赤飯を炊こうとして、お米の袋を前に手が止まったことはありませんか。うるち米ともち米は、どちらもお米なのに、炊くと粘りがまるで違います。ふだんのごはんと同じ水加減で炊いていいのか、だんごを作るなら上新粉と白玉粉のどちらを買えばいいのか。台所で迷うところはいくつもあります。
先に答えを言うと、うるち米ともち米の違いは、お米に含まれるデンプンの中身です。農林水産省の資料によると、うるち米のデンプンはアミロースとアミロペクチンが2対8程度、もち米はほぼ100%がアミロペクチンとされています。このアミロースがあるかないかの差が、粒の見た目、粘りの強さ、冷めたときのかたさ、向いている料理、そして米粉の種類まで、ほとんどすべての違いにつながっているんです。
この記事では、デンプンの理屈から入って、粒の見分け方、餅や赤飯・おこわにもち米を使う理由、上新粉・白玉粉・餅粉・道明寺粉の違い、もち米を炊飯器で炊くときの注意点、もち米の代表品種までを順番に整理します。読み終わるころには、どちらを手に取ればいいか迷わなくなるはずです。
・うるち米ともち米の違いを生むデンプン(アミロース・アミロペクチン)の仕組み
・粒の見た目、粘り、冷めたときのかたさが違う理由
・上新粉・白玉粉・餅粉・道明寺粉の原料と向いている和菓子
・もち米を炊飯器で炊くときの浸水・水加減の考え方と代表品種
うるち米ともち米の違いはアミロースがあるかどうかで決まる

違いはたった一つ、デンプンの組み合わせです
うるち米ともち米の違いをひと言でまとめるなら、デンプンの組み合わせの違いです。お米の成分の大部分はデンプンで、そのデンプンにはアミロースとアミロペクチンという二つの種類があります。うるち米はこの二つが混ざっていて、もち米はほとんどアミロペクチンだけ。ここが出発点なんですよ。
根拠になるのは農林水産省の解説です。農林水産省のお米に関するページでは、精白米のうち、うるち米のデンプンはアミロースとアミロペクチンの構成比率が2対8程度、もち米のデンプンはほぼ100%がアミロペクチンだと説明されています。米穀安定供給確保支援機構の資料でも、うるち米はアミロペクチン約80%・アミロース約20%、もち米はほとんどがアミロペクチンと整理されています。
よくある誤解が、もち米はうるち米を改良した特別なお米、あるいは粘りを出すために何か加工したお米だというものです。実際にはどちらも同じイネのお米で、デンプンの性質が違うだけ。だからこそ、炊き方や使い道を変える必要があるわけです。
覚え方のコツは、アミロースが入っているのがうるち米、入っていないのがもち米、と一本線で理解しておくこと。これさえ押さえておけば、このあと出てくる見た目や粘り、米粉の違いも、全部この一本線から説明がつきます。
アミロースは一本の鎖、アミロペクチンは枝分かれした木
二つのデンプンは、どちらもブドウ糖がつながってできていますが、つながり方が違います。アミロースはまっすぐな鎖、アミロペクチンは枝分かれした木のような形。この形の違いが、粘りの差を生む理由だと考えるとわかりやすいです。
農林水産省の説明では、アミロースはブドウ糖が長い鎖状につながったもの、アミロペクチンはアミロースの鎖の途中から分岐して樹枝状につながったものとされています。枝分かれが多い分子は、炊いて水を含むと互いに絡み合いやすく、それがもちっとした粘りにつながる傾向があります。反対に、まっすぐな鎖のアミロースが多いほど、ごはんはさらっとした、一粒ずつほぐれる方向に寄っていきます。
台所でよくあるのが、もち米のおこわを炊いたらしゃもじにくっついて離れず、うるち米と同じ感覚でほぐそうとして粒をつぶしてしまう失敗です。これは扱いが下手なのではなく、アミロペクチンだけでできたお米はもともと絡み合う性質が強いからなんです。
コツは、もち米を扱うときはしゃもじや手を水で湿らせ、切るように混ぜること。デンプンの形を知っていると、こうした扱い方の違いも自然と納得できます。
アミロース:ブドウ糖が長い鎖状につながったデンプン。うるち米には約20%含まれ、もち米にはほとんど含まれない。
アミロペクチン:アミロースの鎖の途中から枝分かれして樹枝状につながったデンプン。もち米のデンプンはほぼ100%がこちら。
うるち米:アミロースとアミロペクチンの両方を含む、ふだんごはんとして食べるお米。
実はうるち米の中にも粘りの幅がある
