米粉で麺を打ってみたいけれど、小麦のうどんと同じ感覚で作っていいのか、どの米粉を買えばいいのか、米粉は何割入れればいいのか。米粉麺レシピを調べると、ゆで時間を2分程度とする資料もあれば、12〜15分とする資料もあります。かえって迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
先に答えをお伝えします。迷ったら、農林水産省の中国四国農政局が公開している手打ち米粉うどんの配合から始めるのが確実です。米粉20〜60%に中力粉を合わせた粉400gで5玉分を作ります。片栗粉を打ち粉にして厚さ3mm程度に延ばし、3mm幅に切って、大きな鍋でゆでる。この流れに沿えば、家庭でももちもちした米粉うどんが打てます。ゆで時間が資料によって違うのは、どちらかが間違っているからではありません。材料も麺の作り方も違う、別々のレシピの数字だからなんです。
この記事では、まず米粉麺が小麦の麺と別物になる理由を説明します。そのうえで、麺に向く米粉の選び方、5つの配合の一覧、季節で変わる寝かせ時間、ゆでムラや糊状を防ぐ切り方とゆで方を順に見ていきます。最後に、ニョッキへの応用とグルテンの注意点も取り上げます。どれも公的資料をもとに説明しますので、台所で手を動かす前の下準備として読んでみてください。
・米粉の生地が小麦粉の生地と違う理由(塩・つなぎ・捏ね方)
・麺に向く米粉の選び方(用途別基準の麺用とアミロース25%以上の意味)
・米粉20〜60%の5つの配合と、季節で変わる寝かせ時間・塩水の濃度
・ゆでムラや糊状を防ぐ3mm幅の切り方と、大鍋でのゆで方
米粉麺レシピを読む前に|小麦のうどんと生地づくりが別物になる理由

米粉の生地は鍛えるより、水をなじませるのが基本
米粉麺の生地づくりで最初に切り替えたいのは、「捏ねてコシを出す」という小麦のうどんの発想です。農林水産省の米粉の調理科学の解説では、米粉うどんの生地は水がなじむように捏ねて全体をひと塊にするだけでよく、手にくっつかない程度にまとまれば麺棒で薄く延ばせる、とされています(農林水産省「米粉の調理科学」)。
理由はお米と小麦の成分の違いにあります。小麦粉の生地は、捏ねるほどグルテンのつながりができて、伸びて縮む弾力が生まれます。お米にはグルテンがないので、長く捏ねても小麦のような網目は育ちません。ですから米粉の生地では、粉の一粒ひと粒に水を行き渡らせることが仕事の中心になるんです。
やりがちなのは、小麦のうどんの感覚で「まだコシが出ない」と捏ね続けてしまうことです。捏ねる時間を延ばしても、米粉の生地はコシの出方が変わりにくいと考えられます。手の熱で生地が乾いてしまえば、かえって延ばしにくくなることもあります。
目安にしたいのは捏ねた時間ではなく、生地の状態です。粉っぽさが消えたか、手にべたつかなくなったか、この2点を確かめてください。ここまで来たら次の工程に進んでかまいません。
塩は小麦うどんで粉の約4%、米粉うどんでは少々でいい
塩の使い方も、小麦のうどんと米粉のうどんでは考え方が違います。同じ農林水産省の解説によると、小麦粉で作るうどんは生地の粘弾性を高めるために粉の約4%の食塩を加えてよく捏ねます。一方、米粉うどんでは食塩は生地作りにとくに必要ではなく、少々加える程度とされています。
この差もグルテンから説明がつきます。小麦うどんの塩は、味つけだけでなく、グルテンの性質を整えて生地を引き締める役目を担っています。米粉にはそのグルテンがないため、塩で生地を締める必要がありません。役割の半分がなくなるので、量も少しで足りるわけです。
ただし、ここで注意してほしいことがあります。後で紹介する中国四国農政局の手打ち米粉うどんは、米粉に中力粉(小麦粉)を混ぜる配合です。小麦粉が入る以上、塩水を使う讃岐うどんと同様の製法で打ちます。「米粉うどんだから塩は少しでいい」と覚えてしまうと、小麦粉を混ぜるレシピで塩を減らしすぎる失敗につながります。
米粉と麺用の材料だけで作るのか、中力粉を混ぜるのか。まずレシピの材料欄でここを確認してから、塩の量を決めてください。
つなぎ役は片栗粉。折りたためないので薄く延ばして切る
グルテンがない米粉の生地は、それだけではちぎれやすくなります。そこで農林水産省の解説では、米粉うどんに麺用米粉を使い、つなぎの役割として片栗粉を用いると紹介されています。片栗粉はでんぷんの粉で、生地全体を支える助けになるとされています。
