まだ夏の暑さが残るころに、お米売り場で「新米」の札を見かけて「もう新米?ちょっと早すぎない?」と首をかしげたことはありませんか。その多くが、今回のテーマである早場米(はやばまい)です。
結論からいうと、早場米とは九州や四国など比較的あたたかい地域で、7月下旬ごろから出荷されるお米のことです。秋に収穫される一般的な新米より一足早く台所に届く、いわば「夏の新米」。特定の品種の名前ではなく、出回る時期と産地の条件で呼ばれている言葉なんですよ。
この記事では、なぜ暖かい地域では夏のうちに収穫できるのかという栽培の理屈から、宮崎県産コシヒカリや福岡県の元気つくしといった品種の公式情報、「新米」と表示できる条件、そして水分の多い新米をべたつかせない水加減と研ぎ方まで、順を追って説明していきます。袋を手に取ったとき、どこを見て、どう炊けばいいかがわかるようになりますよ。
・早場米の意味と、秋の新米との違い
・九州・四国で夏に収穫できる栽培の理由と主な産地
・早場米に関わる品種と、「新米」と表示できる条件
・水分の多い新米をべたつかせない水加減と研ぎ方
早場米とは?7月下旬から届く「夏の新米」の正体

九州・四国から7月下旬ごろに届く、一足早い新米のこと
早場米は、九州や四国など相対的に温暖な地域で、7月下旬ごろから出荷されるお米を指します。秋ごろに収穫される一般的な新米より早く消費者に届くのが、いちばんの特徴です。
なぜそんなに早いのかというと、暖かい地域では春先から稲が育つ条件が整うため、田植えを早めに始められるからです。田植えが早ければ、そのぶん穂が出る時期も実る時期も前にずれて、夏のうちに刈り取りまで進められます。
代表格としてよく名前が挙がるのが宮崎県産のコシヒカリで、2026年産も首都圏では7月下旬から店頭に並び始めたと報じられています。お米売り場で夏に見かける「新米」は、こうした産地から届いたものが中心と考えてよいでしょう。
台所で気をつけたいのは、「早場米」という言葉を見ただけで安心しないことです。袋の表示で産地と品種、それから精米年月日を確かめれば、いつ精米されたお米なのかがはっきりします。言葉の印象より、表示の中身で選ぶのがコツですよ。
「早場米」は品種名ではなく、時期と産地で呼ばれる通称
ここは意外と誤解されやすいところですが、早場米は「コシヒカリ」や「元気つくし」のような品種名ではありません。早い時期に出荷されるお米をまとめて呼ぶ通称として使われている言葉です。
理由は単純で、同じコシヒカリでも、暖かい地域で早く植えれば夏に収穫でき、北の地域で普通の時期に植えれば秋の収穫になるからです。品種そのものではなく「どこで・いつ育てたか」によって早場米になるかどうかが決まる、というわけですね。
やりがちなのが、「早場米という種類のお米がある」と思い込んで、毎年同じ名前を探してしまうケースです。実際の売り場では、袋に大きく書かれているのは産地と品種名で、早場米という文字はポップや売り場の案内に添えられている程度、ということも少なくありません。
選ぶときは、袋の表示にある産地と品種を確認し、そのうえで「これは夏に届いた早い時期の新米なんだな」と読み解く順番がおすすめです。品種の特徴は、育成した県や産地の公式紹介を見るとブレがありません。
秋の新米との違いは「育つ季節」と「届く時期」
早場米と秋の新米は、どちらもその年に収穫されたお米です。違いは、稲が育つ季節と、私たちの手元に届く時期にあります。
早場米は春から夏にかけて育ち、真夏に実って出荷されます。いっぽう一般的な新米は、夏に穂が出て秋に実り、秋ごろから出回ります。育つ季節がずれるため、店頭に並ぶ時期にもおよそひと季節ほどの差が生まれるのです。
台所での失敗につながりやすいのは、「早場米は特別なお米だから炊き方も特別」と考えすぎることです。早場米も収穫したての新米なので、炊き方の考え方は秋の新米と同じ。新米らしく水分を多く含んでいる点に気を配れば十分です。
夏から秋にかけては、早場米と前年産のお米が同じ売り場に並ぶ時期でもあります。迷ったら、袋の産年や精米年月日で「今年のお米かどうか」を確かめましょう。水加減の詳しい話は、このあと炊き方の章でまとめて説明します。
