お赤飯やおこわ、お正月の餅づくり。年に何度かしか扱わないもち米は、いざ袋を開けると「普段のお米と同じようにしっかり研いでいいのかな」と手が止まりがちです。うるち米と同じ感覚で洗って、炊きあがりがべたついたり、芯が残ったりした経験がある方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、もち米は「研ぐ」というより、たっぷりの水で手早く「すすぐ」のが基本です。合計4回・1分以内を目安に洗いを済ませ、洗ったあとはざるに上げて水けを切るか、水につけて吸水させます。もち米の仕上がりは、洗う動作そのものよりも、この「洗ったあとの水の扱い」で大きく変わります。
この記事では、もち米がうるち米とどう違うから洗い方が変わるのか、という理屈から入り、迷わない洗い方の手順、水切りと浸水の使い分け、炊飯器で炊くときの水加減、作るものによる下準備の違い、無洗米や古いもち米の扱いまで順番に解説します。
・もち米を「研がずにすすぐ」理由と、合計4回・1分以内が目安とされるわけ
・洗ったあとに「ざるで水を切る」か「水につけて吸水させる」かの使い分け
・炊飯器で炊くときの水加減と浸水時間の考え方
・無洗米のもち米、古いもち米を扱うときの注意点
もち米の洗い方は「研ぐ」より「すすぐ」が正解なわけ

力はいらない、指先で水をくぐらせるだけで十分です
もち米を洗うときは、手のひらで米を押しつけてこするような研ぎ方はしなくて大丈夫です。ボウルにたっぷり水を張り、指を軽く広げて水の中で米をくるくると回すように動かす。これだけで、表面に残ったぬかは十分に落ちていきます。
理由は二つあります。一つは、今の精米は表面のぬかがきれいに取り除かれていて、昔のように強くこすらなくても汚れが落ちる状態になっているといわれていることです。もう一つは、もち米の粘りはデンプンの性質そのものから生まれるという点です。もち米のデンプンは粘り気の強いアミロペクチンがほぼすべてを占めていて、洗い方で粘りを「引き出す」必要はありません。
台所でやりがちなのが、うるち米の感覚で力を入れてゴシゴシ研いでしまうことです。米粒同士を強くこすり合わせると、粒の表面が傷ついたり欠けたりしやすくなるといわれます。傷んだ部分からは水が入りやすく、炊きあがりにむらが出たり、表面が崩れてべたついたりする原因になります。
コツは「指を立てて、水の中で泳がせる」イメージです。米を握ったり、ボウルの底に押しつけたりしないこと。指先が米に軽く触れる程度で回せば、粒を傷めずにぬかだけを流せます。
合計4回・1分以内が目安とされる理由
もち米の洗米は、合計4回で1分以内に手早くすすぎ洗いをすることが大切だとする解説があります。回数よりも「短い時間で終わらせる」ことに意味がある、と考えると覚えやすいはずです。
なぜ時間を短くするのかというと、お米は水に触れた瞬間から水を吸い始めるからです。洗っている間の水には、表面から落ちたぬかが溶け出しています。そのぬか水に米を長く浸していると、溶け出したぬかの成分ごと水を吸い込んでしまい、炊きあがりにぬかのにおいが残る原因になるといわれます。特に乾いた状態の米は、最初に触れた水をよく吸います。
具体的には、1回目は水を注いでひと混ぜしたらすぐ捨て、2回目から4回目は指先で軽く回して水を替える、という流れです。ここでやりがちなのが、水が完全に透明になるまで何度も洗い続けてしまうことです。洗う回数が増えるほど、ぬか水に触れる時間も、粒がこすれ合う時間も長くなってしまいます。
