土鍋でごはんを炊いたら、底に黒い焦げがべったり。スポンジでこすっても取れないし、金属たわしで削っていいのか、重曹を入れて煮ればいいのか、検索するほど方法がばらばらで手が止まってしまう。土鍋の焦げ落としで迷う人の多くは、この「どれが正しいのか」でつまずいています。
先に結論をお伝えすると、最初の一手は湯を張ってふやかし、木べらでこそげてから洗剤で洗うことです。それで落ちないひどい焦げだけ、重曹を入れて煮立てます。ただし重曹の量や煮立てる時間は、土鍋メーカーごとに案内が違います。そして重曹を使ったあとは、使い始めと同じ「目止め」のお粥を炊き直すのが基本です。
この記事では、伊賀焼の長谷園、HARIO、無印良品の萬古焼土鍋という3つの取扱説明書・公式FAQを読み比べ、焦げが落ちにくい理由から、重曹の量の違い、やってはいけない落とし方、落とさなくていい黒ずみの見分け方までを順に解説します。
・土鍋の焦げを落とす順番(ふやかす→こそげる→洗剤→重曹)
・メーカー3社で重曹の量・水の量・煮立てる時間がどう違うか
・重曹のあとに「目止め」をやり直す理由と、お粥の炊き方
・金属たわし・急冷・つけ置きなど土鍋を傷める落とし方と、落とさなくていい黒ずみ
土鍋の焦げ落としは「ふやかす→こそげる→洗剤」の順で始める

最初の一手は湯を張って「しばらく置く」だけ
焦げを見つけたら、まずは土鍋に湯を入れてしばらく置きます。いきなり重曹やたわしに手を伸ばさなくていいんです。
理由は、焦げの多くがごはんや煮汁の成分が鍋肌に乾いて張り付いたものだからです。水分を含ませると表面がゆるみ、力をかけずにはがれやすくなります。伊賀焼の窯元である長谷園の公式FAQ「焦げが取れません」でも、焦げが取れない場合はまず土鍋に湯を入れてしばらく置き、木べらで焦げをこそげ取る方法が最初に案内されています。水を7分目ほど入れて煮沸し、しばらく置いてから行うのも有効とされています。
台所でやりがちなのは、炊き上がりのごはんをよそったあと、焦げが冷えて固まるまで放っておくことです。乾ききった焦げは鍋肌に強く張り付くので、落とす手間が増えます。
コツは、ごはんを移したら早めに湯を張っておくこと。ただし土鍋が熱いうちに冷たい水を注ぐのは避けます(理由は後の章で説明します)。湯を使う、または土鍋の熱が落ち着いてから水を張る、のどちらかにしましょう。
木べらでこそげてから、たわしの硬い面と洗剤で仕上げる
ふやかしたら、木べらで焦げをこそげ取り、そのあとにたわしやスポンジの硬い面に台所用液体洗剤を含ませて擦ります。長谷園のFAQが示している順番もこのとおりです。
木べらを使う理由は、土鍋の表面の釉薬(うわぐすり)を傷つけにくいからです。金属のスプーンやヘラでガリガリ削ると、焦げと一緒に釉薬の表面まで削ってしまうことがあります。傷が入ると、そこに汚れが入り込みやすくなり、次の焦げ付きの足がかりになります。
具体的には、底の中央にできた円形の焦げなら、木べらの角を寝かせて、外側から中心へ向かってはがすように動かすと、力を入れすぎずに済みます。焦げの層が厚い場合は、一度で全部取ろうとせず、表面の柔らかくなった部分だけを取って、もう一度湯でふやかすのを繰り返すほうが鍋肌を傷めません。
洗剤は台所用の液体洗剤で足ります。研磨剤入りのクレンザーを使ってよいかはメーカーで案内が分かれるので、手持ちの土鍋の取扱説明書を確認してください。
「一晩つけ置き」が土鍋では逆効果になりやすい理由
金属の鍋なら、洗剤を入れた水に一晩つけておく方法がよく紹介されます。ところが土鍋では、長時間のつけ置きは避けるよう案内されています。
長谷園は洗剤についてのFAQで、洗剤を入れたまま長時間浸け置きしないよう呼びかけています。食器洗い洗浄機をすすめない理由としても、洗剤の液に長時間浸かると土鍋が吸収してしまうことを挙げています。無印良品の萬古焼 土鍋 取扱説明書(ver.2024.04)にも、使用後に長時間水等に浸けて放置しないよう書かれています。