早場米=九州や四国など温暖な地域で7月下旬ごろから出荷される、一足早い新米の通称。
早期栽培=田植えなどの作業を通常より早い時期に行い、収穫を前倒しする栽培のやり方。
早生(わせ)=ほかの品種より短い期間で実る性質をもつ品種のこと。
なぜ九州・四国のお米は夏に届く?台風より先に刈り取る栽培の知恵
暖かさが田植えを前倒しにしてくれる
九州や四国で夏のうちにお米が穫れる一番の理由は、気候の暖かさです。春の早い時期から田植えができるので、稲の成長のスタートそのものが前に動きます。
稲は寒さに弱く、気温が低いうちに田植えをしても順調には育ちにくいとされています。暖かい地域ではその心配が少ない時期が早く訪れるため、ほかの地域より前倒しで作業を始められるのです。福岡県農林業総合試験場の資料でも、早期栽培では種まきが3月下旬、田植えが4月中~下旬という作業の目安が示されています(福岡県農林業総合試験場の資料)。
「暖かいところは稲がたくさん育つから早いんでしょう?」と思われがちですが、ポイントは育つ速さより「始める時期」です。スタートが早いぶん、ゴールである収穫も早くなる、という順番で考えると理解しやすいですよ。
ちなみに、同じ県の中でも普通の時期に田植えをする田んぼがあり、その場合は秋の収穫になります。産地名だけで早場米と決めつけず、売り場に並ぶ時期とあわせて見るのが正確です。
9月の台風シーズンより先に刈り取るという知恵
早場米が生まれたもう一つの背景が、台風です。早く作付するのは、9月の台風シーズンより前に収穫を終えられるようにするためとされています。
九州や四国は、夏の終わりから秋にかけて台風の通り道になりやすい地域です。実ったお米が重くなった稲は、強い風雨を受けると倒れたり傷んだりしやすいとされます。だからこそ、台風が来る前に刈り取りを済ませてしまえば、その心配を減らせるわけです。
つまり早場米は、「早く売るため」だけに生まれたものではなく、その土地の気候に合わせて育て方を工夫した結果でもあります。ここを知っておくと、夏の新米を見る目が少し変わってきますよね。
台所目線でいえば、早場米が出回る時期は、前年に収穫されたお米からのバトンタッチの時期でもあります。前年産のお米が残っているなら、先にそちらを食べきってから早場米に切り替えると、保存の場所もとらず、新米ならではの香りも楽しみやすくなります。
主な産地は高知・宮崎・鹿児島
早場米の主な産地としてよく挙げられるのは、高知県・宮崎県・鹿児島県です。いずれも温暖で、春先から田植えができる条件がそろっている地域です。
なかでも宮崎県産のコシヒカリは、毎年早い時期に首都圏の店頭に並ぶ早場米の代表格として報じられています。また、福岡県では早期栽培に向く品種の研究も行われてきました。地域ごとに気候に合わせた品種選びや栽培の工夫が積み重ねられているのです。
よくある勘違いが、「九州・四国のお米はすべて早場米」という思い込みです。同じ地域でも普通の時期に作付するお米は多く、秋に収穫されて出回ります。早場米かどうかは、地域だけでなく栽培の時期で決まると覚えておきましょう。
産地ごとの品種の特徴を知りたいときは、県の公式サイトや農業試験場の品種紹介を見るのが確実です。売り場のポップは短い言葉で書かれているので、気になる品種があれば県の紹介ページで食感の傾向を確かめてみてください。
| 項目 | 早場米 | 一般的な新米 |
|---|---|---|
| 出回る時期 | 7月下旬ごろから | 秋ごろから |
| 主な産地 | 高知・宮崎・鹿児島など温暖な地域 | 全国の産地 |
| 早く穫る理由 | 9月の台風シーズン前に収穫するため早く作付 | その地域の通常の作付時期で栽培 |
| 炊き方の考え方 | 新米として水分の多さに配慮 | 新米として水分の多さに配慮 |
夏の新米にはどんな品種がある?宮崎のコシヒカリから元気つくしまで

宮崎県産コシヒカリが代表格とされる理由
