「米粉でおもちっぽいおやつを作りたい。でも手元にあるのは普通の米粉で、もち粉じゃない。これでも作れるの?」。米粉の袋を前に、こんなふうに手が止まったことはありませんか。お米の粉はどれも白くて同じように見えます。ところが、原料がうるち米かもち米か、どんな機械でどこまで細かく挽いたかによって、仕上がりの食感は変わってくるんです。
先に結論をお伝えします。うるち米からできた一般的な米粉でも、水を加えて加熱すれば、もちっとした食感の「米粉もち」は作れます。農林水産省の米粉の紹介でも、米粉で調理するともちもちした仕上がりになることが特徴として挙げられています。ただし、大福の皮のようにのびるおもちを目指すなら、もち米が原料のもち粉や白玉粉のほうが向いているとされています。
この記事では、米粉ともち粉・白玉粉の違い、食感を左右するアミロースや粒の細かさ、袋の表示の見方、生地づくりと加熱のコツ、そして「ノングルテン米粉」の表示の読み方まで、理屈からひとつずつ解説していきます。
・うるち米の米粉でも「もちっ」とする理由と、もち粉・白玉粉との違い
・アミロース・粒度・でんぷん損傷度が食感に効く仕組み
・生地づくりと加熱で失敗しないコツ、場面別の作り分け
・「ノングルテン米粉」と「グルテンフリー」の表示の読み方
米粉もちとは?うるち米の粉なのに「もちっ」とする理由

米粉もちは「米粉で作る、もちのような食感の料理やおやつ」
米粉もちは、決まったひとつの料理名というより、米粉に水分を加えて加熱し、もちのような食感に仕上げたおやつや料理の呼び名として使われています。だんご風に丸めてゆでたもの、平たくして焼いたもの、じゃがいもと混ぜて焼くいももち風のものなど、形はさまざまです。
なぜ米粉でもちっとするのかというと、生地をまとめているのがでんぷんだからです。小麦粉の生地はグルテンという網目でつながりますが、お米にはそのグルテンがありません。代わりに、米粉のでんぷんが水と熱でのりのように変わり、弾力と粘りを生みます。農林水産省北陸農政局の米粉レシピのページでも、「米粉で調理するともちっとしており、日本人が大好きなもちもち食感の仕上がりが特徴です。米粉はふるわずに調理できるので、手軽につくれて、時間が経ってもしっとりとした仕上がりが続きます」と紹介されています(農林水産省 北陸農政局)。
台所でありがちなのは、名前から「もち米をついたおもちと同じものができる」と期待してしまうこと。うるち米の米粉で作るもちは、もっちりはしても、つきたてのおもちほどのびません。最初から「もちもち食感の米粉料理」と考えておくと、仕上がりに納得しやすくなりますよ。
もちもちの正体は、でんぷんが水と熱で変わる「糊化」
米粉もちの食感を決めるいちばんの現象は、でんぷんの糊化(こか)です。生のでんぷんは粒の中にぎゅっと詰まった硬い状態で、そのままでは粉っぽくて噛みごたえもありません。ここに水を含ませて加熱すると、粒が水を吸ってふくらみ、構造がほどけて、のりのような粘りが出てきます。これが「もちっ」の正体です。
反対に、糊化したでんぷんは冷えて時間がたつと、少しずつ硬く締まっていきます。これを老化といいます。ごはんが冷めると硬くなるのと同じ理屈ですね。米粉の料理は時間がたってもしっとりした仕上がりが続くとされていますが、それでも作りたてと冷めたあとでは食感が変わります。
やりがちな失敗は、表面に焼き色がついたところで火を止めてしまい、中心が白く粉っぽく残ること。水が足りない、または熱が中まで届いていないと、でんぷんが十分に糊化しません。生地の中心まで熱を通すこと、そして生地にしっかり水分を含ませておくこと。この2つが、もちもち食感の土台になります。食べるタイミングも、できれば温かいうちが向いています。
実は「米粉=もち米の粉」ではない