やりがちな失敗は、夜に焦がしてしまい「明日洗えばいいや」と洗剤液を張ったまま寝てしまうパターンです。翌朝焦げは取れても、洗剤のにおいが鍋に残ったり、乾きにくくなったりします。
ふやかす時間の目安は、メーカーの案内では「しばらく」とされているだけで、具体的な時間は示されていません。湯を張って焦げの表面が柔らかくなったら、その日のうちに洗い上げると覚えておくと安全です。
なぜ土鍋の焦げは金属の鍋より落としにくいのか
土鍋は水も汚れも吸い込む「土もの」だから
土鍋の焦げが金属の鍋より厄介なのは、土鍋そのものが水分を吸う素材だからです。表面はつるっとして見えても、生地には目に見えない細かな気孔があります。
長谷園の「目止め」についてのFAQでは、お粥を炊くことで米のでんぷん質が土鍋の細かい気孔を埋め、水漏れを防ぐと説明されています。伊賀土鍋は粗土を使っているため、米の研ぎ汁ではなく必ずお粥で目止めをするよう案内しています。つまり土鍋は「すき間のある器」で、そのすき間を米のでんぷんでふさいで使う道具なんですね。
このすき間があるから、焦げの成分や洗剤、においが生地に入り込みます。金属鍋のように表面だけの問題で終わらないのが、土鍋の焦げ落としが難しい理由です。
注意したいのは、同じ「土鍋」でも素材や釉薬で吸水性が違う点です。伊賀の粗土の土鍋と、吸水を抑えた釉薬を使った土鍋では、お手入れの考え方が変わります。この違いは次の見出しで整理します。
目止め:使い始めの土鍋や水漏れする土鍋にお粥を炊き込み、米のでんぷん質で生地の細かい気孔を埋める作業(長谷園FAQの説明による)。
釉薬:器の表面にかけて焼き付けるガラス質の層。土鍋の汚れの付きやすさや吸水性に関わる。
貫入:表面の釉薬の部分に入る細かなヒビ。無印良品の取扱説明書では、水分がにじみ出ることがあっても使用上問題はないとされている。
焦げの正体は、乾いて張り付いたごはんや煮汁の成分
土鍋の底にできる黒い焦げは、ごはんのでんぷんや煮汁に含まれる成分が、鍋肌で水分を失って焼き付いたものです。土鍋は熱をため込みやすく、火を止めたあとも底の温度がしばらく下がりにくいので、底にふれているごはんは加熱が続く状態になります。
土鍋ごはんの「おこげ」が香ばしくできるのも、この熱のため込みのおかげです。裏を返せば、火加減が強すぎたり、炊き上がってからも火にかけ続けたりすると、おこげを通り越して黒い焦げになります。
具体的な失敗例としては、炊き込みご飯や味付きの雑炊があります。しょうゆやみりん、具材の糖分を含む汁は、白米だけのときより焦げ付きやすいとされ、底に濃い色の膜が張りつきがちです。
焦げを落とすときは、この「乾いて焼き付いた膜」をもう一度水分でゆるめるのが基本の考え方です。だから最初の一手が「湯を張って置く」になるわけです。
釉薬で吸水を抑えた土鍋は、手入れの考え方が少し違う
土鍋といっても、すべてが伊賀の粗土のように水を吸うわけではありません。炊飯用の土鍋には、吸水しにくい釉薬を使っているものもあります。
たとえばHARIOのよくあるご質問では、ご飯釜について、鍋身表面に水分が染み込みにくい釉薬を使用しているため目止めは不要と回答しています。一方で、同じHARIOでも土鍋については目止めが必要と案内しています。同じメーカーでも製品によって答えが違うのです。
やりがちなのは、ネットで見た別製品の手入れ方法をそのまま自分の土鍋に当てはめてしまうことです。吸水しにくい土鍋のつもりで重曹を多めに入れたり、逆に粗土の土鍋で目止めを省いたりすると、白い粉が吹く・水漏れするといったトラブルにつながります。
確認すべきは、取扱説明書の「ご使用になる前に」の欄です。そこに目止め(お粥炊き)の指示があれば吸水する土鍋、不要と書かれていれば吸水を抑えた土鍋と考え、焦げ落としもその製品の案内に合わせます。萬古焼の土鍋の成り立ちや特徴は、こちらで詳しく解説しています。

