイントになります。もち米から作られた粉は性質が大きく違うため、うるち米の製菓用米粉と同じ感覚では使えない点にも注意しましょう。
バナナはどこまで熟したら使いどき?
皮に黒い点が出てきたら使いどき
バナナケーキに使うバナナは、どれくらい熟していればいいのでしょうか。バナナ輸入販売会社のバナナの保存方法のページでは、「表皮にシュガースポットが出てきた状態が、より甘く美味しいおすすめの食べ頃です。」と紹介されています。シュガースポットとは、熟すにつれて皮に出てくる茶色や黒の点々のことです。
バナナは追熟によって甘みが増す果物です。皮に点が出てきたバナナは果肉が柔らかくなり、フォークで簡単につぶせるようになります。生地に混ぜやすく、焼いたときにバナナの甘い香りが立ちやすいので、ケーキ作りにちょうどよい状態といえます。
やりがちな失敗は、まだ皮が青みがかった硬いバナナを使うことです。果肉が固いとつぶしにくく、生地に混ぜたときに塊が残りやすくなります。甘みも控えめなので、バナナケーキらしい風味が出にくくなります。買ってきたバナナでケーキを作りたいときは、皮に点が出てくるまで常温で置いてから使うのが目安です。
黒い点が出る前に冷蔵庫に入れない
バナナを長持ちさせようとして、買ってすぐに冷蔵庫に入れる人もいるかもしれません。しかし、先ほどのバナナの保存方法のページでは、「シュガースポットが出る前のバナナは冷蔵庫に入れてしまうと甘くならなくなってしまいますので注意してください。」と案内されています(バナナの保存方法)。
同じページでは、バナナの最適保存温度は15〜20℃とされ、寒い場所では保管せず、人が出入りするリビングなどに置くよう勧められています。房から1本ずつ切り離して保存すると長持ちしやすいことも紹介されています。熟す前のバナナは、低い温度にさらされると追熟が止まり、甘みがのらないまま皮だけが黒ずんでいく、いわゆる低温障害が起きやすくなります。
ケーキを作る予定があるなら、バナナは常温のリビングなどに置き、皮に点が出てくるのを待つのが基本です。点が出たあとでまだ使わない場合は、1本ずつビニール袋か新聞紙に包んで冷蔵庫の野菜室に入れると、常温より若干長持ちするとされています。皮の色が変わっていても、同じページでは、皮をむいた際に果肉が黒くなっていなければ食べられると案内されています。
フォークでつぶすか、包丁で切るか
北陸農政局のレシピでは、バナナはフォークでつぶすか、包丁でザクザク切ると書かれています。どちらの方法でも作れるということは、仕上がりの好みで選んでよいということです。
フォークでつぶすと、バナナの果肉が生地に広く溶け込み、生地全体にバナナの風味が行き渡ります。焼き上がりは、全体がしっとりとした均一な食感になりやすい傾向があります。包丁で切ると、焼き上がったケーキの中にバナナの果肉が残り、切り口にバナナの形が見えます。ひと口ごとにバナナの存在を感じたい人に向いています。青森県のマフィンもバナナをフォークでつぶして使う手順です。
やりがちな失敗は、バナナを大きな塊のまま入れてしまうことです。塊の周りは水分が多くなるので、そこだけ生地が固まりにくくなることがあります。切る場合はひと口で食べやすい大きさにそろえ、つぶす場合は大きな塊が残らない程度にするのが目安です。両方を組み合わせて、一部はつぶし、一部は切って混ぜる方法もあります。
使い切れないバナナは冷凍しておける
熟したバナナが一度に使い切れないときは、冷凍しておく方法もあります。バナナの保存方法のページでは、シュガースポットが出たバナナを一口大に切り、重ならないよう容器に並べて冷凍できると紹介されています。解凍は常温で約15分でアイスのような状態になるとされています。
冷凍は、熟しすぎてそのまま食べるには柔らかすぎるバナナを無駄にしない方法として便利です。皮をむいて切ってから冷凍するのは、凍ったバナナは皮がむきにくく、使いたい量だけ取り出しやすくするためです。重ならないように並べるのは、凍ったときにくっついて塊にならないようにする工夫です。
ただし、公的なケーキのレシピは生のバナナを前提にしています。冷凍したバナナは、解凍するときに水分が出やすく、生のバナナより生地がゆるくなる可能性があります。冷凍バナナを使う場合は、解凍したときの状態をよく見て、水分が多すぎるようなら生地の様子を確認しながら加えましょう。初めて作るときは、生のバナナで基準の仕上がりを知っておくと比較しやすくなります。
膨らまない・ベタつく・固い…失敗はどこで起きている?
