「お正月でもないけれど、少しだけお餅が食べたい」「餅つき機は持っていないけれど、炊飯器で作れないかな」。そう思ったことはありませんか。臼と杵がなくても、家庭の炊飯器とすり鉢があれば、つきたてに近いやわらかいお餅は作れます。
結論から言うと、押さえるのは3つです。うるち米ではなくもち米を使うこと、水は白米より控えめにすること、そして炊き上がった直後の温かいうちにつぶすこと。この3つのどれかが崩れると、粒が残る、べちゃつく、固くてまとまらない、といった失敗につながります。逆に言えば、なぜそうなるのかがわかっていれば、失敗の大半は前もって防げるんですよ。
この記事では、もち米が餅になる仕組みから、合数ごとの水加減、季節と炊飯器のタイプで変わる浸水時間、炊き上がりから丸めるまでの手順、よくある失敗の原因と直し方、もち米の品種の選び方、余ったもち米の保存と白米に混ぜる使い方までを、順番に解説していきます。
・うるち米では餅にならず、もち米なら炊飯器で餅にできる理由
・もち米の水加減(1合180~200ml)と、季節で変わる浸水時間の目安
・炊き上がりからすり鉢でつぶして丸めるまでの手順と、べちゃつく・固いときの直し方
・もち米の品種の違いと、余ったもち米の保存・白米に混ぜる使い方
炊飯器で餅は作れる?「炊く」と「つく」を分けて考えると失敗しない

餅つき機がなくても、炊飯器とすり鉢があれば餅になる
炊飯器で餅は作れます。ただし、炊飯器だけで餅が完成するわけではありません。炊飯器が受け持つのは「もち米を炊く」ところまでで、そこから先の「つく」工程は、すり鉢とすりこぎで手作業を行う、という2段構えで考えるとわかりやすいんです。
もともと餅は、蒸したもち米を臼に入れ、杵でついて粒をつぶしながら練り上げたものです。蒸すか炊くかの違いはあっても、「加熱してやわらかくしたもち米を、熱いうちにつぶしてひとかたまりにする」という本質は変わりません。家庭向けのレシピでも、もち米2合を通常炊飯し、炊き上がった直後に温かいまますり鉢へ移して、すりこぎで粒がなくなるまでつぶす方法が紹介されています(炊飯器で作るお餅のレシピ)。
やりがちなのは、「炊飯器で炊けば、そのまま餅っぽくなるだろう」と期待して、炊き上がったもち米をしゃもじで混ぜるだけで終わってしまうことです。それはおいしい「もち米ご飯」ではあっても、餅の伸びやなめらかさにはなりません。粒をつぶす工程を省くと、どうしても粒の形が残ります。
道具は、すり鉢とすりこぎ、それに手を濡らすための水があれば足ります。すり鉢がない場合は、厚手のボウルと、先の丸い麺棒などで代わりにする方法もありますが、すり鉢の内側の溝は粒をとらえてつぶしやすいので、あるならすり鉢を使うのがおすすめです。
うるち米では餅にならないのは、デンプンの中身が違うから
餅には、ふだん食べている白米(うるち米)ではなく、もち米を使います。理由はお米に含まれるデンプンの種類の違いにあります。
お米のデンプンは、アミロースとアミロペクチンという2種類の成分でできています。うるち米はアミロペクチンとアミロースがおおよそ8対2の割合なのに対して、もち米はそのほとんどがアミロペクチンだとされています。アミロペクチンは枝分かれの多い構造をしていて、加熱すると強い粘りを生みます。もち米を炊くと、白米とは比べものにならないほどもっちりと粘るのはこのためです。
うるち米でも、炊いたご飯をつぶせば「つぶしたご飯」にはなります。ただ、アミロースが含まれている分だけ粘りが弱く、引っぱっても伸びず、ぼそっとした口当たりになりやすいんです。きりたんぽや五平餅のように、うるち米をつぶして使う郷土料理もありますが、あれは「餅とは別の食感」を楽しむもの。お餅らしい伸びを求めるなら、もち米を選ぶのが前提になります。
買うときは、袋の名称の欄に「もち精米」などと書かれているか、品名に「もち米」とあるかを確認しましょう。白米の袋と見た目が似ているので、棚から取るときに取り違えないよう注意してください。
アミロペクチン:枝分かれの多いデンプン成分。加熱すると強い粘りを生む。もち米のデンプンはそのほとんどがアミロペクチンとされる。
アミロース:直鎖状のデンプン成分。多いほどご飯はあっさり・かための傾向になる。うるち米はアミロペクチンとアミロースがおおよそ8対2とされる。
なめらかに仕上げるか、粒を残すかで「つき方」を決める