早場米の顔といえば、宮崎県産のコシヒカリです。通常のお米に先駆けて流通する早場米の代表格として、毎年の新米シーズンの幕開けに名前が挙がります。
コシヒカリは全国で広く作られている品種ですが、宮崎県では春先の早い時期に田植えをする早期栽培で育てられ、7月下旬ごろから出荷されます。品種としては秋に収穫されることの多いコシヒカリが、栽培の時期を前倒しすることで夏の新米になる、というわけです。粒がしっかりしているお米として紹介されることもあります。
ここでありがちなのが、「宮崎のコシヒカリと新潟のコシヒカリは別の品種」と思ってしまうことです。品種は同じコシヒカリで、違うのは育った土地と季節。ですから、食感の印象が産地で異なると感じても、それは品種の違いではなく環境の違いによるものと考えるのが自然です。
選ぶときは、袋の産地欄に「宮崎県」、品種欄に「コシヒカリ」とあるかを確認しましょう。コシヒカリという品種そのものの生い立ちは、別の記事で詳しくまとめています。

福岡県の元気つくしは「暑さに強い」品種
福岡県が開発した元気つくしは、早場米の文脈でもよく名前が出る品種です。福岡県の発表では、「暑さに強く、ごはんの粒がしっかりしていて、つやと粘りがあり、おにぎりにしてもおいしいお米」と紹介されています。
暑さに強いことが大事なのは、稲が実る時期に高温が続くと、お米の品質が落ちやすいとされているからです。暖かい九州で育てるうえで、この性質は大きな意味をもちます。元気つくしは平成21年から福岡県内限定で栽培されており、作付面積は7,500ヘクタールと県産米全体の約2割を占めるとされています。
よくある失敗は、「おにぎりにしてもおいしい」という紹介を見て、冷めたご飯の食べ方だけに使ってしまうことです。つやと粘りがある炊きたてもそのまま楽しめる品種なので、まずは白いご飯で食べてから、お弁当やおにぎりに広げていくと特徴がわかりやすいですよ。
元気つくしは、令和7年産の食味ランキングで特Aに格付けされ、令和5年産以来2年ぶりの受賞と福岡県が発表しています。評価は年ごとに変わるので、評価年とセットで覚えておくのがコツです。
| 主な産地・育成元 | 福岡県(福岡県が開発。平成21年から県内限定で栽培) |
| 食感・味の傾向 | 粒がしっかりしていて、つやと粘りがあると紹介されている |
| 向いている料理・食べ方 | 白いご飯のほか、おにぎりにしてもおいしいとされる |
| 炊き方のコツ | 新米の時期はまず水位線どおりに炊き、べたつくようなら水を少し減らす |
キヌヒカリは早期栽培で力を発揮する品種
もう一つ、早期栽培と相性がよいとされるのがキヌヒカリです。福岡県農林業総合試験場の資料では、短稈(稲の背丈が低いこと)で良食味の品種と紹介されています。
同じ資料によると、キヌヒカリは出穂期・成熟期がコシヒカリと同程度かやや遅く、早期栽培においては中生種に位置づけられます。そのうえで、早期栽培の方が普通期栽培より収量性が高く、早期栽培向きの品種とされています(福岡県農林業総合試験場の資料)。背丈が低い稲は風で倒れにくいとされ、台風を避けたい地域の栽培とかみ合う性質といえます。
ここで混乱しやすいのが、「早期栽培向き」と「早く実る品種」を同じ意味だと思ってしまうことです。キヌヒカリは早期栽培の中では中生、つまり実る早さは真ん中くらいの位置づけ。早い時期の作付で力を発揮する品種であって、極端に早く実る品種というわけではないんですね。
お米の袋でキヌヒカリを見かけたら、産地と出回っている時期をあわせて見てみましょう。夏に九州の産地名とセットで並んでいれば、早期栽培で育てられたお米である可能性があります。
実は早く穫れる理由は品種だけじゃない?早生と早期栽培の2つのルート
晩めの品種でも、早く植えれば夏に収穫できる
実は、意外と知られていないのが「早場米=早く実る品種」ではない、という点です。お米を早く収穫するルートは大きく分けて2つあり、その一つが「植える時期を早める」早期栽培です。