注意点として、4回洗った時点で水がうっすら白く濁っていても、それで止めて構いません。濁りが残っているのは、表面のデンプンが少し溶けているためで、汚れが落ちていないわけではありません。「少し濁っていても4回で終わり」と決めておくと、洗いすぎを防げます。
「洗う」を早く終わらせて「吸わせる」に時間を使う
もち米の下準備は、「洗う時間は短く、水分を入れる時間はしっかり」という組み立てになっています。洗米を手早く済ませる代わりに、そのあとの水切りや浸水には時間をかける。この配分が、もち米の扱い方の基本です。
理由は、もち米を料理に使うときの加熱方法にあります。おこわや赤飯を蒸し器で蒸す場合、うるち米のように炊飯の水を加えないため、加熱が始まる前に米の中まで水分を入れておく必要があります。もち米はしっかり水を吸わせてから、水を切って蒸すのが基本とされています。洗う工程で時間を使ってしまうと、肝心の「きれいな水を吸わせる」時間が、ぬか水を吸う時間に置き換わってしまいます。
メーカーのレシピを見ても、この考え方ははっきりしています。日立のオーブンレンジのレシピでは「もち米は洗い、約1時間つけて吸水させます」と案内されていて、洗う工程には時間の指定がなく、吸水に時間を取る組み立てになっています。
コツは、作業の前にレシピ全体を見て「洗ったあと何分おくのか」を先に確認しておくことです。洗い始めてから慌てて次の工程を調べると、その間、米がぬか水に浸かったままになりがちです。
もち米は力を入れて研がず、指先で水の中を回すようにすすぎます。洗米は合計4回・1分以内が目安。洗う時間を短くした分、そのあとの水切り・吸水にしっかり時間をかけるのが、もち米の下準備の基本です。
そもそも、もち米は普通のお米と何が違う?
デンプンの中身がほぼアミロペクチンだけ
もち米と普通のお米(うるち米)のいちばん大きな違いは、デンプンの中身です。うるち米のデンプンはアミロペクチンとアミロースがおよそ8対2の割合で含まれているのに対し、もち米のデンプンはアミロペクチンがほぼすべてを占めています。
アミロペクチンは、枝分かれの多い構造をしたデンプンで、加熱すると粘り気が強く出るのが特徴です。一方のアミロースは粘りが出にくく、多いほどあっさり、ぱらっとした食感に近づきます。農林水産技術会議の資料でも、もち米のデンプンは粘り気が強いアミロペクチンだと説明されています。もち米を炊いたり蒸したりすると、うるち米よりも粘りが強く、もちもちした食感になるのはこのためです。
この性質が、洗い方や水加減に直結します。粘りが強いということは、水が多すぎたり、表面が崩れたりしたときに、べたつきとして表に出やすいということでもあります。うるち米なら目立たない程度の水の多さや粒の傷みが、もち米でははっきり仕上がりに出ます。
覚えておきたいのは、もち米の「もちもち」は洗い方で作るものではない、という点です。粘りはもともと持っているので、洗うときは粒を傷めず、余計な水を吸わせないことだけに集中すれば十分です。

白く不透明な粒は「もち米らしさ」のサイン
もち米は、粒の見た目でもうるち米と区別できます。うるち米の精米が半透明なのに対して、もち米の粒は白く不透明です。袋から出したときに、すりガラスのような乳白色に見えるのがもち米の特徴です。
この白さは、デンプンの性質の違いから生まれるものです。もち米ならではの見た目であって、傷んでいたり、ぬかが残っていたりするわけではありません。
ここで起きやすいのが、白く濁って見える粒を「まだぬかが落ちていない」と勘違いして、何度も洗い続けてしまう失敗です。もち米は洗っても半透明にはならないので、見た目の白さを基準に洗米の終わりを決めると、いつまでも終わらなくなってしまいます。洗いすぎれば粒がこすれ、ぬか水に浸かる時間も延びるので、かえって仕上がりを悪くします。