すり鉢でどこまでつぶすかは、作りたいものに合わせて決めて大丈夫です。粒が見えなくなるまでしっかりつぶせば、なめらかで伸びのある「つきたて餅」に近づきます。粒が半分ほど残る程度で止めれば、おはぎやぼたもちのような、もち米の粒感を楽しむ仕上がりになります。
こうした違いが出るのは、つぶすほど粒の表面だけでなく内部のアミロペクチンまで外に出て、全体がひとつながりの粘りになるからです。逆に、つぶし方が浅いと粒の芯の部分が形を保ったままなので、もちもちしながらもツブツブした食感になります。
やりがちな失敗は、「なめらかな餅にしたい」のにつぶし始めるのが遅れて、途中でもち米が冷めてしまうことです。冷めると粘りが落ち着いて固まりはじめ、いくら力を入れても粒が残ります。なめらかさを求める場合ほど、炊き上がりから時間を置かずに作業に入るのが大切です。
家族で食べる場合は、最初にすべてなめらかにしてから、一部をきな粉やあんこ用に、残りを大根おろし用に分けると、ひとつの炊飯で何通りも楽しめます。トッピングの例としては、あんこ、大根おろし、きな粉などがレシピで挙げられています。
もち米の水が白米より少ないのはなぜ?1合180~200mlの意味
専用の目盛りがあるなら、まず目盛りに合わせる
もち米を炊くときの水加減は、炊飯器の内釜に「おこわ」「もち米」などの専用目盛りがあれば、その目盛りどおりに合わせるのがいちばん確実です。専用の目盛りがある場合はその通りに合わせることで失敗が減る、と解説されています(もち米の炊き方の解説)。
なぜ専用目盛りが優先なのかというと、炊飯器は機種ごとに加熱のしかたや蒸気の逃がし方が違い、それに合わせて内釜の目盛りが設計されているからです。同じ「1合」でも、どれだけの水で炊けばちょうどよく仕上がるかは機種によって変わります。目盛りはその機種にとっての「正解の水位」なので、一般的な目安より信頼できるんですね。
やりがちなのが、白米の目盛りに合わせてもち米を炊いてしまうことです。白米の目盛りはうるち米用なので、もち米には水が多すぎます。もち米は吸水しやすく粘りが強いため、白米と同じ水量だとやわらかくなりすぎて、べちゃっとした炊き上がりになりがちです。
内釜をのぞいて、白米・無洗米・玄米などの目盛りに並んで「おこわ」や「もち米」の線があるかを確認してみてください。見当たらない場合や、表記の意味がはっきりしない場合は、取扱説明書の「炊飯できるメニュー」や「水加減」のページを見ると、その機種での扱い方が書かれています。
目盛りがないときは合数ごとのmlで量る
専用目盛りがない炊飯器の場合は、水を計量カップで量って入れます。目安はもち米1合につき180~200mlです。2合なら360~400ml、3合なら540~600mlという計算になります。
もち米1合の体積はおよそ180mlなので、この目安は「もち米と同じくらいの量の水、もしくはそれよりほんの少し多い程度」ということです。白米を炊くときよりも水が控えめになっているのは、もち米が浸水の段階でしっかり水を吸い込むため、炊くときに足す水をそのぶん減らしても、中まで火が通るからです。
台所でやりがちなのは、「少し固めが好きだから」と目安より大きく水を減らしたり、反対に「やわらかい餅にしたいから」と多めに入れたりすることです。水を減らしすぎると芯が残り、増やしすぎるとべちゃついて、どちらもすり鉢でつぶしにくくなります。最初は目安の範囲内で炊いて、仕上がりを見ながら次回の水量を少しずつ調整するのが確実です。
水は内釜に直接注ぐより、計量カップで量ってから入れたほうが誤差が出ません。また、浸水したあとのもち米は水気をしっかり切ってから計量の水を加えること。ここで水切りが甘いと、目安どおりに量っても実際の水が多くなってしまいます。
| 項目 | 1合 | 2合 | 3合 |
|---|---|---|---|
| 水の量の目安 | 180~200ml | 360~400ml | 540~600ml |
| 専用目盛りがある場合 | 「おこわ」「もち米」の目盛りを優先 | ||
| 向いている使い方 | 少量のもち米ご飯 | 家庭で作る餅の基本量 | おこわ・赤飯をまとまった量で |
餅にするなら「目盛りより少し下」が基準になる理由
餅を作るためにもち米を炊く場合は、もち米ご飯として食べるときよりも、さらに水をわずかに控える方法が紹介されています。炊飯器で餅を作るレシピでは、洗ってざるに上げたもち米2合を内釜に入れ、水を2合の目盛りより少し下になるまで加えて平らにならし、通常炊飯するという手順になっています。
