赤飯を炊こうとしてもち米の袋を手に取ると、品種名が大きく書いてあるものもあれば、もち米とだけ書かれたものもあります。ヒヨクモチ、こがねもち、みやこがねもち。もち米にも種類があることは知っていても、何がどう違うのか、どれを選べばいいのかは意外と説明しにくいものです。
先に結論をお伝えすると、もち米の種類はどこで作られたかでほぼ見当がつきます。公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構の資料によると、令和2年産の水稲もち玄米の検査数量はヒヨクモチが28,299トンで1位。続いてヒメノモチ、風の子もち、こがねもち、はくちょうもちが並びます。そして福岡県ではヒヨクモチが作付の100.0%、宮城県ではみやこがねもちが97.4%と、産地ごとに主力品種がはっきり分かれているんです。
この記事では、うるち米との違いという土台から入り、主な品種の産地と公的資料から読み取れる特徴、もち米から作る白玉粉とうるち米から作る上新粉の違い、そして炊飯器のおこわコースで赤飯やおこわを炊くときのコツまで、理屈から順番に解説します。品種の味の優劣ではなく、袋を見て選べるようになるための知識に絞ってお届けします。
・もち米とうるち米の違いと、粘りが生まれる理由
・検査数量で見た主な品種と、県ごとの主力品種の集中ぶり
・白玉粉と上新粉の原料の違いと、和菓子でやりがちな失敗
・炊飯器のおこわコースで赤飯・おこわを炊くときの配合と水位
もち米の種類を見分ける前に|うるち米との違いはでんぷんの中身

粘りの正体はアミロペクチン。もち米はそれが主体のお米
もち米とうるち米のいちばん大きな違いは、お米に含まれるでんぷんの中身です。もち米は粘りのもとになるアミロペクチンが主体のお米とされています。品種がどうこうという話の前に、まずこの土台を押さえておくと、もち米の種類の話がぐっとわかりやすくなります。
お米のでんぷんは、まっすぐ鎖のように伸びたアミロースと、枝分かれの多いアミロペクチンの2種類で構成されています。枝分かれの多いアミロペクチンは、水を吸って加熱されると互いに絡み合いやすく、これが粘りやもちもちした食感につながると説明されます。うるち米はアミロースを一定量含むため、炊いても粒がほぐれやすく、毎日のごはんらしい食感になります。
台所でありがちなのが、もち米をうるち米と同じ感覚で扱ってしまうことです。同じ炊飯器、同じ水位で炊くと、もち米はべたっとした仕上がりになりやすい。これは品種の個性というより、でんぷんの性質の違いが表に出た結果なんです。
ですから、もち米を選ぶときは品種名を見る前に、袋の名称欄にもち精米などと書かれているか、うるち米ではないかをまず確認しましょう。そのうえで品種や産地を見ていくのが、迷わない順番です。

赤飯を炊こうとして、お米の袋を前に手が止まったことはありませんか。うるち米ともち米は、どちらもお米なのに、炊くと粘りがまるで違います。ふだんのごはんと同じ水加減…
精米すると白く濁って見えるのも、でんぷんの違いから
もち米は、精米した状態で見ると白く濁ったような色をしているのが一般的です。うるち米が半透明に見えるのに対し、もち米は乳白色で光を通しにくい見た目になる、と説明されることが多いですね。袋から出してしまったお米がどちらか分からなくなったとき、ひとつの手がかりになります。
この見た目の差も、でんぷんの詰まり方の違いによるものとされています。でんぷんの構成が違うと、粒の中の光の通り方が変わり、結果として色味に差が出るわけです。つまり、見た目の白さはもち米らしさのサインであって、品質が悪いという意味ではありません。
やりがちな失敗は、白く濁った粒を見て古いお米や傷んだお米だと思い込んでしまうこと。もち米ならその見た目が普通です。逆に、うるち米の袋なのに白く濁った粒が混じっていると感じたら、精米年月日や保存状態も合わせて確認するとよいでしょう。
注意したいのは、見た目だけで完全に見分けるのは難しい場合もあるという点です。保存容器を分けるときは、容器に名称と精米年月日を書いたラベルを貼っておくのが確実。袋の表示がいちばん正確な情報源です。
検査の世界では、水稲もちと陸稲もちに分かれている
あまり知られていませんが、もち米は農産物検査の場面で、水田で育つ水稲もち玄米と、畑で育つ陸稲もち玄米に分けて検査されます。私たちが普段手にするもち米の数字を読むときは、どちらの区分の話なのかを意識しておくと誤解がありません。