砂糖が溶け残ると焼きムラの原因になる
米粉のバナナケーキでよくある悩みが、膨らみが足りない、中がベタつく、口当たりが重いといったものです。原因を探るときは、作った順番に沿って工程を振り返るのが近道です。最初に確認したいのが、北陸農政局のレシピでもポイントとされている砂糖の溶かし方です。
卵と砂糖を混ぜる工程は、生地の土台を作る場面です。砂糖がしっかり溶けて卵と一体になっていると、その後に加える米粉やバターも均一になじみやすくなります。砂糖が溶け残っていると、生地の中に状態の違う部分ができ、焼き上がりにムラが出る原因になります。
特に冬場は、冷たい卵に砂糖が溶けにくくなります。湯せんで温めながら混ぜるという方法は、こうした季節の差を埋めるための工夫です。泡立て器ですくい上げたときに砂糖の粒が見えないか、ボウルの底にザラザラした感触が残っていないかを確かめてから、次の工程に進みましょう。
状況:冬の朝、冷蔵庫から出したばかりの卵に砂糖を入れて軽く混ぜ、すぐに米粉を加えた。焼き上がったケーキは部分的に固さが違い、口当たりにムラがあった。
原因:冷たい卵では砂糖が溶けにくく、溶け残った砂糖が生地の状態に差を作った。
対策:卵は早めに冷蔵庫から出しておき、湯せんにかけるなどして砂糖をしっかり溶かしてから次の工程に進む。
卵と砂糖を混ぜる工程から順番どおりに
失敗を減らすには、レシピの手順を順番どおりに進めることが大切です。北陸農政局のレシピの流れを、工程ごとに整理すると次のようになります。
米粉とベーキングパウダーは、先に合わせておいてから卵の生地に加えるのがポイントです。ベーキングパウダーだけが一か所に固まると、膨らみ方にムラが出やすくなります。小さなボウルで米粉とベーキングパウダーを軽く混ぜ合わせてから加えると、生地全体に均一に行き渡ります。
やりがちなのは、オーブンの予熱を忘れて、生地ができてから慌てて予熱を始めることです。その間に生地を置いておくと、ベーキングパウダーの反応が先に進んでしまいます。予熱は最初に始めておきましょう。
焼き不足は中心で起きる
焼き上がったケーキの中心がベタついている、切ってみたら生っぽい部分があった。これは焼き不足のサインです。北陸農政局のレシピでは「180℃のオーブンで約40分焼く。」とされています(北陸農政局 米粉のバナナケーキ)。約40分という書き方には、オーブンによって焼き上がりに差があるという含みがあります。
家庭用のオーブンは、機種や庫内の大きさ、熱の回り方によって、同じ設定温度でも焼き上がりが変わります。パウンド型のように厚みのある生地は、表面に焼き色がついても中心まで火が通っていないことがあります。バナナを多めに入れた場合も、水分が増える分、中心が固まりにくくなります。
焼き上がりの確認には、竹串を中心に刺してみる方法がよく使われます。抜いた竹串にどろっとした生地がついてくるようなら、もう少し焼き時間が必要です。表面の焼き色が濃くなりすぎるようなら、アルミホイルをかぶせて焼き続けると、焦げを防ぎながら中まで火を通せます。オーブンの扉を何度も開けると庫内の温度が下がるので、確認はなるべく焼き時間の終わり近くにまとめて行いましょう。
焼き上がったあとの扱いで食感が変わる
焼き上がったケーキの扱い方も、食感に影響します。焼きたてのケーキは中に蒸気を多く含んでいて、型に入れたままにしておくと、その蒸気が型の中にこもって側面や底がしっとりしすぎることがあります。
焼き上がったら型から外し、網の上などに置いて粗熱を取るのが一般的です。熱いうちに切ると、生地が落ち着いていないため断面がつぶれやすく、ベタついた印象になりがちです。粗熱が取れてから切ると、きれいな断面になりやすくなります。米粉の食感は、ふわふわ、しっとり、どっしり、もっちりなどレシピによって様々とされており、冷めてからのほうが本来の食感を確かめやすくなります。
やりがちなのは、焼き上がりの直後に味見をして、もっちりしすぎている、ベタつくと判断してしまうことです。焼きたては中の水分が落ち着いていないので、冷めたあとに改めて確認してから、次回の配合や焼き時間を調整するかどうか決めましょう。乾燥を防ぐには、粗熱が取れたらラップで包んでおくのが手軽です。
米粉バナナケーキを卵なし・グルテンフリーで作りたい人へ
ノングルテン表示と認証の見方
米粉のバナナケーキを作る理由の一つに、グルテンを避けたいという人もいるでしょう。お米にはグルテンが含まれていませんが、米粉の製品すべてが同じ基準で管理されているわけではありません。製造工程で小麦粉と同じ設備を使っている場合や、パン用の米粉のようにグルテンを添加している場合もあります。