意外と知られていないけれど、うるち米のアミロースの割合は一つに決まっているわけではありません。うるち米の中にも、もち米寄りの粘りを持つものから、さっぱり寄りのものまで幅があるんです。
農林水産省のページには、「うるち米のアミロースとアミロペクチンの比率は、品種や生育条件などによって異なり、アミロースの割合が低いほど粘りが強く、冷めてもかたくなりにくい米になります。」と書かれています。2対8という数字はあくまで目安で、品種や、その年の育ち方によって前後するということです。
ここを知らないと、同じうるち米なのに銘柄を変えたら粘りが違う、去年と同じ品種なのに食感が違う、と戸惑うことになります。それはお米の当たり外れというより、アミロースの割合が品種や生育条件で動いているからだと考えると筋が通ります。
品種を選ぶときは、道県や産地の公式の品種紹介で粘りが強いとされているか、あっさりしていると紹介されているかを見るのが近道です。うるち米ともち米の違いは、白か黒かの二択ではなく、アミロースの多い少ないという一本のものさしの上にある、と捉えておくと選び方がぐっと楽になります。
炊く前の粒でも見分けがつく?見た目・粘り・冷めたときの違い
透き通っているのがうるち米、白く濁っているのがもち米
うるち米ともち米は、炊く前の生の粒でも見分けられます。透明感があるのがうるち米、白くて不透明なのがもち米です。袋から出して並べてみると、色の違いがはっきりわかります。
米穀安定供給確保支援機構の資料でも、うるち米の粒には透明感があり、もち米の米粒は白くて不透明だと説明されています。同じ資料は、米に含まれるデンプンの性質の違いによってうるち米ともち米があると位置づけていて、見た目の差もデンプンの違いと一緒に整理されています。
やりがちなのが、容器に移し替えたあとでどちらがどちらかわからなくなるケースです。お正月や行事のためにもち米を買って、余った分を同じような容器に入れておくと、ふだんの炊飯で間違えて混ぜてしまうことがあります。もち米を白米のつもりで炊くと、水加減が合わずやわらかすぎるごはんになりがちです。
保存するときは、容器にもち米と書いておくのがいちばん確実です。もし迷ったら、粒を明るいところで見て、白く濁っていればもち米、透き通っていればうるち米と判断できます。ただし精米したてや品種によって見え方が変わることもあるので、表示のある袋のまま保存しておくのが安心です。
| 項目 | うるち米 | もち米 |
|---|---|---|
| デンプンの構成 | アミロペクチン約80%・アミロース約20% | ほぼ100%がアミロペクチン |
| 生の粒の見た目 | 透明感がある | 白くて不透明 |
| 粘り・冷めたとき | 品種や生育条件で幅がある。アミロースが少ないほど粘りが強い | 粘りが強く、冷めても比較的かたくなりにくい |
| 主な用途 | ふだんのごはん(日本ではジャポニカ種のうるち米) | もち、赤飯、おこわ |
| 主な米粉 | 上新粉 | 白玉粉・餅粉・道明寺粉 |
出典:農林水産省、米穀安定供給確保支援機構、農林水産省東海農政局の公表資料をもとにお米の教科書編集部が作成
もちもち感の正体はアミロペクチンの絡み合い
もち米を炊いたり蒸したりすると、うるち米よりはるかに強い粘りが出ます。この粘りの正体は、デンプンのほぼすべてを占めるアミロペクチンです。
前の章で触れたとおり、アミロペクチンは枝分かれした形をしています。米穀安定供給確保支援機構の資料では、もち米はほとんどがアミロペクチンでできているので粘りが強い、と説明されています。うるち米は約20%のアミロースが入っている分、粒どうしの絡み方が控えめになり、一粒ずつの形が残ったごはんになる、という関係です。
台所で差が出るのは、たとえば炊き込みごはんやおにぎりを作るとき。もち米を多く混ぜれば混ぜるほど粘りが強くなり、まとまりやすくなる一方、具と混ぜるときにダマになりやすくなります。うるち米だけのつもりで混ぜ方を決めると、もち米入りでは思ったよりべたつく、ということが起こります。
粘りの強さを決めているのは水の量だけではなく、お米そのもののデンプンだ、と覚えておくと失敗の原因を見誤りません。粘りが足りないなら水を増やす、という発想の前に、そもそもどのお米を使っているかを確認するのが順番です。
冷めてもかたくなりにくいのはなぜ?