コツは、粒の色ではなく「回数と時間」で洗米を終えることです。合計4回・1分以内と決めておけば、見た目に惑わされずに済みます。また、うるち米ともち米を混ぜて保存していると見分けにくくなるので、もち米は袋や容器を分けて、何の米かがひと目でわかるようにしておくと安心です。
粘りが強いからこそ「水の入れ方」が仕上がりを左右する
もち米は粘り気が強く、もちもちした食感が持ち味です。そのため、餅、おこわ、赤飯、和菓子など、粘りやコシを生かす料理に使われます。この粘りの強さこそが、下準備で「水をどう入れるか」が大切になる理由です。
水が足りなければ芯が残り、水が多すぎれば粘りがべたつきに変わる。どちらの失敗も、うるち米よりもち米のほうが目立ちやすい傾向があります。粘りが強い分、粒同士がくっついて水分の逃げ場が少なく、余った水分が表面に残りやすいからです。
具体的な場面で言えば、炊飯器でおこわを炊くときに白米の目盛りで水を入れてしまい、べちゃっとした仕上がりになるケースがよくあります。逆に、蒸し器で赤飯を蒸すときに浸水が足りないと、表面は柔らかいのに中が硬い、という状態になりがちです。
下の表は、うるち米ともち米の違いを、公的資料や公式情報の記載から整理したものです。洗い方の違いは、性質の違いから自然に導かれることがわかります。
| 項目 | うるち米(普通のお米) | もち米 |
|---|---|---|
| デンプンの中身 | アミロペクチンとアミロースがおよそ8対2 | アミロペクチンがほぼすべて |
| 粒の見た目 | 半透明 | 白く不透明 |
| 食感 | 品種により粘りの強さはさまざま | 粘り気が強く、もちもちした食感 |
| 主な用途 | 毎日のごはん | 餅、おこわ、赤飯、和菓子 |
| 洗い方の考え方 | 表面のぬかを落とし、炊飯の水に浸して炊く | 手早くすすぎ、洗ったあとの水切り・吸水を重視 |
手順で迷わない、もち米の洗い方4ステップ

Step1:計量はすりきり、ボウルとざるを先に用意する
洗い始める前に、道具をそろえておくことが手早く洗う第一歩です。もち米は計量カップですりきりに量り、ボウルとざるを重ねてシンクに置いておきます。
なぜ先に準備するのかというと、もち米の洗米は「水に触れている時間をいかに短くするか」が勝負だからです。洗い始めてからざるを探したり、計量をやり直したりしていると、その間ずっと米はぬか水を吸い続けます。ボウルとざるを重ねておけば、ざるごと持ち上げるだけで水を切れるので、水を替える動作が一瞬で済みます。
やりがちなのは、計量カップに山盛りにすくってしまい、あとで水加減が合わなくなることです。もち米は水の量の影響が出やすいので、量るときは箸などで表面をすりきって、毎回同じ量になるようにします。ここで量がずれると、目盛りどおりに水を入れても仕上がりが変わってしまいます。
また、炊飯器の内釜で直接洗えるかどうかは、機種によって扱いが異なります。内釜の表面加工を傷めないよう、内釜での洗米について取扱説明書にどう書かれているかを一度確認しておきましょう。迷ったら、ボウルとざるで洗ってから内釜に移すのが無難です。
Step2:1回目の水はひと混ぜしてすぐ捨てる
1回目の水は、注いだらさっとひと混ぜして、すぐに捨てます。もち米の洗い方のなかで、いちばんスピードが大切な工程です。
理由は、乾いた米は最初に触れた水をいちばんよく吸い込むからです。1回目の水には、表面から落ちたぬかが最も多く溶け出しています。ここでのんびり混ぜていると、ぬかの溶けた水がそのまま粒の中に入り込み、炊きあがりのにおいや風味に影響するといわれます。