もうひとつ覚えておきたいのは、切り方の違いです。小麦のうどんは、延ばした生地を何層かに折りたたんでから切るのが一般的ですよね。ところが解説によると、米粉うどんの生地は折りたたむことが難しいため、薄く延ばした状態のまま細く切り出します。グルテンの伸びがないので、折り目で割れやすいためと考えられます。
よくあるのは、小麦のうどんの手順書どおりに生地を折りたたんで、折り目から割れてしまう失敗です。米粉の配合が多いレシピほど、この点は気をつけたいところです。
延ばした生地は、まな板の上に広げたまま包丁を入れましょう。麺の長さはまな板の幅で決まるので、長い麺にしたいときは大きめの台を用意しておくと作業が楽になります。
つなぎ:生地がばらけないように支える材料のこと。農林水産省の解説では、米粉うどんには片栗粉、米粉ニョッキには卵がつなぎの役割を持つと紹介されています。
麺用米粉:農林水産省の米粉の用途別基準で、菓子・料理用、パン用と並ぶ区分のひとつです。アミロースの多い米粉が麺に向くとされています。
ゆでたら冷水へ。もちもち感はここで生まれる
米粉麺らしいもちもちした食感を左右するのが、ゆでた後のひと手間です。農林水産省の解説は、「ゆでた後、冷水にさらすとモチモチ感のある米粉うどんとなり、冷やしても温かくしてもおいしく食べられます。」としています。
冷水にさらすと、麺の表面が一気に冷えて締まります。ゆで上がった直後の麺は、表面がやわらかく、余分なでんぷんがまとわりついた状態です。これを洗い流して表面を締めることで、口当たりがはっきりすると考えられます。
やりがちなのは、温かいうどんにするからと、ゆでた麺をそのまま丼に移してしまうことです。表面のぬめりが残ったままだと、つゆが濁りやすく、麺同士もくっつきやすくなります。
温かいうどんにする場合も、一度冷水で締めてから温め直す流れにしておくと扱いやすくなります。冷水での洗い方の具体的な手順は、ゆで方の章で詳しく説明します。
麺に向く米粉はどれ?袋の用途表示とアミロース25%の意味
用途別基準は菓子・料理用、パン用、麺用の3区分
米粉麺に使う粉を選ぶとき、頼りになるのが農林水産省の米粉の用途別基準です。2017年3月29日に、ノングルテン米粉製品の表示に関するガイドラインと一緒に公表されました。用途別基準では、米粉の主な用途を菓子・料理用、パン用、麺用の3区分に分けています(農林水産省「米粉の用途別基準」)。
区分があるのは、同じ米粉でも原料のお米の性質や製粉のしかたによって、向いている料理が変わるからです。ふんわり焼きたいお菓子、ふくらませたいパン、ゆでても形を保ちたい麺では、粉に求められる性質がまるで違います。そのため基準では、米粉製造業者が用途を表記することとされています。
よくあるのは、家にある製菓用の米粉で「とりあえず」麺を打ってしまうことです。製菓用で麺を打った場合の結果は公的資料に書かれていないので、ここでは断定しません。ただ、用途別基準があえて麺用を独立させていることを考えると、麺には麺に向く粉を選ぶのが筋だといえます。
米粉を買うときは、袋の表や裏の用途表示を確認しましょう。麺用と書かれているか、それとも菓子・料理用やパン用なのか。用途を書く決まりがあるので、見比べれば違いがわかります。
| 項目 | 1番(菓子・料理用) | 2番(パン用) | 3番(麺用) |
|---|---|---|---|
| アミロースの目安 | 菓子用は15%未満のソフトタイプ | 15%以上20%未満 | 25%以上で強弾力の麺への適性が高い |
| でんぷん損傷度 | 10%未満 | 10%未満 | 10%未満 |
| 米粉麺レシピでの出番 | 麺には使わない | 米粉ニョッキに使う | 米粉うどんに使う |
出典:農林水産省「米粉の用途別基準」「米粉の調理科学」の解説ページの記述をもとに作成
アミロースが多い米粉ほど、ゆでても形を保つ麺に向く
麺用米粉を見分けるもうひとつの手がかりが、アミロースの含有率です。用途別基準には、3番の米粉のうちアミロース含有率25%以上のものは強弾力の麺への適性が高い、という記載があります。そのうえで、米粉製造業者は表示などで消費者に積極的に情報を伝えるよう努めることとされています。