もち米で作ったおこわや赤飯は、冷めてもうるち米のごはんほどかたくなりにくいとされています。お祝いの席で作り置きされることが多いのも、この性質と相性がいいからです。
米穀安定供給確保支援機構の資料には、もち米は炊飯後、冷めても比較的かたくなりにくいのが特徴だと書かれています。農林水産省も、うるち米についてアミロースの割合が低いほど冷めてもかたくなりにくいと説明しています。炊いたデンプンは冷めるとかたさが戻る方向に変化し、一般にデンプンの老化と呼ばれますが、その進みやすさにアミロースの割合が関わっている、という整理です。
よくある失敗は、冷めたうるち米のごはんがぼそぼそになったのを、炊き方のせいだと思い込んで水を増やしてしまうこと。炊きたてがべたつくのに、冷めるとやっぱりかたい、という残念な結果になりがちです。冷めたときのかたさには、お米の種類そのものの性質も効いています。
冷めてから食べる料理を作るなら、もち米を使ったおこわを選ぶ、あるいはうるち米なら品種紹介で冷めてもおいしいとされる品種を選ぶ、という発想が役立ちます。炊き方の工夫と品種選びを分けて考えると、手の打ちどころが見えてきます。
お餅や赤飯にうるち米を使わないのはなぜ?

お餅がよくのびるのはアミロペクチンだけでできているから
お餅はもち米で作ります。うるち米でついても、私たちがイメージする、よくのびてまとまるお餅にはなりにくいです。その理由も、やはりデンプンにあります。
米穀安定供給確保支援機構の資料では、もち米の用途としてもちや赤飯が挙げられています。もち米はほとんどがアミロペクチンでできていて粘りが強い、という性質が、蒸してついたときにひとかたまりになってのびる、お餅らしい食感につながっていると考えられます。アミロースを約20%含むうるち米では、この絡み合いが控えめになるわけです。
家庭でやりがちなのは、餅つき機やお餅づくりのレシピで、もち米が足りないからとうるち米で量を足してしまうこと。のびが弱く、ざらっとした口当たりになったり、まとまりにくくなったりする原因になります。アミロースが入る分だけ、性質がうるち米寄りに動くからです。
お餅を作るときは、レシピで指定がない限りもち米だけで作るのが基本です。分量が足りないときは、うるち米で補うより、全体の量を減らして作るほうが、もち米本来の食感を損ないません。
赤飯・おこわがもち米なのは、粘りと冷めてもおいしい性質から
赤飯や山菜おこわなどのおこわ類も、基本はもち米で作ります。もちっとした食感と、冷めてもかたくなりにくい性質が、行事や持ち寄りの料理に合っているからです。
もち米の用途として赤飯が挙げられていることは、先ほどの米穀機構の資料のとおりです。京都府が公開しているおこわのレシピ(京都府の公開資料)でも、もち米を水に漬けてから、炊飯器でおこわの水加減にして炊く手順が紹介されています。蒸し器で蒸す方法だけでなく、家庭の炊飯器でも作れるということです。
やりがちな失敗は、ふだんのうるち米で赤飯風に炊いてしまい、色はついたけれど食感が違う、というケース。小豆と一緒に炊けば赤飯になる、と思いがちですが、あのもっちりした食感はもち米ならではのものです。