宮崎県産コシヒカリがまさにこの例で、コシヒカリという品種は変えずに、暖かい気候を生かして田植えの時期を前倒ししています。キヌヒカリのように、早期栽培の中では中生に位置づけられる品種でも、早い時期に植えることで夏の収穫が可能になるわけです。
台所でありがちなのが、「早場米は早生品種だから、粒が小さかったり味が軽かったりするはず」という思い込みです。同じコシヒカリでも夏に届くものがあるのですから、早く穫れたこと自体が味の良し悪しを決めるわけではありません。
選ぶときは「早いから軽い」「遅いから濃い」といった時期のイメージより、品種名と、その品種を育成した県の公式紹介にある食感の表現を手がかりにしましょう。そのほうが、自分の好みに合うかどうかを判断しやすくなります。
もう一つのルート「早生品種」は北の産地にもある
もう一つのルートが、ほかの品種より短い期間で実る「早生品種」を育てる方法です。こちらは暖かい地域に限らず、北陸など秋に収穫する産地でも開発されています。
たとえば新潟県が開発した葉月みのりは、極早生品種として紹介されています。新潟県の資料では、出穂期が7月27日頃、成熟期が8月27日頃とされ、早期出荷に対応して消費者の新米需要に応えることを目的に開発されたと説明されています(新潟県農業総合研究所の資料)。食味はコシヒカリより優れていると評価され、炊き上がりの光沢もコシヒカリより高いと紹介されています。
つまり、「夏の終わりに届く新米」には、九州・四国の早期栽培のお米と、北の地域の早生品種のお米の両方があり得るということです。売り場で「早い新米」と書かれていても、どちらのルートのお米かは産地と品種を見ないとわかりません。
こうした早生品種の話は、新潟の早生米を扱った記事でも取り上げています。品種ごとの収穫時期の違いを比べてみると、新米の時期がずれる理由がよりはっきりしますよ。
早生品種にも弱点がある。だから産地で育て方が違う
早く実る品種は便利な反面、弱点もあります。新潟県の資料では、葉月みのりは穂いもち(穂首いもち)にかかりやすく、穂についたまま発芽が進みやすいこと、鳥の害が出やすいこと、高標高の地帯には向かないことが注意点として挙げられています。
早く実る稲は、周りの田んぼよりも先に実るぶん、鳥に狙われやすくなるのは想像しやすいですよね。また、実ってから刈り取るまでの管理にも気を配る必要があります。品種の性質に合わせて、どこで、どう育てるかを産地が工夫しているわけです。
読者のみなさんが気にするべきなのは、生産の苦労そのものより「同じ品種名でも、産地と年で仕上がりが違うことがある」という点です。早場米や早生品種は特に、その年の天候の影響を受けて食感の印象が変わることもあります。
気に入った産地・品種が見つかったら、袋の表示を写真に残しておくと、翌年また同じお米を探すときに役立ちます。品種名だけで探すより、産地とセットで覚えておくほうが確実です。
| 品種 | 主な産地 | 早く穫れるルート | 公式資料での紹介 |
|---|---|---|---|
| コシヒカリ | 宮崎県など | 早期栽培(7月下旬ごろから出荷) | 早場米の代表格として報じられる |
| 元気つくし | 福岡県 | 暑さに強い性質 | 粒がしっかり、つやと粘り。令和7年産で特A |
| キヌヒカリ | 福岡県(試験場資料) | 早期栽培(早期栽培では中生) | 短稈で良食味、早期栽培向き |
| 葉月みのり | 新潟県 | 極早生品種(成熟期8月27日頃) | 食味がコシヒカリより優れると評価 |
読者タイプ別:夏の新米の楽しみ方
早場米は、選び方の軸を決めておくとぐっと楽しみやすくなります。ここでは、よくある読者のタイプ別に考え方を整理してみましょう。
「とにかく早く新米を味わいたい」という人は、7月下旬ごろから並び始める九州・四国産の早場米が最初の候補です。宮崎県産コシヒカリのように毎年早い時期に出回るお米を目安にすると、季節の始まりを感じやすくなります。「おにぎりやお弁当に使いたい」という人は、おにぎりにしてもおいしいと公式に紹介されている元気つくしのように、冷めたときの食べ方に触れている品種紹介を参考にするとよいでしょう。
