IHのキッチンに引っ越したり、ガスコンロからIHクッキングヒーターに替えたりすると、真っ先に困るのが土鍋ご飯ではないでしょうか。ガス火でふっくら炊けていた土鍋を載せてみたら反応しない。IH対応の土鍋を買おうと思っても、本当に自宅のIHで使ってよいのかわからない。そんな迷いを持つ方は少なくありません。
先に結論をお伝えすると、IHで土鍋ご飯が炊けるかどうかは、土鍋の側のIH対応表示と、IHクッキングヒーターの側の取扱説明書の両方を見て決まります。ここが意外な落とし穴で、土鍋がIH対応をうたっていても、IHヒーターのメーカーが土鍋を使わないよう案内している例があるんです。
この記事では、IHと土鍋の相性を加熱の仕組みから説明し、IHメーカーの取扱説明書の読み方、買う前・使う前の確認ポイント、鍋で炊くときの浸水・火加減・蒸らしの理屈、焦げや割れを防ぐお手入れまで、公式の資料に沿って順番に整理していきます。
・ふつうの土鍋がIHで温まらない理由と、IH対応土鍋の仕組み
・IH対応の表示があっても使えないことがある理由(IHメーカーの取扱説明書の記載)
・買う前・使う前に見ておきたい3つの確認ポイント
・IHで鍋炊きするときの浸水・火加減・蒸らしの流れと、焦がさない・割らないコツ
ihで土鍋ご飯は炊ける?答えは土鍋の表示とIH側の取説の両方で決まります

IH対応と表示された土鍋なら、炊くこと自体はできる仕組みです
まず押さえておきたいのは、土鍋にもIHで加熱できるように作られた製品があるということです。IH修理・交換を手がける事業者のサイトでも、IHで使う土鍋は「IH対応と明記されている製品を選ぶ必要があります。」と説明されています。
理由は単純で、従来の製法で作られた土鍋は電気を通さないため、そのままではIHの加熱に反応しないとされているからです。そこでIH対応の土鍋は、鍋底に発熱する層を組み込んで、IHからの加熱を受け止められるようにしています。
台所でやりがちなのは、ガス火で使っていた土鍋をそのままIHに載せてみて、加熱が始まらずに戸惑うパターンです。これは故障ではなく、土鍋の側が対応していないだけのことが多いんですよ。
手持ちの土鍋がIHに対応しているかは、本体の底や箱、取扱説明書の表示で確認します。表示が見当たらない土鍋は、IHでは使わない前提で考えるのが無難です。
ただしIHヒーターのメーカーが土鍋を断っている例があります
ここからが、この記事でいちばん伝えたいところです。土鍋の側がIH対応でも、IHクッキングヒーターの側の取扱説明書が土鍋を使わないよう案内している例があります。
たとえば日立のIHクッキングヒーターの鍋に関するページでは、陶磁器(土鍋など)は、IHで使えると表示しているものでも使わないよう案内されています。パナソニックのKZ-KB21Bの取扱説明書にも、市販の土鍋はIH用と表示されていても使わないこと、その理由として故障したり火力が弱くなって調理できないことが書かれています。
つまり、土鍋メーカーが案内するIH対応と、IHヒーターのメーカーが認める鍋は、必ずしも一致しないということです。土鍋の表示を見て安心して買ったのに、自宅のIHの取扱説明書では土鍋が使用不可になっていた、ということが起こり得ます。
この食い違いは機種ごとの記載なので、他の機種・他社については個別に確認が必要です。まずは自宅のIHの取扱説明書の、使える鍋・使えない鍋の項目を開いてみてください。
炊飯器があるのに土鍋で炊きたくなるのはなぜ?