赤飯やおこわを作るときは、まずもち米を用意すること、そして炊飯器で炊く場合はおこわ用の水加減やコースがあるかを取扱説明書で確認することの二つを押さえておきましょう。水加減については、このあと詳しく説明します。
毎日のごはんがうるち米なのは、ほどよい粘りとほぐれやすさ
反対に、毎日食べるごはんにはうるち米が使われています。米穀安定供給確保支援機構の資料には、「私たち日本人が通常食べている米は、ジャポニカ種のうるち米です。」と書かれています。
うるち米はアミロースを含むので、もち米ほど粘りが強くなく、一粒ずつの形がほどよく残ります。おかずと交互に食べたり、丼や炊き込みごはんにしたりと、いろいろな料理に合わせやすいのはこの性質のおかげです。ここで出てくるジャポニカ種という言葉は、イネの種類による分け方で、うるち米かもち米かという分け方とは別の軸です。デンプンで分けるのがうるち・もち、イネの系統で分けるのがジャポニカ・インディカ、と整理しておくと混乱しません。
台所で迷いがちなのは、もち米のほうが粘りがあっておいしそうだからと、ふだんのごはんにもち米を多めに混ぜてしまうこと。粘りが強すぎて、おかずと合わせたときに重たく感じることがあります。
毎日のごはんで粘りを足したいなら、もち米を混ぜるより、粘りが強いとされるうるち米の品種を選ぶほうが、炊き方を変えずに済みます。
上新粉・白玉粉・餅粉・道明寺粉は原料の米で何が変わる?
上新粉はうるち米の粉、だんごや柏餅に使われる
和菓子づくりでよく使う米粉のうち、上新粉はうるち米を原料にした粉です。だんごや柏餅など、ほどよい歯ごたえのある和菓子に使われます。
農林水産省東海農政局の米粉の種類のページでは、上新粉はうるち米が原料で、だんご、柏餅、草餅、ういろう、かるかん饅頭などに使われると紹介されています。農林水産省の米粉の特性に関するページでも、上新粉は団子、柏餅や和菓子、せんべい等の米菓に使われていると説明されています。同じページでは、だんごや柏もちの加工適性として、吸水量が多くアミロース含有量が低い米粉が有利だという整理もされています。
うるち米の粉なので、アミロースを含む分、もち米の粉より歯切れのいい、しっかりした食感になりやすいのが特徴です。柏餅や草餅の生地がもち米の大福ほどのびないのは、原料の違いによるものと考えると納得がいきます。
買うときは、袋の原材料表示でうるち米かもち米かを確認しましょう。上新粉と書いてあっても、商品によって粒の細かさなどが違うことがあるので、レシピで指定された粉の名前と原料をそろえるのが失敗しない近道です。
白玉粉と餅粉はどちらももち米、製法で使い分ける
白玉粉と餅粉は、どちらももち米が原料です。もち米の粉なので、のびのある、もちもちした食感の和菓子に向いています。
東海農政局の資料では、白玉粉はもち米を水挽製法により粉にしたもので、用途は白玉だんご、求肥、大福餅、しるこなどとされています。餅粉もやはりもち米が原料で、大福餅、求肥、しるこ、最中などに使われると紹介されています。農林水産省の米粉の特性のページでも、白玉粉(水挽式製粉)は大福もち、求肥、白玉だんごの原料になっていると説明されています。