アミロースは、お米のでんぷんを作る成分のひとつです。もうひとつの成分であるアミロペクチンに比べてアミロースが多いお米ほど、粘りが少なく、硬めでしっかりした食感になる傾向があります。農林水産省の調理科学の解説でも、菓子用は15%未満のソフトタイプ、麺用は25%以上のハードタイプと用途別に分類されていると紹介されています。
お餅のように粘りの強いお米の粉で麺を打つと、ゆでたときに形を保ちにくくなると考えられます。麺がゆで湯の中でばらけずに残ってほしいからこそ、アミロースの多い粉が選ばれているわけです。
袋にアミロース含有率が書かれていれば、25%以上かどうかを見てください。強い弾力の麺にしたいときの目安になります。数値が書かれていなくても、麺用の表示があれば用途に合った粉と考えてよいでしょう。

赤飯を炊こうとして、お米の袋を前に手が止まったことはありませんか。うるち米ともち米は、どちらもお米なのに、炊くと粘りがまるで違います。ふだんのごはんと同じ水加減…
日本米粉協会の推奨マークも目印になる
店頭で米粉を選ぶとき、用途表示とあわせて見ておきたいのがマークです。日本米粉協会は、用途別基準に適合する製品に推奨マークを付ける仕組みを設けているとされています。
用途別基準は国が示した目安です。ただ、米粉の袋の表示は製品によって書き方がばらばらで、用途の文字が小さく、見落としやすいこともあります。マークがあれば、基準に沿っているかどうかを一目で判断しやすくなります。
やりがちなのは、袋の大きな「米粉」の文字だけを見て選び、細かい表示を読まずに買ってしまうことです。米粉はどれも白い粉で見た目では区別できないので、表示を読まないと用途の違いに気づけません。
マークの有無は、あくまで選ぶときの手がかりのひとつです。マークがない製品でも、用途表示やアミロースの記載があれば判断できます。迷ったら、製粉メーカーの公式サイトで用途を確認しておくと安心です。
袋のどこを見る?米粉麺用の粉を選ぶ確認順
ここまでの話を、売り場で確認する順番に並べておきます。最初は用途表示で、麺用かどうかを見ます。次にアミロース含有率の記載があるかどうか、あれば25%以上かどうかを確かめます。最後に、作りたいレシピの材料欄が指定している粉の種類と合っているかを照らし合わせます。
この順番にしているのは、レシピによって求める粉が違うからです。後で紹介する中国四国農政局の手打ち米粉うどんは、うるち米から作られた微細粒粉を使い、中力粉と合わせる配合です。しかも、グルテン入りの微細粒粉と微細粒粉100%の2種類で分量が分かれています。レシピの粉と手元の粉が違えば、分量どおりに作っても同じ生地にはなりません。
よくある失敗が、パン用米粉を麺に使ってしまうことです。パン用米粉の中にはグルテンを加えた製品もあり、その場合は生地の性質も、グルテンを避けたい方への向き不向きも変わってきます。
原材料欄に小麦たんぱく(グルテン)の表示があるかどうかも、最後に確認しておきましょう。米粉だけでできた粉かどうかで、配合の読み方が変わります。
米粉20%から60%まで|5つの配合を一覧で比べる

基準は粉400gで5玉分。中力粉と合わせる讃岐うどん流
家庭で作る米粉麺の配合として、具体的な分量まで公開されている公的資料があります。農林水産省中国四国農政局の「手打ち米粉うどん 実践版」です(中国四国農政局「米粉で簡単Cooking!手打ち米粉うどん 実践版」)。香川県の作り手が作成・監修したもので、手打ち讃岐うどんと同様の製法で打つレシピとして紹介されています。
分量は5玉(5人分)で、粉の合計は400gです。米粉の割合は20%、30%、40%、50%、60%の5パターンがあり、残りは中力粉で補います。米粉だけで打つのではなく小麦粉と合わせるので、小麦のうどんに近い感覚で作業を進められるのが特徴です。
やりがちなのは、米粉の割合だけを見て粉を量り、残りの中力粉の量を自分で計算してしまうことです。後で説明するとおり、このレシピは使う米粉の種類によって分量が変わります。自分で割り算すると数字がずれてしまいます。
粉は計算せず、下の表の数字をそのまま量りましょう。表は「お米の教科書」が実践版の配合表から整理したものです。
| 項目 | 米粉20% | 米粉30% | 米粉40% | 米粉50% | 米粉60% |
|---|---|---|---|---|---|
| グルテン入り微細粒粉の場合(米粉+中力粉) | 100g+300g | 150g+250g | 200g+200g | 250g+150g | 300g+100g |