失敗しやすいのは「家族が少ないのに、新米がうれしくて大袋を買う」パターンです。夏は気温が高く、お米を保存するには厳しい季節。早場米を楽しむなら、食べきれる量をこまめに買うほうが、精米したての状態を味わいやすくなります。
「いろいろ食べ比べたい」という人は、夏は早場米、秋は地元や好きな産地の新米、と季節で切り替えてみるのも一つの方法です。産地と品種を記録しておけば、自分の好みが少しずつ見えてきますよ。
早く穫れるルートは「早く植える(早期栽培)」と「早く実る品種(早生)」の2つ。早場米は前者が中心で、コシヒカリのように秋に穫れることの多い品種でも夏の新米になります。早いか遅いかではなく、産地と品種の公式紹介で選ぶのが確実です。
夏に買ったお米も「新米」と書ける?表示ルールで見る新米と古米の違い
新米かどうかの決め手は「精米・包装の日付」
「新米」という言葉は、なんとなく使われているようで、実は表示のルールがあります。消費者庁の食品表示基準のうち、玄米及び精米の規定に基づき、新米と表示できるのは12月31日までに精米・包装されたものとされています。
ここで大事なのは、表示の決め手になるのが精米・包装の日付だという点です。消費者委員会の資料でも、玄米の収穫年ではなく、精米・包装の日付によって新米かどうかが決まると整理されています(消費者委員会の参考資料)。消費者がその年のお米を見分けられるようにするための決まりなんですね。
早場米はこの条件にそのまま当てはまります。7月下旬に出荷され、その年のうちに精米・包装されたお米なら、新米として店頭に並べることができます。夏に「新米」の札があっても、ルールに照らせば不思議なことではありません。
お米を選ぶときは、「新米」の文字だけでなく、袋に書かれた精米年月日もあわせて見ましょう。同じ新米でも、精米してから日が浅いほうが、新米らしい香りを楽しみやすいとされています。

12月31日が境目。年が明けると「新米」とは書けない
新米の表示には期限があります。12月31日までに精米・包装されたものだけが新米と表示でき、翌年1月1日以降に精米・包装されたものは新米とは表示できなくなります。
この区切りがあるのは、年をまたいで販売されるお米の表示を明確にするためです。12月と1月にまたがって売られるお米が、いつまで新米と呼べるのかがはっきりしていないと、消費者が混乱してしまいますよね。日付で線を引くことで、表示のぶれを防いでいるわけです。
早場米で考えると、夏に収穫されたお米は、年末までの数か月間「新米」として表示できる期間があることになります。秋の新米よりスタートが早いぶん、新米として出回る期間も長くなる、という見方もできます。
年末年始にお米を買うときは、包装の日付が12月か1月かで表示が変わることを覚えておくと、売り場で迷いません。年明けに「新米」の文字が見当たらなくても、お米の品質が急に変わったわけではなく、表示のルールによるものです。
袋の「早場米」の文字より、精米年月日を先に見る
売り場で早場米を選ぶときは、ポップや袋の「早場米」「新米」といった目立つ文字より先に、精米年月日を確認するのがおすすめです。
理由は、早場米が品種名ではなく通称であるうえ、新米の表示も精米・包装の日付で決まるからです。言葉の印象は同じでも、精米されてからの日数はお米ごとに違います。精米年月日は、そのお米がいつ白米になったかを直接教えてくれる情報です。
夏は気温も湿度も高く、お米にとっては保存しにくい季節です。精米年月日を確認せずにまとめ買いをすると、食べ終わるころには香りが落ちていた、ということにもなりかねません。
選ぶときは「精米年月日→産地・品種→量」の順で見ていくと失敗しにくくなります。産地と品種は袋の表示欄に書かれているので、ポップの言葉と照らし合わせて確認しましょう。
夏の売り場で「早場米」「新米」の文字に惹かれ、精米年月日を見ないまま大袋を選んでしまうケースです。原因は、新米の表示が12月31日までの精米・包装という条件で決まっていて、精米からの日数までは示していないこと。対策は、袋の精米年月日を先に確認し、暑い季節は食べきれる量を選ぶことです。