水を控える理由は、つぶす工程にあります。水分が多いもち米はやわらかすぎて、すりこぎでつぶすとべたべたと手や道具にまとわりつき、形がまとまりにくくなります。少し水を控えて炊くと、粒にほどよい弾力が残り、つぶしたときに粘りがひとつにまとまって、丸めやすい生地になるんです。
やりがちなのは、白米の目盛りから大きく下げすぎてしまうこと。下げすぎると今度は芯が残ってつぶれにくくなります。「わずかに下」がポイントで、目盛りの線と水面がほぼ重なるか、ほんの少し下に来る程度を意識してください。
なお、炊飯器にもち米用の目盛りがあるなら、そちらに合わせて水分量を調整し、おこわモードがあるならそちらの利用がすすめられています。白米の目盛りを基準にするのは、専用の目盛りもコースもない場合の方法と考えておくと迷いません。
浸水は何時間必要?季節と炊飯器のタイプで変わる理由

春夏は1~1.5時間、秋冬は2~3時間が目安
もち米を炊く前の浸水時間は、季節によって変わります。目安は春夏で1~1.5時間、秋冬で2~3時間とされています(もち米・おこわの浸水時間の解説)。
季節で差がつくのは、水温によってお米が水を吸う速さが変わるからです。水温が高い夏場は吸水が早く進み、水が冷たい冬場はゆっくりとしか進みません。同じ時間浸けても、冬のほうが中心まで水が届きにくいので、そのぶん長めに浸ける必要があります。
台所でありがちなのが、夏に覚えた浸水時間を冬にもそのまま使ってしまうことです。冬の冷たい水で短時間しか浸けないと、表面はふやけていても中心が乾いたまま炊くことになり、芯の残った固いもち米になります。季節が変わったら、浸水時間も見直すのが基本です。
浸水がすんだかどうかは、もち米の色で見分けられます。浸水前は半透明だった粒が、全体に白っぽく不透明になっていれば、中まで水が回ったサインです。粒の中心にまだ透明な部分が残っているようなら、もう少し時間を延ばしましょう。白米の浸水の理屈は、こちらの記事でも詳しく解説しています。

圧力炊飯器とIH・ガス釜で浸水時間が違う理由
浸水時間は、使う炊飯器のタイプでも変わります。目安として、圧力炊飯器は1時間程度、IH炊飯器やガス釜は2時間以上とされています。
この差は、炊くときの「水の押し込み方」の違いから来ています。圧力炊飯器は、釜の中に圧力をかけることで沸点を上げ、高い温度と圧力で水分をお米の内部に押し込むように炊き上げます。そのため、浸水が短めでも中まで火と水が通りやすいんです。一方、IHやガス釜は圧力をかけない分、炊く前に十分に吸水させておかないと、中心まで水が行き届きにくくなります。
やりがちなのは、「最近の炊飯器は浸水しなくていい」という話を聞いて、IH炊飯器でももち米をすぐに炊いてしまうこと。白米の通常コースには浸水工程が組み込まれている機種も多いのですが、もち米をおこわコース以外で炊く場合や、圧力のない機種で炊く場合は、その工程が足りないことがあります。
手持ちの炊飯器が圧力式かどうかは、取扱説明書の仕様の欄や、本体の型番の説明で確認できます。わからなければ、迷わず長めの浸水をとっておくほうが安全です。浸しすぎによるべちゃつきは水切りで調整できますが、浸水不足による芯は炊いた後では直しにくいからです。
| 条件 | 浸水時間の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 春夏 | 1~1.5時間 | 水温が高く吸水が早い |
| 秋冬 | 2~3時間 | 水温が低く吸水がゆっくり |
| 圧力炊飯器 | 1時間程度 | 圧力で水分を押し込める |
| IH・ガス釜 | 2時間以上 | 炊く前の吸水に頼る |
| 時間がないとき | 最短でも15~30分 | 表面だけでも吸水させる |
出典:もち米・おこわの炊き方の解説ほかをもとに編集部で整理。機種の案内がある場合はそちらを優先。
実は「浸水せずにざる上げ30分」で炊くレシピもある
意外と知られていないけれど、餅を作る目的でもち米を炊く場合、長時間の浸水をせずに炊くレシピもあります。先ほど紹介した炊飯器の餅のレシピでは、もち米を洗ってざるに上げ、30分ほど置いて水気をよく切ってから内釜に入れ、目盛りより少し下の水で通常炊飯する手順になっています。
これは一見、「浸水は長めに」という話と矛盾するように見えますよね。ただ、ここには理屈があります。もち米は白米より吸水しやすく、洗っている間やざるに上げて置いている間にも、粒の表面についた水を吸い込んでいきます。さらに、白米の通常コースには炊飯の最初に吸水させる工程を持つ機種が多いので、ざる上げのあとに水を加えて炊けば、炊飯器の中でも吸水が進むわけです。