| 微細粒粉100%の場合(米粉+中力粉) | 80g+320g | 120g+280g | 160g+240g | 200g+200g | 240g+160g |
| 水 | 190cc | 190cc | 190cc | 200cc | 210cc |
| 塩(夏8%用) | 15g | 15g | 15g | 17g | 18g |
出典:農林水産省中国四国農政局「手打ち米粉うどん 実践版」の配合表をもとに作成。粉の合計はいずれも400g・5玉分、打ち粉は片栗粉適量
実は、同じ米粉20%でも量る米粉の重さが違う
表を見て「あれ?」と思った方もいるかもしれません。同じ米粉20%なのに、グルテン入り微細粒粉では米粉100g、微細粒粉100%では米粉80gと、量る重さが違っています。意外と知られていないのですが、これは誤植ではありません。
実践版の配合表には、「グルテンは米粉比率から除外しています。」という注記があります。つまり、小麦由来のグルテンが入った米粉を使う場合、袋の中身のうちグルテンの分は米粉として数えていないのです。グルテン入りの粉を多めに量ることで、お米の粉としての割合をそろえていると読めます。
ここを見落とすと、手元の粉がどちらのタイプか確かめずに、片方の列の数字で量ってしまいます。実際の米粉の割合が表示より多くなったり少なくなったりして、水の量と合わなくなる原因になります。
量る前に、手元の米粉の原材料欄を見てください。小麦たんぱく(グルテン)が入っていれば上の行、米粉だけなら下の行の数字を使います。ちなみに実践版の微細粒粉は、うるち米から作られたものと記載されています。
米粉を増やすと、水も塩も少しずつ増える
表の水と塩の行にも、読み取れることがあります。米粉20〜40%までは水190cc・塩15gで同じですが、米粉50%では水200cc・塩17g、60%では水210cc・塩18gへと増えています。
資料には増やす理由までは書かれていません。ただ、米粉と小麦粉では水の吸い方が違うため、米粉の割合が増えたぶん水を足して、生地の硬さをそろえていると考えられます。塩は、水を増やしても塩水の濃度が変わらないように合わせて増やしている、と読むのが自然です。表の塩の量が「夏8%用」とされていることからも、塩の量は水との組み合わせで決まっていることがわかります。
やりがちなのは、米粉の割合だけ60%に上げて、水と塩は20%の数字のまま作ってしまうことです。水が足りないと粉っぽさが残り、生地が延ばしにくくなります。
配合を変えるときは、粉・水・塩をすべて同じ列の数字で量ってください。表を縦に一列読むのが、失敗しないいちばんの近道です。
初めて打つなら何%から?割合の選び方
5つの配合のうちどれから始めるかは、作る人の慣れで決めるのがよいでしょう。初めて手打ちに挑戦するなら、米粉20%から始めるのがおすすめです。慣れてきたら30%、40%と米粉の割合を上げていく順番が無理がありません。
米粉20%なら中力粉が生地の大部分を占めます。生地の扱いは、小麦の手打ちうどんに近いと考えられます。米粉の割合を上げるほど小麦の生地から離れていくので、扱いのクセも変わっていくはずです。最初の1回は、勝手のわかる配合で手順そのものに慣れておきましょう。
やりがちなのは、「せっかく米粉麺を作るなら」と、いきなり60%で始めてしまうことです。延ばす・切る・ゆでるの工程に慣れていない段階でうまくいかないと、配合のせいなのか手順のせいなのか、原因が切り分けられなくなります。
毎回、作った配合と寝かせた時間をメモに残しておきましょう。次に割合を上げたとき、どこが変わったのかを比べられます。食感の好みは家庭ごとに違うので、メモを重ねていけば、わが家に合う割合が見えてきます。
米粉麺レシピの手順|手打ち米粉うどんを3mm幅に切るまで
塩水を作って粉と合わせる
ここからは、中国四国農政局の実践版に沿って手順を見ていきます。最初の工程は、配合表の水に塩を溶かした塩水づくりです。表の塩の量は夏8%用なので、季節によって濃度を調整します。調整の目安は、次の章で詳しく説明します。
塩を先に水へ溶かしておくのは、粉に塩がむらなく行き渡るようにするためと考えられます。粉の上に塩を直接ふると、溶け残った塩が一か所に固まりやすいからです。小麦粉が入るこのレシピでは、塩は生地を引き締める役目も担います。第1章で触れたとおり、米粉と麺用の材料だけで作る場合とは、塩の役割が違います。