早場米をおいしく炊くには?水分の多い新米の水加減と研ぎ方
新米は水分が多く、べたつきやすい
早場米をおいしく炊くうえで押さえたいのは、「新米は古米より水分を多く含んでいる」という性質です。ここが、水加減と研ぎ方を少し変える理由になります。
お米は炊飯のときに水を吸ってふっくらしますが、もともと粒の中の水分が多い新米は、同じ水の量で炊くと仕上がりがやわらかめになりやすいんです。パナソニックの炊飯に関する案内でも、新米は通常のお米に比べてべたつきやすくなることもあると紹介されています(パナソニックの新米の炊き方の案内)。
台所でありがちなのが、「新米は水を減らすもの」と聞いて、最初から思い切って水を減らしてしまうことです。すると今度は硬めに仕上がり、新米らしいふっくら感が出ないこともあります。
まずは基本どおりに炊いて、炊き上がりを見てから調整するのがコツです。べたつくのか、ちょうどいいのか、自分の炊飯器と好みで確かめてから微調整していきましょう。水加減の考え方は、メーカーや機種によって案内が異なることもあるので、手元の取扱説明書もあわせて確認してください。
水加減はまず水位線どおり、べたつけば少しだけ下げる
新米の水加減は、基本的には通常と同じ水位線で炊き、べたつく場合に「水位線よりも1~2mm程度下」に調整することが推奨されています。さらにべたつくようなら、もう少し下げて様子を見ます。
なぜ少しずつなのかというと、水位線のわずかな差でも炊き上がりの食感は変わるからです。一度に大きく減らすと、べたつきは解消しても硬さが気になる、ということになりがちです。新米の水分量は産地や品種、精米からの日数でも変わるため、毎回同じ調整が正解とは限りません。
水加減と同じくらい大切なのが計量です。付属の計量カップですりきりで正確に量ることが大切とされています(パナソニックの炊飯の案内)。山盛りのまま量ると、お米の量が増えたぶん水が足りなくなり、せっかくの水加減がずれてしまいます。
水を入れる前に、内釜の中のお米を平らにならしておくと、炊きムラを防げます。表面が傾いたまま水を入れると、水位線の読み方もずれやすくなるので、ひと手間かけておきましょう。

秋になって店頭に新米の袋が並ぶと、つい手に取りたくなりますよね。ところが、いつもと同じように炊いたら少しやわらかい、べたっとした、という声がこの時期はよく聞かれ…
研ぎは「20秒ほど」を2~3回。洗いすぎない
新米は米粒がやわらかいため、洗いすぎに注意が必要です。水を注いでやさしくかき混ぜたらすぐに水を捨て、これを2~3回程度繰り返すのが目安とされています。
1回あたりは「20秒ほど軽く指先を使ってかき混ぜ」る程度で十分です。力を入れてゴシゴシこすると、やわらかい粒が割れてしまい、炊き上がりがべたついたり、食感が落ちたりする原因になります。洗米の水は常温で大丈夫で、冷たい水や氷を使う必要はないとされています。
失敗しやすいのは、「研ぎ汁が透明になるまで」と何度も洗ってしまうケースです。新米に限らず、研ぎ汁が完全に透明になるまで洗う必要はありません。新米の場合はとくに、やさしく短く、が合言葉です。
浸水は炊飯コースに含まれる。硬いと感じたら足す
炊飯器で炊く場合、浸水の工程は炊飯コースに含まれているため、通常は別に浸水させる必要はないとされています。ただし、ごはんが硬いと感じる場合は、10~30分程度浸水させることが推奨されています。
浸水は、お米の芯まで水を行き渡らせるための工程です。水が中心まで届かないまま加熱が始まると、芯が残ったような硬さが出やすくなります。新米は水分が多いぶん、多くの場合は炊飯コースの中の吸水で足りますが、水を減らした結果硬くなったときは、浸水で調整する余地があるわけです。
「新米は水を減らす」と聞いて、初回から水位線よりかなり下で炊き、硬い仕上がりになるケースです。原因は、新米の水分量が産地や精米からの日数で変わるのに、一律に減らしてしまうこと。対策は、まず水位線どおりに炊き、べたつくときだけ少し下げる順番を守ることです。硬すぎたら水を戻し、必要に応じて浸水を足しましょう。