意外と知られていないけれど、「米粉」と書かれて製菓・料理用として売られている粉は、普段炊いているうるち米を原料にしたものが一般的とされています。「もち」という名前がつくとつい、もち米の粉を想像しがちですが、米粉もちは基本的にうるち米の粉で作るもの、と考えておくと整理しやすいです。
うるち米ともち米の違いは、でんぷんの中身にあります。お米のでんぷんには、まっすぐな鎖のようなアミロースと、枝分かれの多いアミロペクチンの2種類があり、もち米のでんぷんはほとんどがアミロペクチンでできているとされます。枝分かれの多いでんぷんほど、加熱したときに粘りやのびが出やすいんです。だからもち米の粉は「のびるもち」になり、うるち米の粉は「もっちりするけれど、ちぎれやすい」食感になります。
よくある勘違いは、「米粉なら全部同じ」と思って、和菓子のレシピの「もち粉」を製菓用米粉で置き換えてしまうこと。粉の名前ではなく原料を見る、これがいちばん確実な見分け方です。
米粉もちのもちもち感は、でんぷんが水と熱で糊化することで生まれます。うるち米の米粉でももっちりしますが、のびるおもちはもち米の粉の得意分野。目指す食感で粉を選ぶのが近道です。
もち粉・白玉粉と何が違う?原料と製法で見分ける
「もち粉」と名乗れるのは、もち米100%の粉だけ
まず押さえたいのは、もち粉の定義です。農林水産省東海農政局の米粉の種類の解説では、「もち粉とは、精白したもち米を水で洗い、乾燥させ粉状にしたもので、うるち米などを使用したものはもち粉とは言わず、もち米を100%使用しているものがもち粉と呼ばれます」と説明されています(農林水産省 東海農政局「米粉の種類」)。
つまり、うるち米が混ざっていればもち粉とは呼ばない、という線引きです。米粉もちの「もち」は食感を指す言葉で、もち粉の「もち」は原料のもち米を指す言葉。同じ「もち」でも意味が違うので、ここで混乱しやすいんですね。
具体的には、同じ白い粉でも、もち米100%のもち粉で作ると粘りとのびが強く、うるち米の米粉で作るとしっとりもっちりしつつも、引っぱるとちぎれやすい仕上がりになる傾向があります。レシピに「もち粉」とあるのに米粉を使うと、思ったほどのびずに戸惑うことがあります。
見分けるコツは、袋の原材料名を見ることです。「もち米」と書いてあればもち粉の仲間、「うるち米」または「米」とだけ書いてある場合はうるち米の米粉と考えてよい場面が多いです。迷ったら商品名ではなく、原材料名の欄を確かめましょう。
| 項目 | 米粉(製菓・料理用) | もち粉 | 白玉粉 |
|---|---|---|---|
| 原料 | うるち米(普通の白米) | もち米100% | もち米 |
| 製法 | ブレードミル・ジェットミルなどで細かく製粉 | 精白米を水洗い→水切り→生乾きで製粉 | 水挽製法で粉にする |
| 主な用途 | 菓子・パン・料理など多用途 | 大福餅、求肥、しるこ、最中など | 白玉だんご、求肥、大福餅、しるこなど |
| 食感の傾向 | しっとり・もっちり | 強いもちもち感 | 強いもちもち感 |
出典:農林水産省 東海農政局「米粉の種類」、農林水産省「米粉の特性」の記載をもとにお米の教科書編集部が作成
白玉粉ともち粉は、同じもち米でも「挽き方」が違う
白玉粉ともち粉は、どちらももち米が原料です。違いは粉にするときの方法にあります。東海農政局の解説では、もち粉は精白したもち米を水洗いして水を切り、生乾きの状態で製粉するもの、白玉粉は水挽製法により粉にしたもの、と整理されています。
水挽きは、水を含ませたお米を水と一緒に挽いていく方法として知られています。挽き方が違えば粉の粒の状態も変わり、水を加えたときのまとまり方や口当たりにも違いが出ます。白玉粉が袋の中でごろっとした塊になっているのを見たことがあるかもしれませんが、あれも製法の違いの表れです。