土鍋ご飯にひかれる理由として、鍋肌の熱をじっくり米に伝えながら炊けることや、底にできるおこげの香ばしさがよく挙げられます。土鍋は温まるまでに時間がかかる一方、いったん温まると冷めにくい性質があるとされ、その熱の持ち方が炊き上がりの印象につながると説明されることが多いんです。
ただ、炊飯器の加熱プログラムと違って、土鍋は火加減と時間の判断を人がする道具です。ガス火なら炎の大きさを目で見て調整できますが、IHでは炎が見えないぶん、IHの火力設定と土鍋の取扱説明書の指定をすり合わせる必要があります。
よくある失敗は、ガス火のときの感覚のまま強めの火力で炊き始めて、底を焦がしてしまうことです。IH対応土鍋の中には、中火または弱火で使うよう指定している製品もあります。
炊飯器と土鍋は優劣ではなく、手間をかけられる日とそうでない日で使い分けるものと考えると気が楽です。使い分けの考え方は後半でくわしく整理します。
IHで土鍋ご飯を炊けるかどうかは、土鍋のIH対応表示だけでは決まりません。IHクッキングヒーターの取扱説明書で土鍋が使えるかを確認し、両方がそろって初めて炊ける条件が整います。
なぜ普通の土鍋はIHで温まらない?加熱の仕組みから見る違い
IHは鍋底そのものを発熱させる調理器です
ガスコンロは炎の熱で鍋を外から温めますが、IHはしくみがまったく違います。IHは天板の下のコイルから出る磁力線で鍋底に電流を生じさせ、鍋そのものを発熱させる調理器とされています。天板が熱くなるのは、発熱した鍋から熱が伝わるためです。
この仕組みだと、鍋底が電気を通す素材でなければ加熱が始まりません。ガス火ならどんな鍋でも炎が当たれば温まりますが、IHでは鍋の素材が加熱できるかどうかを左右するわけです。
台所でありがちなのが、IHの天板に載せた土鍋が温まらないのを見て、火力を上げれば何とかなると考えてしまうことです。素材が対応していなければ、火力をいくら上げても加熱されません。反対に、対応していない鍋を載せたまま操作を繰り返すと、機種によってはエラー表示が出ることもあります。
IHで使える鍋の条件は、IHクッキングヒーターの取扱説明書に必ず書かれています。素材だけでなく、鍋底の形や大きさの条件もあわせて確認しておきましょう。
昔ながらの土鍋が反応しないのは電気を通さないから
従来の製法で作られた土鍋は、粘土などの陶土を焼き固めたものです。こうした土鍋は電気を通さないため、そのままではIHの加熱に対応しないとされています。
土鍋の取扱説明書を見ると、IHが使えないことをはっきり書いているものがあります。たとえば無印良品の萬古焼土鍋(IH対応版とは別の商品)の取扱説明書では、電磁調理器(IH)は使用できないと明記されています。同じ萬古焼の土鍋でも、IH対応版とそうでない版が別の商品として分かれているわけです。
やりがちな失敗は、見た目が似ているからと、家にある土鍋もIHで使えるだろうと思い込むことです。同じシリーズ・同じ産地の土鍋でも、IH対応かどうかは商品ごとに違います。
手元の土鍋の可否がわからないときは、商品名で取扱説明書を探すか、底面や箱の表示を確認します。表示も取扱説明書も見つからない土鍋は、ガス火専用として使うのが安全です。

IH対応土鍋は鍋底に発熱体を抱えています
では、IH対応の土鍋はどうやって温まるのでしょうか。基本的な考え方は、鍋底にIHに反応する発熱体を組み込み、その熱で土鍋全体を温めるというものです。
伊賀焼の窯元・長谷園のIH対応土鍋については、伊賀の粗土は金属と相性がよくないため、底に磁性金属ではなく、熱膨張率が同じカーボンの発熱体を採用したとされています(紹介記事)。土と発熱体の膨張の仕方をそろえて、温まったときに剥がれたり割れたりしにくくする工夫だと説明されています。なお、この記事で紹介されているのは蒸し鍋で、長谷園の炊飯土鍋かまどさんは直火用とされています。