米穀安定供給確保支援機構の資料(令和3年11月版)によると、令和2年産の水稲もち玄米の検査数量は176,070トンで、前年産比101%。等級は1等53%・2等40%・3等4%とされています。この記事で紹介する品種別の数量や割合も、この水稲もち玄米の検査結果をもとにしたものです。
ここでやりがちなのが、1等米の割合をおいしさの順位のように読んでしまうことです。等級は粒の整い具合など外観を中心にした区分で、味の評価そのものではありません。2等だから炊いたときにまずい、というわけではないんです。
品種の話を読むときは、資料の年次と区分を必ずセットで確認しましょう。もち米の数字は年によって動きます。この記事の数値も令和2年産のものなので、最新の状況は同機構の公表資料で確かめるのがおすすめです。
アミロペクチン=枝分かれの多い構造のでんぷん。もち米はこれが主体で、粘りの成分とされる。
水稲もち玄米・陸稲もち玄米=農産物検査でのもち米の区分。水田で育つものが水稲、畑で育つものが陸稲。
等級=検査で付けられる1等・2等・3等などの区分。外観を中心にした評価で、食味の順位ではない。
流通量で見る主な品種|令和2年産の検査数量上位はこの5つ
ヒヨクモチが28,299トンで1位
もち米の種類を知るいちばんの近道は、実際にどの品種がどれだけ流通しているかを見ることです。米穀安定供給確保支援機構の資料では、令和2年産の水稲もち玄米の品種別検査数量で、ヒヨクモチが28,299トン、全体の17%を占めて1位とされています。
ヒヨクモチは九州で多く作られている品種です。福岡県・佐賀県・熊本県で作付の1位を占めており、九州北部のもち米といえばほぼこの品種、と言っていい状況です。九州で売られているもち米の袋で品種名を見かける機会が多いのは、こうした作付の集中が背景にあります。
よくある誤解は、検査数量1位だからいちばんおいしい品種、と受け取ってしまうことです。数量の多さは作付面積や収量、その年の天候で決まるもので、食味の順位を示しているわけではありません。たくさん作られている=流通で見かけやすい、と読むのが正しい使い方です。
買うときのコツとしては、品種名の横にある産地表示を合わせて見ること。ヒヨクモチと書かれていれば九州産である可能性が高い、という具合に、品種と産地はほぼセットで動きます。
2位・3位のヒメノモチと風の子もち
同じ資料で2位に入っているのがヒメノモチで22,125トン(13%)、3位が風の子もちで20,241トン(12%)です。上位3品種だけで全体の4割以上を占めている計算になり、もち米の流通は一部の品種に集まっていることが分かります。
ヒメノモチは、長野県の令和8年産の産地品種銘柄で選択銘柄に入っているほか、宮城県でも令和元年産で2位(3.2%)に名前が見えるなど、複数の県で作付けが確認できる品種です。ひとつの県に集中しているヒヨクモチとは、広がり方が少し違うんですね。
やりがちなのは、聞き慣れない品種名を見て、珍しいもち米だと思って身構えてしまうこと。風の子もちもヒメノモチも、検査数量で見れば全国上位の品種です。名前を知らなくても、流通の主力であることに変わりはありません。
注意点として、品種ごとの産地や特性を詳しく知りたいときは、その品種を作っている道県の公式ページや農業試験場の資料を確認しましょう。通販サイトの紹介文には販売側の表現が混じることがあるので、一次情報と分けて読むのが安心です。
こがねもちとはくちょうもちが続く
4位はこがねもちで14,311トン(8%)、5位ははくちょうもちで13,407トン(8%)です。この2品種までを含めた上位5品種で、令和2年産の水稲もち玄米の半分を超える量になります。もち米の種類はたくさんあっても、流通量で見ると主役はかなり絞られているわけです。
こうした偏りが生まれる理由のひとつは、もち米の作付けが特定の産地に集まっていることです。同じ資料では、上位10道県で検査数量の約8割を占めるとされています。産地が固まっていれば、その産地で主力になっている品種の数量も自然と大きくなります。
台所でありがちなのが、品種名だけを頼りに毎回違うもち米を探し回ってしまうこと。上位5品種のどれかであれば、多くの売り場で手に入りやすいはずです。まずは手に取りやすい品種で、炊き方や用途を固めるほうが仕上がりは安定します。
品種を比べたいときは、同じ年の資料で数量を並べること。年をまたいで比べると、天候の影響で順位が入れ替わっていることがあるので注意が必要です。