また、餅にする場合は最終的にすべての粒をつぶしてしまうので、おこわのように「粒の一つひとつがふっくら仕上がっているか」をそこまで厳しく問われません。水を控えめにして弾力を残したいという狙いもあるため、長時間浸けて水を吸わせすぎないほうが、むしろ扱いやすい生地になることもあります。
注意したいのは、この方法は冬場の冷たい水で洗った場合や、乾燥が進んだもち米の場合に、芯が残りやすくなることです。初めて作るときは、季節の目安どおりに浸水する方法と、ざる上げの方法のどちらかを決めて、仕上がりを比べながら自分の炊飯器に合う方を選ぶと安心です。
古いもち米は浸水を長めに、ただし浸しすぎに注意
買ってから時間がたったもち米や、古米のもち米は、ふだんより長めに浸水させるのがすすめられています。時間がたったお米は水分が抜けて乾燥しているため、同じ時間浸けても吸水が追いつかないことがあるからです。
お米は精米してから日がたつほど、表面から少しずつ水分が抜け、内部も固く締まっていきます。そこへ急に水を吸わせると、外側だけがふやけて中心が固いまま残ったり、吸水のむらでひび割れが起きたりします。時間をかけてゆっくり水を行き渡らせることで、中心まで均一にやわらかく炊き上がりやすくなります。
反対に、浸しすぎにも気をつけたいところです。浸水時間が長すぎると、もち米が必要以上に水を吸って、炊き上がりがべちゃつく原因になります。とくに夏場は、長く置きすぎると水がぬるくなり、においが出てしまうこともあります。
長めに浸水する日は、季節の目安の上限あたりで切り上げ、それでも足りないと感じたら、次回から少しずつ延ばす、というように調整するのが無難です。また夏場に長く浸ける場合は、冷蔵庫に入れて水温が上がらないようにすると安心です。
状況:冬の夜、思い立ってもち米を研ぎ、浸水を短く切り上げてIH炊飯器で炊いたら、粒の中心が白く固いまま残り、すり鉢でつぶしてもツブツブが消えない。
原因:水温が低い冬は吸水がゆっくりで、圧力のない炊飯器では炊く前の吸水不足が芯としてそのまま残る。
対策:秋冬は2~3時間、IH・ガス釜なら2時間以上の浸水を確保する。炊いてしまった後なら、少量の水を加えて5~10分ほど追加で加熱すると、やわらかさを取り戻せることがある。
炊飯器で餅を作る手順|もち米2合・約90分の流れ
もち米は丁寧に研ぎ、水気をしっかり切る
最初の工程は、もち米を研いで水気を切ることです。家庭で作りやすい量は、レシピでも紹介されているもち米2合。調理時間の目安は、ざる上げや炊飯の時間も含めて90分ほどです。
もち米は白米と同じように、表面のぬかや汚れを落とすために研ぎます。ただし、もち米は白米より割れやすく、水をよく吸うので、力を入れてゴシゴシこする必要はありません。たっぷりの水を注いでさっと混ぜ、最初の水はすぐに捨てる。そのあと指を立ててやさしくかき混ぜ、水を替えるのを数回くり返して、水が少し澄んできたら十分です。最初の水をすぐ捨てるのは、ぬかの溶けた水を吸わせないためです。
やりがちなのが、研いだあと水切りをおろそかにして、濡れたもち米をそのまま内釜に入れてしまうこと。もち米はよく吸水するので、表面に残った水も含めて炊くことになり、計った水の量と実際の水の量がずれてしまいます。もち米を浸水させる場合も、水気をしっかり切ることが大切だとされています。
ざるに上げたら、ときどきざるをゆすって、水が下に落ちるようにします。レシピのように30分ほど置けば、余分な水が十分に切れます。この間にすり鉢やすりこぎ、トッピングの準備をしておくと、炊き上がりからの作業がスムーズです。
通常炊飯でもいい。「おこわ」コースがあるならそちらを
水気を切ったもち米を内釜に入れ、水を加えて表面を平らにならしたら、炊飯をスタートします。炊飯コースは、炊飯器に「おこわ」「もち米」コースがあればそれを、なければ「炊き込み」コース、さらにどちらもなければ通常の白米コースで炊きます。
コースによって仕上がりが変わるのは、加熱のしかたが違うからです。おこわコースは、粘りの強いもち米に合わせて、水の量や加熱の強さ・時間がもち米向けに組まれています。炊き込みコースも、具材や調味料で水の対流が起きにくい状態を想定した加熱になっているので、もち米と相性がいいとされています。通常の白米コースでも炊けますが、その場合は加水量をやや少なめにするのがポイントです。