ここで気をつけたいのは、発熱体があるからといって金属鍋と同じ感覚で扱えるわけではない点です。KINTOのIH土鍋のケアガイドには「Repeated scorching may damage the heating element.」とあり、繰り返し焦がすと発熱体が傷む可能性があると注意されています。
発熱体の構造は製品ごとに違うので、火力や使い方は必ずその土鍋の取扱説明書に従ってください。
鍋底の形も温まり方を左右します
IHで使う鍋は、素材に加えて鍋底の形も条件になります。IH修理・交換の事業者サイトでは、鍋底が平らであることが必須で、脚がある鍋や丸底の鍋は対応しないと説明されています。
理由は、IHが天板に接した鍋底を発熱させる仕組みだからです。鍋底が天板から浮いていたり、接する面が小さかったりすると、加熱がうまく伝わらないことがあります。土鍋の中には、ガス火の炎を受けやすいよう底に脚がついたものや、底が丸みを帯びたものもあり、こうした形はIHに向きません。
また日立のIHの鍋ページでは、底の薄い鍋や、鍋の底にステンレスを貼り付けた鍋などは、空だきや強火の加熱で鍋が反るなど変形する場合があると案内されています。鍋底が変形すれば、天板との接し方も変わってしまいます。
買う前には鍋底の形状を写真や実物で確かめ、使い始めてからも底が欠けたり浮いたりしていないかを時々見ておくと安心です。
IH(電磁誘導加熱)=コイルの磁力線で鍋底に電流を生じさせ、鍋そのものを発熱させる加熱方式。
ラジエントヒーター=IHクッキングヒーターの一部の口に使われる、ヒーター自体が熱くなる方式。IHとは別の加熱方式なので、使える鍋の条件も別に案内されます。
SGマーク=一般財団法人製品安全協会が定めるSG基準に適合した製品につくマーク。表示義務のない任意の認証です。
IH対応の表示があっても使えない?IHヒーターの取扱説明書の読み方

日立は陶磁器をIHに載せないよう案内しています
日立のIHクッキングヒーターの鍋に関するページでは、使えない鍋として陶磁器(土鍋など)が挙げられ、SGマークのIH表示などがついていても、IHで使えると表示しているものでも使わないよう書かれています。
土鍋メーカーの立場からすれば、自社の土鍋はIHで加熱できるように設計されています。一方でIHヒーターのメーカーは、自社の機器を前提に安全に使える鍋を案内しています。立場が違えば、使える鍋の線引きも変わるわけです。
ありがちな勘違いは、土鍋にIH対応と書いてあるのだから、IHのどの機種でも使ってよいはずと考えてしまうことです。IH対応という表示は、どのIHでも使えるという意味までは持っていません。
日立のIHを使っているなら、この案内に従って土鍋はIHに載せないのが基本です。同じページでは、鍋底がはがれかけた状態で加熱すると、はがれかけた部分が異常過熱し赤熱するおそれがあるとも注意されています。鍋底の状態にも気を配っておきましょう。
パナソニックの取扱説明書は火力が弱くなる理由も明記
パナソニックのKZ-KB21Bの取扱説明書では、市販の土鍋はIH用と表示されていても使わないよう書かれ、故障したり火力が弱くなって調理できないという理由が添えられています。
火力が弱くなるというのは、IHの機器が鍋の状態を見ながら加熱を制御していることと関係していると考えられます。機器が想定していない鍋を載せると、本来の火力が出ず、沸騰までに時間がかかったり、沸騰しきらなかったりすることがあるわけです。ご飯は沸騰させる工程が欠かせないので、火力が出なければ芯の残った炊き上がりになりかねません。
注意したいのは、この記載はKZ-KB21Bという機種の取扱説明書のものだという点です。他の機種・他社のIHが同じ扱いとは限らないため、記事の内容を一般化せず、自宅の機種で確認してください。