重曹はどれくらい入れる?メーカー3社で量も時間も違う

長谷園は「7分目の水に重曹小さじ1杯、10~15分」
伊賀焼の長谷園は、ひどい焦げつきの場合、土鍋の7分目まで水を入れ、重曹を小さじ1杯入れて10~15分煮立てる方法を案内しています。そのあと、しばらくおいてから、たわしやスポンジの硬い面に台所用液体洗剤を含ませて洗い、よく乾燥させます。
長谷園のFAQで目を引くのは「入れ過ぎに注意」とわざわざ書き添えている点です。重曹の使い方のFAQでも、こびりつきがひどい時や土鍋が目詰まりした場合に、7分目くらいの水と重曹小さじ1杯程度を入れて沸騰させ、沸騰後中火で15分くらい煮沸すると説明しています。土鍋の中の汚れを追い出す、という考え方です。
やりがちなのは「たくさん入れたほうが効くはず」と重曹を山盛りにすることです。伊賀の粗土は吸水性があるため、多すぎる重曹は生地にしみ込んで残りやすくなります(この失敗は次の章で詳しく扱います)。
コツは計量スプーンできちんと量ること。そして重曹で煮たあとは、必ず目止めのお粥を炊いてから使うよう長谷園は案内しています。
HARIOのご飯釜は「重曹小さじ2杯、約400mL、5分煮立てて30分放置」
HARIOのよくあるご質問では、ご飯釜の鍋身の黒い焦げ付きについて、重曹を小さじ2杯とお湯(または水)を約400mL入れ、弱火で煮立たせる方法を案内しています。5分間程煮立たせたら火を消して30分間程放置し、食器用洗剤を含ませたスポンジで優しくこすり洗いをします。
長谷園との違いは、水の量を「7分目」ではなく容量で示している点と、煮立てる時間を短くして、そのあと置いておく時間をとっている点です。ご飯釜は吸水しにくい釉薬を使っているため、目止めのやり直しにはふれていません。
同じFAQには、焦げ付き以外にも、お米のデンプン質の白い洗い残しが落ちない場合に同じ方法で落とせると書かれています。炊飯用土鍋の内側に白っぽい膜が残って気になる人にも役立つ情報です。
注意点は、こすり洗いを「強くこすらない」と明記していることです。重曹で浮かせた焦げは、力を入れずにスポンジでなでる程度で十分という考え方です。
無印良品の萬古焼土鍋は「8分目の水に重曹大さじ1杯、10分ほど」
無印良品の萬古焼 土鍋 取扱説明書(ver.2024.04)では、ひどいこびりつきには重曹が効果的として、鍋の8分目くらいまで水を入れ、重曹を大さじ1杯加え、10分ほど煮立てる方法が書かれています。その後は「ご使用になる前に」の手順で、もう一度おかゆを炊くよう案内しています。
ここで分かるのは、3つの資料のうち長谷園と無印良品の2つが「重曹のあとにお粥を炊き直す」ことをはっきり指示している点です。どちらも使い始めに目止めが必要な土鍋だからです。
同じ取扱説明書には、カビ臭さには酢(8分目くらいまでの水に酢を大さじ2〜3杯、10分ほど煮立てる)、においには茶殻(たっぷりの水に茶殻をひとつかみ、10分ほど煮立てる)という使い分けも載っています。焦げ・カビ臭・においで、入れるものが違うわけです。
やりがちなのは、この大さじ1杯を別メーカーの土鍋にもそのまま使うことです。小さじ1杯までと案内している長谷園の土鍋に大さじで入れると、案内の量を大きく超えてしまいます。
| 項目 | 長谷園(伊賀焼) | HARIO ご飯釜 | 無印良品 萬古焼土鍋 |
|---|---|---|---|
| 水の量 | 7分目 | 約400mL | 8分目くらい |
| 重曹の量 | 小さじ1杯(入れ過ぎに注意) | 小さじ2杯 | 大さじ1杯 |
| 加熱の仕方 | 10~15分煮立てた後しばらく置く | 弱火で5分間程煮立て、火を消して30分間程放置 | 10分ほど煮立てる |