具体的には、ボウルに水をたっぷり注ぎ、指先で2〜3回ぐるりと回したら、すぐにざるごと持ち上げて水を捨てます。水を注ぐときは、米が勢いよく舞い上がる程度にたっぷりと入れると、混ぜる回数が少なくても全体に水が行き渡ります。
注意したいのは、1回目から丁寧に研ごうとしないことです。「最初が一番汚れているから念入りに」と考えがちですが、もち米の場合は逆で、最初こそ手早く捨てるのが正解です。汚れを落とすのは2回目以降の仕事、と割り切りましょう。
Step3:2〜4回目は軽く混ぜて水を替える
2回目から4回目は、水を注いで指先で軽く回し、水を替える、をくり返します。合計4回で1分以内に収まるくらいのテンポが目安です。
この工程で表面に残ったぬかを落としていきます。力を入れる必要はなく、水の流れで米同士が軽く触れ合うだけで、表面のぬかは十分に取れていきます。もち米は粘りが強い分、粒の表面が崩れると炊きあがりのべたつきにつながるため、粒を傷めないやさしい動きが大切です。
やりがちなのが、4回目で水がまだ白っぽいからと、5回、6回と続けてしまうことです。前の章でも触れたとおり、もち米はもともと白く不透明な粒なので、洗い水も完全には澄みにくいものです。回数を重ねるほど、ぬか水に浸かる時間と粒がこすれる時間が延びてしまいます。
コツは、最後の水を捨てるときに「これで4回目」と数えておくことです。時間で測るのが難しければ、キッチンタイマーを1分にセットして、鳴るまでに4回の水替えを終えるつもりで進めると、自然と手早く洗えます。
Step4:ざるに上げるか、そのまま浸水へ進む
洗い終わったら、次の工程は作るもの・レシピによって二つに分かれます。ざるに上げて水けを切るか、きれいな水につけて吸水させるかです。
どちらを選ぶかは、レシピの指定に従うのがいちばん確実です。日立のレシピでも、ざるに上げて水けを切るものと、水につけて吸水させるものの両方があり、作るものや加熱方法によって使い分けられています。それぞれの理由は次の章で詳しく説明します。
ここで起きやすいのが、洗ったもち米をボウルの最後の洗い水に浸したまま、次の準備に取りかかってしまうことです。最後の洗い水にもわずかにぬかが残っているので、浸水させるなら必ず新しい水に替えてからにしましょう。
注意点として、水切りでも浸水でも、時間を決めてタイマーをかけておくことをおすすめします。もち米は「洗ったあと」の時間で仕上がりが変わるので、ここをなんとなくで済ませないことが、失敗しないための近道です。
【状況】白く濁った洗い水が気になり、手のひらで押しつけるように何度も研いでしまう。
【原因】粒がこすれて表面が傷み、ぬか水に浸かる時間も長くなるため、炊きあがりのべたつきやぬかのにおいにつながります。
【対策】指先で軽く回すだけにして、合計4回・1分以内で終える。もち米は白く不透明な粒なので、水が少し濁っていても止めて大丈夫です。
洗ったあと「水を切る」か「つけておく」か、どっちが正しい?
ざるで約30分水けを切るレシピがあるわけ
洗ったもち米をざるに上げて、しばらく水けを切ってから使うレシピがあります。日立のスチームオーブンレンジのレシピでは「もち米は洗い、ざるに上げて約30分水けを切る」と案内されています。
水切りの目的は、米の表面についた余分な水をしっかり落とすことです。洗った直後のもち米は、粒の表面や粒と粒のすき間に水がたくさん残っています。この状態で調理用の水を量って加えると、残っていた水の分だけ水分が多くなり、狙った仕上がりより柔らかく、べたつきやすくなります。水分が完全に切れてから加熱すれば、加える水の量をレシピどおりに正確に保てます。