やりがちな失敗は、早炊きコースで炊いてしまうことです。早炊きは浸水や加熱の工程を短縮しているため、もち米の中心まで十分に水と熱が届かず、芯が残りやすくなります。急ぎたい気持ちはわかりますが、もち米には向きません。
水を入れたら、もち米の表面を手のひらで軽く押さえて平らにならしておきましょう。表面がでこぼこしていると、水面から顔を出した部分だけ乾いて、炊きむらの原因になります。コースの名前や選び方は機種ごとに違うので、迷ったら取扱説明書の「炊飯メニュー」のページを確認してください。
炊き上がったら、温かいうちにすぐすり鉢へ
炊き上がりのブザーが鳴ったら、すぐにもち米をすり鉢に移します。もち米ご飯として食べる場合は蒸らし10分が目安とされますが、餅にする場合は温度を優先し、炊き上がった直後に温かいまますり鉢に移す手順がレシピで紹介されています。
ここで急ぐ理由は、もち米の粘りが温度に左右されるからです。炊き上がった直後のもち米は、デンプンがやわらかくほどけていて、少しの力でつぶれ、粒どうしがくっついてひとつにまとまります。ところが温度が下がるにつれてデンプンが落ち着き、粒が固く締まって、つぶれにくくなっていきます。
台所でありがちなのが、炊き上がりに気づかず保温のまま置いておいたり、移す途中でほかの用事をはじめてしまったりして、もち米の温度を下げてしまうことです。保温中でも表面から乾燥が進むので、なめらかに仕上げたいなら、炊き上がり時刻に合わせて台所にいられるようにしておきましょう。
すり鉢とすりこぎは、事前に水で濡らしておくのが大切です。乾いたままだと、熱いもち米がすり鉢の内側にべったり張りつき、取り出すときに大きく残ってしまいます。濡らしておくことで表面に薄い水の膜ができ、もち米がはがれやすくなります。
すりこぎでつぶし、手水をつけて丸める
すり鉢に移したもち米は、すりこぎで上から押しつぶすようにして粒をつぶしていきます。すり鉢をゆっくり回しながら、まんべんなく押していくのがコツです。粒がなくなるまでつぶせば、なめらかなお餅になります。
すりこぎで「する」というより「押してつぶす」動きを意識すると、効率よく粒が壊れます。すり鉢の溝が粒を受け止めてくれるので、上から垂直に体重をかけると、横にこするよりも少ない力でつぶせるんです。途中でもち米がすりこぎにまとわりついてきたら、すりこぎの先を水で軽く濡らし直すと作業しやすくなります。
つぶし終わったら、手に水をつけて食べやすい大きさに丸めます。乾いた手で触るとすぐにくっつくので、ボウルに水を張って手元に置き、こまめに手を濡らしながら作業してください。ちぎるときは、親指と人差し指で輪をつくり、そこから絞り出すようにするときれいに分けられます。
なお、餅は喉に詰まりやすい食べ物です。小さな子どもや高齢の家族と食べるときは、ひと口で食べきれる小さめのサイズに丸め、よく噛んで食べるようにしましょう。
べちゃつく・固い・まとまらない…失敗はどこで起きている?
べちゃつくのは、水が多いか浸水が長すぎるか
炊き上がったもち米がべちゃっとして、すり鉢に移すとドロドロに広がってしまう。この失敗の原因は、ほとんどの場合、水が多すぎるか、浸水が長すぎるかのどちらかです。
もち米は白米より水を吸いやすく、アミロペクチンが多いので、水分が多いと粘りが強く出すぎて、粒の形を保てなくなります。白米の目盛りで炊いた場合や、研いだあとの水切りが甘かった場合、夏場に長時間浸けっぱなしにした場合などに起こりやすい失敗です。
炊き上がってべちゃついていたら、蒸らし後にフタを開けて5分置き、しゃもじでやさしく混ぜて水分を飛ばす方法が紹介されています。フタを開けることで内釜の中にこもっていた蒸気が逃げ、表面の余分な水分が飛んでいきます。このとき強くかき混ぜると、粒がつぶれてさらに粘りが出るので、底から大きく返すようにやさしく混ぜるのがポイントです。
餅にする場合は、多少べちゃついていても、つぶして丸める工程でごまかせることがあります。ただ、やわらかすぎると形が崩れやすいので、丸めたあとにきな粉をまぶすなど、表面に粉をつけてまとめると扱いやすくなります。次回は水を目安の少なめの側に寄せ、水切りをしっかり行いましょう。
芯が残って固いのは浸水不足、少量の水で追加加熱を
炊き上がったもち米を食べてみると、粒の中心が固く、ぽりっとした食感が残っている。これは浸水不足が主な原因です。