台所でありがちなのは、白玉粉ともち粉を「どっちももち米だから同じ」と考えて、水の量をそのまま流用してしまうこと。粉の状態が違うので、同じ水の量では生地が硬すぎたりゆるすぎたりしがちです。
コツは、粉を替えたらレシピの水を一度に入れず、少しずつ足して硬さを見ることです。白玉だんごなら白玉粉、大福の皮ならもち粉や白玉粉、というように、用途の欄に書かれている使い道を目安にすると選びやすくなります。
粉ごとの得意分野を知っておくと、レシピ選びで迷わない
粉選びで迷ったときは、「何を作りたいか」から逆算するのがいちばんです。東海農政局の解説では、もち粉の用途として大福餅、求肥、しるこ、最中など、白玉粉の用途として白玉だんご、求肥、大福餅、しるこなどが挙げられています。どちらも和菓子の「のび」と「やわらかさ」が欲しい場面です。
一方、うるち米の米粉は、菓子・パン・料理と幅広く使われています。米粉もちとして作るなら、いももち風の焼きもち、だんご風のおやつ、汁物に入れるすいとん風の具など、「もっちりしていれば十分」で、のびまでは求めない料理が向いています。うるち米ともち米そのものの違いを詳しく知りたい方はこちらも参考になります。

失敗しやすいのは、のびが欲しい和菓子をうるち米の米粉だけで作ろうとすること。皮が切れやすく、包むときに破れがちです。逆に、焼きもちのように形を保ちたい料理にもち粉を使うと、生地がだれやすくなります。粉の得意分野に合わせる、これが失敗を減らす近道です。
やりがちな失敗①:「米粉」と「もち粉」を取り違えて買ってしまう
米粉もち作りで最初につまずきやすいのが、粉の取り違えです。売り場では米粉、もち粉、白玉粉、上新粉などが並んでいて、パッケージも似ています。「米粉もちを作るから、もちと書いてある粉を」と、もち粉を手に取ってしまうケースはよくあります。
原因は、商品名だけで判断してしまうことにあります。前述のとおり、もち粉はもち米100%、製菓・料理用の米粉はうるち米が原料なので、同じレシピでも水の吸い方や加熱後の粘りが違います。米粉向けのレシピをもち粉で作ると、べたついて手につき、形を作りにくくなりがちです。反対に、もち粉向けのレシピを米粉で作ると、のびが出ずに物足りない仕上がりになります。
対策はシンプルで、レシピがどちらの粉を前提にしているかを確認し、袋の原材料名と照らし合わせることです。もし取り違えて買ってしまったら、無理にレシピ通り作るより、その粉に合った料理に切り替えたほうが満足のいく仕上がりになります。もち粉なら大福や求肥、米粉なら焼きもちやいももち、と使い道を変えれば無駄になりません。
食感を左右するのはアミロースと粒の細かさ

アミロースが多いとさっぱり、少ないとしっとり
同じうるち米の米粉でも、仕上がりの食感には差が出ます。その理由のひとつがアミロースの量です。農林水産省の米粉の特性の解説では、「高アミロース米ではパサパサしたパンになり、低アミロース米はしっとりとしたパンになるが腰折れやすくなります。ケーキでも同様に、高アミロース米粉はさっぱりとした食感で型崩れしにくく、低アミロース米粉はしっとり感が強まります」とされています(農林水産省「米粉の特性」)。
この理屈は米粉もちにも当てはめて考えられます。アミロースが少ないほど粘りが出やすく、しっとり寄りに。アミロースが多いほど、さっぱりとして形を保ちやすい方向になります。もち米はアミロースがほとんどないので、のびと粘りが際立つわけですね。
やりがちなのは、同じレシピで作ったのに前回と食感が違うと感じて、自分の腕のせいだと思い込むこと。粉の銘柄が変われば原料の品種も変わり、食感が変わるのは自然なことです。
コツは、気に入った食感の粉に出会ったら、同じ商品を使い続けること。袋に原料の品種が書かれていれば参考になりますが、アミロースの数値まで書かれていることは多くありません。商品を固定するのが、食感を安定させる確実な方法です。