用途が重なっているので、どちらでもいいのでは、と思うかもしれません。ただ、製法が違えば粉の粒の状態や水の吸い方も変わるため、レシピの水の量はその粉に合わせて組み立てられています。白玉粉のレシピを餅粉で作ると、生地のかたさが変わることがあるので注意が必要です。
コツは、レシピで指定された粉をそのまま使うこと。代用する場合は水を一度に入れず、生地のかたさを見ながら少しずつ加えると、調整の余地が残ります。
道明寺粉は蒸してから挽いた、粒感の残る粉
道明寺粉ももち米が原料ですが、ほかの粉と違って粒の形がある程度残った、顆粒状の粉です。関西風のさくら餅や、おはぎに使われます。
東海農政局の資料では、道明寺粉はもち米のアルファー化型で、蒸して乾燥させたあと粗く挽いて顆粒状にしたものとされ、さくら餅やおはぎに使われると紹介されています。農林水産省の米粉の特性のページにも、道明寺粉(蒸して乾燥させてから粗く挽き、顆粒粉末にしたもの)はさくら餅やおはぎの原料になっていると書かれています。一度蒸してあるという点が、生のもち米を挽いた白玉粉や餅粉との大きな違いです。
粒感があるので、なめらかな生地を期待して使うと、つぶつぶした仕上がりに驚くことがあります。これは失敗ではなく、道明寺粉ならではの食感です。
道明寺粉を使うときは、袋の表示やレシピの手順に従って、水やお湯を吸わせてから加熱する流れを守りましょう。すでに蒸してある粉なので、扱い方が白玉粉とはまったく違います。

| 粉の名前 | 原料 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 上新粉 | うるち米 | アミロースを含むうるち米の粉 | だんご、柏餅、草餅、ういろう、かるかん饅頭 |
| 白玉粉 | もち米 | 水挽製法で粉にしたもの | 白玉だんご、求肥、大福餅、しるこ |
| 餅粉 | もち米 | もち米を粉にしたもの | 大福餅、求肥、しるこ、最中 |
| 道明寺粉 | もち米 | 蒸して乾燥後、粗く挽いた顆粒状(アルファー化型) | さくら餅、おはぎ |
粉を取り違えると、思った食感にならない
和菓子づくりでいちばん多いつまずきは、粉の取り違えです。名前が似ていて袋の見た目も近いので、レシピと違う粉を使ってしまい、食感がまったく変わってしまうことがあります。
たとえば、白玉だんごを作ろうとして上新粉を買ってしまうケース。白玉粉はもち米、上新粉はうるち米が原料です。うるち米にはアミロースが約20%含まれ、もち米はほぼ100%がアミロペクチンなので、同じように丸めてゆでても、のびや口当たりが変わりやすくなります。逆に柏餅のレシピで白玉粉を使えば、生地がやわらかくのびすぎて形が保ちにくくなることも考えられます。
原因は、粉の名前ではなく原料のお米の違いを意識していなかったこと。和菓子の粉選びは、うるち米の粉か、もち米の粉か、という一点から考えると整理しやすくなります。
白玉だんごのつもりで上新粉を使うと、もち米の粉ならではののびが出にくくなります。原因は原料がうるち米かもち米かの違いです。買う前に、レシピの粉の名前と、袋の原材料表示のお米の種類の両方を確かめましょう。
もち米を炊飯器で炊くとき、白米と同じ水加減でいい?