取扱説明書が手元にないときは、型番で検索するとメーカーの取扱説明書のダウンロードページが見つかることが多いです。型番は本体の銘板などで確認できます。
ラジエントヒーターの口は別扱いになります
IHクッキングヒーターの中には、IHの口とラジエントヒーターの口が並んでいる機種があります。ラジエントヒーターはヒーター自体が熱くなる方式なので、鍋の素材を問わずに使えそうに思えますよね。
ところが、IH修理・交換の事業者サイトの材質別の対応表では、土鍋はIHヒーターで不可、オールメタル対応のIHでも不可、ラジエントヒーターでは条件つき(△)とされています。機種によっては、ラジエントやクイックラジエントのヒーターでも土鍋が使えないものがあると説明されています。
やりがちなのが、IHの口で土鍋が使えないなら奥のラジエントの口で炊こう、と自己判断することです。ラジエントの口でも、使える鍋の条件は機種ごとに取扱説明書で決められています。
取扱説明書を開いたら、IHの口とラジエントの口で項目が分かれていないかを確認しましょう。土鍋の可否が口ごとに書き分けられている場合は、その記載に従います。
天板の傷や修理対応という見落としがちなリスク
炊けるかどうかだけでなく、使ったあとのことも考えておきたいところです。IH修理・交換の事業者サイトには「土鍋を使っている時に天板を傷つけたり、万が一IHクッキングヒーターが故障した際に、メーカーメンテナンスで対応してもらえない場合があります。」と書かれています。なお、このサイトはメーカー公式ではなく、修理・交換の事業者のものです。
土鍋の底は陶器の質感がそのまま出ている部分もあり、載せたり動かしたりするときに天板をこすりやすいことがあります。さらに、取扱説明書で使わないよう案内された鍋を使っていた場合、故障時の対応で不利になる可能性があるわけです。
天板の上で土鍋を引きずる動かし方は避け、持ち上げて置くようにしましょう。賃貸住宅のIHなど自分の持ち物でない機器では、取扱説明書の案内からはみ出す使い方は特に控えるのが安心です。
IH対応土鍋を買ってから自宅IHの取扱説明書を開いたら、土鍋は使わないよう書かれていた、という順番の失敗です。原因は、土鍋メーカーとIHヒーターのメーカーで、使える鍋の線引きが違うこと。対策は、買う前に自宅IHの型番で取扱説明書を確認し、使える鍋・使えない鍋の項目に土鍋や陶磁器の記載がないかを見ておくことです。

買う前・使う前に何を見る?失敗しない3つの確認ポイント
確認1:土鍋本体のSGマークとIH・CH・IHの表示
最初に見るのは、土鍋本体や箱の表示です。IH対応の製品では、緑のS字のSGマークの隣に、IHまたはCH・IHといった表記がついていることがあります。
SGマークは一般財団法人製品安全協会の制度で、安全基準・製品認証・事故の賠償がひとつになったしくみです。協会のSGマークの説明ページでは「SG基準は使い方(表示・取扱説明書)もセットで定めています」とされ、正しい使い方とあわせて安全を考える基準だとわかります。
ここで勘違いしやすいのが、SGマークがない土鍋はすべて危ない、と考えてしまうことです。SGマークには表示義務がなく、任意の認証です。マークがなくても、メーカーがIH対応を明記している製品はあります。
逆に、SGマークのIH表示があっても、先に紹介した日立のようにIHヒーター側が土鍋を使わないよう案内している場合があります。表示は判断材料のひとつと考え、次の確認2と組み合わせてください。
確認2:自宅IHの取扱説明書の、使える鍋の項目
2つ目は、この記事で何度もお伝えしている自宅IHの取扱説明書です。見るべき場所は、使える鍋・使えない鍋をまとめた項目で、たいていは図や表で素材ごとの可否が示されています。
確認するのは、陶磁器・土鍋の扱いと、IHの口・ラジエントの口の書き分け、それに鍋底の形の条件です。この3つを読めば、自宅のIHで土鍋を使ってよいかの判断がつきます。