やりがちなのは、塩が溶けきる前に粉へ注いでしまうことです。底に塩が残ったまま注ぐと、最初に入れた水は薄く、最後の水は濃くなります。生地の場所によって塩気がばらつく原因になります。
塩水はよくかき混ぜて、塩の粒が見えなくなってから使いましょう。粉は米粉と中力粉を先にボウルで混ぜておきます。そこへ塩水を回し入れ、水が全体になじむように合わせていきます。
生地を寝かせて、水を全体に行き渡らせる
粉と塩水を合わせて生地にしたら、すぐには延ばさず、常温で寝かせます。実践版の寝かせ時間は季節で分かれていて、夏は30分〜1時間が目安です。春秋と冬はもっと長くとります。
寝かせる目的は、合わせた直後の生地の中で、まだばらついている水分を粉の芯まで落ち着かせることだと考えられます。小麦粉の入ったこの生地では、時間をおくことで生地がなじみ、延ばしやすくなるとされています。米粉の生地づくりが「水をなじませるのが基本」だったことを思い出すと、寝かせる意味がつかみやすいはずです。
よくあるのは、早く食べたいからと寝かせる時間を飛ばしてしまうことです。生地が落ち着かないまま延ばすと、麺棒をかけても戻りやすかったり、表面が割れやすかったりします。結局、延ばす工程で時間がかかってしまいます。
寝かせている間は、生地をラップや袋で包んで乾燥を防ぎましょう。この間に、ゆでるための大きな鍋や、打ち粉の片栗粉、まな板と包丁を準備しておくと段取りがよくなります。
片栗粉を打ち粉に、麺棒で厚さ3mm程度へ
寝かせた生地は、片栗粉を打ち粉にして麺棒で延ばします。実践版では、厚さ3mm程度まで延ばす手順になっています。打ち粉の量は適量です。
小麦のうどんでは小麦粉を打ち粉にすることも多いですが、このレシピでは片栗粉を使います。片栗粉はさらっとした粉なので、生地の表面に薄く広がり、台や麺棒にくっつくのを防ぐ役目を果たします。第1章で紹介したとおり、米粉うどんでは片栗粉がつなぎ役としても使われる、相性のよい粉です。
やりがちなのは、生地がくっつくたびに打ち粉をどんどん足してしまうことです。表面に残った打ち粉は、ゆでるときにお湯を粘らせる原因になります。これはゆで方の章で、失敗例として詳しく取り上げます。
延ばすときは、中心から外へ向けて少しずつ麺棒を転がし、生地を回しながら全体を同じ厚さにそろえていきます。端だけ厚く残ると、そこだけ麺が太くなってゆでムラにつながるので、端まで手を抜かずに延ばしましょう。
屏風折りにして、包丁で3mm幅に均等に切る
延ばし終わったら、生地に打ち粉を振り、屏風折りにしてから切ります。屏風折りは、生地を山折りと谷折りの交互に、屏風のように重ねる折り方です。そこへ包丁を入れ、3mm幅の間隔で切っていきます。
第1章で、麺用米粉と片栗粉で作る米粉うどんの生地は折りたたむことが難しい、と紹介しました。一方、この実践版は中力粉を混ぜる配合なので、小麦の生地の伸びがあり、屏風折りができます。同じ「米粉うどん」でも、配合によって切り方が変わるわけです。打ち粉を振るのは、重ねた生地同士がくっつかないようにするためです。
実践版には、切り方に関する注意も書かれています。切り幅が不均等だと、ゆでムラの原因になります。太い麺と細い麺が同じ鍋に入れば、太い麺に火が通るころには細い麺がゆですぎになってしまうからです。
包丁は上から下へまっすぐ押し切り、手前に引かないようにすると幅がそろいやすくなります。切った麺はすぐにほぐし、打ち粉の上に広げておきましょう。
状況:のどごしをよくしようと3mmより細く切ったり、切り幅がばらばらになったりする。
原因:実践版は「細すぎると茹で過ぎた時には、糊状になる恐れがあります。」と注意しています。切り幅が不均等だと、ゆでムラの原因にもなります。
対策:包丁で3mm幅の間隔にそろえて切ります。細さの好みは、切り幅ではなくゆで時間の調整で探りましょう。
寝かせ時間は季節で変わる|夏30分〜1時間、冬2〜3時間の理由
夏・春秋・冬で分かれる寝かせ時間の目安
実践版の寝かせ時間は、常温で夏30分〜1時間、春秋1〜2時間、冬2〜3時間と、季節ごとに分かれています。冬は夏の数倍の時間をみておく計算です。
資料には季節で分ける理由まで書かれていません。ただ、常温で寝かせる以上、台所の気温が生地の状態に影響するのは自然なことです。気温の高い夏は生地の中で水がなじむのが早く、寒い冬はゆっくり進むと考えると、時間の差に納得がいきます。手打ち讃岐うどんと同様の製法とされていることからも、季節に合わせて生地の扱いを変える、昔ながらの手打ちの考え方を受け継いでいると読めます。