浸水が足りないと、もち米の中心まで水が届かないまま加熱が進みます。お米のデンプンは、水と熱の両方がそろってはじめてやわらかくなるので、水の届いていない中心部分は、熱が加わっても固いまま残ってしまうんです。冬場の冷たい水で浸水時間が短かったときや、早炊きコースで炊いたとき、圧力のない炊飯器で浸水をしなかったときに起こりやすくなります。
芯が残ったときは、少量の水を加えて5~10分ほど追加で加熱すると、やわらかさを取り戻せることがあるとされています。水はもち米の表面を湿らせる程度にとどめ、全体に回しかけてからフタをして加熱します。炊飯器に「再加熱」などの機能がない場合は、耐熱容器に移して、ラップをかけて電子レンジで温め直す方法もあります。
ただし、芯の残ったもち米は、追加加熱をしても完全には元に戻らないことがあります。とくに餅にする場合は、粒をつぶす工程で芯が残っているとどうしてもツブツブが残るので、浸水の段階でしっかり時間をとっておくのがいちばんの予防策です。
状況:炊き上がりのブザーに気づかず、保温のまましばらく置いてからすり鉢に移したら、いくら押しても粒が残り、ひとかたまりにならない。
原因:もち米の粘りは温度が高いうちに出やすく、冷めるにつれてデンプンが落ち着いて粒が固く締まる。保温中も表面の乾燥は進む。
対策:炊き上がり直後に、水で濡らしたすり鉢へ移してすぐにつぶしはじめる。炊き上がりの時間に台所にいられるよう、炊飯の開始時刻を逆算しておく。
冷めてからつぶすと、粒が残ってまとまらない
先ほどの失敗例のように、炊いてから時間がたったもち米をつぶそうとしても、粒が残ってなかなかまとまりません。これは「温度が下がったデンプンの性質」によるものです。
炊き上がった直後のもち米は、デンプンが水を抱え込んでやわらかくほどけた状態にあります。この状態なら、少し押すだけで粒が壊れ、中から出てきた粘りが周りの粒とくっついて、全体がひとつにつながります。ところが冷めていくと、デンプンがだんだん元の締まった状態に近づき、粒は固く、表面の粘りも弱くなります。こうなると、すりこぎで押しても粒が逃げてしまい、なかなかつぶれません。
もし少し冷めてしまった場合は、電子レンジで温め直してからつぶすと、ある程度はやわらかさが戻ります。ラップをかけて加熱し、温まったらすぐにすり鉢へ。ただし加熱しすぎると表面が乾いて固くなるので、様子を見ながら短めに温めてください。
作業に慣れないうちは、一度に全部をすり鉢に入れず、内釜に残りを入れたままフタをして保温しておき、半分ずつつぶしていく方法もあります。そうすれば、後半のもち米も温かい状態でつぶせます。
手や道具にくっつくのは、水が足りないサイン
つぶしている途中で、もち米がすりこぎにべったりまとわりついて離れない。丸めようとすると、手のひらにくっついて形が作れない。これは、道具や手の水分が足りないサインです。
炊いたもち米は粘りが強く、乾いた表面に触れると、そこにしっかり張りつきます。一方、表面に薄い水の膜があると、もち米と道具の間に水が入り込んで、くっつきにくくなります。すり鉢とすりこぎを水で濡らしておく、手に水をつけて丸める、というレシピの手順は、この性質を利用したものです。
やりがちなのが、くっつくのを嫌って手や道具をびしょびしょに濡らしすぎること。水が多すぎると、今度はもち米の表面が水っぽくなり、丸めたあとに形がだれたり、トッピングのきな粉がダマになったりします。手を濡らしたら、軽く振って水滴を落とす程度がちょうどいいんです。
丸める前に、まな板やバットに片栗粉やきな粉を薄く広げておくと、丸めたお餅を置いたときにくっつかず、取り出しやすくなります。とくに大根おろしで食べる場合は、片栗粉を使うと味の邪魔になりにくくおすすめです。
どのもち米を選ぶ?北海道の2品種に見る「固くなりにくさ」
はくちょうもちは平成元年から続く北海道の主力品種
もち米にも、うるち米と同じように品種があります。スーパーで見かける機会の多い産地のひとつが北海道で、その代表的な品種が「はくちょうもち」です。はくちょうもちは耐冷性と品質(白度)に優れた品種で、北海道のもち米の主力品種として平成元年(1989年)から採用されているとされています(北海道のもち米品種の解説記事)。
耐冷性が重視されるのは、北海道のような寒い地域では、夏の低温で稲が十分に実らない「冷害」が起こりやすいからです。寒さに強い品種であることは、安定して収穫できることにつながります。白度は、もち米の粒の白さのこと。もち米は粒全体が乳白色に見えるのが特徴なので、白さがそろっていることは見た目の品質に関わります。