粒度60μm以下・損傷度5%以下が「微細米粉」の目安
もうひとつの大きな要素が、粉の細かさ(粒度)と、製粉のときにでんぷんの粒が傷ついた割合(でんぷん損傷度)です。農林水産省の米粉の特性の解説では、「ブレードミルやジェットミル製粉は『損傷度5%以下』で『粒度60μm以下』の微細米粉が得られる傾向があります」と説明されています(農林水産省「米粉の特性」)。
粒が細かくそろっていると、水を加えたときに粉全体へ水分がなじみやすく、なめらかな生地になりやすいと考えられます。米粉もちのように、口当たりのよさが食感の満足度を左右する料理では、この細かさが効いてきます。タイトルの「60μm」はこの目安のことです。
失敗しやすいのは、粒の粗い粉を使って、生地がざらついたり、加熱後に口の中で粉っぽさが残ったりすること。同じ「米粉」でも製粉方法は機械によって異なり、ブレードミル、ジェットミル、低温製粉など、機械ごとに粒度や損傷度が変わるとされています。
コツは、製菓・料理用として売られている微細な米粉を選ぶこと。袋に製粉方法が書かれていれば、それも判断材料になります。米粉の細かさとお菓子の食感の関係は、こちらの記事でも詳しく解説しています。

損傷度が高いとしっとり、低いとふくらみが大きくなる
でんぷん損傷度は、食感の方向性を変える数字です。農林水産省の解説では、でんぷん損傷度が低いとふくらみが大きくなり、損傷度が高いとしっとり感が増すとされています。パン作りで「損傷度の低い粉を」と言われるのは、このふくらみやすさのためです。
では米粉もちではどうか。米粉もちはふくらませる料理ではなく、もっちり・しっとりした食感を楽しむ料理です。そのため、パン向けに損傷度を抑えた粉にこだわる必要は薄く、しっとり感が出る粉でも十分においしく仕上がると考えられます。目指す食感によって、「いい粉」の条件が変わるんですね。
台所でありがちなのは、「パン用の米粉が上等そうだから」と米粉もちにも使ってしまうこと。パン用は膨らみを前提に設計された区分なので、米粉もちで求める食感とは狙いが違います。食べられないわけではありませんが、思った食感にならないことがあります。
農林水産省も、製造しようとする製品に適した粒度、損傷度、水分などを確認して米粉を選ぶことが必要だとしています。家庭では数値までは分からなくても、「何用の粉か」を見るだけで大きく外しにくくなります。
アミロース:お米のでんぷんの成分のひとつ。多いとさっぱり、少ないとしっとり・粘りが出る傾向。
粒度:粉の粒の大きさ。ブレードミルやジェットミルでは60μm以下の微細な粉が得られる傾向。
でんぷん損傷度:製粉時にでんぷん粒が傷ついた割合。低いとふくらみが大きく、高いとしっとり感が増すとされる。
袋のどこを見る?もちもち食感に向く粉の選び方
まずは「菓子・料理用」の区分を探す
米粉もち用の粉を選ぶとき、最初に見たいのは用途の区分です。農林水産省は平成28年度(2016年度)に米粉の用途別加工適性基準を公表し、米粉を菓子・料理用、パン用、麺用の3種類に分けています。この基準では、1番が菓子・料理用、2番がパン用、3番が麺用という整理です(農林水産省「米粉の利用」)。
なぜ区分が必要かというと、前の章で見たとおり、粒度や損傷度、アミロースの量によって向く料理が違うからです。パン用は膨らみ、麺用はコシやつながり、菓子・料理用はなめらかさや扱いやすさ、というように狙う性質が異なります。
具体的には、袋に「菓子・料理用」「製菓用」などと書かれた米粉が、米粉もちに使いやすい候補です。やりがちな失敗は、家にあるパン用米粉をそのまま使い、生地の硬さや食感が想像と違ってしまうこと。