また、ざるに上げている間にも、粒は表面に残った水を少しずつ吸っていきます。つまり水切りの時間は、ただ待っているだけでなく、表面の水分を粒になじませる時間でもあります。
やりがちなのは、ざるに上げてすぐに次の工程へ進んでしまうことです。水切りの時間が短いと、表面の水が残ったまま調理することになり、水加減がずれます。逆に、レシピの時間を大きく超えて放置すると、表面が乾きすぎてしまうこともあるので、時間を決めてタイマーをかけておきましょう。
約1時間つけて吸水させるレシピがあるわけ
一方で、洗ったもち米を水につけておくレシピもあります。日立のオーブンレンジのレシピでは「もち米は洗い、約1時間つけて吸水させます」と案内されています。
吸水させる目的は、加熱が始まる前に粒の中心まで水分を届けておくことです。特に、蒸し器で蒸すおこわや赤飯は、炊飯のように米をお湯の中で加熱するわけではありません。蒸気だけで火を通すため、加熱前に吸った水分が、そのまま仕上がりの柔らかさを決めます。もち米はしっかり水を吸わせてから、水を切って蒸すのが基本とされているのはこのためです。
台所でありがちなのが、吸水の時間を短く切り上げて蒸してしまい、表面は柔らかいのに中に芯が残る、という失敗です。水分が中心まで届いていないと、蒸気でいくら加熱しても中まで柔らかくなりにくくなります。
コツは、浸水には必ず新しい水を使うことと、浸水が終わったらざるに上げて水を切ってから加熱することです。「つけておくレシピ」でも、最後は水を切る工程が入るのが一般的です。浸水の時間はレシピの指定に合わせ、季節や米の状態に応じて調整します(次の章で詳しく触れます)。
実は、仕上がりを決めるのは洗い方より「洗ったあと」
意外と知られていないのですが、もち米の仕上がりを左右するのは、洗い方そのものよりも、洗ったあとにどれだけ・どのように水を入れるかです。洗い方を工夫しても、水切りや浸水の時間が合っていなければ、べたつきや芯残りは防げません。
その理由は、もち米の水分は「洗米中」「水切り・浸水中」「加熱中」の三つの段階で入っていくからです。手早く洗えば洗米中に吸う水はわずかで、そのほとんどは、そのあとの水切りや浸水、加熱で決まります。洗い方をいくら丁寧にしても、全体の水分量に占める割合は小さいのです。
実際、メーカーや料理の解説を見比べると、洗い方の案内は「洗う」「手早くすすぐ」とシンプルなのに対し、洗ったあとの扱いは、水切り約30分、吸水約1時間、浸水15分~30分など、具体的な時間で細かく指定されています。下の表は、公式レシピや解説に書かれている下準備の目安を整理したものです。
コツは、レシピを見るときに「洗ったあと何分、どうするか」に赤線を引くつもりで読むことです。洗い方は手早くすすぐだけで共通なので、迷うべきなのは洗ったあとの工程だけ、と考えると準備がぐっと楽になります。
| 場面 | 洗ったあとの扱い | 時間の目安 | 出典 |
|---|---|---|---|
| スチームオーブンレンジのレシピ | ざるに上げて水けを切る | 約30分 | 日立のレシピ |
| オーブンレンジのレシピ | 水につけて吸水させる | 約1時間 | 日立のレシピ |
| 炊飯器で炊く場合 | 浸水させる | 15分~30分(古米は長め) | 料理の解説 |
| おこわ(蒸す) | 浸水させてから水を切る | 1時間~2時間(春夏は1時間、秋冬は2~3時間が目安とされる) | 料理の解説 |
炊飯器で炊くなら水加減と浸水はどう決める?