| 洗い方 | たわしやスポンジの硬い面+台所用液体洗剤 | 食器用洗剤のスポンジで優しく(強くこすらない) | 食器用中性洗剤で洗浄(研磨剤入りスポンジ・金属たわし不可) |
| 重曹のあと | 必ず目止めのお粥を炊く | 目止め不要の釉薬(記載なし) | もう一度おかゆを炊く |
出典:長谷園 公式FAQ、HARIO よくあるご質問、無印良品 萬古焼 土鍋 取扱説明書(ver.2024.04)
手持ちの土鍋の取扱説明書が最優先になる理由
比較表を見ると、重曹の量は「小さじ1杯」から「大さじ1杯」まで、加熱も「10分ほど」から「10~15分」まで幅があります。どれが正しいかではなく、それぞれの土鍋の生地と釉薬に合わせた量だと考えてください。
理由は、吸水性の違いです。粗土で吸水性のある土鍋では、溶けた重曹が生地にしみ込みやすくなります。吸水しにくい釉薬の土鍋なら、しみ込みの心配は小さくなります。量の違いは、この素材の違いを反映していると読むのが自然です。
やりがちなのは、ネット記事で見かける、大さじで何杯も入れるような多めの量をそのまま試すことです。メーカーの取扱説明書にない量は、メーカーが想定していない使い方になります。
取扱説明書を失くした場合は、メーカーのFAQページや製品ページで手入れの欄を探しましょう。長谷園のFAQには取扱説明書を失くしたときの問い合わせ項目もあります。メーカーが分からない土鍋なら、量の少ない案内(小さじ1杯程度)から試し、様子を見るほうが失敗しにくい選び方です。
重曹を入れすぎると白い粉が吹く?やりがちな失敗と直し方
乾いた土鍋に白い粉が浮くのは、しみ込んだ重曹のしわざ
重曹で焦げを落としたあと、乾かした土鍋の表面に白い粉が吹いてきた。これは重曹を使ったお手入れでよく起きる失敗のひとつです。
長谷園のFAQでは、スプレータイプの重曹を使った場合に、土鍋にしみ込んだ重曹が浮き上がり白い粉が吹くことがあると説明しています。重曹の使用量が多い場合も同じことが起きるため、1回の使用量は重曹小さじ1程度までにするよう案内しています。
具体的な状況としては、焦げが落ちないからと重曹を大さじで何杯も入れて煮た、焦げた部分に重曹スプレーを直接吹きかけてこすった、といったケースです。生地の気孔に入り込んだ重曹が、乾燥とともに表面に出てきて白く残ります。
つまり白い粉は「焦げがまだ残っている」わけではなく、「重曹が残っている」サインです。ここでさらに重曹を足すと悪循環になるので注意しましょう。
状況:焦げが落ちないので重曹を多めに入れて煮た。乾かしたら表面に白い粉が浮いてきた。
原因:土鍋にしみ込んだ重曹が浮き上がっている(長谷園FAQ)。スプレータイプの重曹や使用量が多い場合に起きやすい。
対策:土鍋をお湯の中で煮立てて様子を見る。次からは1回の使用量を取扱説明書の量(長谷園なら重曹小さじ1程度まで)に抑える。
白い粉は50℃以上のお湯で煮立てて様子をみる
白い粉が吹いてしまったときの対処として、長谷園は、重曹は50℃以上のお湯で溶けやすくなるので、土鍋をお湯の中で煮立てて様子をみるよう案内しています。
理屈はシンプルで、しみ込んだ重曹を湯に溶かし出してしまうということです。水よりも温度の高いお湯のほうが重曹は溶けやすいため、ただ水ですすぐより、煮立てたほうが生地の中の重曹が出てきやすくなります。
やりがちなのは、白い粉を乾いた布でこすって落とそうとすることです。表面の粉は取れても、生地の中に残った重曹がまた浮いてくるので、きりがありません。また、白い粉が出た状態でいきなり料理に使うと、仕上がりの味やにおいが気になることもあります。
煮立てたあとは、湯を捨てて水洗いし、底面を上にしてよく乾かします。目止めが必要な土鍋なら、このあとお粥を炊いて目止めをし直しておくと安心です。
何度も重曹を繰り返さず、改善しなければメーカーに相談する