コツは、袋の表面だけでなく裏面の用途欄まで見ることです。区分の番号表示がない商品も多いので、「何に使う粉として売られているか」を確認すれば十分。迷ったら、菓子・料理用と書かれた粉を選んでおけば大きく外しません。
原材料名で「もち米」か「うるち米」かを確かめる
次に見たいのが原材料名です。米粉もちを作るなら、基本はうるち米の米粉。のびのある和菓子寄りに仕上げたいならもち粉や白玉粉、と使い分けます。商品名に「米粉」とあっても、原材料名を見れば原料がはっきりします。
理由は単純で、原料のでんぷんの性質がそのまま食感に出るからです。もち米はアミロペクチンが主体で粘りとのびが強く、うるち米はアミロースを含むぶん、もっちりしつつも形を保ちやすい。同じ水と同じ加熱でも、この違いは埋まりません。
台所でよくあるのは、家族が買ってきた粉を「米粉だろう」と思って使い、実はもち粉だったというケース。生地がべたついて手にくっつき、丸めるのに苦労します。原材料名を見れば一瞬で防げる失敗です。
コツとして、うるち米ともち米を混ぜて食感を調整する方法もあります。ただ、配合の目安を示した公的な資料は見当たらないため、まずはどちらか一方の粉でレシピどおりに作り、食感の好みが分かってから少しずつ調整するのがおすすめです。
お米の「精米時期」表示ルールは、米粉にそのまま当てはまらない
お米の袋を見慣れている方ほど、米粉の袋でも精米年月日を探したくなるかもしれません。ここは少し注意が必要です。玄米・精米の表示では、令和2年3月27日から精米年月日に加えて年月旬での表示も可能になり、令和4年4月1日から「精米時期」での表示になりました(香川県「玄米及び精米の表示」)。年月旬の表示では、上旬・中旬・下旬で時期を示します。
ただし、これは玄米・精米、つまりお米の粒の表示ルールです。米粉は粉に加工された食品なので、同じ書き方がされているとは限りません。精米時期を探して見つからず、「表示がない粉は古いのでは」と不安になる必要はありません。
コツは、米粉では期限表示と保存方法の欄を確認することです。開封後は湿気やにおいを吸いやすいので、袋の口をしっかり閉じ、表示された保存方法に従いましょう。米粉の鮮度は精米時期ではなく、商品ごとの表示で判断するのが基本です。
米粉もちの作り方|生地づくりで失敗しない流れ

水は少しずつ、「耳たぶ」くらいの硬さで止める
米粉もちの生地づくりで最も大事なのは、水を一度に入れないことです。米粉に水を少しずつ加えながら混ぜ、手でまとめられて、耳たぶくらいのやわらかさになったところで止めます。
理由は、米粉ごとに水の吸い方が違うからです。前の章で見たように、粒度や損傷度が違えば、同じ量の水でも生地の硬さが変わります。レシピの水の量はあくまでその粉での目安で、手元の粉でぴったり合うとは限りません。
台所でやりがちなのは、レシピの水を全部入れてから混ぜ始め、生地がゆるくなりすぎて丸められなくなること。そこから粉を足すと、全体の量が増えて味のバランスも崩れがちです。逆に水が少なすぎると、ひび割れてまとまらず、加熱しても粉っぽさが残ります。
コツは、レシピの水を全量の手前で一度止め、生地の様子を見ながら残りを足すこと。生地を指で押して、ひびが入らずなめらかにへこむくらいが目安です。生地がゆるくなったら、少量の粉を足して整えましょう。
ふるわずに使えるのは、米粉ならではの手軽さ
小麦粉のお菓子作りでは「まず粉をふるう」が定番ですが、米粉もちではその手間を省けます。前述の農林水産省北陸農政局の米粉レシピのページでも、米粉はふるわずに調理できると紹介されています。
理由のひとつは、米粉にはグルテンがないことです。小麦粉は混ぜすぎるとグルテンができて生地が硬くなるため、ダマを作らずさっと混ぜる工夫が必要になります。米粉はグルテンができないので、しっかり混ぜてもその心配がありません。むしろ、水と粉をよくなじませたほうが、でんぷんが均一に水を含み、加熱後のもちもち感がそろいやすくなります。