水加減はもち米・おこわの目盛りが最優先
炊飯器でもち米を炊くとき、水加減の基準は内釜の目盛りです。内釜にもち米やおこわ用の目盛りがある場合は、その目盛りに合わせて水を入れるのが基本になります。
目盛りが最優先になる理由は、炊飯器の炊き方(加熱の強さや時間)と目盛りの水位がセットで設計されているからです。もち米用・おこわ用のコースや目盛りがある機種なら、その組み合わせで炊いたときにちょうどよく仕上がるように作られています。自分で水の量を計算して入れるより、目盛りに合わせるほうが仕上がりが安定します。
目盛りがない炊飯器の場合は、計量カップで水を量ることになります。料理の解説では、もち米1合に対して水約180mlを目安とするものがあります。ただし、炊飯器の機種やコースによって最適な水の量は変わるため、あくまで目安として考え、取扱説明書にもち米の炊き方が載っていればそちらを優先してください。
注意したいのは、ざるで水切りしたあとの米を内釜に入れてから水位を合わせることです。目盛りは「米を入れた状態で、水面がどこに来るか」を示すものなので、先に水を入れてから米を加えると水位がずれてしまいます。

白米の目盛りで炊くとべちゃっとしやすい理由
もち米を炊飯器で炊いたら、べちゃっと柔らかくなってしまった。この失敗でよくある原因が、白米(うるち米)の目盛りで水を入れてしまうことです。
もち米は粘り気が強いアミロペクチンがほぼすべてを占めるお米で、少しの水の多さでも、余った水分が粒の表面に残って粘りがべたつきに変わりやすい傾向があります。炊飯器にもち米・おこわ用の目盛りが別に設けられているのは、白米と同じ水位で炊くと、もち米には水が多すぎて仕上がりが変わってしまうためです。
さらに、洗ったあとの水切りが不十分なまま内釜に入れると、表面に残った水の分だけ、目盛りよりも実際の水分が多くなります。白米の目盛りで炊いたうえに水切りも足りなかった、という場合、べたつきはいっそう出やすくなります。
対策は、内釜のどの線がもち米・おこわ用なのかを、炊く前に取扱説明書で確認しておくことです。目盛りの線は細かく並んでいることが多いので、白米の線と見間違えないよう、明るいところで真横から水面を見て合わせましょう。
【状況】炊飯器でおこわを炊こうとして、いつもの白米の線まで水を入れてしまう。洗ったあとの水切りも短めだった。
【原因】もち米は水が多いと粘りがべたつきに変わりやすく、白米の水位では水が多すぎます。水切り不足で表面に残った水も上乗せされます。
【対策】内釜のもち米・おこわ用の目盛りに合わせ、目盛りがなければ取扱説明書の案内に従う。洗ったあとはレシピどおり水けを切ってから内釜に入れましょう。
炊飯器で炊くときの浸水は15分~30分が目安
炊飯器でもち米を炊く場合、浸水時間は15分~30分が目安とする解説があります。蒸し器で蒸すおこわほど長くつけなくてよいのは、炊飯器では加熱中にも内釜の水を吸わせながら炊けるからです。
蒸し調理と炊飯の違いを考えると、理由がわかりやすくなります。蒸す場合は加熱中に水を足せないので、事前に吸水させた水分がすべてです。一方、炊飯器では米が水の中で加熱されるため、加熱の途中でも吸水が進みます。そのぶん、事前の浸水は短めで済むわけです。
ただし、炊飯器のコースによって、浸水の扱いはメーカー・機種ごとに異なります。機種によっては、もち米やおこわ向けのコースを備えているものもあり、象印、タイガー、日立など各メーカーの取扱説明書で、コースの名称や手順の案内が違います。1社の案内をほかのメーカーの炊飯器にそのまま当てはめないようにしましょう。
コツは、炊飯器の取扱説明書で「もち米」「おこわ」のページを探し、浸水が必要か、必要なら何分かを確認することです。案内がない場合は、15分~30分を目安にして、仕上がりが硬めなら次回は少し長く、柔らかすぎるなら短くするなど、自分の炊飯器に合わせて調整していくと安定します。
赤飯・おこわ・餅…作るもので変わるポイント
蒸し器で蒸すおこわ・赤飯は浸水をしっかり