農林水産省のノングルテン米粉に関するページでは、ノングルテン米粉の製造工程管理JASについて、「製品のグルテン含有量が1ppm以下となるように製造工程を管理する」と説明されています。このJAS認証は令和3年6月に始まりました。日本米粉協会が管理運営する第三者認証は平成30年6月から行われています。
グルテンを避ける目的で米粉を選ぶなら、こうした認証の表示があるかを袋で確認することが一つの目安になります。米粉だからといってどの製品でも同じとは限らないので、表示を見て選ぶことが大切です。食物アレルギーや体調に関わる食事の制限がある場合は、自己判断せず、医師・管理栄養士に相談してください。
米粉はお米から作られますが、製品ごとに製造工程や添加物が違います。グルテンを避けたい場合は、ノングルテン米粉のJAS認証や日本米粉協会の第三者認証など、袋の表示を確認して選びましょう。また、公的レシピのバナナケーキには卵・バターが、マフィンには卵・バター・生クリームが入ります。これらは米粉とは別の原材料なので、それぞれの原材料も確認が必要です。
卵・バター・生クリームは米粉とは別の原材料
米粉を使えば、ケーキ全体が特定の原材料を含まないものになると考えるのは早合点です。北陸農政局のバナナケーキには卵とバターが、青森県のマフィンには卵、バター、生クリームが使われています。これらは米粉とは別の原材料で、米粉のグルテンに関する基準とは関係がありません。
卵なしや乳製品なしで作りたいという人もいるでしょう。ただ、今回確認した公的レシピは、どちらも卵とバターを使う配合です。卵はバナナケーキの膨らみと生地のつながりを支える役割を担っているので、単に抜くだけでは同じ仕上がりにはなりません。卵なしで作る場合は、配合全体を見直す必要があります。
卵なしや乳製品なしで作りたいときは、最初からそう明記されたレシピを使うのが確実です。手持ちのレシピから卵を抜いたり、別の材料に置き換えたりすると、膨らみや固まり方が変わって失敗の原因になります。配合を変えたときに何が起きたかを判断しやすくするためにも、まずは基本のレシピで作り方に慣れておくと、アレンジの幅が広がります。
市販のミックス粉を使うなら原材料表示を確認
手軽に作りたいときは、市販の米粉入りのミックス粉を使う方法もあります。ミックス粉には、米粉に加えて砂糖やベーキングパウダーなどがあらかじめ配合されていることが多く、計量の手間が減るのが利点です。
ただし、ミックス粉は製品ごとに中身が違います。米粉が主原料でも、ほかの粉や原材料が加わっている場合があります。グルテンを避けたい、特定の原材料を避けたいといった理由がある場合は、袋の原材料表示を必ず確認しましょう。小麦粉のホットケーキミックスで作るバナナケーキのレシピは、米粉で作るものとは別物として考えたほうが混乱しません。
やりがちな失敗は、ミックス粉を使っているのに、基本のレシピどおりに砂糖やベーキングパウダーを加えてしまうことです。ミックス粉にすでに含まれているものを重ねて加えると、甘すぎたり、膨らみ方が変わったりします。ミックス粉を使う場合は、その製品の袋に書かれた作り方や分量に従うのが基本です。
朝食・おやつ・手土産、場面で作り方を選ぶ
米粉のバナナケーキは、食べる場面によって作り方を選ぶと満足度が上がります。読者のタイプ別に、使い分けの考え方を整理しておきます。
朝食や家族のおやつにするなら、北陸農政局のパウンドケーキがおすすめです。材料が少なく、溶かしバターを使うので思い立ったときにすぐ作れます。1台焼いておけば、食べたい分だけ切り分けられます。熟したバナナが1本だけ余ったという日にもちょうどいい量です。
友人が集まる日や、まとめて配りたいときは、青森県のマフィンが向いています。15個分を一度に作れるので、1人1個ずつ手渡しできます。くるみの食感が加わり、生クリームのコクもあるので、見た目にも華やかです。焼き時間が短いのも利点です。
初めて米粉でお菓子を作る人は、まず材料の少ないパウンドケーキで、米粉の扱い方と焼き上がりの感覚をつかむことから始めましょう。グルテンを避けたい事情がある人は、粉の認証表示とほかの原材料を確認したうえで、自分の条件に合うレシピを選んでください。慣れてきたら、バナナのつぶし方や切り方を変えるなど、少しずつ好みに近づけていくのも楽しみ方の一つです。
まとめ
次に熟したバナナが手元に残ったら、菓子・料理用の米粉を1袋用意して、18cmのパウンド型で基本の配合どおりに一度焼いてみてください。その1台が、あなたの台所での基準になります。
※レシピや認証制度の内容は公表元の資料に基づいています。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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