浸水は京都府のおこわレシピで40分間ほど
もち米を炊く前には、うるち米と同じように水に漬けて吸水させます。京都府が公開しているおこわのレシピでは、もち米は洗って40分間ほど水に漬け、使う前にザルに上げて水気を切る、と案内されています。
出典は京都府のおこわのレシピです。浸水させる理由は、お米の芯まで水を届けておくため。乾いたままのお米を加熱すると、外側だけが先にやわらかくなり、中心まで水と熱が回りきらずに芯が残る原因になります。もち米も同じで、あらかじめ吸水させておくことで、炊き上がりのムラを減らせます。
よくある失敗は、急いでいて浸水を省き、そのまま炊いてしまうこと。おこわの中に芯の残った粒が混ざり、もちっとした食感が台無しになりがちです。もう一つは、ザルに上げずに漬け水ごと炊飯器に入れてしまうケース。水加減が狂い、やわらかくなりすぎる原因になります。
浸水の時間や水切りの要否は、レシピや炊飯器の取扱説明書によって異なることがあります。お使いの炊飯器におこわコースがある場合は、取扱説明書の案内を優先しましょう。

水加減はおこわの目盛りに合わせる
もち米を炊飯器で炊くときは、白米の目盛りではなく、おこわの水加減に合わせるのが基本です。京都府のレシピでも、炊飯器にもち米と調味料、だし汁を入れて、おこわの水加減にする手順が紹介されています。
もち米はうるち米とデンプンの性質が違うため、同じ水の量で炊くと仕上がりが変わります。そのため、炊飯器によってはおこわ用の目盛りやコースが用意されています。目盛りの位置やコースの有無、炊き分けの方法はメーカーや機種によって異なるので、1台の案内をほかの機種にそのまま当てはめることはできません。
注意したいのは、調味料やだし汁を加える炊き込みおこわの場合です。京都府のレシピのように、先に調味料を入れてから、だし汁で目盛りまで合わせる順番にしておくと、液体の総量で水加減がそろいます。水で目盛りに合わせたあとに調味料を足すと、その分だけ水分が多くなってしまいます。
手元の炊飯器の取扱説明書で、おこわの目盛りがどこにあるか、もち米は何合まで炊けるかを一度確認しておきましょう。それがいちばん確実な水加減の基準になります。
白米の目盛りで炊いてやわらかくなりすぎる失敗
もち米を炊くときのいちばんの失敗は、いつもの白米の目盛りで炊いてしまうことです。炊き上がりがやわらかくなりすぎて、粒の形が崩れ、べたっとしたおこわになりやすくなります。
原因は、もち米とうるち米の性質の違いを水加減に反映していないことです。もち米はほぼ100%がアミロペクチンで、もともと粘りが強いお米。そこにうるち米と同じ感覚で水を入れると、粘りと水分が重なって、まとまりすぎた仕上がりになりがちです。浸水したお米を水切りせずに目盛りまで水を足した場合も、同じ方向の失敗になります。
もう一つの典型例は、先ほど触れた容器の取り違え。白米だと思って炊いたらもち米だった、というケースです。この場合も白米の目盛りで炊くことになるので、思いがけずやわらかいごはんになります。
もち米を白米と同じ水加減で炊くと、やわらかくなりすぎることがあります。対策は、浸水後にザルで水気を切ること、おこわの目盛りやコースを使うこと。目盛りの位置は機種で違うので、取扱説明書で確認してから炊きましょう。
うるち米ともち米を混ぜて炊くときの考え方
おこわをもう少し軽い食感にしたい、ふだんのごはんに少しもちっと感を足したい、という理由で、うるち米ともち米を混ぜて炊くこともあります。混ぜた場合の食感は、両方の性質の間に収まると考えるとわかりやすいです。
理屈はシンプルで、アミロースを含むうるち米の割合が増えるほど、全体はうるち米寄りのさらっとした方向へ、もち米の割合が増えるほどもち米寄りの粘りの方向へ動きます。農林水産省が説明しているように、粘りや冷めたときのかたさはアミロースの割合と結びついているので、混ぜる割合を変えれば、炊き上がりの性質も段階的に変わるはずです。
やりがちなのは、混ぜたお米を白米の目盛りだけで炊いたり、もち米の割合が多いのにおこわの水加減にしなかったりして、仕上がりがぶれること。どちらのお米が主役なのかで、水加減の基準が変わります。
混ぜて炊くときは、まず少量で試し、取扱説明書に混ぜ炊きの案内があればそれに従いましょう。案内がない場合は、多いほうのお米の水加減を基準にして、炊き上がりを見ながら次回に調整していくのが無理のない進め方です。
もち米にも品種がある|ヒメノモチ・こがねもちはどこで作られている?