蒸し器でおこわや赤飯を作る場合は、炊飯器よりも浸水を長めに取ります。料理の解説では、おこわの浸水は1時間~2時間、季節によって春夏は1時間、秋冬は2~3時間が目安とされています。
季節で時間を変えるのは、水の温度によって吸水の速さが変わるためです。水温が高い春夏は米が早く水を吸い、水温が低い秋冬は吸水がゆっくり進みます。同じ時間つけても、冬は中心まで水が届きにくいので、時間を延ばして調整するわけです。
やりがちなのが、季節に関係なく同じ時間で浸水を切り上げ、冬場に芯の残ったおこわになってしまうことです。蒸し調理は加熱中に水を足せないので、浸水不足はそのまま芯残りにつながります。また、蒸している途中で表面が乾いてきたときに、手水や打ち水をするレシピもあり、蒸し器ならではの水分の補い方があることも覚えておくと安心です。
コツは、浸水が終わったら、ざるに上げてしっかり水を切ってから蒸し器に入れることです。水が切れていないと、蒸し布の上に水がたまり、底の部分だけべたついてしまいます。浸水でしっかり吸わせ、水切りで余分な水を落とす、という二段構えがおこわの基本です。
餅にするときも下準備の基本は変わらない
もち米を蒸してついて餅にする場合も、下準備の基本はおこわと同じです。手早く洗って、しっかり吸水させ、水を切ってから蒸す。この流れを守ることが、なめらかな餅への近道です。
餅は、蒸したもち米をつくことで粒をつぶし、アミロペクチンの粘りを引き出して一体にするものです。蒸しあがりに芯が残っていると、ついても粒が残りやすく、なめらかにまとまりにくくなります。逆に水分が多すぎると、べたついて扱いにくい餅になります。蒸す前の吸水と水切りが、つきやすさを左右するのです。
台所での失敗としては、もち米の量が多いときに洗い方が雑になり、ボウルの中で米が偏って一部だけぬかが残る、というケースがあります。量が多い場合は、一度に全部を洗わずに、ボウルに入る量に分けて洗うほうが、短い時間でむらなくすすげます。
注意点として、家庭用の餅つき機や炊飯器で餅を作る場合は、その機器の取扱説明書に書かれた浸水時間や水の量に従ってください。機器ごとに加熱の仕組みが違うため、蒸し器向けの時間をそのまま当てはめると、硬すぎたり柔らかすぎたりすることがあります。
品種名より先に「何を作るか」で下準備を決める
もち米にも、うるち米と同じようにさまざまな品種があります。ヒメノモチ、わたぼうし、もちひかりなど、産地ごとに作られている品種があり、袋に品種名が書かれていることもあります。ただ、下準備を決めるときに最初に見るべきなのは、品種名よりも「何を作るか」です。
理由は、洗い方や浸水時間を大きく変えるのが、加熱方法の違い(炊くか、蒸すか、つくか)だからです。炊飯器で炊くなら浸水は短め、蒸し器で蒸すなら長め、というように、作るものによって必要な水分の入れ方が変わります。品種ごとの食感の違いは、各産地や品種を育成した道県の公式紹介で確認できますが、洗い方の基本である「手早くすすぐ」は共通です。
下の表は、作るもの・読者のタイプ別に、下準備の考え方を整理したものです。迷ったときは、まず自分がどの場面に当てはまるかを確認してください。
コツは、レシピや取扱説明書の指定があればそれを最優先にし、指定がなければ表の目安を出発点にすることです。そのうえで、仕上がりを見ながら浸水時間を少しずつ調整していくと、自分の台所に合ったやり方が見つかります。
| 項目 | 平日に炊飯器でおこわ | 行事に蒸し器で赤飯 | 手間を減らしたい |
|---|---|---|---|
| 洗い方 | 合計4回・1分以内で手早くすすぐ | 合計4回・1分以内で手早くすすぐ | 無洗米のもち米なら洗米不要 |
| 浸水・水加減 | 浸水15分~30分、もち米・おこわの目盛りに合わせる | 浸水1時間~2時間(季節で調整)、水を切って蒸す | 袋の表示と炊飯器の取扱説明書に従う |
| 気をつけたい点 | 白米の目盛りと見間違えない | 冬は浸水を長めに、芯残りに注意 | すすぐ場合も手早く済ませる |
無洗米のもち米、古いもち米はどう扱う?