やりがちな失敗は、「ふるわなくていい」を「混ぜなくていい」と受け取り、粉のかたまりを残したまま加熱してしまうこと。中に乾いた粉の粒が残ると、そこだけ白く粉っぽい食感になります。
コツは、粉の段階で軽くほぐしてから水を加え、指先で生地をこねるようにして全体をなじませることです。生地の表面がなめらかになり、粉の粒が見えなくなれば準備完了。手間を省ける部分と省いてはいけない部分を分けて考えるのが、米粉もちを手軽においしく作る秘訣です。
じゃがいもと合わせるなら、200gに米粉40gを基準にする
米粉もちのアレンジで人気なのが、じゃがいもと合わせるいももち風です。たとえば、じゃがいも200gに米粉40gを混ぜてお焼き風に焼く使い方があります。加熱してつぶしたじゃがいもに米粉を加えてまとめ、平たくしてフライパンで焼けば、外は香ばしく中はもっちりした一品になります。
この組み合わせが合う理由は、じゃがいもにもでんぷんが多く含まれていることにあります。加熱したじゃがいものでんぷんと米粉のでんぷんが一緒にまとまり、もちもちした食感を作ります。米粉はつなぎの役目も果たし、形を保ちやすくしてくれます。
台所でありがちなのは、じゃがいもの水分量を考えずに粉を一気に入れ、生地がぱさついたり、逆にゆるくて形にならなかったりすること。じゃがいもは品種や加熱方法によって水分が変わるので、同じ重さでも生地の状態が変わります。
コツは、じゃがいも200gに米粉40gをひとつの基準にして、生地の様子を見ながら加減することです。手で丸めてひびが入るなら水分不足、手にべったりつくなら粉不足のサイン。焼くときは厚くしすぎず、両面にしっかり焼き色をつけて中まで温めましょう。
やりがちな失敗②:加熱不足で中心が粉っぽく残る
米粉もちでもうひとつ多いのが、加熱不足の失敗です。外側はちゃんと火が通っているのに、かじると中心が白く、粉っぽくてもっちりしない。この状態は、でんぷんが中心部で十分に糊化していないことが原因です。
なぜ起こるかというと、米粉の生地は熱が中心まで届くのに時間がかかるからです。特に生地を大きく、厚く作ったときや、焼き色がついた時点で「もう焼けた」と判断してしまったときに起こりがちです。焼く場合は、表面の焼き色と中心の火の通りが一致しないことを覚えておきましょう。
原因は、生地が厚い・大きいうえに、表面の焼き色だけで火の通りを判断してしまうこと。中心のでんぷんが糊化しきらず、白く粉っぽく残ります。対策は、生地を小さめ・薄めに成形し、焼くならふたをして蒸し焼きにする、ゆでるなら浮いてきてからもしばらくゆでること。1つ割って中心を確かめてから、残りを仕上げると確実です。
対策の基本は、生地を小さめ・薄めにして、熱が届きやすい形にすることです。ゆでる場合は、白玉だんごでよく言われるように、浮き上がってきてからもしばらく加熱すると中まで火が通りやすくなります。最初の1つを割って中心の色と食感を確かめれば、残りの加熱時間の判断がしやすくなります。
焼く・ゆでる・蒸す、どれがいい?場面別の作り分け
焼くなら、外は香ばしく中はもっちり
米粉もちを焼くと、表面に香ばしい焼き色がつき、中はもっちりという食感のコントラストが楽しめます。いももち風や平たく焼いたおやき風の米粉もちは、この焼き方が向いています。
理由は、表面の水分が飛んで焼き色がつく一方、内側には水分が残り、でんぷんが糊化してもちもちになるからです。また、米粉は小麦粉よりも油の吸収率が低いとされていて、油を使って焼いても、時間がたって油っぽさが出にくいと紹介されることがあります。
台所でやりがちなのは、フライパンに油を引かずに焼いて、生地がくっついて崩れてしまうこと。米粉の生地はでんぷんの粘りでフライパンにはりつきやすいので、薄く油を引いてから焼くのが無難です。また、強火で一気に焼くと、表面だけ焦げて中が粉っぽく残りがちです。