もち米の検査数量は令和2年産で176,070トン
うるち米にコシヒカリやあきたこまちといった品種があるように、もち米にも品種があります。まずは、どのくらいの量が作られているのかを見てみましょう。
米穀安定供給確保支援機構「もち米をめぐる状況」(令和3年11月)によると、農林水産省の農産物検査結果をもとにした令和2年産の水稲もち玄米の検査数量は176,070トンでした。令和元年産は173,884トンで、令和2年産はそれよりやや多い数量になっています。ここで示されているのは検査を受けた数量で、もち米の生産量のすべてを表すものではない点には注意が必要です。
こうした数字を読むときにありがちなのが、年を確認せずに今もこの量だと受け取ってしまうことです。統計は年ごとに更新されるので、何年産のデータなのかを必ず確認しましょう。この記事の数字も、令和2年産のものです。
ふだんの買い物で品種名を気にすることは少ないかもしれませんが、もち米の袋にも品種名が書かれていることがあります。どんな品種があるかを知っておくと、袋の表示が読みやすくなります。
品種別ではヒメノモチ・こがねもちが上位
同じ資料で品種別に見ると、令和2年産の水稲もち玄米の検査数量では、ヒメノモチが22,125トン(約13%)、こがねもちが14,311トン(約8%)、みやこがねもちが4,702トン(約3%)となっています。
| 品種 | 検査数量 | 割合 |
|---|---|---|
| ヒメノモチ | 22,125トン | 約13% |
| こがねもち | 14,311トン | 約8% |
| みやこがねもち | 4,702トン | 約3% |
| 水稲もち玄米 全体 | 176,070トン | ― |
出典:米穀安定供給確保支援機構「もち米をめぐる状況」(令和3年11月)。資料:農林水産省「農産物検査結果」
上位の品種を合わせても全体の一部にとどまり、多くの品種が各地で作られていることがわかります。うるち米ほど一つの品種に集中していないのが、もち米の特徴といえそうです。
ここで気をつけたいのは、数量が多い品種ほどおいしい、という読み方をしないこと。作付の多さは、その地域の気候や栽培のしやすさ、用途など、いろいろな事情で決まります。品種の良し悪しを表す数字ではありません。
食感や加工への向き不向きを知りたいときは、その品種を育成・普及している道県の公式の品種紹介を確認するのが確実です。
道府県ごとに主力のもち米品種が違う
もち米の品種は、地域によって主力が違います。同じ資料では、令和2年産の道府県別の作付1位品種として、岩手ではヒメノモチ、宮城ではみやこがねもち、福島ではこがねもち、新潟ではこがねもち、千葉ではヒメノモチ、福岡ではヒヨクモチ、北海道では風の子もちが挙げられています。
これは、米穀機構が農林水産省の水稲の品種別作付動向をもとに作成したデータです。うるち米と同じく、もち米も地域の気候や栽培条件に合わせて品種が選ばれていると考えられます。寒い地域と暖かい地域で主力が分かれているのも、その表れといえるでしょう。
買い物でやりがちなのは、産地名だけを見て品種を想像してしまうこと。同じ県でも複数の品種が作られているので、産地と品種は必ずしも一対一ではありません。袋に品種名が書いてあれば、そちらを優先して確認しましょう。
うるち米の品種の選び方や、食味ランキングの読み方については、別の記事で詳しくまとめています。

シーン別|うるち米ともち米の違いを生かした選び方
毎日のごはんならうるち米、粘りの好みは品種で調整
毎日食べるごはんは、うるち米を選ぶのが基本です。ほどよい粘りと、一粒ずつのほぐれやすさのバランスが、いろいろなおかずに合わせやすいからです。
ここで思い出したいのが、うるち米の中にも粘りの幅があるという話です。農林水産省の説明どおり、うるち米のアミロースの割合は品種や生育条件で変わり、アミロースが少ないほど粘りが強くなります。つまり、もっともちっとしたごはんが好きなら、もち米を混ぜなくても、粘りが強いとされるうるち米の品種を選ぶという手があるわけです。
やりがちなのは、粘りを出したいからと水を多めにして炊くこと。水の量で調整すると、粘りというよりやわらかさが増すだけで、べたついた仕上がりになりがちです。粘りの好みは水加減より、お米の選び方で調整するほうが筋がいい、と覚えておきましょう。