| 順位 | 品種 | 検査数量 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 1位 | ヒヨクモチ | 28,299トン | 17% |
| 2位 | ヒメノモチ | 22,125トン | 13% |
| 3位 | 風の子もち | 20,241トン | 12% |
| 4位 | こがねもち | 14,311トン | 8% |
| 5位 | はくちょうもち | 13,407トン | 8% |
出典:米穀安定供給確保支援機構「もち米を巡る状況」(令和3年11月版)をもとに編集部で整理
順位は年で動く。ヒヨクモチは前年に68%まで落ちた
品種別の数量は、毎年同じではありません。たとえばヒヨクモチは、令和元年産では24,129トン(15%)で、前年産比68%と大きく減っていました。資料では、九州地域の不作の影響によるものと説明されています。翌年の令和2年産で28,299トンに戻り、再び1位になっています。
こうした変動が起きるのは、品種ごとの作付けが特定の地域に集中しているからです。ひとつの地域で天候不順が起きると、その地域の主力品種の数量がまとめて落ち込みます。全国に分散している品種より、地域に集中している品種のほうが、年ごとの振れ幅が大きく出やすいわけです。
やりがちなのは、ある年の順位だけを見て、この品種は減っている、人気がなくなったと判断してしまうこと。単年の数字は天候の影響を強く受けるので、少なくとも2〜3年分を並べて見るのが安全です。
数字を読むときのコツは、資料の年次を必ず確認することです。この記事の数値は令和2年産のもので、最新年の状況とは違う可能性があります。米穀安定供給確保支援機構の公表資料で、最新年版を確認してから参考にしてください。
実は産地を見れば品種がほぼ決まる|県ごとの作付1位品種

主産地はほぼ固定化。1県で1品種に集中しやすい
意外と知られていないけれど、もち米は品種を探すより産地を見たほうが早いお米です。米穀安定供給確保支援機構の資料は、もち米について「もち米の主産地は順位の変動はあるがほぼ固定化しており」と記しています(米穀安定供給確保支援機構の資料)。
うるち米では、ひとつの県の中でも複数の銘柄が競い合い、新品種が次々に登場します。一方のもち米は、主産地が固まっているうえ、県ごとの主力品種への集中度が高い傾向があります。福岡県のヒヨクモチ100.0%、宮城県のみやこがねもち97.4%という数字は、うるち米の感覚からするとかなり偏って見えるはずです。
やりがちなのは、品種名で検索して各地のもち米を食べ比べようとし、結局どれも同じ県のものだった、というパターン。産地と品種がほぼ一対一で結びついているので、産地が決まれば品種も絞られます。
ですから、もち米を選ぶときは、まず袋の産地表示を見てください。その県の主力品種を知っていれば、品種名が書かれていない袋でも、どんなもち米かおおよそ見当がつくようになります。
九州北部はヒヨクモチ一色に近い
産地と品種の結びつきがいちばん分かりやすいのが九州です。令和2年産の道府県別作付割合では、福岡県でヒヨクモチが100.0%、佐賀県で95.0%、熊本県で83.5%と、いずれも1位を占めています。
九州の他の県でも、ヒヨクモチの名前は上位に見えます。長崎県では18.6%で1位、大分県では17.2%で2位、宮崎県では9.4%で3位です。福岡・佐賀・熊本ほど集中してはいないものの、九州全体でヒヨクモチが広く作られていることが分かります。長崎県のように1位でも2割に満たない県があるのは、他の品種と分け合っているためです。
ここで気をつけたいのは、九州産のもち米ならすべてヒヨクモチだと決めつけること。長崎・大分・宮崎のように、ヒヨクモチ以外の品種も作られている県があります。品種名が書かれている袋ならそれに従い、書かれていなければ断定しないのが正しい読み方です。
下の表は、資料から読み取れる県別の主力品種を編集部で整理したものです。袋の産地表示と照らし合わせる早見表として使ってみてください。
| 県 | 品種 | 作付割合と順位 |
|---|---|---|
| 福岡県 | ヒヨクモチ | 100.0%(1位) |
| 佐賀県 | ヒヨクモチ | 95.0%(1位) |
| 熊本県 | ヒヨクモチ | 83.5%(1位) |
| 長崎県 | ヒヨクモチ | 18.6%(1位) |
| 宮城県 | みやこがねもち | 97.4%(1位) |