やりがちなのは、レシピに書かれた時間を、季節を問わず一律に当てはめてしまうことです。夏の時間を冬に使えば寝かせ不足になり、冬の時間を夏に使えば寝かせすぎになります。
作る日の季節に合った目安を選んでください。目安の幅の中でも、最初は短めの時間で生地の状態を見ると判断しやすくなります。触って延ばしやすそうな柔らかさになっていれば、次の工程に進む合図です。
| 項目 | 夏 | 春・秋 | 冬 |
|---|---|---|---|
| 塩分濃度の目安 | 6〜8% | 5〜7% | 4〜6% |
| 寝かせ時間(常温) | 30分〜1時間 | 1〜2時間 | 2〜3時間 |
| 気をつけたいこと | 配合表の塩は夏8%用 | 日によって気温差が大きい | 暖かい場所なら時間を調整 |
出典:農林水産省中国四国農政局「手打ち米粉うどん 実践版」
塩水の濃度も季節で変える
季節で変わるのは、寝かせ時間だけではありません。実践版では塩分濃度の目安も、夏6〜8%、春秋5〜7%、冬4〜6%と季節で分けています。配合表の塩の量(米粉20〜40%で15g)は夏8%用なので、夏以外の季節は塩を控えめに調整することになります。
讃岐うどんの手打ちでは、昔から季節で塩の加減を変えるとされてきました。暑い時期は生地がだれやすいので塩をきかせ、寒い時期は控えめにする、という考え方と読めます。小麦粉が入るこのレシピでは、塩は生地を引き締める役目を担っています。季節に合わせて濃度を変えるのは、気温による生地の状態の違いを塩で整えるためと考えられます。
やりがちなのは、配合表の塩の量を一年中そのまま使ってしまうことです。冬に夏用の濃度で打つと、塩が多すぎて生地が締まりすぎたり、塩気が強く感じられたりすることがあります。
夏以外に作るときは、表の塩の量を基準に、目安の濃度の範囲で少しずつ減らしてみてください。濃度と寝かせ時間をセットでメモしておけば、季節ごとのちょうどいい加減が見つかります。
冬でも暖かい部屋なら、寝かせ時間を調整する
季節の目安は、あくまで常温の台所を前提にした数字です。実践版には、「但し、冬でも暖かい場所に置く場合は、寝かせ時間を適宜調整してください。」という注記があります。
カレンダーの季節より、生地が置かれている場所の温度が大事だということです。冬でも暖房のきいた部屋に生地を置けば、生地の周りの温度は春秋や夏に近くなります。その状態で冬の目安どおりに2〜3時間寝かせると、寝かせすぎになるおそれがあります。
よくあるのは、冬だからと暖房の近くやストーブのそばに生地を置き、そのまま長時間放置してしまうことです。生地が温まりすぎると表面が乾いたり、状態が変わったりして、延ばしにくくなることがあります。
冬に暖かい部屋で寝かせる場合は、短めの目安から生地の様子を見てください。暖房の風が直接当たる場所は避けましょう。季節ではなく部屋の温度で考えるのがコツです。
ゆで時間は2分?12〜15分?大きな鍋でゆでたい理由
2分と12〜15分は、別のレシピの数字
米粉麺レシピを調べて混乱しやすいのが、ゆで時間です。農林水産省の調理科学の解説は、「米粉うどんのゆで時間は2分程度で小麦粉うどんの10分前後より短いので、操作時間も含めて短時間でできる手軽な手づくりうどんが楽しめます。」としています。一方、中国四国農政局の実践版は、沸騰後約12〜15分ゆでる手順です。
この2つは矛盾しているわけではありません。解説の2分程度は、麺用米粉に片栗粉をつなぎにして、薄く延ばして細く切り出す米粉うどんの話です。実践版の12〜15分は、中力粉を混ぜて厚さ3mm程度に延ばし、3mm幅に切る讃岐うどん流の麺の話です。材料も麺の太さも違うので、ゆで時間が違うのは当然なんです。
やりがちなのは、実践版の配合で打った麺を「米粉うどんは2分程度」という記述どおりにゆでてしまうことです。中力粉の入った太い麺は芯まで火が通らず、硬いまま食べることになりかねません。逆に、細く切った米粉の麺を12〜15分ゆでれば、ゆですぎになってしまいます。
ゆで時間は、自分が作ったレシピの資料に書かれた数字を使いましょう。レシピをまたいで数字を借りないことが大切です。
大鍋で強火、浮いたら弱めてゆっくり泳がせる