重曹で一度煮ても焦げが残ると、「もう一回」と繰り返したくなります。ただ、長谷園は一度重曹のお手入れをして改善しない場合は、何度も試さずに問い合わせフォームから相談するよう案内しています。
理由は、重曹のお手入れが土鍋にとって軽い作業ではないからでしょう。重曹で煮るたびに、生地にしみ込む重曹が増えたり、目止めのでんぷんが抜けたりします。そのたびに目止めのやり直しと乾燥が必要になり、土鍋への負担が積み重なります。
具体的には、長年使い込んだ土鍋の内側に、焦げではない茶色い色が残っているケースがあります。これは後の章で説明するとおり、使い込むほど色がつく変化で、重曹を何度使っても元の白さには戻りません。
焦げが盛り上がっていなくて、表面がなめらかなのに色だけ残っているなら、それ以上落とそうとしないのもひとつの判断です。表面がざらざらして焦げの層が残っているなら、木べらでこそげる工程からやり直しましょう。
重曹で煮たあと「目止め」をやり直すのはなぜ?
重曹煮は汚れと一緒に、気孔のでんぷんも追い出すから
長谷園と無印良品の萬古焼土鍋は、どちらも重曹で煮たあとにお粥を炊き直すよう案内しています。ここを省いてしまう人は多いのですが、理由を知ると省けなくなります。
長谷園は重曹のお手入れを「土鍋の中の汚れを追い出す」作業と説明しています。目止めは米のでんぷん質で生地の気孔を埋める作業でした。重曹で煮て気孔の汚れを追い出すと、そこに詰まっていたでんぷんも一緒に抜けてしまうと考えられます。気孔が開いた状態に戻るので、もう一度ふさぎ直す必要があるわけです。
目止めをしないまま使い続けると、汁気がしみ込みやすくなったり、水漏れにつながったりします。せっかく焦げを落としても、今度はにおいやカビの原因を抱えることになります。
コツは、重曹のお手入れと目止めを「ひとつながりの作業」として予定を組むことです。焦げ落としと目止め、そして乾燥まで含めると時間がかかるので、すぐに土鍋を使う予定のない日にまとめて行いましょう。
目止めのお粥は「残りご飯」で炊く
長谷園の目止めのお粥の炊き方は、生米ではなく残りご飯を使うのがポイントです。手順は次のとおりです。
なぜご飯から炊くのかというと、炊いたご飯はでんぷんがすでに糊のように変化しているので、短い時間でとろみのあるお粥になり、気孔を埋めやすいからです。無印良品の取扱説明書も、8分目くらいの水に水量の5分の1のご飯を入れる手順で、やはりご飯から炊いています。
やりがちなのは、強火で一気に炊いて吹きこぼれさせることです。土鍋はふちまで汁が上がると、ふたや外側にでんぷんが焼き付き、新たな焦げの原因になります。目止めのお粥は食べられるとされていますが、炊く前に土鍋をよく水洗いして水分を拭き取っておくのが条件です。お粥の水加減や炊き方そのものは、こちらの記事も参考になります。

乾燥は「5~8時間」と「2~3日の天日干し」を使い分ける
土鍋のお手入れで、焦げ落としと同じくらい大事なのが乾燥です。長谷園は日常のお手入れとして、水分を拭き取り、底面を上にして風通しの良い所で乾かすよう案内し、通常の目安を5~8時間ほどとしています。ふたは外して乾燥させます。
一方、重曹のお手入れのあとについては、お湯を冷ましてからさっと洗い、土鍋を逆さまに伏せた状態で2~3日天日干しをするよう案内しています。日常の乾燥より長いのは、重曹煮で生地の奥まで水分を含んでいるからと考えられます。
やりがちなのは、表面が乾いたように見えたからと、すぐ戸棚にしまったり、すぐ目止めのお粥を火にかけたりすることです。長谷園は、乾燥が不十分だと目詰まりやカビの原因になるとしていますし、目止めの手順でも濡れたまま加熱するとひび割れの原因になると注意しています。
底面を上にするのは、土鍋の底が釉薬のかかっていない部分で、水を含みやすいからです。触って冷たさを感じる部分が残っていれば、まだ水分が抜けきっていないサインです。