やりがちなのは、メーカーが同じなら他の機種でも同じだろうと考えることです。取扱説明書の記載は機種単位なので、型番の一致まで確認しましょう。型番は本体の銘板や、ビルトイン型なら前面や天板の端の表示などで確認できることが多いです。
取扱説明書で土鍋が使用不可とされていた場合は、IHでは土鍋を使わず、IHで使える炊飯用の鍋を選ぶか、カセットコンロなど別の熱源を検討するのが現実的です。
確認3:土鍋の取扱説明書(目止め・火力の指定・使える熱源)
3つ目は、土鍋そのものの取扱説明書です。IH対応土鍋でも、使い始めに目止めが要るかどうか、どの火力で使うか、どの熱源で使えるかは製品ごとに違います。
たとえばKINTOのKAKOMI IH土鍋は、ほとんど吸水しないため目止めは不要とされ、レシピで指定された中火または弱火で使い、炒め物や揚げ物はしないよう案内されています。一方、従来の土鍋では最初におかゆを炊いて目止めをするよう案内するものもあります。
ありがちな失敗は、前に使っていた土鍋のやり方をそのまま新しい土鍋に当てはめることです。目止めが不要な土鍋に目止めをしても大きな問題にはなりにくいですが、火力の指定を守らないと焦げや発熱体の傷みにつながります。
3つの確認を表にすると、次のように整理できます。
| 情報源 | 立場 | 土鍋についての記載 |
|---|---|---|
| 日立 IHの鍋ページ | IHヒーターのメーカー | 陶磁器(土鍋など)はIHで使えると表示していても使わない |
| パナソニック KZ-KB21B取扱説明書 | IHヒーターのメーカー | 市販の土鍋はIH用と表示されていても使わない(故障・火力低下) |
| KINTO IH土鍋ケアガイド | 土鍋のメーカー | 中火または弱火で使う。目止め不要。繰り返し焦がすと発熱体が傷む可能性 |
| 無印良品 萬古焼土鍋取扱説明書 | 土鍋の販売元 | IH対応版とは別のこの土鍋はIH使用不可。最初におかゆを炊いて目止め |
| 製品安全協会 SGマーク | 認証制度の運営 | SG基準は使い方(表示・取扱説明書)もセット。表示義務のない任意の認証 |
ihで土鍋ご飯を炊く流れは?研ぎ・浸水・火加減・蒸らしの理屈
手順は鍋ごとに違う前提で、公式の一例を読みます
土鍋での炊き方は、土鍋のメーカーや製品によって火力と時間の指定が違います。ここでは、IHを含むいずれの熱源でも使えるとされる、ティファールのアルミ鋳物の炊飯鍋(キャストライン アロマ プロ ライスポット)の取扱説明書の手順を一例として紹介します。
この鍋は土鍋ではなく、アルミを鋳造した鍋で、炊ける量は3合までとされています。土鍋とは素材が違うので、時間や火力をそのまま土鍋に当てはめることはできません。それでも、研ぐ・浸水する・沸騰させる・弱火で炊く・蒸らすという流れと、それぞれの理屈は鍋炊きに共通しています。
やりがちなのは、ネットで見かけた時間をそのまま自分の土鍋に使うことです。お使いのIH対応土鍋に取扱説明書の炊き方がある場合は、そちらを優先してください。
研ぎは最初の水を手早く捨てるのが要です
ティファールの取扱説明書では、最初はたっぷりの水で手早くかき混ぜるように洗い、すぐに水を捨て、さらに4〜5回水を替えて研ぐと案内されています。
最初の水を手早く捨てるのは、乾いたお米が水を吸い始めるタイミングで、表面のぬかが溶け出した水をできるだけ吸わせないためだとよく説明されます。お米は水に触れてすぐに吸水を始めるので、最初の水に長く浸しておくと、ぬかのにおいが残りやすくなるわけです。
やりがちなのは、最初の水を入れたままボウルの中で米をゆっくり研ぎ始めてしまうことです。最初の一回は洗うというより、さっとすすいで捨てる感覚で進めると失敗が減ります。