調整するときは、水加減と浸水を同時に変えないのがコツです。一度に一つずつ変えれば、どちらが効いたのかがわかり、次から迷わずに済みます。
特Aの評価は夏の新米選びにどう使う?食味ランキングの読み方
食味ランキングは6項目・5段階で評価される
お米の評価としてよく目にするのが、日本穀物検定協会の「米の食味ランキング」です。昭和46年(1971年)から続いていて、全国の代表的な産地品種を対象に食味試験を行い、毎年結果を公表しています(日本穀物検定協会)。
評価は香り、外観、味、粘り、硬さ、総合評価の6項目で行われ、特A、A、A’、B、B’の5段階に格付けされます。いちばん上が特Aです。複数の項目を総合して判断しているので、「粘りが強いから特A」のように一つの性質だけで決まるわけではありません。
ありがちな誤解は、「特Aでないお米はおいしくない」と考えてしまうことです。ランキングは産地品種ごとの格付けであって、Aのお米が劣っているという意味ではありません。好みの食感は人それぞれなので、評価は選ぶときの参考の一つと考えるのがちょうどいいでしょう。
ランキングを見るときは、必ず評価年を確認してください。同じ産地品種でも、年によって評価は入れ替わります。「特A米」と書かれていても、何年産の評価なのかがわからなければ、今年のお米の参考にはなりにくいからです。
2025年産は144品種中43品種が特A
2025年産(令和7年産)の食味ランキングでは、全国144品種中43品種が特Aに評価されました。前年の2024年産より4品種増えています。
連続受賞の記録としては、北海道の「ななつぼし」と佐賀県の「さがびより」が16年連続で特Aとなりました。また、茨城県の「福まる」と千葉県南部の「つぶすけ」が初めて特Aを獲得しています。さらにコシヒカリは特Aの地域が前年の9地域から6地域に減り、にじのきらめきは前年の4地域から6地域に増えたとされています。
この数字から読み取れるのは、品種名だけでは評価が決まらないということです。同じコシヒカリでも、産地によって特Aだったりそうでなかったりします。早場米の代表格である宮崎県産コシヒカリを選ぶときも、「コシヒカリだから特A」とは限らない点に注意しましょう。
評価を参考にするなら、品種名と産地名の両方で照らし合わせるのがコツです。ランキングの詳しい読み方は別の記事でもまとめています。
評価は年で入れ替わる。夏の新米選びでの使いどころ
食味ランキングを早場米選びに生かすうえで知っておきたいのは、評価の対象年と、店頭のお米の産年がずれることがあるという点です。
ランキングは前年産のお米を評価して公表されるため、夏に店頭に並ぶ今年の早場米は、まだその年の評価を受けていません。たとえば元気つくしは令和7年産で特Aと発表されましたが、これは令和7年産のお米に対する評価です。今年のお米がどう仕上がったかは、また別の話なんですね。
ですから、ランキングは「この産地品種は、近年こういう評価を受けてきた」という傾向を知る材料として使うのが向いています。数年分の評価を並べてみて、安定して評価の高い産地品種を候補にする、という使い方です。

まとめ|夏の新米を表示と水加減で上手に楽しむ
早場米は特別な品種ではなく、暖かい気候と台風を避ける知恵から生まれた「夏の新米」です。品種名より産地と時期で決まる言葉なので、売り場では「早場米」の文字よりも、袋の精米年月日と産地・品種を確かめるところから始めてみてください。次にお米を買うときは、精米年月日を見て食べきれる量を選び、最初の一回はいつもの水位線どおりに炊いてみましょう。炊き上がりがべたつくか硬いかを確かめてから、水加減を少しずつ自分好みに寄せていけば、夏から秋への新米のバトンタッチを無理なく楽しめますよ。
※品種の評価や栽培・表示の情報は年によって変わることがあります。最新情報は公式サイトでご確認ください。

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