コツは、中火程度で両面に焼き色をつけ、そのあとふたをして少し蒸し焼きにすること。中心まで熱が回り、外の香ばしさと中のもっちり感が両立しやすくなります。焼きたてにしょうゆを絡めたり、のりを巻いたりと、味つけの幅が広いのも焼く方法の魅力です。
| 項目 | 焼く | ゆでる | 蒸す |
|---|---|---|---|
| 食感の傾向 | 外は香ばしく、中はもっちり | 表面がつるんとして、全体がやわらか | しっとり、ふっくらした口当たり |
| 向いている料理 | いももち風、おやき風、焼きもち | だんご、汁物の具 | まんじゅう風、具を包むもの |
| 注意点 | くっつき・中心の生焼け | 生地がゆるいと崩れやすい | 水滴が落ちるとべちゃつく |
ゆでる・蒸すは、生地の硬さと水分の加減が決め手
ゆでる方法は、だんご風の米粉もちにいちばん手軽です。たっぷりのお湯で生地をゆでると、表面がつるんとして、全体がやわらかく仕上がります。蒸す方法は、生地の水分が外に逃げにくく、しっとりふっくらした口当たりになりやすいのが特徴です。
どちらも、生地のまわりに水分がある状態で加熱するので、焼くより焦げの心配がなく、中まで均一に火を通しやすい方法です。そのぶん、生地そのものの硬さが仕上がりに直結します。
ゆでるときにやりがちなのは、生地がやわらかすぎて、お湯の中で形が崩れてしまうこと。耳たぶくらいの硬さを守り、丸めたらすぐお湯に入れるのが基本です。蒸すときの失敗は、蒸し器のふたについた水滴が生地に落ちて、表面がべちゃつくこと。ふたを布巾で包んでおくと防ぎやすくなります。
コツは、仕上げたい食感から方法を選ぶこと。つるんと食べたいならゆでる、しっとり包み込みたいなら蒸す、と覚えておけば迷いません。ゆでたあとは冷水にとると表面が引き締まり、扱いやすくなります。蒸して作るもちもちの米粉料理は、こちらの餃子の記事も参考になります。

こんな人には、この作り方がおすすめ
米粉もちは、作る人の目的によって向く方法が変わります。読者タイプ別に整理してみましょう。
子どもと一緒に手軽なおやつを作りたい人には、ゆでるだんご風がおすすめです。生地を丸めて落とすだけなので工程が少なく、きなこやあんこなど味つけも自由です。小さく丸めれば火の通りも早く、加熱不足の失敗も起こりにくくなります。ただし、もち状の食べものは小さく切って、よく噛んで食べるよう声をかけましょう。
夕飯のもう一品にしたい人には、じゃがいもを合わせた焼きのいももち風が合っています。主食と副菜の中間のような位置づけで、甘辛いたれやチーズなど、料理としての展開がしやすいのが利点です。
和菓子のように仕上げたい人は、前述のとおり、のびが欲しい場面ではもち粉や白玉粉を検討するのが近道です。米粉もちは「もっちり」、もち粉は「のびる」と、目的を分けて考えると選び方がはっきりします。
グルテンを含む原料を避けたい家族がいる人は、次の章で解説するノングルテン米粉の表示も確認しておくと、粉選びの手がかりになります。
「ノングルテン米粉」と「グルテンフリー」は同じ?表示の読み方
ノングルテンは「1ppm以下」の日本独自の基準
米粉の袋で「ノングルテン」という表示を見かけることがあります。これは「グルテンフリー」と似ていますが、基準が違います。農林水産省の米粉の特性の解説では、「欧米の基準であるグルテン含有量20ppm以下の『グルテンフリー』に対し、日本独自の『ノングルテン』を設定しました。ノングルテンは、わが国の世界最高水準検査法を活用した世界でも類を見ないグルテン含有量1ppm以下の米粉です」と説明されています(農林水産省「米粉の特性」)。