目止めが要らない土鍋もある
すべての土鍋で重曹のあとに目止めが必要なわけではありません。吸水を抑えた釉薬の製品は、そもそも使い始めの目止めが不要とされています。
HARIOのご飯釜は、鍋身表面に水分が染み込みにくい釉薬を使用しているため目止めは不要と案内されています。長谷園も、伊賀土鍋はすべて目止めが必要としつつ、煮込みをしない陶板鍋や陶板は目止めが不要としています。
逆に気をつけたいのは、「空焚きOK」をうたう土鍋です。長谷園は空焚きOKの土鍋も目止めが必要と回答しています。直火に強いことと、吸水しないことは別の性質なんですね。
判断に迷ったら、使い始めに目止めをしたかどうかを思い出してください。最初にお粥を炊くよう説明書に書かれていた土鍋なら、重曹で煮たあとも目止めをやり直す、と覚えておけば間違えにくくなります。長く使っていなかった土鍋も、長谷園は再度目止めが必要としています。
金属たわし・急冷・空焚き……土鍋を傷める落とし方はどれ?
金属たわしはメーカーで答えが割れる
焦げ落としでいちばん迷うのが、金属たわし(スチールたわし)を使っていいかどうかです。これは実際にメーカーで案内が分かれています。
長谷園は、ひどい焦げつきで木べらや洗剤で取れない場合に限り、台所用液体洗剤を含ませたスチールのたわしでやさしく擦る方法を挙げています。そのうえでFAQには「激しく全体を擦ると表面に傷がつくことがありますので、焦げの部分だけにご使用ください。」と書かれています。一方、無印良品の萬古焼土鍋の取扱説明書は、洗浄の際に研磨剤入りのスポンジ、金属たわし、クレンザー等は使用しないよう記載し、表面をキズつけて本品が破損するおそれがあると理由を示しています。
やりがちなのは、「長谷園でいいと書いてあったから」と別メーカーの土鍋で金属たわしを使うことです。釉薬の硬さや厚みは製品ごとに違うので、OKの案内は他の土鍋には当てはまりません。
手持ちの土鍋の取扱説明書に金属たわしの記載がない、またはメーカーが分からない場合は、使わないほうを選びましょう。木べら・スポンジの硬い面・重曹で対応できる範囲にとどめるのが無難です。
熱いうちに水をかけると、焦げより先にひびが入る
焦げを見つけてすぐ、熱いままの土鍋に水道の水を注いでしまう。焦げ落としの失敗の中で、いちばん取り返しがつかないのがこれです。
無印良品の萬古焼土鍋の取扱説明書には、本体が熱いまま冷水につけたり、急に冷たいところに置いたりしないよう書かれており、割れるおそれがあると理由が示されています。土鍋は熱をため込む素材なので、内側だけが急に冷えると、生地の中で温度差が生まれて割れやひびにつながります。
状況:炊き上がりのごはんを移した直後、焦げをふやかそうと冷たい水を注いだ。数日後、鍋から水がにじむようになった。
原因:熱い本体を急に冷やしたことによる割れ・ひび(無印良品の取扱説明書で禁止されている使い方)。
対策:土鍋の熱が落ち着くのを待ってから水を張るか、湯を使う。小さなひびによる水漏れは、目止めのお粥で止まる場合がある(長谷園FAQ)。
もしひびが入ってしまったら、長谷園は小さなヒビによる水漏れなら目止めを試すよう案内しています。ごはんのでんぷん質が細かいヒビを埋め、水漏れが止まる場合があるそうです。ただし大きなヒビでは止まらない場合もあるとしています。
濡れたまま火にかける・火であぶって乾かすのも要注意
焦げを洗ったあと「早く乾かしたいから」と土鍋を火にかけてあぶる方法も、土鍋を傷める原因になります。
長谷園は火であぶって乾かすことについてのFAQで、空焚きOKの土鍋は大丈夫としつつ、それ以外の土鍋は割れる原因になるので、水分を拭き取って底面を上にして風通しの良い所で乾かすよう案内しています。目止めの手順でも、濡れたまま加熱するとひび割れの原因になると繰り返し注意しています。無印良品の取扱説明書も、空だきはしないよう書いています。