無洗米を使う場合は研ぐ必要がなく、水加減も白米とは変わります。無洗米の水加減については別の記事でくわしく取り上げているので、あわせて参考にしてください。
浸水は夏30分・冬1時間が一例。芯を残さない理屈
ティファールの取扱説明書では、浸水は最低でも夏は30分間、冬は1時間が目安とされています。季節で時間が違うのは、水温が低いほどお米が水を吸うのに時間がかかるためです。
お米は、中心まで水が行き渡った状態で加熱されると、全体に火が通りやすくなります。浸水が足りないまま炊き始めると、表面は柔らかくなっても中心に水が届かず、いわゆる芯の残ったご飯になりがちです。炊飯器には浸水の工程が組み込まれたコースがありますが、鍋炊きでは浸水も自分で管理する必要があります。
ありがちな失敗は、冬場に夏と同じ感覚で短い浸水のまま炊いてしまうことです。台所が冷える季節ほど、浸水時間は長めを意識しましょう。
水加減についてティファールの取扱説明書では「水加減、時間はお米の質やお好みによって調節してください。」とされています。土鍋の場合は、内側の目盛りや取扱説明書の水量の指定に従うのが基本です。

沸騰までは中強火、沸いたら弱火。最後は蒸らしで仕上げます
ティファールの手順では、ふたをして中強火で蒸気が出てくるまでしっかり沸騰させ、沸騰したらとろ火〜弱火にして12分間加熱し、火を止めてふたをしたまま15分間蒸らすとされています。
前半でしっかり沸騰させるのは、鍋の中の温度を一気に上げてお米のでんぷんに火を通すためと説明されます。沸騰後に弱火にするのは、水分を飛ばしすぎず、底を焦がさずに残りの水を吸わせるためです。そして火を止めてからの蒸らしで、鍋の中に残った熱と蒸気が全体に行き渡り、表面の水っぽさが落ち着きます。
やりがちなのは、炊けたかどうか気になってふたを途中で開けてしまうことです。ふたを開けると蒸気が逃げ、蒸らしの効果が弱まります。
IH対応土鍋の場合、KINTOのようにレシピ指定の中火または弱火で使うよう案内している製品もあります。中強火の指定がない土鍋では強い火力を使わず、その土鍋の取扱説明書の火力に合わせてください。
焦げる・芯が残る…IHの鍋炊きでやりがちな失敗は?
火力を上げたまま炊き続けて底を焦がす
IHの鍋炊きでいちばん起こりやすいのが、底の焦げつきです。IHは炎が見えないうえ、火力の切り替えをうっかり忘れやすいので、沸騰後も強い火力のまま加熱を続けてしまうことがあります。
焦げつきは、鍋底の水分がなくなったあとも加熱が続くことで起こります。土鍋の場合は見た目や後片付けの問題だけでなく、KINTOのケアガイドにあるように、繰り返し焦がすと発熱体が傷む可能性があるとされています。日立のIHの鍋ページでも、底の薄い鍋などは空だきや強火の加熱で反るなど変形する場合があると注意されています。
対策はシンプルで、沸騰を確認したらすぐ弱火に切り替えることです。IHにタイマー機能があるなら、弱火の時間をタイマーで管理すると切り忘れが防げます。
そもそも、取扱説明書が中火または弱火で使うよう指定している土鍋では、強い火力を使わないこと自体が焦げ対策になります。
炎が見えないIHでは、沸騰後に弱火へ切り替えるのを忘れて加熱を続けてしまいがちです。原因は火加減を目で確認できないこと。対策は、沸騰を見届けたらすぐ弱火にし、弱火の時間をIHのタイマーで管理すること。土鍋は繰り返し焦がすと発熱体が傷む可能性があるとメーカーが注意しています。
浸水不足と火力の弱さで芯が残る
次に多いのが、炊き上がりに芯が残る失敗です。原因は大きく分けて2つあり、ひとつは浸水不足、もうひとつは沸騰しきらないまま弱火に移ってしまうことです。
浸水が足りないと、お米の中心まで水が届かないまま加熱が進みます。また、パナソニックの取扱説明書にあるように、IHと相性の悪い鍋では火力が弱くなり調理できないことがあります。しっかり沸騰しないまま炊き進めると、お米全体に火が通りきらず、芯の残った炊き上がりになりがちです。