| 長野県 | もちひかり/モリモリモチ/カグヤモチ | 60.5%(1位)/23.2%(2位)/3.9%(3位) |
出典:米穀安定供給確保支援機構「もち米を巡る状況」をもとに編集部で整理
東日本では宮城と長野で主力がはっきり分かれる
東日本に目を向けると、宮城県と長野県で主力品種がくっきり分かれています。宮城県ではみやこがねもちが97.4%で1位、長野県ではもちひかりが60.5%で1位です。どちらも県内のもち米の大半を、ひとつの品種が担っている形です。
ただし集中の度合いには差があります。宮城県はみやこがねもちがほぼすべてを占めるのに対し、長野県はもちひかりが6割ほどで、モリモリモチが23.2%、カグヤモチが3.9%と続きます。長野県では複数の品種が作られていて、令和元年産でももちひかり61.4%・モリモリモチ20.1%・カグヤモチ3.3%と、似た構成になっていました。
やりがちなのは、長野県産のもち米をすべてもちひかりだと思い込むこと。4割近くは別の品種なので、品種名にこだわりたいなら袋の表示を必ず確認しましょう。宮城県産なら、みやこがねもちである可能性は高いと読めます。
産地ごとの集中度を知っておくと、品種名が書かれていない袋を前にしたとき、どこまで推測してよいかの目安になります。推測はあくまで推測なので、確かめたいときは販売者に問い合わせるのが確実です。
赤飯派・餅つき派・和菓子派で見るところが変わる
もち米の選び方は、何を作るかで見るべきポイントが変わります。品種ごとの食感の違いを公的に比べた資料は限られるので、まずは用途と量、表示の確かさで選ぶのが現実的です。
年に数回、赤飯やおこわを炊く家庭なら、品種より精米年月日の新しさを優先しましょう。少量を使い切るほうが、品種の違いを気にするより仕上がりへの影響が出にくいはずです。炊飯器のおこわコースで炊くなら、うるち米と合わせて炊くので、もち米の量もそれほど多くは要りません。
正月などに餅つきをする家庭なら、まとまった量を使うので、産地と品種名がはっきり書かれた袋を選んでおくと、毎年同じもち米で作れて仕上がりを比べやすくなります。お気に入りが見つかったら、品種と産地をメモしておきましょう。
和菓子づくりが中心の人は、そもそも粒のもち米より、もち米を粉にした白玉粉を使う場面が多くなります。粉の種類の違いは後ほど詳しく解説します。用途がはっきりすれば、迷う範囲はぐっと狭まりますよ。
九州の主力ヒヨクモチはどんな品種?公的資料から読む素顔
昭和46年に短稈・多収品種として奨励品種に
ヒヨクモチは、佐賀県の資料によると、昭和46年(1971年)に短稈・多収の品種として佐賀県の奨励品種に採用されました。半世紀以上にわたって九州のもち米を支えてきた、息の長い品種です。
短稈というのは、稲の茎が短いという意味です。茎が短いと、実った穂の重みや風雨で稲が倒れにくくなります。倒れた稲は収穫しにくく、品質も落ちやすいので、短稈であることは作る側にとって大きな利点です。多収は文字どおり、収量が多いこと。この2つの性質が、九州で広く作付けされてきた理由のひとつと考えられます。
やりがちなのは、短稈・多収という言葉を、食べたときの味や食感の特徴だと読んでしまうこと。これは稲としての育てやすさを表した言葉で、炊いたときのもちもち感を直接示しているわけではありません。
品種の公的な紹介を読むときは、栽培上の特性と食味の特性を分けて読むのがコツです。育てやすさの情報は、その品種がなぜその地域で多く作られているかを理解する手がかりになります。食感を知りたいときは、食味についての記述を別に探しましょう。
| 主な産地・採用 | 福岡県・佐賀県・熊本県が中心。昭和46年(1971年)に佐賀県の奨励品種に採用 |
| 栽培上の特性 | 短稈・多収、晩生品種(佐賀県の研究成果情報の表現) |
| 流通量 | 令和2年産の品種別検査数量 28,299トン(17%)で1位 |
| 炊き方のコツ | 品種固有の水加減は公的資料に見当たらないため、炊飯器の取扱説明書のおこわの水位に従う |
晩生だから、田植えが遅れると収量に響く
ヒヨクモチは、佐賀県の研究成果情報で晩生品種と位置づけられています。晩生とは、田植えから収穫までの期間が長く、収穫が遅めになるタイプのこと。この性質が、育て方にも影響しています。