実践版では、なるべく大きな鍋でお湯を沸騰させ、切った麺を箸で鍋底からほぐしながら入れる手順になっています。始めは強火で、麺が浮いてきたら火を弱め、麺が鍋の中をゆっくり泳ぐくらいに保ちます。沸騰は、吹きこぼれない程度に続けます。
大きな鍋を使うのは、お湯の量に余裕があるほど、麺を入れたときの温度の下がり方が小さく、すぐに沸騰に戻りやすいからです。お湯がたっぷりあれば麺同士がくっつきにくく、麺の表面から溶け出したでんぷんでお湯が濁っても、粘りすぎることがありません。麺が浮いてから火を弱めるのは、激しい沸騰で麺がもまれて、ちぎれたり表面が崩れたりするのを防ぐためと考えられます。
麺を一度にまとめて鍋に落とすと、底でくっついた塊ができやすくなります。箸で底からほぐしながら入れるという手順は、それを防ぐためのものです。
5玉分を一度にゆでるのが難しい鍋なら、何回かに分けてゆでましょう。お湯の量に対して麺を詰め込まないことが、ゆでムラを防ぐ近道です。
状況:延ばすときに足した片栗粉の打ち粉をたっぷり付けたまま、家にある小さめの鍋で麺をゆでる。
原因:実践版によると、麺に打ち粉が多く残っていると、湯量が少ない鍋でゆでた際にお湯が粘り、麺をうまくゆで上げられません。
対策:鍋に入れる前に余分な打ち粉を軽くはたき、なるべく大きな鍋でたっぷりのお湯を使います。量が多いときは分けてゆでましょう。
時間より試食。コップの水で冷やして硬さを決める
実践版のゆで時間は沸騰後約12〜15分ですが、資料には、湯量・火力・麺の量に違いがあるため随時試食するよう書かれています。具体的には、コップに水を入れておき、ゆでている麺を1本取って冷やし、食べて好みの硬さを決める方法です。
ゆで時間に幅があるのは、家庭ごとに条件がばらばらだからです。鍋の大きさが違えばお湯の量が違い、コンロが違えば火力が違います。一度に入れる麺の量でも、お湯の温度の戻り方が変わります。同じ12分でも、台所が変われば麺の仕上がりは変わるわけです。
やりがちなのは、タイマーだけを頼りに引き上げることです。また、試食するときに熱い麺をそのまま食べるのも判断を誤るもとです。熱いうちは柔らかく感じても、冷水で締めると硬く感じることがあります。コップの水で冷やしてから食べるのは、仕上がりの状態に近づけて確かめるためと考えられます。
12分を過ぎたあたりから試食を始め、好みの硬さになったところで引き上げましょう。その日にかかった時間をメモしておけば、次回からはわが家の台所に合った目安になります。
冷水で手もみして、ぬめりを取りながら洗う
ゆで上がった麺は、ザルなどの容器に移し、冷水(水道水)で手もみしながらぬめりを取って洗います。第1章で紹介したとおり、米粉うどんは冷水にさらすことでもちもち感が出るとされています。この洗いの工程が、仕上がりを大きく左右します。
手もみするのは、麺の表面に付いたでんぷんのぬめりを落とすためです。ゆで上がった麺の表面には、溶け出したでんぷんや打ち粉の片栗粉が残っています。これを水で流すだけでは落ちきらないので、手でやさしくもみながら洗います。表面がすっきりすると、麺同士がくっつきにくくなり、口当たりもよくなります。
よくあるのは、ザルに上げた麺に水をさっとかけただけで済ませてしまうことです。ぬめりが残っていると、時間がたつにつれて麺同士が貼りつきやすくなります。冷やしで食べるときは、つゆの絡み方にも影響します。
水を何度か替えながら、ぬめりが感じられなくなるまで洗いましょう。洗い終わったら、しっかり水気を切ってから盛り付けます。
冷やしでも温かいのでも|ニョッキへの応用とグルテンの注意点
冷やしても温かくしても。米粉うどんの食べ方
農林水産省の解説によると、冷水にさらした米粉うどんは、冷やしても温かくしてもおいしく食べられるとされています。冷たいつゆで食べるざるうどんにも、温かいつゆのかけうどんにも使えるということです。
冷やしで食べる場合は、手もみして洗った麺の水気を切り、そのまま盛り付けます。冷水で締めた麺の食感を、いちばんそのまま楽しめる食べ方です。温かいうどんにする場合は、洗った麺をお湯にくぐらせて温め直してから丼に移すと、つゆが冷めにくくなります。
やりがちなのは、温かいうどんにするからと、ゆでた麺を洗わずに丼へ入れてしまうことです。前の章で説明したとおり、表面のぬめりが残ったままだと、つゆがとろみを帯びて濁りやすくなります。煮込みうどんにする場合も、ぬめりを洗ってから煮る方が麺の形が残りやすいと考えられます。