台所でありがちなのは、時間どおりに火力を切り替えたのに、実はまだ沸騰していなかったというケースです。時間だけで判断せず、蒸気がしっかり出ているかを目で確かめてから弱火にしましょう。
何度炊いても沸騰に時間がかかりすぎる場合は、IHと土鍋の組み合わせ自体が合っていない可能性があります。その場合は確認2に戻り、自宅IHの取扱説明書を見直してください。
おこげを欲張って強火を延ばしすぎる
土鍋ご飯の楽しみとして、底のおこげを挙げる方は多いですよね。ティファールの手順では、おこげを作るなら最後に強火で30秒ほど加熱すると案内されています。
ここでやりがちなのが、もっと香ばしくしたいと強火の時間を延ばしてしまうことです。おこげと焦げは紙一重で、強火を長くかけるほど黒く焦げた部分が増え、においも苦みに変わっていきます。土鍋の場合は、発熱体の傷みにもつながりかねません。
おこげ作りは、まず公式の手順にある短い時間から試し、仕上がりを見て次回に生かすのが安全です。そして、土鍋の取扱説明書が中火または弱火での使用を指定している場合は、最後の強火の工程自体を入れないでください。おこげは鍋の素材や火力指定に左右されるので、指定がない鍋で無理に作るものではないと考えましょう。
実は、IHなら土鍋以外の炊飯鍋という選択肢もあります
意外と知られていないけれど、IHで鍋炊きのご飯を楽しみたいなら、土鍋にこだわらないという考え方もあります。
ここまで見てきたように、土鍋はIHヒーターのメーカーが使わないよう案内している例があり、使えるかどうかの確認に手間がかかります。一方で、IHで使えるとされている金属製の炊飯鍋もあり、ティファールのアルミ鋳物のライスポットは、IHを含むいずれの熱源でも使えると取扱説明書に書かれています。金属の鍋なら、IHの取扱説明書の使える鍋の条件にも当てはまりやすいわけです。
もちろん、土鍋ならではの見た目や食卓にそのまま出せる雰囲気は、金属鍋とは違います。ただ、自宅IHの取扱説明書で土鍋が不可だった場合でも、鍋炊きのご飯をあきらめる必要はありません。
金属の炊飯鍋を選ぶときも、自宅IHで使える鍋の条件(素材・鍋底の形・大きさ)に合うかを確かめてから選んでください。
長く使うには?目止め・急冷・焦げ落としと炊飯器との使い分け
目止めが要る土鍋・要らない土鍋があります
土鍋の目止めとは、使い始めにおかゆなどを炊いて、土鍋の表面の細かな隙間をでんぷんでふさぐ下準備のことです。吸水しやすい土鍋で、水漏れやひび割れを防ぐ目的で行われるとされています。
ただし、すべての土鍋に必要なわけではありません。IH対応土鍋でも目止めが必要な製品がある一方で、セラミック製やセラミック釉薬でコーティングされた土鍋は不要とされることもあります。KINTOのKAKOMI IH土鍋は「KAKOMI IH donabe, rice cooker, and ceramic pot absorbs almost no water, so there is no need for the process of seasoning」とされ、ほとんど吸水しないため目止めは要らないと案内されています。反対に、無印良品の萬古焼土鍋の取扱説明書では、必ず最初におかゆをたっぷり炊くよう案内されています。
やりがちなのは、目止めは土鍋なら必ず必要と思い込んだり、逆に省いてよいと思い込んだりすることです。目止めの要否は製品ごとの取扱説明書で確認しましょう。
空だきと急冷が割れの原因になります
土鍋を割ってしまう原因として、取扱説明書でよく注意されているのが空だきと急冷です。無印良品の萬古焼土鍋の取扱説明書では、空だきや炒め物をしないこと、熱いまま冷水につけたり急に冷たいところに置いたりしないことが、割れるおそれがあるとして案内されています。