はくちょうもちの特徴としてよく挙げられるのが、炊いたり餅にしたりしたあとも、粘りとやわらかさが長持ちすることです。赤飯、おこわ、餅、大福、おはぎなど、さまざまな料理に使われています。
家庭で炊飯器餅を作る場合も、作ってから少し時間をおいて食べることがあるなら、こうした「固くなりにくい」性質を持つ品種を選ぶと扱いやすくなります。袋に品種名が書かれていれば、選ぶときの手がかりにしてください。
風の子もちは粘り・コシ・きめの細かさが特長
北海道のもうひとつの代表的なもち米が「風の子もち」です。平成7年(1995年)から採用されている品種で、耐冷性、耐倒伏性、品質(白度)などに優れ、餅にしたときの粘り、コシ、きめの細かさが特長とされています。
耐倒伏性とは、稲が風雨で倒れにくい性質のことです。稲が倒れると、穂が地面について品質が落ちたり、収穫しにくくなったりします。倒れにくいことは、品質のそろったもち米を安定して収穫できることにつながります。
食感の面では、「コシ」と「きめの細かさ」という表現に注目してください。コシは噛んだときの弾力、きめの細かさは、つぶしたときの口当たりのなめらかさに関わる言葉です。餅は粒をつぶして作るので、生地のきめが細かいと、つきたてのなめらかな口当たりになりやすいんですね。
はくちょうもちと同じく、赤飯、おこわ、餅、大福、おはぎなどに使われています。どちらの品種がよいということではなく、どちらも餅やおこわ向けに選ばれてきた品種です。手に入りやすいほうを選んで大丈夫です。
「硬化性が低い」とは、つきたてのやわらかさが続きやすいこと
もち米の品種の説明でよく出てくる言葉が「硬化性」です。硬化性とは、炊飯したり餅にしたりしたあとの、硬くなりやすさのこと。はくちょうもちと風の子もちに共通する特徴として、硬化性が低く、加工直後のやわらかさや粘りが長時間維持されることが挙げられています。
餅が時間とともに固くなるのは、加熱でほどけたデンプンが、冷めるにつれて少しずつ締まった状態に戻っていくためです。硬化性の低い品種は、この戻りがゆるやかなので、つきたてに近いやわらかさが続きやすい、ということになります。
家庭での炊飯器餅でいえば、食べる直前に作れる場合は、品種の違いはそれほど気にしなくてかまいません。一方、少し前に作っておいて食卓に出したい、お弁当やおやつに持たせたい、といった場合には、硬化性の低い品種を選んでおくと、食べるときの固さの差を感じにくくなります。
品種名が袋に書かれていない場合もありますが、その場合は産地や名称の欄を見て、もち米であることを確認できれば十分です。品種の違いや食味評価の読み方は、こちらの記事でも解説しています。

| 項目 | はくちょうもち | 風の子もち |
|---|---|---|
| 採用年 | 1989年(平成元年) | 1995年(平成7年) |
| 栽培面の特性 | 耐冷性・品質(白度)に優れる | 耐冷性・耐倒伏性・品質(白度)に優れる |
| 食感の傾向 | 粘りとやわらかさが長持ちする | 餅にしたときの粘り・コシ・きめの細かさ |
| 硬化性 | 低い | 低い |
| 主な用途 | 赤飯、おこわ、餅、大福、おはぎなど | |
余ったもち米はどうする?保存と白米に混ぜる使い方
もち米も22℃以下・密閉が基本、置き場所は野菜室
餅を作ったあと、袋に残ったもち米の保存も気になるところです。もち米も白米と同じく、22℃以下での保存が必須とされ、置き場所のおすすめは冷蔵庫、とくに野菜室だとされています(もち米の保存方法の解説)。
温度が大事なのは、お米が生きた穀物で、温度が高いほど酸化や劣化が進みやすいからです。精米したお米は、表面を守っていたぬか層が取り除かれているので、空気や湿気の影響を受けやすくなっています。温度が高い場所に置くと、においがついたり、風味が落ちたりしやすくなります。野菜室は冷蔵室より温度がやや高めで、乾燥しすぎず、お米の保存に向いた環境とされています。
やりがちなのが、袋の口を輪ゴムで留めただけでシンク下やコンロの近くに置いておくことです。シンク下は湿気がこもりやすく、コンロ周りは調理の熱で温度が上がります。お米が空気を吸わないよう、必ず密閉容器で保管することが大切だとされています。