佐賀県農業試験研究センターの研究(2016年)では、ヒヨクモチを6月21日以降に移植した場合、栽植密度が13.6〜15.2株/㎡程度だと減収することが示されています。生育期間が長い品種は、田植えが遅れると育つ時間が足りなくなり、株の数が少ないと収量を補いきれない、という理屈です。
同じ研究では、刈取時期の目安となる積算気温が950〜1,300℃の範囲では、検査等級の低下はみられなかったともされています。収穫のタイミングにある程度の幅を持たせられる、という生産現場向けの知見です。
こうした研究は農家向けの内容ですが、食べる側にとっても、その品種がどんな条件で品質を保っているかを知る手がかりになります。毎年同じ品質のもち米が店頭に並ぶ背景には、こうした栽培の工夫があるんですね。
数量が天候で動きやすいのは、九州に集中しているから
先ほど触れたとおり、ヒヨクモチは令和元年産で前年産比68%と大きく数量を落としました。資料では九州地域の不作の影響と説明されています。翌年には持ち直しましたが、この振れ幅はヒヨクモチの置かれた立場をよく表しています。
理由はシンプルで、作付けの大半が九州北部に集中しているからです。福岡県で100.0%、佐賀県で95.0%と、ひとつの地域の主力を一手に担っているので、その地域の天候がそのまま全国の数量に響きます。分散していれば影響を薄められますが、集中しているとまとめて受けてしまうわけです。
台所目線でやりがちなのは、ある年に店頭で見かけなかったからといって、その品種がなくなったと思ってしまうこと。単にその年の収量が少なかっただけ、ということもあります。
数量の情報は、品種の良し悪しではなく、作られている地域の事情を映すものとして読むのがコツです。もし特定の品種にこだわりたいなら、その品種の主産地の天候の話題にも少し気を配っておくと、店頭の様子の理由が見えてきます。
おこわ向きという評判は、公的評価とは分けて読む
ヒヨクモチについては、粘りが強く、おこわや赤飯に向くといった紹介を見かけることがあります。ただ、編集部が確認した範囲では、これは販売店の記述によるもので、県や国の公的な食味評価として示されたものではありませんでした。
なぜここを区別するかというと、販売店の紹介文は売り場の視点で書かれることが多く、他の品種と同じ条件で比べた結果とは限らないからです。うるち米のような食味ランキングの仕組みとは性質が違うので、同じ重みで受け取るのは避けたほうがいいでしょう。
やりがちなのは、紹介文の表現をそのまま信じて、他の品種では赤飯がうまく炊けないと思い込むこと。赤飯の仕上がりは、品種より水加減やもち米とうるち米の配合、具の量に左右される部分が大きいと考えられます。
品種の評判を読むときは、誰がどんな立場で書いているかを確認する習慣をつけましょう。公的な資料、生産者団体、販売店では、同じ品種でも語り口が変わります。その違いを意識するだけで、情報に振り回されにくくなりますよ。
宮城と長野の主力品種|みやこがねもち・もちひかりの見方
みやこがねもちは宮城県の作付の97.4%
宮城県のもち米を語るうえで欠かせないのが、みやこがねもちです。令和2年産の作付割合は97.4%で1位。県内のもち米はほぼこの品種と言ってよく、宮城県の基幹もち品種として位置づけられています。
前年の令和元年産でも95.8%で1位、2位がヒメノモチ(3.2%)、3位がこもちまる(1.0%)でした。2位以下はわずかで、みやこがねもちへの集中ぶりがよく分かります。米穀安定供給確保支援機構の資料でも、宮城県の主な品種としてみやこがねもちの名前が挙げられています。
やりがちなのは、宮城県産のもち米に複数の品種が混在していると考えて、品種名がないと選べないと迷ってしまうこと。宮城県産であれば、みやこがねもちである可能性が高いと読めます。もちろん確実ではないので、品種名にこだわるなら表示で確かめてください。
品種の公式な紹介を確認したいときは、宮城県の品種紹介ページが参考になります。県が育成した品種の一覧も掲載されているので、宮城県のもち米の流れをつかむ手がかりになります。
短所を補うために、県は新しいもち品種を育ててきた
みやこがねもちは、県や普及資料で短所も示されている品種です。倒伏しやすく、秋雨による発芽粒が出やすいこと、さらに耐冷性やいもち病にも弱いとされています。発芽粒とは、収穫前に雨に当たって穂の上で芽が出てしまった粒のことで、品質の低下につながります。
こうした弱点があるからこそ、宮城県は改良を進めてきました。県の水稲優良品種一覧には、県が育成したもち品種として、もちむすめ(糯175号・2003年育成)と、こもちまる(糯199号・2013年育成)が載っています。令和元年産でこもちまるが1.0%で3位に入っているのは、こうした取り組みの表れと読めます。