土鍋は急な温度差に弱いとされています。熱い土鍋の一部だけが急に冷やされると、場所によって縮み方に差が出て、ひびや割れにつながると説明されます。IH対応土鍋のKINTOでも、炒め物や揚げ物はしないよう案内されています。
台所でありがちなのは、炊き終わって中身を移したあと、焦げを早く落としたくて熱い土鍋に水を張ってしまうことです。お手入れは土鍋が冷めてから始めましょう。
また、IHの天板から下ろした直後の土鍋を、濡れたふきんや冷たい調理台に直接置くのも避けたいところです。鍋敷きの上に置いて、自然に冷めるのを待つのが安心です。
焦げは重曹で煮てからやさしく落とす。食洗機の可否も確認
焦げつかせてしまったときの落とし方は、KINTOのケアガイドでは、重曹で煮てからメラミンスポンジでやさしくこすると案内されています。焦げを力任せにこすり落とそうとすると、表面の釉薬や鍋底を傷めるおそれがあるためです。
やりがちな失敗は、金属たわしで焦げを削ってしまうことです。表面に傷がつくと、次からさらに焦げつきやすくなったり、見た目が損なわれたりします。重曹を使ってよいかどうかも、製品の取扱説明書の案内に従ってください。
食洗機の可否も製品ごとに違います。KINTOのケアガイドでは、IH土鍋の鍋本体は食洗機が使えないとされています。ふたは使えて本体は不可、といった具合に部品で分かれていることもあるので、まとめて食洗機に入れる前に取扱説明書で確認しましょう。
洗ったあとは、しっかり乾かしてから収納します。水気が残ったまましまうと、においやカビの原因になりかねません。
炊飯器・IH対応土鍋・金属の炊飯鍋、どう使い分ける?
最後に、IHのキッチンでのご飯の炊き方の使い分けを整理しておきます。どれが優れているかではなく、暮らし方と台所の条件で選ぶのがポイントです。
毎日決まった時間に手間をかけずに炊きたいなら、予約や保温ができる炊飯器が向いています。休日に食卓で鍋ごと出して楽しみたい人で、自宅IHの取扱説明書で土鍋の使用が問題ないと確認できた人には、IH対応土鍋が選択肢になります。自宅IHの取扱説明書で土鍋が不可だった人や、賃貸住宅で備え付けのIHを使っている人は、IHで使える金属の炊飯鍋を検討するとよいでしょう。
| 項目 | 炊飯器 | IH対応土鍋 | IH対応の金属炊飯鍋 |
|---|---|---|---|
| 事前の確認 | 特になし | 土鍋の表示とIH側の取扱説明書の両方 | IH側の使える鍋の条件 |
| 火加減 | コースに任せる | 取扱説明書の火力指定に従い自分で管理 | 取扱説明書の手順に従い自分で管理 |
| 注意点 | コースと水加減の目盛りを合わせる | 焦がす・急冷で傷みや割れのおそれ | 取っ手やふたのつまみも熱くなる |
| 向いている人・場面 | 毎日手間をかけずに炊きたい | IH側で使用可を確認でき、食卓で鍋ごと楽しみたい | IH側で土鍋が不可だったが鍋炊きしたい |
どの方法でも、鍋や取っ手は高温になります。ティファールの取扱説明書でも、取っ手やふたのつまみも熱くなるのでミトンなどを使うよう注意されています。
まとめ
最初の一歩は、自宅のIHクッキングヒーターの型番を確かめて、取扱説明書の使える鍋・使えない鍋の項目を開くことです。そこで土鍋が使えると確認できたら、IH対応の表示がある土鍋を選び、その土鍋の取扱説明書の火力と炊き方に沿って炊いてみてください。もし土鍋が使用不可とされていたら、IHで使える炊飯鍋や炊飯器で、浸水と蒸らしをていねいにするところから始めれば、鍋炊きの理屈はそのまま生かせます。
※製品の仕様や取扱説明書の記載は変わることがあります。最新情報は各メーカーの公式サイトでご確認ください。

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