もち米は白米ほど頻繁に使わないぶん、つい長く置きっぱなしになりがちです。ペットボトルやチャックつきの保存袋に小分けして、野菜室に立てて入れておくと場所もとりません。お米の保存場所と容器の選び方は、こちらの記事も参考にしてください。

精米後は夏2週間、冬1~2ヶ月で使い切る目安
もち米はどれくらいで使い切ればいいのでしょうか。目安として、未開封のもち米は春夏で約1ヶ月、秋冬で約2ヶ月とされています。冷蔵庫で保存する場合は、精米年月日から約2ヶ月が目安で、精米してから夏場は2週間、冬場は1~2ヶ月を目安に使い切るのがおすすめとされています。
季節によって目安が変わるのは、先ほどの温度の話と同じ理由です。夏は気温が高く、湿気も多いので、劣化が早く進みます。とくに夏場は、目安よりも早めに食べ切るのがおすすめだとされています。
ここで見落としがちなのが、目安の起点が「買った日」ではなく「精米年月日」だということ。袋の表示を見ると、精米年月日が書かれています。買った時点ですでに精米から日数がたっていることもあるので、袋を開けたら精米年月日を確認し、そこから逆算して使い切る計画を立てましょう。
もち米は、餅やおこわのほか、白米に混ぜて炊く使い方もあるので、使い道を決めておくと期限内に使い切りやすくなります。少量ずつしか使わない家庭なら、小さめの袋を選ぶのも手です。
もち米の保存は「22℃以下・密閉・野菜室」が基本。使い切りの目安は精米年月日から数え、精米後は夏場2週間、冬場1~2ヶ月が目安とされています。開封したら精米年月日を確認し、餅・おこわ・白米に混ぜる使い方を組み合わせて、早めに使い切りましょう。
白米に混ぜるなら白米3にもち米1、水はやや少なめ
余ったもち米の使い道として手軽なのが、ふだんの白米に混ぜて炊く方法です。もち米と白米を組み合わせて炊く場合、基本となる割合は白米3に対してもち米1が目安で、水は通常よりやや少なめに調整するのがポイントだとされています(もち米と白米を混ぜる炊き方の解説)。
もち米を混ぜると、アミロペクチンの割合が増えるので、ご飯全体にもっちりとした粘りが加わります。冷めても固くなりにくくなる傾向があるので、おにぎりやお弁当のご飯にも向いています。水を少なめにするのは、もち米が白米より吸水しやすく、白米と同じ水量だとやわらかくなりすぎるからです。
やりがちなのが、もち米の割合を増やしすぎてしまうこと。もち米が多いほど粘りは増しますが、そのぶん白米の目盛りでは水が多すぎることになり、べちゃつきやすくなります。最初は目安の割合で炊いて、好みに合わせて調整していくのが確実です。
混ぜて炊く場合は、もち米と白米を一緒に研いで、白米の目盛りよりわずかに少なめの水で炊けば大丈夫です。浸水時間は白米に合わせつつ、冬場は長めにとっておくと、もち米の芯が残りにくくなります。
少量派・家族派・おこわ派、それぞれの使い分け
炊飯器でもち米を使うときは、作る量と食べ方に合わせて使い方を変えると無駄が出ません。読者のタイプ別に考えてみましょう。
少しだけ餅が食べたい少量派の人は、もち米2合で作るのが基本です。炊飯器には炊ける最少量が決まっていて、それより少ないと水の対流がうまく起こらず、炊きむらが出やすくなります。取扱説明書の「炊飯容量」を確認し、最少量を下回らないようにしましょう。食べきれない分は、もち米として炊く前の段階で残しておき、白米に混ぜる使い方に回すのがおすすめです。
家族みんなで楽しみたい家族派の人は、2合で炊いた餅を、なめらかにつぶしたものと粒を残したものに分けて、あんこ、大根おろし、きな粉などで食べ比べると楽しめます。ひとつの炊飯で何通りもの食べ方ができるのが、炊飯器餅の良さです。
おこわや赤飯も作りたいおこわ派の人は、炊飯器のおこわコースを活用しましょう。餅にする場合と違って、おこわは粒の形を残して食べるので、浸水を季節の目安どおりにしっかりとり、専用目盛りで炊くのが基本です。蒸らし10分も忘れずに。
まとめ
最初の一歩は、内釜に「おこわ」「もち米」の目盛りがあるかを確かめることです。目盛りがあればそれに合わせ、なければ2合の目盛りより少し下の水で炊き、炊き上がりの時間に台所に立てるよう段取りしておきましょう。熱いうちにつぶせば、家庭の炊飯器でもつきたてに近いお餅が楽しめます。
※炊飯器のコース名や目盛り、最少炊飯量は機種によって異なります。最新情報は各メーカーの取扱説明書・公式サイトでご確認ください。

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