無洗米のもち米は洗わずに炊ける
もち米にも、無洗米として売られているものがあります。無洗米は、精米の段階で表面に残る細かいぬか(肌ヌカ)をあらかじめ取り除いてあるため、洗米せずにそのまま調理できます。
普通の精米では、粒の表面に肌ヌカと呼ばれる細かいぬかが残っていて、これを洗米で落としています。無洗米はこの肌ヌカを工場で取り除いているので、家庭で洗う必要がありません。洗米の手間が省けるだけでなく、洗い水を捨てる必要がないのも利点です。
ただし、商品によっては「軽くすすぐ」ことをすすめている場合もあります。気をつけたいのは、無洗米を普通のもち米と同じように何度も洗ってしまうことです。せっかく肌ヌカを取ってある米を洗えば、そのぶん米の表面がこすれ、洗米に時間を使うことにもなります。すすぐ場合も、さっと水をくぐらせる程度にとどめましょう。
また、無洗米は同じ計量カップで量っても、普通の精米より米の量が多く入る傾向があるため、水加減の扱いが変わることがあります。炊飯器に無洗米用の目盛りや案内があるか、袋の表示とあわせて確認してください。

無洗米を買ってみたものの、「本当に研がなくていいの?」「水はいつもと同じでいいの?」と、炊飯器の前で手が止まってしまう方は多いはずです。白米と同じ感覚で炊いたら…
古いもち米は浸水を長めにする
もち米は、行事のときに買ってそのまま残ってしまいがちなお米です。時間がたったもち米を炊飯器で炊く場合は、浸水時間を長めに、30分程度取るとよいとする解説があります。
時間がたったお米は、乾燥が進んで粒の水分が少なくなっていることが多く、そのぶん吸水に時間がかかります。新しいもち米と同じ浸水時間では、中心まで水が届ききらず、炊きあがりが硬めになったり、芯が残ったりしやすくなります。浸水を長くするのは、この水分の差を補うためです。
台所でありがちなのは、去年の行事で使い残したもち米を、いつもと同じ手順で炊いて、思ったより硬く仕上がってしまうケースです。洗い方が同じでも、米の状態によって必要な吸水の時間は変わります。
コツは、炊く前に袋の精米年月日を確認し、時間がたっているようなら浸水を長めにすることです。また、においや見た目に違和感がある場合は、無理に使わずに状態をよく確かめてください。保存の目安については、精米年月日を起点に考えるのが基本です。
袋の表示で確認したい精米年月日
もち米を扱うとき、袋の表示で必ず見ておきたいのが精米年月日です。精米された袋入りのお米には、食品表示基準にもとづいて、原料玄米の産地・品種・年産、精米年月日、内容量、販売者などの表示が求められています。
精米年月日を見るのは、もち米の状態を判断する手がかりになるからです。食品表示基準では、玄米は籾殻を除いて調製したもの、精米は玄米からぬか層の全部または一部を除いたものとされていて、無洗米も精米の一種として扱われます。精米されたお米は時間がたつほど乾燥や風味の変化が進むため、いつ精米されたかが、浸水時間を調整する目安になります。表示のルールは消費者庁が定めています。
やりがちなのが、もち米の袋をすぐに捨ててしまい、いつ精米されたものかわからなくなることです。保存容器に移し替える場合は、精米年月日と品種をメモして容器に貼っておくと、次に使うときに迷いません。
迷いやすい点を、よくある質問の形でまとめておきます。
まとめ
もち米は、うるち米よりも粘りが強い分、水の多さや粒の傷みが仕上がりに出やすいお米です。でも、やることはシンプルで、洗いは手早く、洗ったあとの水切りや浸水はレシピの時間どおりに、の二つだけ。次にもち米を使うときは、洗い始める前にレシピの「洗ったあと何分、どうするか」を確認し、タイマーを用意してから水を注いでみてください。
※炊飯コースや水加減の目盛りは機種ごとに異なるため、最新の内容はお使いの炊飯器の取扱説明書やメーカーの公式サイトでご確認ください。

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