台所で知っておきたいのは、こうした短所はあくまで育てる側の課題だという点です。倒れやすい、病気に弱いといった性質は、店頭に並んだもち米の食感を直接示すものではありません。
短所を正直に公表している品種情報は、むしろ信頼できる一次情報と言えます。品種のよい面だけでなく弱い面も知っておくと、新しい品種が登場したとき、なぜ生まれたのかが理解しやすくなりますよ。
| みやこがねもち(宮城県) | 宮城県の基幹もち品種。令和2年産の作付割合97.4%で1位 |
| 県・普及資料が示す短所 | 倒伏しやすく、秋雨による発芽粒が出やすい。耐冷性・いもち病にも弱いとされる |
| もちひかり(長野県) | 令和8年産の長野県の産地品種銘柄で必須銘柄。令和2年産の作付割合60.5%で1位 |
| 食感・味の傾向 | 両品種とも一次ソースで確認できた食味の記述はないため、ここでは記載しない |
もちひかりは長野県の必須銘柄
長野県の主力もち品種がもちひかりです。令和2年産の作付割合は60.5%で1位。さらに農林水産省関東農政局が公表している長野県の令和8年産の産地品種銘柄一覧では、もち米の必須銘柄としてもちひかりが1銘柄だけ指定されています。
産地品種銘柄とは、農産物検査で産地と品種を証明できる銘柄のことです。必須銘柄は、その県で主要な品種として位置づけられたもので、選択銘柄はそれに準じるもの。長野県のもち米では、必須銘柄がもちひかり、選択銘柄がヒメノモチとモリモリモチの2銘柄となっています。
やりがちなのは、必須銘柄という言葉を、品質が保証された特別な品種という意味に受け取ってしまうこと。これは検査の仕組みの中での位置づけで、味の評価や優劣を示すものではありません。
産地品種銘柄の一覧は、各県の主要な品種を知るのに便利な一次資料です。品種名の表示がある袋は、この仕組みのもとで産地と品種が確認されたものと考えられるので、品種にこだわりたい人の判断材料になります。
特性が確認できない品種は、袋の表示で選べばいい
もちひかりについて、食味や粘り、耐冷性などの特性を一次ソースで確かめようとしましたが、編集部が確認できた範囲では見つかりませんでした。そのため、この記事ではもちひかりの食感や味についての記述を控えています。
これはもちひかりに限った話ではありません。もち米は、うるち米ほど品種ごとの食味の公的な紹介が充実していない場合があります。うるち米には食味ランキングのような広く知られた評価がありますが、もち米の品種どうしの食感を同じ物差しで比べた資料は限られるのが実情です。
やりがちなのは、情報がないからといって、ネットの体験談や販売サイトのランキングで品種の良し悪しを決めてしまうこと。条件のそろわない比較は、かえって選択を迷わせます。
特性がはっきりしない品種を選ぶときは、産地・品種名・精米年月日という袋の表示を軸にしましょう。表示がしっかりしたもち米を選び、炊き方を整えるほうが、仕上がりの満足度につながりやすいはずです。気に入った袋があれば、表示を控えておくと次に同じものを探せます。
白玉粉と上新粉は何が違う?原料の米で分かれる米粉
白玉粉はもち米から。水挽きで作られる
もち米の種類を知るなら、粉になったもち米にも目を向けておきたいところです。農林水産省の米粉の資料では、白玉粉はもち米が原料で、水挽式で製粉されると説明されています。大福や求肥、白玉団子の材料になる粉です。
水挽式とは、水に浸したもち米を水と一緒に挽いて粉にする方法です。もち米が主体とするアミロペクチンの性質がそのまま生きるので、白玉粉で作った生地は、加熱すると粘りと伸びのある食感になります。大福の皮がよく伸び、求肥がやわらかく仕上がるのは、もち米由来の粉だからこそなんです。
台所でありがちなのが、白玉粉をうるち米の粉と同じつもりで扱い、水の量を加減しないこと。白玉粉は水を少しずつ加えて、耳たぶくらいのやわらかさに練るのが一般的とされます。一度に水を入れると、生地がゆるくなりすぎてしまいます。
白玉粉を使うときは、粉の袋に書かれた作り方の分量を目安にするのが確実です。製品によって粒の細かさが違うので、同じ白玉粉でも水の量は袋の表示に合わせましょう。
上新粉はうるち米から。団子・柏餅・せんべいに使われる