やりがちなのは、洗ったばかりで底が湿った土鍋で、すぐに次の料理を始めることです。生地に入った水分が加熱で急に膨らみ、ひびの原因になります。
食器洗い乾燥機も避けましょう。無印良品の萬古焼土鍋は使用できないとされ、長谷園も食器洗い洗浄機はおすすめしないとしています(長谷園は食器乾燥機の使用は大丈夫としています)。IHで使えるかどうかも製品で違い、無印良品の萬古焼土鍋は電磁調理器(IH)では使用できません。IH対応の表示の読み方は、こちらで解説しています。

実はその黒ずみ、落とさなくていい?焦げと「使い込んだ色」の見分け方
外側の黒は、ガスの煤や油煙で落ちない
意外と知られていないけれど、土鍋の黒ずみの中には、落とそうとしなくていいものがあります。代表が、鍋の外側、特に底のまわりの黒ずみです。
長谷園のFAQでは、炎が当たる部分はガスの煤や油煙で黒くなり、一旦付着すると除去できないが使用に差支えないと説明しています。使い方や頻度によって変化は異なり、経年変化として楽しんでほしい、というのがメーカーの立場です。
やりがちなのは、この外側の黒を焦げだと思って金属たわしでこすることです。落ちないうえに、外側の釉薬を傷つけてしまいます。外側の底は水を含みやすい部分でもあるため、傷が増えるとそこから水がしみ込みやすくなります。
見分け方は場所です。炎が当たる外側の底や側面の下のほうに広がる黒は、煤や油煙と考えてよいでしょう。内側の、ごはんや具材が当たっていた部分にある盛り上がった黒い層が、落とすべき焦げです。
内側の茶色っぽい色は「使い込むほど変わる」もの
内側についても、新品のときの色にこだわりすぎる必要はありません。長谷園は内側が黒くなってきたという質問に対し、土鍋は使い込むほどに色がつき変化していくと回答しています。
土鍋は生地が汁気を吸う素材なので、煮込みやごはん炊きを重ねるうちに、内側の色が少しずつ濃くなります。これは汚れが残っているのではなく、使い込んだ変化のひとつです。
同じように、酢・レモン・梅など酸性の強いものを調理すると、表面が部分的に変色することがありますが、長谷園は使用上問題ないとしています。
焦げを落とす目的は、ざらついた層をなくして次に焦げ付きにくくすることです。色を新品に戻すことではない、と考えると、重曹の使いすぎも防げます。
ごはん炊き派・鍋料理派・久しぶりに出した人で優先順位が違う
焦げ落としのやり方は、土鍋の使い方によって優先順位を変えると無駄がありません。
毎日ごはんを炊く人は、焦げを溜めないことが第一です。炊き上がったらごはんを早めに移し、熱が落ち着いたら湯を張ってふやかす習慣にすると、重曹の出番はほとんどなくなります。HARIOのご飯釜のように、白いでんぷんの洗い残しにも重曹の方法が使える製品もあります。
冬に鍋料理で使う人は、煮汁を土鍋に入れたままにしないことが焦げ・カビ・においの予防になります。長谷園は、残った煮汁は早めに別の器に移すよう案内しています。雑炊やうどんで締めたあとの底の焦げは、その日のうちにふやかして落としましょう。
シーズンオフから久しぶりに出した人は、焦げより先に乾燥状態とカビを確認します。長く使っていない土鍋は再度目止めが必要とされているので、重曹のお手入れが必要ならそれを先に済ませ、最後に目止めのお粥を炊く順番にすると、目止めが1回で済みます。土鍋で炊くごはんそのものの浸水時間の考え方は、こちらも参考にしてください。

まとめ
次に土鍋を焦がしたら、熱が落ち着くのを待って湯を張り、まずは木べらでこそげるところから始めてみてください。重曹に手を伸ばすのは、その前に手持ちの土鍋の取扱説明書で量と目止めの有無を確かめてからにしましょう。
※お手入れ方法は製品ごとに異なり、変更されることがあります。最新の情報は各メーカーの取扱説明書・FAQでご確認ください。

コメント