トッピングは、小麦のうどんと同じように考えて大丈夫です。冷やしなら薬味やおろし、温かいつゆならねぎや天かすなど、家にあるもので楽しめます。食べきれる量をゆでて、打ち立て・ゆで立てのうちに食べるのがいちばんです。
米粉ニョッキはパン用米粉で、ゆで6分くらい
米粉は、うどん以外のゆでる料理にも使えます。農林水産省の調理科学の解説では、米粉ニョッキが紹介されています。ここで使うのは麺用ではなく、パン用米粉です。小麦粉でニョッキを作る場合は強力粉を使う、と説明されています。
ゆで時間は約6分です。解説では、「米粉ニョッキは6分くらいゆでますが、ゆで時間が長くなると生地の一部が溶けだすことがあるので、つなぎの役割をもつ卵の量を増やすと、ゆでた後のテクスチャーが腰が強くしっかりしてきます。」としています。卵なしでも作れますが、その場合は生地が溶け出しやすくなる点に注意が必要です。
やりがちなのは、うどんと同じ麺用米粉でニョッキを作ったり、6分を大きく超えてゆで続けたりすることです。ゆでる時間が長いと生地の一部が溶け出し、形が崩れる原因になります。
しっかりした食感にしたいときは卵を多めに、卵を使いたくないときはゆで時間を守ることを意識しましょう。同じゆでる料理でも、使う米粉の種類が変わることは覚えておいてください。

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小麦粉を混ぜた米粉うどんはグルテンフリーではない
米粉麺を作る理由のひとつに、グルテンを避けたいという方もいるでしょう。ただ、この記事で紹介した中国四国農政局の手打ち米粉うどんは、米粉に中力粉(小麦粉)を混ぜる配合です。つまり、グルテンを含みます。グルテン入りの微細粒粉を使う場合は、米粉そのものにも小麦由来のグルテンが入っています。
グルテンを含まない米粉を選びたいときの目安になるのが、農林水産省が令和2年10月に制定した「ノングルテン米粉の製造工程管理JAS(JAS0014)」です。製造工程でグルテンの混入を防ぎ、製品のグルテン含有量を1ppm以下に管理する規格です(農林水産省「ノングルテン米粉」)。令和3年6月から、登録認証機関の日本農林規格認証アライアンス(JASCERT)が認証を始めています。このほか、日本米粉協会が管理運営するノングルテン米粉製品の第三者認証制度もあり、平成30年6月14日に第1号が認証されました。
やりがちなのは、「米粉麺だからグルテンは入っていない」と思い込むことです。米粉の麺でも、配合や使う粉によってグルテンの有無は変わります。原材料欄と認証マークの両方を確認しましょう。体調や食事制限については、医師・管理栄養士に相談してください。

どのレシピから始める?読者タイプ別の選び方
ここまで紹介したレシピは、目的によって向き不向きがあります。手打ちうどんを一から楽しみたい方には、中国四国農政局の実践版が向いています。分量・寝かせ時間・ゆで時間まで具体的に示されているので、手順どおりに進めやすいからです。初めてなら米粉20%から始め、慣れたら割合を上げていきましょう。
短い時間で手づくりの麺を楽しみたい方には、農林水産省の解説にある、麺用米粉と片栗粉で作る米粉うどんが選択肢になります。ゆで時間が2分程度と短いのが特徴です。ただし、解説ページに分量は載っていないので、麺用米粉の袋や製粉メーカーが案内しているレシピとあわせて作るのが現実的です。
うどんとは違う一品を作りたい方には、パン用米粉で作る米粉ニョッキがあります。卵の量で食感を調整できるので、好みに合わせて試しやすいでしょう。
グルテンを避けたい方は、中力粉を混ぜる実践版は選ばず、ノングルテン米粉の認証マークがある粉と、小麦粉を使わないレシピを組み合わせてください。家族の中にグルテンを避けたい人がいる場合は、まな板や打ち粉など、調理器具にも小麦粉が残っていないか気を配りましょう。
まとめ
最初の一歩は、手元の米粉の原材料欄を見て、グルテン入りかどうかを確かめることです。それがわかれば、配合表のどの行で量ればいいかが決まります。あとは季節に合った寝かせ時間を選び、3mm幅にそろえて切るだけです。
※米粉の用途表示や認証制度の内容は変わることがあるため、最新情報は農林水産省や各製品の公式サイトでご確認ください。

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