同じく農林水産省の資料によると、上新粉はうるち米が原料で、団子や柏餅などの和菓子、せんべいなどの米菓に使われます。白玉粉と並べて売られていることが多いですが、原料のお米がまったく違うんです。
うるち米はアミロースを一定量含むので、上新粉で作った生地は、白玉粉ほど伸びず、歯切れのよいしっかりした食感になります。柏餅の皮や団子が、ほどよい弾力を持ちながらも噛み切りやすいのは、この性質によるものとされています。せんべいのように硬く焼き上げる米菓に向くのも、同じ理屈です。
同じ資料では、麺やパスタにはアミロースの含有量が多い米粉が向くとされています。アミロースが多いほど形を保ちやすいという性質を考えると、アミロペクチン主体のもち米の粉は、麺のように形を保ちたい用途には向きにくいと読めます。
上新粉と白玉粉は、見た目が似ていても役割が違います。作りたいお菓子の食感が、伸びてやわらかいのか、歯切れよくしっかりしているのかで、どちらの粉を使うかを決めましょう。

| 項目 | 白玉粉 | 上新粉 |
|---|---|---|
| 原料 | もち米 | うるち米 |
| 製粉方法 | 水挽式 | 生のうるち米を製粉 |
| 生地の傾向 | 粘りと伸びが出やすい | 歯切れがよく形を保ちやすい |
| 主な用途 | 大福・求肥・白玉団子 | 団子・柏餅などの和菓子、せんべいなどの米菓 |
出典:農林水産省 米粉の特性をもとに編集部で整理
生米を挽くか、加熱してから挽くか
米粉の種類を整理するとき、原料の違いに加えてもうひとつの軸があります。農林水産省の資料では、米粉はうるち米由来かもち米由来かで分けられ、製粉方法には生米を製粉するタイプと、加熱後に製粉するタイプの2種類があるとされています。
生米を製粉したものは、使うときに水と合わせて加熱することで粘りや弾力が生まれます。白玉粉や上新粉は、このタイプの代表です。一方、加熱してから製粉したものは、すでにでんぷんが加熱を受けているため、扱い方が変わってきます。同じもち米由来の粉でも、どちらのタイプかで使い方が違うわけです。
やりがちなのは、もち米の粉ならどれも同じだと思って、レシピに書かれた粉と別のタイプを使ってしまうこと。水の吸い方や加熱後の食感が変わり、思った仕上がりにならない原因になります。
粉を選ぶときは、袋の原材料名でもち米かうるち米かを確認し、さらに商品名や説明から製粉方法のタイプを確かめましょう。レシピで指定された粉の名前と、手元の粉の名前が一致しているかを見るのがいちばん確実です。
大福を上新粉で作って伸びない、という失敗
和菓子づくりでいちばん多い失敗のひとつが、粉の取り違えです。大福を作ろうとして、手元にあった上新粉を使ったら、皮が伸びずにひび割れてしまった。こうした失敗は、原料のお米の違いを知っていれば防げます。
原因はでんぷんの中身です。大福の皮に求められる、よく伸びてやわらかい食感は、アミロペクチン主体のもち米由来の粉だからこそ出せるもの。うるち米が原料の上新粉は、アミロースを含むぶん生地が締まりやすく、伸ばそうとすると切れやすくなります。逆に、団子を白玉粉だけで作ると、歯切れの悪いやわらかすぎる仕上がりになりがちです。
この失敗を避けるには、作り始める前に、レシピの粉と手元の粉が同じかを確認することです。似た白い粉が並んでいると、つい手近なものを使いたくなりますが、ここは粉の名前を声に出して確かめるくらいでちょうどいいんです。
大福・求肥にはもち米が原料の白玉粉、団子・柏餅にはうるち米が原料の上新粉が基本です。袋が似ているので、原材料名欄でもち米かうるち米かを必ず確認しましょう。保存容器に移すときは、粉の名前を書いたラベルを貼っておくと取り違えを防げます。
おこわ・赤飯をふっくら炊くには?炊飯器のおこわコースの使い方
おこわコースは白米を選んで水位目盛3まで
もち米を家庭で炊くなら、炊飯器のおこわコースを使うのが手軽です。ここでは一例として、日立の炊飯器RZ-A100HJ/Y100HJの取扱説明書の案内を紹介します。この機種では、お米ボタンで白米を、コースボタンでおこわを選び、炊飯ボタンを押す手順と案内されています。
水加減については、おこわの水位目盛3まで水を加えると案内されています。お赤飯・山菜おこわ・栗五目おこわの例がこの水位です。もち米は吸水しやすく、白米と同じ水位で炊くと水分が多すぎてべたつきやすいので、おこわ専用の水位目盛が用意されているわけです。
やりがちなのは、内釜の白米用の目盛りに合わせてしまうこと。おこわ用の目盛りがある機種では、必ずそちらを使いましょう。目盛りの数字の意味は機種によって違います。