品種を選ぶときは、道県や産地の公式の品種紹介で、粘りが強い、あっさりしているなどと紹介されている表現を手がかりにすると、好みに近いお米を見つけやすくなります。
お祝いのお赤飯・おこわ・お餅はもち米
行事や季節のお祝いで作る赤飯、おこわ、お餅には、もち米を使います。もち米の用途としてもちや赤飯が挙げられていることは、米穀安定供給確保支援機構の資料のとおりです。
もち米は粘りが強く、炊飯後、冷めても比較的かたくなりにくいのが特徴とされています。お祝いの席では、作ってから食べるまでに時間があくことも多いので、この性質が向いているといえます。重箱に詰めて持っていく、親せきの集まりに差し入れる、といった場面でも扱いやすいお米です。
よくある失敗は、行事の前日にあわててもち米を買い、浸水や水加減の確認をしないまま炊いてしまうこと。浸水不足で芯が残ったり、白米の目盛りで炊いてやわらかくなりすぎたりと、前の章で触れた失敗が重なりやすくなります。
行事でもち米を炊く予定があるなら、前もって炊飯器の取扱説明書でおこわの目盛りとコースを確認しておきましょう。浸水の時間も見込んで、段取りを組んでおくと当日あわてずに済みます。
和菓子を手作りするなら、粉の原料から逆算する
だんごや大福などの和菓子を手作りするなら、作りたいお菓子から粉を逆算するのがいちばん確実です。歯切れのいい食感ならうるち米の上新粉、のびのあるもちもち食感ならもち米の白玉粉や餅粉、粒感を残したいならもち米の道明寺粉、という整理です。
東海農政局の資料では、上新粉はだんご、柏餅、草餅、ういろう、かるかん饅頭、白玉粉は白玉だんご、求肥、大福餅、しるこ、餅粉は大福餅、求肥、しるこ、最中、道明寺粉はさくら餅やおはぎに使われると紹介されています。作りたいお菓子の名前がどの粉の用途に入っているかを見れば、選ぶべき粉がわかります。
やりがちなのは、家にある米粉で何とかしようとすること。パンやお菓子用の米粉と、和菓子用の上新粉や白玉粉では、原料も製法も目的も違います。名前が同じ米粉でも、仕上がりが大きく変わる可能性があります。
迷ったら、レシピに書かれている粉の名前をそのまま買うのが近道です。原材料表示でうるち米かもち米かも、あわせて確認しておきましょう。
冷めてから食べるおにぎりやお弁当で迷ったら
おにぎりやお弁当のように冷めてから食べるごはんでは、冷めたときのかたさが気になるところです。ここでも、うるち米ともち米の違いが選び方のヒントになります。
もち米は冷めても比較的かたくなりにくく、うるち米もアミロースの割合が低いものほど冷めてもかたくなりにくいとされています。ふだんのおにぎりならうるち米で十分ですが、冷めてもかたくなりにくい品種を選ぶ、あるいはおこわをおにぎりにする、という選択肢もあります。
注意したいのは、ふだんのおにぎりのごはんに、冷めてもやわらかいからともち米を多く混ぜすぎること。粘りが強くなりすぎて、手にくっついて握りにくくなったり、具とのなじみが悪くなったりすることがあります。
毎日のごはん:うるち米。粘りの好みは品種で選ぶ
赤飯・おこわ・お餅:もち米。炊飯器はおこわの目盛りで
だんご・柏餅:うるち米の上新粉
白玉だんご・大福・求肥:もち米の白玉粉・餅粉
さくら餅・おはぎ:もち米の道明寺粉、またはもち米を炊いて
冷めてから食べるごはん:冷めてもかたくなりにくいとされる品種や、おこわを選ぶ
まとめ|違いはデンプン、選び方は作る料理から
うるち米ともち米は、デンプンの中身という一点の違いから、見た目、粘り、冷めたときのかたさ、向いている料理、米粉の種類までが分かれていきます。まずは家にあるお米の袋と、手元の炊飯器の取扱説明書を開いて、おこわの目盛りがどこにあるかを確かめてみてください。次にお赤飯やだんごを作るとき、どのお米、どの粉を選べばいいかが自然にわかるようになっているはずです。
※統計や品種の情報は公表時点のものです。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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