つまり、欧米のグルテンフリーが20ppm以下なのに対し、日本のノングルテンは1ppm以下と、より厳しい線が引かれているということです。お米そのものにはグルテンが含まれませんが、製粉の工場で小麦を扱っていると、混入の可能性があります。その混入をどこまで抑えたかを示すのが、この基準です。
やりがちな勘違いは、「米粉なら全部ノングルテン」と思い込むこと。表示がない米粉は、基準に沿って管理されたかどうかが分かりません。グルテンの混入を気にする場合は、表示の有無を確認するのが確実です。
JAS0014は「製造工程の管理」を確かめる規格
ノングルテン米粉には、国の規格もあります。農林水産省は、「製造工程においてグルテンが混入する可能性のある箇所を特定し、グルテンの混入を防ぐことにより、製品のグルテン含有量が1ppm以下となるように製造工程を管理する規格である『ノングルテン米粉の製造工程管理JAS(JAS0014)』を制定しました」としています(農林水産省「ノングルテン米粉の製造工程管理JAS」)。
この規格は令和2年10月に制定され、令和3年6月から認証が始まっています。ポイントは、出来上がった粉を検査するだけでなく、製造工程のどこで混入しうるかを特定して管理する点です。認証を受けた事業者は、JASマークを会社のホームページやチラシに使うこともできます。
また、日本米粉協会が管理する第三者認証制度も、平成30年6月から実施されています。国の規格と業界団体の認証、どちらもノングルテンの管理を示す目印として使われています。
コツは、袋や販売ページで「ノングルテン」の表示や認証の記載を探すこと。記載が見つからなければ、メーカーの案内で製造管理の方法を確かめるのが確実です。
欧米のグルテンフリーは20ppm以下、日本のノングルテン米粉は1ppm以下。ノングルテン米粉の製造工程管理JAS(JAS0014)は、製造工程でのグルテン混入を防ぐ管理を確かめる規格です。表示は「粉そのもの」の管理を示すもので、家庭での調理環境までは保証しません。
表示は「家庭での安心」まで約束するものではない
ここで大切なのは、ノングルテンの表示が何を示しているかを正しく理解することです。この表示は、米粉という製品そのもののグルテン含有量と、その製造工程の管理を示すものです。家庭で作る米粉もちがグルテンを含まないかどうかは、別の話になります。
理由は、家庭の台所では調理の過程で小麦粉と接触する機会があるからです。同じボウルや計量カップ、まな板を使う、小麦粉を使った料理と同じ揚げ油を使う、きなこやたれなど米粉以外の材料に小麦由来の成分が含まれている、といった経路が考えられます。粉が基準を満たしていても、これらは表示の範囲外です。
やりがちなのは、「ノングルテンの粉を使ったから大丈夫」と、ほかの材料や調理器具の確認を省いてしまうこと。表示は粉選びの手がかりであって、料理全体の安全を約束するものではありません。体調や食事制限については、医師・管理栄養士に相談してください。
コツとしては、米粉以外の材料の原材料表示も確認し、調理器具は使う前によく洗っておくことです。粉の表示と台所での管理、両方そろってはじめて、目的に合った米粉もちになります。
まとめ
米粉もちのもちもち感は、でんぷんが水と熱で糊化することで生まれます。原料がうるち米かもち米か、粒の細かさや損傷度、アミロースの量によって食感は変わるので、作りたいものに合わせて粉を選ぶのがいちばんの近道です。まずは手元の米粉の袋を裏返して、原材料名と用途の欄を確かめてみてください。そのうえで、水を少しずつ加えて小さなだんごを1つゆで、中心まで火が通る感覚をつかむところから始めてみましょう。
※米粉の用途別基準やノングルテン米粉の規格など、最新の内容は農林水産省のページでご確認ください。

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