ここで紹介した手順と水位は、あくまでこの機種の取扱説明書での案内です。おこわコースの名前やボタンの操作、水位の目盛りはメーカーや機種で異なるので、ご自宅の炊飯器の取扱説明書を必ず確認してください。
もち米2にうるち米1。混ぜて炊く理由
同じ取扱説明書では、山菜おこわの例として、うるち米カップ1に対してもち米カップ2という割合が示されています。お赤飯(4人分)の材料は、うるち米カップ1/2・もち米カップ2と1/2・ささげ50g・塩小さじ1/2とされています。どちらも、もち米だけでなくうるち米を合わせているのがポイントです。
うるち米を混ぜる理由は、でんぷんの性質の違いにあります。アミロペクチン主体のもち米だけだと、炊飯器で炊いたときに粘りが強く出すぎてまとまりやすくなります。アミロースを含むうるち米を一部合わせることで、粒がほどよくほぐれ、おこわらしい食感に近づけられる、という考え方です。
やりがちなのは、もち米らしさを出したいからと、うるち米を省いてしまうこと。取扱説明書の配合はおこわコースの加熱に合わせて考えられているはずなので、まずは記載どおりの割合で炊くのが無難です。
配合を変えたいときは、一度に大きく変えず、記載の割合を基準に少しずつ調整しましょう。もち米を増やすほど粘りが強く、うるち米を増やすほどあっさりした仕上がりになる傾向があります。

もち米を炊こうとして、手が止まったことはありませんか。白米と同じ目盛りでいいのか、浸水は何分か、うるち米を少し混ぜたら水はどうするのか。調べると数字がばらばらに…
具はお米の重量の30〜50%までに抑える
おこわや炊き込みの具の量にも目安があります。同じ取扱説明書では、具の量はお米の重量の30〜50%、お米1カップ分につき具の量は45〜75gと案内されています。山菜や栗、鶏肉などを入れるときの目安にできます。
具の量を守る理由は、具から出る水分と、熱の伝わり方にあります。具を入れすぎると、具から出る水分で全体の水分量が増えてべたつきやすくなります。さらに、具が多いと内釜の中で熱が均一に回りにくくなり、炊きムラや芯残りの原因になるとされています。
台所でありがちなのが、具材を欲張ってたっぷり入れてしまうこと。見た目は豪華になりますが、仕上がりがべちゃついたり、一部に芯が残ったりしやすくなります。具を増やしたいときは、炊き上がってから混ぜ込む方法も考えてみましょう。
具はお米の上にのせ、混ぜずに炊くのが一般的なやり方です。具を混ぜ込むと、お米の吸水や対流が妨げられやすくなります。具の量と置き方は、取扱説明書の記載に合わせるのが確実です。
白米の目盛りでもち米を炊いて、べちゃっとした失敗
もち米を炊くときの典型的な失敗が、おこわコースや専用の目盛りを使わずに、普段の白米と同じ水位で炊いてしまうことです。炊き上がりがべちゃっとして、粒の形が崩れてしまった。こうした経験がある人は少なくないはずです。
原因は、もち米とうるち米の吸水と粘りの違いです。もち米は吸水しやすく、アミロペクチン主体なので加熱で粘りが出やすい。そこに白米と同じ量の水を加えると、水分が多すぎて粘りが強く出すぎ、べたついた仕上がりになりやすいんです。
対策は、炊飯器におこわコースがあれば必ず使い、水位もおこわ用の目盛りに合わせること。おこわコースがない機種や、もち米だけで炊きたい場合は、メーカーの取扱説明書やFAQで案内を確認しましょう。
もち米は吸水しやすく粘りが出やすいので、白米と同じ水位では水分が多すぎてべたつきやすくなります。おこわコースとおこわ用の水位目盛を使い、目盛りがない機種ではメーカーの取扱説明書の案内に従いましょう。
まとめ|もち米の種類は産地と用途で選べばいい
もち米の種類で迷ったら、品種名を覚えるより先に、袋の産地表示を見る習慣をつけてみてください。九州ならヒヨクモチ、宮城ならみやこがねもち、長野ならもちひかりと、産地からおおよその品種が見えてきます。そのうえで、赤飯やおこわには炊飯器のおこわコースと取扱説明書の配合を、大福には白玉粉、団子には上新粉をと、作るものに合わせて道具と材料を選べば、品種の違いに振り回されずにおいしく仕上げられます。まずは次の買い物で、もち米の袋の産地と品種名を確かめるところから始めてみましょう。
※品種の作付状況は年によって変わり、炊飯器の操作や水位は機種ごとに異なります。最新の情報は各機関・メーカーの公式ページでご確認ください。

コメント